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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョン外交

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第69掘:地雷は踏み抜くもの

落とし穴4掘「夜食の定番」への数多コメントありがとうございます。

この場でコメントへの感謝とさせていただきます。

地雷は踏み抜くもの





side:ユキ



正直やっちまった。

何がって?


目の前の惨状がだよ。


そう、俺の目の前に広がるのは只々、屍の山。

殆どが体がバラバラか、頭が消失している。

そして、一番可哀想なのは死体すら残っていない……。


「おい、ユキ」

「あんだよ」

「止めてこい」

「俺に死ねと?」

「いや、お前以外は遺体すら残らねえからな。というかお前が原因だろうが!!」

「いやいや、原因というなら敵さんだろ?」


モーブとそんな風に話し合いしていると……。


「うわあっぁあああん!!!」


「「「GOAAAAAAA!!!!」」」


アスリンの泣き声で配下の魔物が能力値UP、敵をちりも残さず食い荒らしている。

もうこえーっす。


「兄様を馬鹿に…するな!!!」


ボッ!!


フィーリアが怒りに任せて、戦闘用の槌を振るうと敵さんの頭部を兜ごと粉砕する。

グロイっす。


「……楽に死ねると思わないで」


ヒュンヒュン!!


ラビリスは以前貰った刀を絶妙に扱い、わざと即死しない程度に敵をバラバラにしている。

もう、鬼ですか?


「頼むから、止めてくれ」

「…へいへい」


まあ、いい加減にしないと敵本隊中央まで食らいつきそうだしな。

やれやれ、最初の対応しくじったな。

そう思いながら、この戦闘の発端を思い出す。



「さて、敵左翼が接近してる。自軍の中央、左翼も真正面からぶつかるつもりだな。まじかよ。この人数差で防戦じゃなくて、真っ向から削り取るつもりか。まったく、セラリアの奴」


セラリアの通信のあと頭を抱えていた。

幾らこちらの戦力が圧倒しているといっても、わざわざ危険を冒して正面から挑むか。

いや、向こうにぐうの音もださせないつもりなのはわかる。

しかし、これではこちら側にも絶対被害がでる。


まだセラリアの部隊はいい。

軍人として、連携を取るのは忘れてないだろうから、単独での突出はしないだろう。

問題はエリス達か、誰かが突っ込んで囲まれたりしないだろうな。

…何事も経験だとは思うが、もうちょっとエリス達には指揮官経験を積ませるべきだったかな…。


「どうする? 中央や左翼と同じで突っ込むか? 俺は別にどうでもいいが」

「いや、とりあえず、あえて降伏勧告してみる」

「……相手をおちょくる気か? 普通ならこの人数で相手は負けるとは思わないぞ?」

「まあ、相手の対応を見るのもあるが、時間を引き延ばせば、中央と左翼が相手を叩き潰す。それを見れば俺達の実力も分かるだろう? 下手に全軍ぶつかる必要はないんだよ。こっちはアスリンやフィーリアもいるんだから」

「なるほどな。俺達が相手に馬鹿にされるならされるで、いいわけだ」

「その通り、俺達。そうだな、モーブとライヤと俺で敵に降伏勧告にいこう。ラビリスとカースはすまないが、アスリンとフィーリアを頼む」

「わかったわ」

「了解した」


そうやって俺達3人だけが、敵左翼に接近する。


「指揮官殿と話がしたい!!」


そう声を張り上げる。


「なんだ? 降伏なら受け入れるぞ? それ以外は其方と話す事はない」


敵の中からまあ無駄に豪華な鎧を着た男が現れる。

いらねーだろあの装飾。


「降伏に関してだ。こちらとしては、いきなり私達が降伏するわけにはいかない。すまないが、我が軍の中央と左翼が壊滅した場合、そちらに降伏しようと思う。それまで、にらみ合いを続けてはもらえないか?」

「このまま我らが貴様らを叩き潰してもよいのだが?」

「それを選ばれるのならば仕方ない。我らも応戦するまで。見ての通りゴブリンとスライム、オークだが、一匹はブラッドミノタウロスだ。それなりの損害が出ることを覚悟してほしい」

「……なるほど。待てばブラッドミノタウロスと交戦せずに済むというのだな」


まあ、ある意味合ってるんだけど。

ミノちゃんはこの中じゃ中間ぐらいの戦力ですよ?

