表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョン出張

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/2218

第62掘:空気は読まない

空気は読まない





side:モーブ



世の中、理不尽ってのは沢山あるんだ。

その中でも極めつけは、目の前にいるこいつ。


「あー、はいはい。発言いいですかね?」


そうやって、アルシュテール…現在の聖女の執務室に、殴り込みをかけている強硬派にユキが言っている。



今現在、強硬派はほぼ壊滅している。


ユキの所でつかまえた、リテア兵士の自白(穏やかな表現)をしてもらい、今回のルルア暗殺をけしかけた、輩の割り出しを、ルルアを経由して、すでにアルシュテールが早馬で調べていたらしい。

そして、あっさり、証拠が見つかり、なおかつ、ルルアが生存して暗殺されそうになったと供述。


コヴィル、もとい妖精族と今後、親交を結ぶ約束という大手柄も一緒に抱えてやってきた、ルルアに手出ししようとする輩はいなかった。

ルルアに手を出すと、妖精族との関係悪化に即座につながるからな。

利益に目ざとい、貴族の輩はあっさり、ルルアに寝返ったってわけだ。


で、現在生き残りの強硬派が最後の望みをかけて、聖女二人を亡き者にしようと、殴り込みをかけてきたわけだ。

そして、なぜ今回の事を起こしたのか、理由を言ってくれた。


「貴女方の政策では、この聖国の国民も救えないではないですか!! むしろ、知っているのですか!? 今日、この日の食べ物もない子供が沢山いることを!! お金が無くて、家族が死んでいくのをただ見守るしかないことを!! 今の信仰は大事なものを救えない、そんなモノはいらないんです!! 何がこの大陸の最大都市ですか!! 飢えている人が1万人もいて、養えないのに人だけ集めて、信仰などと言って金をむしり取るだけ!! なんのために、彼等が寄付をしているかわかりませんか!? あんた達の食事を豪華にする為じゃない!! 贅沢をさせる為じゃない!!」


目の前の青年がそう叫ぶ。

まあ、お前の言う通りだとは思うけどな…。

それでも、巻き込まれた俺達はたまったもんじゃねえよ。


「……貴方のいい分はわかりました。しかし、エルジュ様を暗殺し、ルルア様を暗殺しようとして、国の問題においては、ロシュールとガルツがほぼ戦争状態へ、今は沈静化していますが、一体幾百、幾千、幾万の血が流れたと思っているのですか?」

「……それは理解している。しかし、貴方達が今後ずっとこんな政策をしてるよりましだ。俺達がここで争いを起こし、リテアを握れば、リテアだけでなく、他の国で失われる命も救える。」

「つまり、私達のやり方は争いを起こす事より、命を奪っていると?」

「その通りだ!! 今のままでは…いや今もきっとこの城下で飢えて死んでいる子供がたくさんいる。知ってるか? 配給に出される食べ物ってほとんど出回ってないって? どこかのバカ野郎が、自分の懐にため込んでる。自分の国の自浄さえできないんだ、もういらないだろ、そんな国のトップは?」


ああ、こいつ…。


「わかるか? 明日食いつなぐために、必死で駈けずり回って、知らない男に腰振って、子供まで孕んで、それでも俺を大事に育ててくれた姉貴は、寄付が少ないからって、そのまま子供と衰弱死だよ!! 姉貴泣いてたんだよ!! 自分の子供も助けられないって!! 俺も必死に駈けずり回ったけど、餓鬼でさ、何も仕事もらえないんだよ!!」


……何処にでもある。一つのお話だ。

それで、こいつは必死に頑張ってきたわけだ。

聖女の二人はその話に、目を丸々させて驚いてる。

そりゃ、温室育ちだからな。


「姉貴と姉貴の子供の亡骸に縋り付いて泣いてるとさ、俺と同じような境遇の奴らが集まって、手厚く葬ってくれたよ。ああ、あんた達のいう立派な葬儀じゃない。でもな、俺からすれば、それよりも立派な葬儀だったよ。でもな、そんな気のいい、優しい連中も日を数える度、少なくなっていくんだ。わかるか? 食い物がナインダヨ」

