第3615話 ドレスは王家の基調色に倣うべきか。(事前に打ち合わせをしておけばいい問題です。)
エルヴィス侯爵邸の客間。
アリスとエリカがラルフの仕立て屋で見たドレスの生地の話になっていた。
「色んな色がありましたよね。
・・・第1皇子一家は赤が基調、第2皇子一家は青が基調、第3皇子一家が緑が基調。
うーん・・・アン殿下は赤ですよね、エイミー殿下は青。
こっちに来る時に着て来るかもしれませんよね。
アリスさんは正室ですし、騎士爵を持っていて、王都守備隊の深紅のフルプレートを下賜されていますから、赤で良いでしょうけど、私はお二人と被ると何か陰で言われそうですよね。」
エリカが言う。
「王家に倣って正室が赤、側室が青で良いのでは?」
アリスが言う。
「ふむ・・・となると、リストで言うとこれとこれですか。」
エリカがリスト内の項目を指さす。
「2つ目の青って意匠が凝りすぎてて『なにこれ?』と言っていたやつですよね?」
アリスもリストを見ながら言う。
「確かそうです。
・・・うーん・・・」
エリカが悩む。
と扉がノックされ、エルヴィス爺さんが入ってくる。
「失礼するよ。
もうすぐ昼という事でこっちに来たのじゃが・・・なんじゃ?2人して。
良い生地はなかったのかの?」
エルヴィス爺さんがアリスとエリカに向かって言う。
「いえ、あったのですが、私はもともと赤なのですが、エリカさんが気になったのは黄色や青色なんです。
で、エイミー殿下やアン殿下の家の基調色と被るなぁという話をしていたんです。」
アリスが言う。
「ここは王都ではないからの。着たい物を着れば良いと思うのじゃが・・・
それに・・・基調色をこの屋敷でも頻繁に着るとは思えんの。
アリスとエリカのドレスは公式用にしなければ良いのではないのかの?」
エルヴィス爺さんが言う。
「・・・お爺さま、魔王国からのカーテンを元にした生地ですが、かなり意匠が良いですよ。
それこそ公式用にしないと、今の公式用のドレスがみすぼらしくなってしまうくらいにです。」
アリスが言う。
「ほぉ、良い生地を頂いたという事じゃの。
ヴァレーリ殿には会った際にお礼を言っておかないといけないの。」
エルヴィス爺さんが言う。
「そこが問題で、この地に来られる際にアリスさんと私がエイミー殿下とアン殿下の家の基調色を着ていたら、被ると思うのです。
それもアリスさんはスミス殿の側室のアン殿下と一緒で、私はスミス殿の正室のエイミー殿下と一緒という。
逆なのです。
折角着たのに2人への印象が悪くなってしまうかもしれません。」
エリカが言う。
「そういう物なのかの?
じゃが・・・エイミーとアンが基調色のドレスを着て、ここに来るだろうかのぉ?」
エルヴィス爺さんが考えながら言う。
「気合が入って着て来るかもしれません。」
アリスが言う。
「・・・基調色に拘らないドレスで来て欲しいと事前に言っておけば良いのではないかの?」
「それは・・・ですが、いくら義理の妹達でも王家に、こちらから注文を付けるのですか?」
エルヴィス爺さんの言葉にアリスが返答する。
「ふむ・・・2人とは少し話した程度じゃが・・・そういう事を気にする手合いでは無かったように思うがの?」
エルヴィス爺さんが言う。
「それは・・・そうですね。」
アリスが頷く。
「それに今年の夏に、こっちに来るのじゃろう?
その時に話せば良いだけと思うがの。」
「「はい。」」
エルヴィス爺さんの言葉にアリスとエリカが頷く。
「うむ、ではこの話は後日じゃの。
で、気に入った生地というのは、それほど意匠が凝っていたのかの?」
「はい、カーテンだったからなのか凝っていました。」
アリスが言う。
「見たことがないというより、そこまで凝るのかと感心しました。」
エリカが言う。
「ふーむ、その意匠は、この地では難しいかのぉ?」
「たぶん、出来なくはないと思いますが、相当高価になると思います。」
アリスが言う。
「ふむ・・・基本的には、この地で出来るというのは朗報じゃの。
かかる費用が賄えるのなら作れるという事だからの。」
エルヴィス爺さんが言う。
「高価すぎて一般への販売は需要がないかと。」
エリカが言う。
「それはそれじゃよ。
ついでにラルフ達がその生地を見ているからの・・・ラルフの事じゃ、作れるか確認は取っているじゃろうの。」
「確かに、タケオ様の協力工房で最初からタケオ様と楽しくやっている方です。
この機を逃すような方ではありませんね。」
アリスが頷く。
「・・・うん、タケオさんと協力工房方への変な信頼があるのですね。」
エリカが呆れながら言う。
「ええ、タケオ様の協力工房陣は、すぐ動きますからね。」
「うむ、出来る出来ないではなく、とりあえず動くというのが、あの者達の共通した行動じゃの。」
アリスとエルヴィス爺さんが言うのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




