第64掘:失くしたモノの為に
祝い!!
P500万!! ユニーク60万!!
二か月でここまできたぜぇ!!
失くしたモノの為に
side:エルジュ
私は会議に参加しています。
勿論、変装をした状態ですが。
クラックさんの話は聞きました。
結局この争乱の根底にあったのは、誰かを救いたいという願い。
それが、きっと未来につながると信じた人達が、今を変えようとした。
今、会議を真剣に聞いているクラックさん、デストさん、彼等には力強い意志を感じます。
昔のただ流されていた私では、どうしようもなかったでしょう。
彼等に言いたいことは沢山あります。命も沢山失われました。
それでも、今やらなくてはいけないのは、復讐に身を焦がすのではなく。
救える命を救う事。
ここなら、クラックさんが言った人々を救える。
ちょっと人数が多いので、今の人達の教育と、建物の増やさないといけないですが、やれない事じゃない。
「いやー、お兄さんが直接出向いたのは何か目的があると思いましたが、なるほど。合法的に人を集めるつもりでしたか」
「別に合法もクソもないけどな。どこの国…いや街にも住むところの無いやつなんて、ごまんといる。ゴロツキなんかはごめんだが、必ず、働きたくても働けないって言うのが沢山いる。そう言うのを勧誘するだけだ。まあ、これは選別が大変だから、俺自ら行ったわけだが、丁度良く、支援もしてくれそうな人がいたんでお願いしてみたわけだ」
「お願いですか~? へぇ~」
ラッツさん信じてないですね。
まあ、私もお願いしたなんて、ユキさんの発言は信じてません。
だって、こっちに来たのが、現リテアの聖女、アルシュテール様。
なにをどうお願いすれば、国のトップがわざわざこちらにきて会議するのですか。
「まあ、ラッツそこは一旦置いておきましょう。問題は、今回一万規模の移住者が来るということです」
「そうよ。355人の処理でもてんてこ舞いだったのに、一万人とか、死ぬわよ」
そうです。
私も変装が可能になって、ロシュール国からの移住者の身分証発行や、戸籍管理などを手伝いましたが、とんでもない忙しさでした。
それが一万人。
とてもではありませんが、私達で裁ききれる量ではありません。
「そこについては理解しております。ですので、2・3か月の間に徐々に受け入れて、完了していただきたい。その間、アルシュテール様が先ほど難民に対しての措置を取るとの事。国民を養えない愚か者が、他所に押し付けるのです。2・3か月の間ぐらい持たせられるでしょう」
クラックさんはこちらの状況を理解して、アルシュテール様の援助の元、今回の移住を分けてすることで、成功させると言っています。
なるほど、一度に一万人を受け入れる必要はないですね。
徐々にこちらに来てもらって、先に来た人たちには、今度は案内をつとめてもらって私達の負担を減らせばいいのです。
でも、少しアルシュテール様への言い方がきつくありませんか?
