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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョン運営本格始動

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落とし穴8掘:子供達はいつでも成長してる

子供達はいつでも成長してる





side:ヴィリア



目の前に広がるのは、暗くて、よく奥が見えない通路。

じめっとしてて嫌な空気が漂っている。


「うう……」


私は今子供用ダンジョンにいます。

お兄様、怖いです。


「そんなに怖がらなくても大丈夫。ヴィリアならいける」


そんな風にいって、頭を撫でてくれるユキお兄様。

でも、怖いものは怖いのです。


「お姉、怖がり」


ヒイロはそう言って私を非難してきますが、ヒイロだってお兄様の服を掴んだまま離しません。


「ヒイロその手離しなさい」

「いや」

「なんでよ」

「私が怖くないとはいってない」


この子は~!!


「いひゃい、いひゃい。お兄、お姉が苛める」

「なっ!? お兄様これはですね、しつけです!!」

「わかってる。だけど、ちょっと優しくしような。ヒイロもあんまり我儘いうなよ?」

「お兄…わかった」

「なんでお兄様のいう事は聞くのよ!!」

「お姉は違う感情混ざってた」

「うっ!?」


うらやましいとか…思ってない、思ってないです。


「よし、わかった。今日頑張ったら今日の夜は一緒にお泊りにしよう」

「本当ですか!!」

「…がんばる」


ヒイロは即座に服を離して、私の前へと歩き出します。


「お姉遅い。さっさとこのダンジョンを攻略してお泊りする」

「調子がいいんだから!!」


私そういってヒイロを追いかけてダンジョンに入っていきます。


「さて、ヴィリア、ヒイロ。つらいけど頑張ってくれ」


後ろでお兄様がそんな事を呟いていました。 




「いいですか。魔物はとてもこわーい生き物なんです。いままで魔物のせいで、数多の命が失われ、村や街、果ては国が滅んだことさえあるのです」


今、私達3-1組は魔物の勉強をしています。

このダンジョン、学校に来てから早くてもう約二か月。

この学び舎にも、多くの子供達がやってきました。

私達、ロシュールから来た子供達はユキ先生のおかげで一定の学力があるとみとめられて、3年生になれました。

無論、進級? が難しい子もいましたが、ユキ先生がしっかり教えてくれてちゃんと上がれました。

ユキ先生自体、私達がたった約二か月でここまでの学力を持つとは思っていなかったみたいです。

自分は勉強が嫌いだった。と、勉強が苦手な子にそういって一緒に勉強を手伝っていたのを思い出します。

普通の足し算、引き算は簡単。

文字も、簡単な読み書きは出来る様になりました。

この速度は異常だと言っていましたが、ユキ先生は「多分、きっと薄っすら言葉の意味を理解してたからかな?」難しい事はわかりませんが、知っている文字と知らない文字はありました。

スラムで生きてると、知っておかないといけない文字は自然と覚えるものです。

あと、通常に頻繁に見る文字などは比較的早くみんなは覚えました。


ユキ先生は勉強に励む私達を見て、なんとも複雑そうな顔をいつもしています。


「子供は遊ぶのが一番なんだけどな~」


「勉強ばかりでつらくないかい?」


こんな事をよく聞きます。

でも、私達は勉強は苦になりません。

いえ、一部の子は苦手ですけど。

ユキ先生がここで勉強を一杯すればきっと役に立つ。

そう言ってくれたんです。


「いつか、君達さえよければ一緒に頑張ってこのダンジョンをよくしていこう。無論冒険者とか、商人で他の村や街、国でも飛び越えるのもとてもいい夢だ」


私達はユキ先生に命を救われました。

暖かい寝床と食事をくれたお兄様の役に皆立ちたいんです。

でも、お兄様ってば、自分の役に立ってくれなんていいません。

いつも、皆の為にっていいます。


大一大万大吉。


お兄様が私達に教えてくれた変な言葉です。

皆が一人の為、一人が皆の為に頑張れば、幸せになれるって。

とても素晴らしい考えだと私は思いますが、先生はこの言葉を実行するのはとても難しいと言っていました。

だから、ひっそりと私達は決めたんです。

頑張って勉強してお兄様の役に立つって。

お兄様の言った「大一大万大吉」はちゃんとできるんだって。


「……アちゃん? ヴィリアちゃん? 聞いてましたか?」

「あ、ごめんなさい。聞いてませんでした」


そんな事を考えているとルルア先生に呼ばれていたことに気が付きませんでした。


「大丈夫ですか? 具合が悪いなら言ってくださいよ?」

「大丈夫です」


このルルア先生はなんと聞いて驚いてください、リテア聖国で聖女様だったお人なんです!!

