落とし穴5掘:弱点
弱点
side:ラッツ
「いや、俺はあんまりお酒は飲めないんだよ。…違うな、飲めるけど飲みたくないだな」
その言葉に私はピーンときました。
お酒を飲ませれば、お兄さんを前後不覚にできて、欲望をさらけ出すと!!
だって、あの発言。実際はお酒飲めないけど、強がってますよアピールです!!
しかし、今この場でお酒を強要しても色々準備が足りません。
なので、今回は……。
「そうですかー、残念です。でも機会があれば一緒に飲みましょう。飲めないわけじゃないんでしょう?」
「まあな。そうだな、飲めないわけじゃないんだし、機会があれば一緒に飲むか」
よしっ!!
お兄さんに約束させましたよ!!
変に強がるから断れないですよね。
そして、私達は深夜お兄さんのをペロペロした後、宴会場に集まりました。
「なんじゃ、ラッツ。妾は正直咥えたかったのじゃが…」
「デリーユ。聞き捨てならないわね。いくら貴女でも本妻がそう言うのは先に決まってるじゃない」
「ほう、お姫様はそういう事は嫌うと思っていたのだが」
「あら、夫の喜ぶことなら苦なんて無いわ。別にペロペロは好きよ、私。ってデリーユだって元は王族でしょうに」
「ああ、言われて思い出したわ」
「はいはい、今日の報告はいいです。正直今からお兄さんのをペロペロしたくなるのでやめてください」
「ラッツの言う通り。やめてください」
「そうだよねー。僕我慢できないよ?」
現在お兄さんへのペロペロ同盟は、セラリア様、デリーユさん、私事ラッツ、ミリー、リエルで結成されています。
ああ、アスリンとフィーリア、ラビリスもいますがなにせ年少組ですからね。
深夜の会議には参加できません。というか、おねむの時間です。
エリスとトーリも知ってはいますが、こういうのはやめておくそうです。
二人は面と向かって告白されたいらしく、後日お兄さんを焚き付ける必要があります。
言い忘れていましたが、ペロペロ提案はセラリア様発です。
あの初めての会話後個人でコールで会話した時にお兄さんの欲求不満解消ということで始まりました。
セラリア様ってこう見えて気さくでいい人です。
私達妾にも普通に接してくれますしね。
と、そんな事はどうでもよいのです。
「話がずれましたね。今日集まってもらったのは、お兄さんにお酒を飲ませようと思うのです」
「「「?」」」
皆私の発言に首を傾げます。
まあ、いきなりすぎましたか。
仕方ないので、今日の出来事を皆に話していきます。
「…なるほど。それはラッツの言う通りお酒に弱いとみるべきね」
「じゃのう。そのセリフはどう見ても強がりじゃ」
「へー、ユキさんもそう言う可愛い所あるんだぁ」
「僕もそう思うよ!! 冒険者やってた時そんな強がりいう人に限ってお酒弱いんだよね」
ここは全会一致ですね。
「そこで私はお兄さんに日取りを決めてみんなでお酒を飲もうという約束を取り付けました」
「「「!!?」」」
その言葉で全員が驚いた顔になり、思考し、にやりと笑います。
「そうです。お兄さんが酔って前後不覚になれば、本音を吐くやもしれません。いえ、私達の事は好いているのですから、運が良ければそのままベットです」
「「「ゴクリ」」」
「ですが、酔っての出来事。これを可とするのは人それぞれでしょう。そこで皆さんに相談したんですよ」
そうやって皆の顔を見渡す。
「妾は問題なし!! いい加減我慢の限界じゃかのう!!」
「私も大丈夫です!! 既成事実万歳!!」
「僕も…うーん、妊娠すると警備できるかな? でも、したいんだよな~」
「なにを言っておるかリエル!! ユキが妊娠した程度で冷たくなるわけがない、むしろ喜んでくれるぞ!!」