気持ちは分からなくもないですが…。
「……クラックからの援助の件ですが。ルルア様を救ってくださり、なおかつ、我が国民も助けていただけると、その証拠もこの目で見せてもらいました。私は援助を惜しみません。どうか、私達の手から零れ落ちる人々をお願いいたします」
アルシュテール様は深々と頭を下げる。
ルルア様の言う通り、真っ直ぐな方です。
「アルシュテール様の援助の確約。確かにこちら側としてはうれしいですが、上層部にどう説明するおつもりですかね? ダンジョンの街に難民を移動しますって言うんですか? それこそリテアが内乱で真っ二つになりますよ? 聖女様が乱心したーって。まあ、ここを見せるという手もありますがね、あまり妙手ではないです。こっちの足元見てきて、介入されても困るんですよ。今の所、こちら側はリテアの国民を横から掻っ攫うわけですから。たとえ養えていなくても。国としての面子もありますからね、自分たちが養えないから他所にお任せしまーす。なんて、言うわけないですよ?」
確かに……ラッツさんの言う通りです。
同盟という立場をとってダンジョンへ要らぬ介入をしてくる輩が必ずいるはずです。
「かと言って、アルシュテール様とクラックさん達が勝手にやってもいけません。まあ、国庫つかって難民援助とダンジョンの支援するんですから、勝手にやるわけにはいきませんけどね」
「ラッツさん、よろしいですか?」
「おや、ルルア様なにか妙案でも?」
「はい、こちらは一応、ユキさんともお話したのですが、私が命を救われた恩返し…いえ、正確にいえばアルシュテール様の政敵になるつもりがないという名目で、私をダンジョンへ駐留させるのです」
「ほぉ。それはいい案ですね。今のルルア様は真相はともかく妖精族との交渉権も握っています。今のリテアでは相当なお立場という認識で間違いはありませんか?」
「はい、ルルア様は事後処理が終わり次第、宰相の座についてもらおうと思っておりました。しかし、ルルア様はそのようなお考えだったとは……でしたら、支援代表としてダンジョンへのリテア代表ということにいたしましょう。そうすれば、反対派など文句はいえなくなるでしょう。というか、その妖精族もここにお住まいの様子ですし」
なるほど、ルルア様が代表としてくるわけですから、下手な事はまず起こらないでしょう。
「ということは、このダンジョンを公に公表するということになるのですね?」
エリスさんは確認を取るように聞いてくる。
「はい、リテアとしては、援助や支援をする相手を正体不明で通すには無理があります。国民への公表はかなり後になるでしょうが、上層部ではすぐにでも公開されるでしょう」
「アルシュテール。公表するのは構わないわ。でも、ここは私の領地。そして自治権すら認められている。馬鹿な貴族がこのダンジョンで騒ぎ起こしたら即刻首を刎ねるわ。文句は言わせないわよ。というか、貴族へ特に厳命させなさい」
「は、はひ!!」
アルシュテール様が声を裏返して返事をする。
ちぃ姉さま、本気で睨んでます。
「貴方達も見たでしょう。ここは私が治めているわけではないわ。ここに住む人すべてが、ここの代表であり、ここの意思。私達は代表として一応前面にでてるけど、彼等を蔑ろにしているわけではないわ。覚えておきなさい、ここに住む住人が、貴女の所の貴族に被害を受けてみなさい、ぶっ殺す」
「ま、そんな事しても結局は、騒ぎが起こるだろうがな」
ユキさんがのんびり答えます。
「そ、そんな事はありません!!」
アルシュテール様は反論しますが……。
「いや、私もユキ…殿の意見に賛成だ。ここを見て、多少権力があるなら、それにかこつけてちょっかいを出してくる馬鹿貴族は沢山いるだろう」
クラックさんは、問題が起こるのはあたりまえという風に言っています。
「そこでだ、解決案があるが聞くか?」
ユキさんが面白そうな顔をして言います。
これは、きっとよくない事を考えています……。
「あるのですか!? ぜひお願いいたします!! このままでは、セラリア様が斬って斬って同盟が……」
「あら、自分の部下の手綱も上手く扱えない国とは、同盟しても無駄ではないかしら?」
ちぃ姉さま、遠慮なさすぎます……。
「セラリア様落ち着いてくださいませ!! この同盟は、前よりもより強固で、尚且つ、失うわけにはいかないのです!!」
「……何を言っているのかしら?」