だって、アスリンの護衛はスライムのスラきちさん。

フィーリアの護衛はゴブリンのスティーブ。

現在二匹ともあれから訓練を重ねて共にレベル105。

アスリン、フィーリアに至っては全員からの過保護意見でレベル150超え。

エリス達が平均110程度。そして配下の魔物の平均が80程。志願兵はそのおかげで平均40と低め。

変わって、敵軍の主力はレベルが25前後。高くて50ちょい。

武装も一兵士は一兵士らしい装備。

こっちの武装は、妖精族のエンチャント武装で全員にいきわたっている。

ナールジアさんは「丁度いいので性能確かめてくださいな」と合金で作った鎧の実践テストができて喜んでいた。

まあ、ラビリスが持っているあの刀をわずか一日で仕上げてしまう能力だ。120人分の装備一式など2週間もあれば簡単にそろえられるだろう。


そんな感じで、あんたの損害で出ない考えは間違っていない。

全体の戦力評価は間違ってるけどな。

ああ、武装に関しては妖精族の一品ってわからないように、みすぼらしい風にしてある。

わざわざ、私達は特注の装備ですよーって宣言する理由はねーからな。

この意見はナールジアさんは少し不満らしかった「理由は聞けば納得できますが…。式典用とかでしっかり装飾の入ったの作っていいですよね?」とか立派な鎧を作りたいみたいだった。

あれだろうな、職人の意地って奴かね?


さて、相手さんは考え込んでるな。

もうひと押しかね?


「返答を聞きたい!! このまま戦うのか、それとも睨みあいを続けるのか!!」

「……よかろう。そちらの提案を呑もうではないか。しかし、私達が何もしていないと思われるのも面白くない。ここでこのまま舌戦という形を取りたい」

「我らを説得していたという事ですか?」

「その通り。それならば、我らの功が認められるだろう。ただの睨みあいで他方が決着して、そちらがこちらに降るより、私が説得したということの方が好ましい」


ま、そりゃそうだろうな。

向こうは自分達が負けるとは全く思ってないだろうからな。

まあ千対百の試合ですからな。

相手の総兵力は約5千。

こっちは総兵力約350程。

普通なら勝負にもならない。普通ならな。


「しかし、意外だな。貴様がユキか?」

「そうだが? 何か?」

「いや、貴様の弟は手が付けられないほどの猛者だというのに、貴様は兄の癖に戦いもせず、勝敗が決着するまで待って、そのあと降伏とは全く情けないものだ。いや、ある意味貴様が弟を言い含めてくれて助かった。あの猛者をこの戦場に送ればそれなりの善戦は出来ただろうに。わざわざ、アルシュテールの護衛に送るとはな」


相手さんは俺がバカな事をしたように見えて笑いながら言ってくる。


「アルシュテールを守れば交渉が上手くいくと思ったのか? 残念だったな、アレはこのダンジョンの攻略が済めばすぐに引きずり降ろされる。まったく、セラリアの脅しに屈しおって。そんなもの適当に魔王に責任を擦り付ければいいことよ。馬鹿な事をしたな、このダンジョンと大聖堂をつなぐとは…」

「どういう意味だ?」

「解らんか? やはり弟は凄腕だが、お前は馬鹿なようだな!! 簡単だ、我らが攻めてダンジョンを落とせば、どこにも情報は漏れない!! 普通なら遠征しなければいけないのだが、わざわざつないでくれて助かったぞ!!」

「こちらがロシュールにすでに連絡を取っているとは思わないのか?」

「ありえんな!! ちゃんと連絡が行っているならなぜ、わざわざセラリアが出てくる!! 使者を送ってつなぐのが普通であろう。しかも、この少人数での我らとの戦。独断だろう? あの戦馬鹿の姫のことだ、上手くいった時の名誉に目が眩んだのだろうさ」


うおー、すげー、筋が通ってる。

なるほど、反対派はそれを理由にこちらに進軍してきたんだな。

ま、連絡を取らなかったのは、ルルアの扱いの為。

少人数なのは…これで十分と判断したから。

いや、多くできるんですけどね?