「そうですよ!! 人数は多いほうがいいんです!! 丁度、大・中・小と選り取り見取り。さらに美乳ときました!! ユキさんの理性を吹き飛ばしますよ!!」
「だよね!! 僕も賛成!!」
これで三人はOKと。
「さて、問題はセラリア様ですが。どうでしょうか、私達が先にしてしまってもよろしいので?」
「「「あ」」」
三人は一応セラリア様が本妻だという事思い出したらしい。
「別に愛情に上下なんてつけないわよ。まあ、私もその宴会には加わるから、私がきっと一番にユキに組み敷かれるでしょうね」
「ほう」
少しイラッときましたよ。
「その挑戦受け取りましたよ?」
「ええ、その方が張り合いがあるわ」
「「「ふふふふふふ……」」」
全員が敵となった瞬間です。
まあ、宴会までは協力しますが。
そんなこんなで、宴会当日。
エリスとトーリは参加せず。
やはり乙女でした。
まあ「「うらや……な、なんでもありません」」ぎりぎりで踏みとどまってましたが。
別の意味でも、私達が明日足腰が立つか問題もありますので。
ちゃんとお兄さんが全員を相手できるように、そういうお薬も仕入れておりますとも。
いや、セラリア様が持ってただけなんですけどね。
ああ、ラビリスも参加したそうでしたが、結局アスリン達と一緒がいいらしく不参加です。
そして、なぜかナールジアさんも参加。私達がそう言う事をするのは伝えてあるので、その時には出ていくそうです。
多分ミリーが声をかけたんでしょうね。あの二人お風呂とか、お酒で意気投合してますから。
「よし、今日の参加者はあつまったな。エリス達には後日埋め合わせをしないとな」
「ええ、ですが今日は飲みましょう」
「そうだな。とりあえず、DPで色々出しといたぞ」
そういうお兄さんの前の長机には色々なお酒が並んでいます。
後ろには氷が山ほど、そして水割りようのお水とまあ凝ってますね。
おつまみは全会一致で焼き鳥一式。
「とりあえずこういう宴会では、同じ飲み物を最初に皆で飲むのが、俺の所のルールなんだが?」
「私達の大陸もそうですよ」
「そうか、なら…そうだな、恵比○ビールで乾杯するか」
「いやっほー!! 恵比○!! 恵比○!!」
「ジアよかったわね。貴女恵比○好きだもんね」
ナールジアさんとミリーはビール派でしたか。
ですが、テンション上がりすぎです。
そうやってワイワイやりながら、皆にジョッキがいきわたりました。
「さあ、ユキ貴方が音頭をとって」
「俺か? うーん、そうだな。皆のおかげでここまで来れた。ありがとう。そしてこれからもよろしくな!! これからの益々の繁栄を願って……」
「「「かんぱーーーい!!」」」
そうやって全員がまずはジョッキを一気に飲み干します。
くくく、お兄さんは一体どれだけ耐えられるのですかねぇ?
「くはーーー!! 美味しい!!」
「この一杯が溜まらない!!」
黙れ、この酒乱ども。
「あら、どうしたのデリーユ?」
「…いや、こうやって大勢と、妾の事を知っていて飲むのが何か嬉しくてな」
「大丈夫!! これからも僕達がずっと一緒だからね!!」
「……ありがとう」
デリーユさんは今までの道中大変でしたね。
「ふぅ」
気が付くとお兄さんはジョッキを空にしていました。
おや、意外ですね。
一気飲みできるとは思わなかったのですが。
まあ、畳みかければいいだけです。
「お兄さん、お兄さん。ほら御代わりですよ!!」
「…ああ。ありがとう」
ふふふふふふ、少し間がありましたね。
駄目ですよ。そんなわかりやすい反応しちゃ、押し倒したくなります。
残念ですが、理性が吹っ飛ぶまで飲んでもらうとしましょうか。
…何を間違ったのでしょうか?