「この同盟はセラリア様の妹君、エルジュ様のご無念を晴らす為のもの!! 間違っても……」
アルシュテール様がそう続けようとすると……。
「それ以上口をひらくなぁあぁぁぁぁああぁ!!!!」
ちぃ姉さまが爆発した。
剣も抜き放って、アルシュテール様に向けている。
「な、なにか…間違った事でも……」
「黙れ。最初からの同盟の事かと思えば、魔王討伐の為にできた今回の同盟の件を押してくるとはね」
ちぃ姉さまは本気で怒ってます。
「アルシュテール。貴女が私に取れる行動は一つよ。跪いて許しを請え。そうでなければこの場で首を飛ばす。クラックよりも醜悪だわ」
「意味がわ…」
遠慮なく、ちぃ姉さまは剣を振りぬきました。
「まあまあ、落ち着けセラリア。その件が俺の言った案なんだから」
アルシュテール様の首を落とすはずだった剣は、ユキさんの行動によって止められたようです。
私には何をしたのか、まったくわかりません。
「……はぁっ!! 意味が分かったわ。でも流石にこれは後でユキに支払ってもらうわよ」
「お手柔らかに。さて、アルシュテール。君は何で、エルジュは魔王に殺されたと思ってるんだい? 知ってるよな? 真実を?」
「!?」
「そうそう、それって、こっちが用意した落としどころなんだわ。一々戦争起こして国力減らすわけにはいかないからな」
「まさか…セラリア様は……」
「知ってるぞ、リテアがエルジュを暗殺したってな」
「……」
「セラリアが怒った理由は分かるよな?」
「……セラリア様。今回の件は、本当に申し訳ございませんでした」
その場で深々と頭を下げるアルシュテール様。
ああ、私は実際生きているので、いまいちピンときませんが、ちぃ姉さまからすれば、のうのうと嘘をつくアルシュテール様はとても許しがたいものがあったのでしょう。
「…アルシュテール。よく上層部に伝えておきなさい。エルジュの件はこちらはすべて把握している。こちらに貴族なんぞきたらつい、首を切り落としそうだわ。なにせ、妹がそっちの騒動に巻き込まれたんだから」
「……はい。皆に伝えておきます。しかし、これではルルア様は…」
「はい、私は人質の役も担っております。そして援助や支援の件は、賠償という形でもあるのです」
「この事を公表すれば、リテアはたちまち、辺りは敵だらけでしょうね。その時はロシュールが率先して攻めてあげるわ。と、これがユキがいった上層部を上手く黙らせる作戦よ。エルジュの件をこっちが知っているなら、来たくなんかないでしょうから、いつ命が無くなるかわからないものね?」
そう言って、ちぃ姉さまは抜き放ったままの剣を撫でます。
「さて、大まかな方針は固まったわね。一旦休憩を入れたあと再開しましょう」
ちぃ姉さまはそう言って剣を鞘に入れ、会議室を出ようとします。
「セラリア様。一つお聞きしたいことが」
クラックさんがちぃ姉さまに声をかけます。
「何かしら?」
「先ほどの激昂とても納得できます。しかし、私にはなぜその剣を向けないのですか? 私こそ、貴女の妹君を奪ったといっても過言ではないのに。ユキ殿から聞いているのでしょう?」
「…クラック。私も一介の騎士なのよ」
「はっ、存じております。ヴァルキュリアの職に就かれる戦女神と」
「そうよ。…私は自分の剣で斬り捨てた者達に、先を、未来を作ることで、その死が無駄でなかったと証明できると思うの」
「私も同じ思いであります。せめてよき未来の為にと数多斬り捨ててきました」
「だからよ、貴方はその罪から逃げようとはしなかった。数多の人の死に、エルジュの死に、意味を持たせる為に、そして貴方は未来を掴む為にここにいる。違うかしら?」
「はい」
「なら、斬り捨てる意味なんてないわ。ここに争う為に来たわけでもなし、失った命の為にここに来たのなら、私に見せなさい。貴方が望んだ未来を、エルジュの死がここに繋がったのだと」
ちぃ姉さまはそう言うと、そのまま歩きさっていきます。
クラックさんは見事なリテア式の最敬礼をしていました。
「あのー、私生きてるんですけど…」
「まあ、あきらめてくださいな。今いったらぶち壊しですよ?」
ラッツさんが肩を叩いてきます。
……しくしく。
はーい、セラリア様大激怒と、その信念。
まあ、エルジュ生きてますけどね!!
明日は執筆休む。
理由は「ガンダムサイドストーリズ」をせねばならんのだ!!