ここ最近住人が増えて、DPがっぽりですから。

正直ブラッドミノタウロスを千体呼んでも大丈夫。

ランク落とすならゴブリン、スライムなら一万体は余裕。

ま、無駄なんでそんな事しないけど。

そんな呼んだ暁には、生き残った奴らの住処とか小ダンジョンへの職業斡旋しないといけないじゃん。


「しかし、貴様もつくづく馬鹿で、愚かだな。周りには冒険者を数人雇うだけ。後方にはブラットミノタウロス以外はゴブリン、スライム、少し強くてオークか。そんな戦力でよくよく挑む気になったものだ」


更に相手はこちらの戦力を確かめて笑う。

そして、ある一点で目が留まる。


「しかもだ、こんな戦場に幼子まで連れてきてからに。まあ、見た目は可愛らしいな。将来は食えばさぞ美味かろう」


……うへぇ、ロリコンですか。

そう感想を漏らしていると、後方から変な気配がして振り返ると……。

配下の魔物が赤いオーラ? で覆われていた。


「…な」

「…です」


ん、なんか、アスリンとフィーリアが言ってるな?


「お兄ちゃんを…!!」

「兄様を…!!」


俺? 俺が何?


「「馬鹿にするなぁぁあぁぁあぁあああ!!」」


二人の泣き声の様な叫びに、魔物達が呼応して雄叫びをあげて突っ込んでくる。


「ちょっ!?」

「はっ!! やはり、油断させてこちらを叩く気だな!! だが甘い!! そんなのはお見通しよ!! 弓隊構え!! 盾隊敵は少ない、しっかり防いでみせろ!!」


「「応!!」」


敵がしっかりと指揮官に答える。

しかし、現実は甘くない。

まず盾隊が一気に吹き飛ぶ。


「「「ぴきっーーーー!!(アスリンとフィーリアを泣かすなんていい度胸じゃねえか!!)」」」


スライム隊の一斉砲丸タックル。

ステータスにモノを言わせた、攻撃力と素早さを合わせたおっかない一撃である。

スラきちに色々個人技教えてたら、周りにも教えてたらしい。


「なっ!? 馬鹿な!! 弓隊放て!!」


それなりに優秀な指揮官ではあるらしい、この不可思議な状態でも指示できるのは凄いとおもうよ。

そして、指示通りに弓隊は俺の頭を通り越して、まだ動き始めたばかりの右翼本体に矢の雨が降り注ぐはずだった…。


「あ、ありえん」


降り注ぐはずの矢の雨は、空中で何かにぶつかったように、失速してぽとぽとと地面に落ちていく。


「「「ぴきっーーーー!!(矢で嬢ちゃん達を狙うたぁ、腐ってるな!!)」」」


そう、空中に自分の体を広げて、飛び道具対策をしているスライム部隊がいる。

この部隊は全軍に均等にいるので、弓矢の応戦になってもこちらの被害は殆ど無くす事が出来る。

あ、スライムのボディは魔力に応じて増減ができるみたいらしい。

スラきちさんは、基本あのボディが気に入ってるのであのままだが、魔力量からすれば、大体訓練棟ぐらいの大きさになれるのまでは確認した。

だから、防衛スライムはそんなに数が多くなくても防衛できる。

無論、飛道具どころか、そのスライムの防衛を突破することも厳しいだろうな。


「ああぁぁぁぁぁあああ!!」


ボッ!!


「は? あ、あぎゃぁあぁああ!!」


目の前の敵さんが乗っている馬ごと足が吹き飛んだ。

気が付けば、戦闘用の超重量槌を振りぬいているフィーリアが俺の目の前にいた。

そして、そのまま敵の中へ駆け出してく。


「お、おい!! フィーリア!!」

「ゴブ!! (こっちは任せといてくださいっす!!)」

「いや、止めろよ!!」

「ごふー。(あ、それは無理っす。泣く子には勝てねえっす)」


そうやってスティーブ率いるゴブリン隊がフィーリアを守るように敵を粉砕していく。

フィーリアも槌を振るって、主に敵の頭を消失させている。

敵は殆ど対応できていない、最初にとびこんだスライム隊が暴れに暴れているようだ。


「あ、足が!! 私の足があぁああぁあぁぁ!!」


あ、生きてたのね?

