第3597話 450日目 アリスとエリカの干物談義。(干物の保存期間が延びる方法はあるのか。)
エルヴィス侯爵邸の武雄達の寝室。
湯浴みと髪を乾かしたアリスとエリカがのんびりとしていた。
「うーん・・・お爺さまは、相当輸送に力を入れたいのでしょうね。」
アリスがベッドに座りながら言う。
「気持ちはわかりますね。
この町では小麦、こっちの町では野菜、あっちでは魚・・・町毎に特定の食物だけ採れるようにしていれば、指示する方は楽ですから。
施政者としては、何を伸ばすのかというのが、どこの町に力を入れるのかという簡単な思考でいいわけですからね。
本当に気持ちはわかります。
とはいえ、輸送日数の低減は、タケオさんやローチ工房の発想次第という所ですね。」
エリカが窓際の椅子に座り、苦笑しながら言ってくる。
「タケオ様の言い方だと、今の棒ベアリングを使った幌馬車は速度よりも荷物量を増やせるようにしているのですよね。
・・・速度が出るとまた違う事を考えないといけないのでしょうね。」
「そういう説明でしたね。
違う見方をするのならば、日持ちして、尚且つ加工前の食感や味が同じ物を輸送する方法があれば、そこまで速度に拘る必要はありませんね。」
エリカが言う。
「うーん・・・干物が一番わかりやすいのでしょうけど・・・味は悪くないですが、食感は違いますよね。」
アリスが考えながら言う。
「そうですね。
うーん・・・ペイトー、何かある?」
「あると言えば、あるのですが・・・フリーズドライ製法です。」
エリカが言うとチビペイトーが現れる。
「ペイトー、フリーズドライはタケオが前に話題にしたみたいだよ?
パナちゃんから、前にそんな雑談を聞いたよ。
野菜のフリーズドライはしたいよねって程度らしい。」
チビコノハが現れて言う。
「そうなのですか・・・実現していないという事は・・・タケオでも難しかったのですね。」
「まぁ、基本的に真空製法だからねぇ。」
「・・・確かに真空は難しいですね。」
チビペイトーが頷く。
「ペイトー、コノハ殿、そのフリーズドライは難しい事なのですか?」
エリカが聞いてくる。
「うん、難しいね。
簡単に言うと野菜を乾燥させて、お湯に浸せば10分くらいで元の食感に戻るような物を考えているんだけど、実験もしていないからなぁ。
タケオでも、まだ時期尚早と思っているのかもね。」
チビコノハが言う。
「そうなのですね。」
エリカが頷く。
「コノハ、野菜の乾燥が難しいのですか?
干物は日干しか高温の室内に入れるのですよね?」
アリスが聞いてくる。
「うん、そうだよ。
タケオがしたいのは、その上の干物技術だね。
アリスが言った方法よりも、もっとカラカラにする方法なのよ。
そうすることで日持ちも食感も良くなるという事だね。」
チビコノハが言う。
「そうなのですね。
で、タケオ様がまだしていないと。」
「そうだね。
技術的に難しいのもあるけど、他にも色々しているから今すぐとは思っていないだけかもね。
これやってくれる工房が・・・皆、忙しそうだしね。
それに野菜の干物は、あまり高価な物にはなれないでしょ?
薄利多売商品になるだろうけど、採算が取れるかどうか・・・」
チビコノハが考えながら言う。
「なるほど、タケオ様の趣味としてやるにはやれるけど、今は皆さん忙しそうだから話していないという事ですね?」
アリスが考えながら言う。
「そうだね。
それに装置の研究にも、それなりに費用がかかると思うわよ?」
チビコノハが言う。
「うーん・・・私達で出来る物ではないですね。
エリカさん、他にありますかね?」
「うーーん・・・もっと日持ちする干物ですよね・・・チーズも割と長い日数いけますよね。
他だと・・・小魚を日干しにして、さらに肉のように高温の室内に入れてカラカラにしますか?」
エリカが考えながら言う。
「あ、コノハ、新巻鮭がありますね。
塩を練りこんだ鮭。」
「あー、あるね。
でも、あれって冷凍で1、2か月だよ。
北海道で保存食としていたのは、厳冬期に外に置いておいて自然に冷凍保存出来るからだし。
この地方だと普通に魚の干物と同じ保存期間だよ。」
「ふむ・・・保存期間が延ばせませんね。」
チビペイトーが考えながら言う。
「・・・ちょっと待って、ペイトー殿、コノハ、塩を練りこむって?」
「うん。」
「はい。」
アリスの問いにチビコノハとチビペイトーが頷く。
「・・・何かの本で見ましたが・・魚の干物は海水を付けて干すとあったと思いますが・・・
それに塩を練りこむ?」
アリスが考える。
「干し肉も魚の干物も基本は塩水につけて、干すと思うよ?
ペイトーが言っているのは、紅魚の干物の製造方法なのよ。
かなり多めの塩を練りこんで干物にするの。
焼いた時に塩辛いんだけど、それはそれで美味しいのよ。」
チビコノハが言う。
「ふむ・・・味を増やす・・か。
保存期間を延ばすのと、新たな干物を考えていかないといけないですね。」
アリスが考えながら言うのだった。
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