なにか色々あってこのダンジョンに住むことになったそうで、主に病院や学校でお仕事をしています。

まるで、ユキ先生みたい。

色々掛け持ちしている凄い人です。

……おっぱいもとても大きい、聖女様です。


「と、話がそれましたね。魔物は本来、生きる為に生き物を襲います。このダンジョンの様に友好的で会話や知能を持つといわれている魔物はごく少数です。テイマースキルで魔物を配下における事はありますが、このダンジョンのようにしっかりとした自由は与えられていません」


ルルア先生が魔物のお話を進めます。

外の魔物って襲ってくるんだ~って感じで不思議がっている子供達が多数います。

この年で魔物と遭遇したことがある子供はごく少数です。

普通はしっかりした年齢まで、魔物が出るような所にはいきませんから。


「むう、ちょっと言葉を選びすぎましたね。襲ってくる。それは間違いありません。しかし、この場合の襲われるは死を意味します」

「「「!?」」」


私達は驚いた表情を取ったようでルルア先生が頷いています。


「いえ、死ぬだけならまだいいでしょう。魔物には色々な種類がいます。たとえばジャイアントスパイダーと言われる大蜘蛛は私達、人に卵を産み付けて、子供達の羽化、そして食事に使わせます」

「ひっ」


一人の子が悲鳴をあげます。

うん、だってとても怖いです。


「女性は特に魔物と相対して、安易に死ねるとは思わないでください。いや、死んでもですね。ここにいる警備の、ゴブリンやオーク、コボルトはどの生き物とでも交配が可能です。つまり、女性を孕ませてそのまま自分の仲間を増やすのに、死ぬまで使われるのです。無論大人子供は関係ありません。ただ使って孕むなら良し、孕まないならずっと犯されるだけです。死んでもしばらくはずっと使われるでしょう。色んな意味で」


そう言われて、全員が沈黙します。

確かにうっすらと私もそんな話は聞いたことがありますが、ルルア先生に真剣に言われると真実なんだとハッキリわかります。


「この言葉だけで魔物の怖さを認識してくれたのならよいのですが、このダンジョンと違って外の魔物は本当に危険です。いつか将来、このダンジョンの街を巣立っていく子達もいると思います。ですから、どうか忘れないで」




その言葉を今思い出しています。


「ゲヒャヒャ!!」


目の前には街にいるゴブリン達とは同じように見えるけど、全然同じじゃないゴブリンがいました。

その小さいゴブリンは私達を見つけて棍棒をいきなり振り下ろしてきます。


「きゃっ!?」


思わず目をつぶってしまいました。


ガンッ


そんな音がして私は目を開けると、お兄様が剣で棍棒を弾いてくれていました。

ああ、カッコイイです。


「ヴィリア、怖いのは分かるが、目を瞑っちゃだめだ。そして俺ができるのは守ってやることだけ、あの魔物はヴィリアとヒイロが倒すんだ」


お兄様は私達を見いで、ゴブリンを見つめたまま油断なく言います。

倒すだけなら……。


「倒すって言うのは殺すことだ。つらいとは思うけどしっかりとどめを刺すんだ」

「えっ」

「お兄…あれゴブリン。スティーブ達の仲間……」


ヒイロの言う通りです。

あれは、ゴブリンでいつも私達を守ってくれている、スティーブ達の同族……。


「…いいや、仲間じゃない。スティーブ達はヴィリア達に、子供達に手を上げたりしない。ルルアから教えてもらっただろう? あれが魔物だ」

「魔物」

「…まもの」


あの小さいゴブリンは、お兄様の動きに驚いていましたが、何もしてこないと理解すると、お兄様を無視して私達に襲い掛かってきます。


「ふっ!!」


お兄様は間に入ってゴブリンをはじき返します。

すかさずお兄様が守ってくれました。

でも、攻撃はしてくれません。


「ヴィリア、ヒイロ。あれは二人が倒すんだ。殺すんだ。そうしないと、君達はゴブリンのおもちゃで連れていかれる。手足をもがれたりして」

「…う、うぁ」

「……」


そう言われても私達は体が動いてくれません。

怖いです。

お兄様が攻撃してくれないのが、攻撃が通用するのか、あれはスティーブの同族なのが、おもちゃにされるのが、手足をもがれるのが、痛いのが、命を奪うのが……


そして、私達がそうやって無駄な事をしていたせいで事件が起こりました。


ゴンッ


鈍い音が響きます。

お兄様が膝をついていました。

手で顔を覆っています。


下には血だまりができていました。


「お兄様!?」

「お兄!?」


ゴブリンはいつの間にか、私達を襲うことをやめて、お兄様を排除しようと、膝をついているお兄様にもう一撃入れようと棍棒をふりかぶっています。

だめ、やめて。

お兄様を殺さないで。


ガキィ!!


私はとっさにもっていた剣で棍棒を受け止めます。

必死でした。

お兄様をこれ以上傷つけはさせないと思う一心でした。


「ヒイロ!!」

「ああぁああーーー!!」

「ゲヒョ!?」


ズパン!!


ヒイロが持っていた剣がゴブリンの首を胴から切り離します。


ドサッ


そんな音がして、首が転がってこちらを見つめているようでした。


「あ、ああ、私……」

「……殺した。殺しちゃった…」


私達は二人とも放心していました。

気が付けば、お兄様は私達の頭を撫でてくれていました。


「大丈夫。よくやった。おかげで俺は助かった。だから、大丈夫」

「お、お兄様」

「……スティーブの仲間ころしちゃた」


私達は酷くか細い声でなんとか言葉を出します。


「「うわわぁあああぁああん!!!」」


そのあと大泣きした私達を大事に抱きかかえて、お兄様は外に戻ってくれました。

今日の事は学校の皆にしっかり話そう。

私達のせいでお兄様が怪我したこと、魔物は本当に怖いということ、命を奪う覚悟がいるということ……。

そして、こんなつらさをいつも抱えているお兄様の役に絶対立つということ……。

本編にしようか、落とし穴にしようか悩みました。

結局落とし穴でしたが。

ヴィリアたちが活躍するのは当分先の話ですので落とし穴ということでw


あ、勿論怪我したのは演技ですよ?

ユキって黒いよね。

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