もうどうでもよくなってたわ。


「……あら? 足だけでは足りないかしら?」


ヒュン。


そんな音がすると、叫んでた指揮官の両腕がまずは肘から先が落ちる。


「ぎゃぁあぁぁああ!! 腕がっ!?」

「…少し残しておいたのが不満なのね? 全部切り落としてあげるわ」


それから完全に肩から腕が切断される。


「……そのまま死ぬまで苦しみなさいな」


ラビリスはそのまま刀を納刀しないで、敵がいる方向に足を進める。

そして、次々に敵の手足が吹き飛んでいく。


「…苦しみなさい!! 私達の大事なものを侮辱したのだから!!」


ラビリスにしては珍しい程大きな声がこちらまで届く。



これが、この地獄の始まりである。

現状報告、敵左翼、文字通り全滅。生き残り無し。

というか、俺はもう焦ってる。


「アスリン大丈夫だから!! 俺はあんな事言われても気にしないから!!」

「ダメでずぅぅ!! お兄ちゃんを馬鹿にする人は悪い人なんです!! うわぁああぁあん!!」


まず止めに入らないといけないのは、魔物の戦意を異常に高めているアスリン。


「いや、ほら。俺だって学校でもみんなから馬鹿にされてるよ? 変な人だーってさ?」

「違うんですぅ!! みんな本気でいってないでずぅ!! でもあの人たちはお兄ちゃんを本気で馬鹿にじでだんでずぅ!! ゆるぜない!! ひっく、えぐっ!!」


「「「GOAAAAAA!!!!」」」


アスリンが泣くたびに魔物の雄叫びが上がる。


『ちょっと、お兄さん!? なにが起こってるんですか!? 魔物たちがいう事聞かないんですけど!!』


ラッツから、あわてた様子で連絡が届く。


『中央もユキの方から、フィーリアやラビリスを筆頭に魔物がなだれ込んできて蹂躙しているわ。何があったの!? まさか、アスリンが!!』

『ちょ!! お兄さん、アスリンは無事なんですか!?』

「落ち着けアスリンは無事だどこも怪我がない。でもちょっと驚いて泣いてしまった。それで魔物の気が高ぶってる。降伏した相手はなるべく戦場から遠ざけろ!! アスリンを宥めるまで、降伏してる状態なんかきにしないぞ!!」

『……なるほど。フィーリアやラビリスも激昂しているから、ユキが馬鹿にでもされたのかしら?』

「セラリアお姉ぢゃん。お兄ちゃんが、馬鹿にされたんでずぅ!! 無能だって!! 何も考えてないって!! ゆるぜないですぅ!! お兄ちゃんば馬鹿じゃないです、私達を助けてぐれだんでず!! 優しいんでず!! お腹いっぱい、皆が笑ってくれるように頑張ってるお兄ちゃんが馬鹿で愚かじゃないんでずぅぅ!!」


無線の声が聞こえてたのか、アスリンがセラリアに向かってそう答える。

もうしゃくりあげて、顔はくしゃくしゃ。

どう宥めたものか……。


『……ユキはしっかりアスリンを宥めてなさい。私達も敵を殲滅する!! もう降伏も認めない!! 相手はこちらの思想を笑う愚か者であった!! もう慈悲などいらない!! …人の旦那を馬鹿にするとはいい度胸じゃない!!』

『こちらエリス、了解しました。これ以降の降伏は認めず敵を殲滅します!!』

『あの普段穏やかな、アスリンがこれだけ泣くって事はよほどの事を言ったんでしょうね。…ああ、想像しただけで頭に来ますね。…手加減なんてしません』

『アスリンを泣かせるなんて!! 僕は許さないよ!!』

『あ、まちなさい!! さっきから突出するなって!! ええい、今度は魔物の部下はいないのに!! 私はリエルを追いかけるわ!!』

『…ミリー私も行くわ』

『私もです!!』


ああ、全員殲滅体制にはいったよ。



結局、アスリンが落ち着いたのは敵本隊中央が落ちるとほぼ同時だった。

やべー、大規模戦闘じゃ一番危ないのアスリンか。

魔物が俺のいう事も聞かなくなったしな。

ま、味方への攻撃はないみたいだから、上手く使えば便利なのかもな。

でも、全員アスリンを泣かせるのは反対するだろうな……。

アスリンは泣かせちゃいけません。

それがよくわかる場面でしたw

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