「くかー」
「まだのめるぞー!! すうー」
酒乱二人はもう爆睡。
いい酒を飲み放題ですからね。
「妾はまだのめるぞー!!」
「あら、デリーユが3人にみえるわ?」
「僕は~、おっぱい小さいけど、女の子なんですよーー!!」
デリーユさん、セラリア様、リエルはもう正常ではありません。
「うっぷ……」
私は口を押えて、こみ上げるモノを何とか押しとどめます。
飲みすぎた…。
そして、目標のお兄さんは……。
「流石に御開きだな。皆楽しめたようで何よりだ」
なんでケロっとしてるんですか!?
量だって、ナールジアさんやミリーと競ってたから半端な量じゃないはずですよ!?
なのに、足取りはしっかりして、後片付けを軽くして、皆を私達の自室へ運んでいきます。
私も自分では歩けそうになかったので……情けないことに、自室のトイレに連れて行ってもらいました。
流石に逆流してるところのお世話はお断りしました。
私だって、女としての意地があるのです!!
まあ、日が明けるまでトイレと仲良くしてましたよ。
「……ああ、なんとか元に戻った」
私は吐き気が今日まで続くかなくてほっとしました。
一応仕事は休みですが、休みをトイレですごすなんて勘弁です。
まだ、朝日が完全に昇っていない時間帯。
風呂に入って、吐瀉の香りを消そうと、歩いているとき、アスリンとフィーリアがばたばたと何か声を上げながら走ってきました。
「お兄ちゃんが死んじゃう!!! うわぁあぁああん!!!」
「兄様が!! 兄様が!!」
へ?
ちょっと待ってください!? 何か大変じゃないですか?
死ぬ? お兄さんが!?
「お、落ち着いてください二人とも!? 何があったんですか!?」
泣きながら私に縋り付く二人を抱えて、お兄さんの部屋に走りながら、事情を聞く。
「お、お兄ちゃんが…沢山吐いてるの!! 苦しそう!! 死んじゃう!!」
「兄様があんなに苦しそうなは初めて見ました!! エルジュ姉様を!!」
「……いえ、それって……」
そうやってお兄さんの部屋に入ると、トイレの前でラビリスが心配そうに扉の前で座り込んでいる。
そしてトイレの中からは……。
「……やっぱ、規定以上の飲酒をするとこれだな…うっぷ……」
そんな声と吐く声が響きます。
「ねえ、ラッツ。やっぱりお酒のせい? 先ほど、なぜかユキが飛び起きて、トイレに駆け込んでこれなの」
「…多分お酒のせいかと。お兄さん聞こえますか? ちょっとアスリン達が本気で心配してるので、余裕があれば返事してほしいのですが」
そうやってトイレに声をかけると、すこしたってから返事が返ってくる。
「……ああ、その通り。多分二日酔いじゃね? 俺って酒飲んで、酔ってはいるんだろうけど、そんな時ほどしっかりしなきゃって思ってな。ほろ酔いとか悪酔いの影響は殆どでないんだ。だから、飲みすぎの境が分からなくてな…うっぷ……」
それでまた、しばらく返事が途切れます。
「……で、俺が顕著に出る酔いがこの二日酔い。これがお酒を飲みたくない理由な。殆ど酔えないのに、後日の苦しみだけはしっかり来る。寝酒とかはいいんだが……まあ、大体統計は取ってるからな……具合が悪くなるラインは分かっている…」
なんですか、そのお酒を飲めない理由は!!!
がっくりとその場で膝をついて頭を下げる。
「…ラッツ、ドンマイ」
ラビリス、その慰めはいらないです。
結局お兄さんが復帰したのは、その日の14時頃でした。
それまで、私達はお兄さんにお酒を飲ませすぎたことをアスリン達に怒られていました。
はい、申し訳ない。
この回については、自分と同じようにさせていただきました。
自分も結構飲めるんですが、酔いもほとんどないので、あまりお酒を飲むメリットを感じないのです。
ですがしっかり二日酔いだけはくるので、正直苦手です。
寝酒とかは飲むけどね。
趣味はシングルモルト系とかウィスキー、バーボン。
ビールは苦手。
自分にあった飲酒を。