「……」

「黙るなよ!! お前等はその時何をしてた!! のうのうと自分の才能磨いて、研鑽積んでましたなんていうなよ!! こっちは、分ける食べ物すらなかったんだ!! ふざけるんじゃねぇ!! いまさら、謝罪や改善なんていらねえ!! その首落として、皆の墓前に添えてやる。そして、俺が、俺達が本当に皆の為の国を作ってやる!! じゃないと、なんで姉貴が、皆が、死んだか意味わからねぇ……俺だけ生き残っちまった」


もう、止まれねえな。

俺は、一歩前に進み出る。


「お前の境遇には同情する。が、俺もお前のせいで家族を亡くした身だ。後ろの嬢ちゃん達はわからねーが、俺がお前を殺そうとするのはいいよな?」

「…ああ。でも、俺もここで死ぬわけにはいかねー。やらなきゃいけねーことがあるんだ。これから沢山。あんたの墓はそいつ等と違ってちゃんと建ててやる」


お互い剣を引く抜き、構える。

なるほど、こりゃスゲー。

なんとなくだが、こいつ俺より強いぞ。

必死に、死にもの狂いにここまで来たんだろうな。

でもな、俺にも引けない理由がある。


お互い、隙を見計らって……


「あー、はいはい。発言いいですかね?」


ずっこけた。

こ、この野郎。

この空気でなんでそんな軽いノリなんだ!?


「つまりだ。今このリテアにいる難民を救えれば、ここで争うことはないってことだよな?」


いや、それが無理だから、こうやってな……。


「そんな事は不可能だ。ここでそこの聖女達が呼びかけても、精々もって2・3か月が限度だ。それぐらいの、貯えしかこの国庫にはない。俺達…いや私達が欲しいのは、安全に飢えることの無い、幸せな国なんだ。それは理想とはわかっている。しかし、現状よりは上手くやってみせる」


あ、なんか真面目に返答している。

やめとけ、ユキと話すと無茶苦茶になるぞ。

そこのアルシュテールは意味わからんって顔してるけど、ルルアに至っては気絶寸前だぞ。

ライヤやカースは窓眺めて現実逃避してやがる。

うわー、剣構えてる手が震えてきてるんですけど?


「お前、名前は?」

「小僧にお前呼ばわりか、まあいい。私はクラックだ。そして横の相方がデストだ」


殴りこんできて、微動だにしなかった男がその時初めて軽く頭を下げる。


「そうか、お前等が俺の下につくなら、とりあえず、今言った問題は、時間はかかるが、お前らがするよりも、聖女様達がするよりも手早くかたづけられるぞ?」


うわ、いやーな予感がしてきやがった。


「どういう事だ? そんな事はさっきも言ったが不可能だ」

「いやー、それが聞いてくださいよお兄さん。最近好景気でしてね。ちょっと、人手が欲しい所があるんですよ。ご心配なく、お兄さんが言った人数でしたら、しっかり賄えますよ。ああ、でも1・2か月は準備がいりますので、そちらの聖女様方にご協力願いたいんですが?」


そうやって、ユキがアルシュテールとルルアの嬢ちゃんを見る。


「ユ、ユキ何を馬鹿な事を、無論、先ほどの話を聞いて、民に対して何もしないわけがありません。しっかり、厳正に、彼等を手助けしていきます。しかし、ユキ。貴方の言ってる事は妄言です。第一、そんな場所があるとしても、移動するのに莫大な費用も時間もかかります。今の話では、民はそんな余力すらないでしょう」


アルシュテールはそうやって、当たり前の事を並べて異を唱える。

うん、そうだな。ユキを知らないなら誰だってそう思うよな。


「ルルアもそう思うかい?」


うわー、厭らしい顔でそんな質問するかよ。


「……あ、貴方は何処まで、お人よしなんですか?」


あ、お人よしって取るか?

ん、お人よしかこれ?

俺は馬鹿な選択だと思ったけど、あれ、これ以上ないぐらいの妙手じゃないか?

今、ロシュールからの移民もきて、毎日DPがっぽがっぽ。

次に必要なのは、街を広げる為の人手が欲しいわけだ。

でも、他所から引っ張ってこようにも、攫うわけにもいかない。

あれ、丁度いいな?

理解できるけど、なんか納得いかねー。


「ダメかい? ルルア?」

「……絶対に、あとで言う事を聞いてもらいますよ」

「あいあい」


そうやって、二人だけで会話が成立し、ルルアが一呼吸おいて告げる。


「ユキの発言は、このルルアが保障します。彼が協力してくれるのであれば、貴方が最も救いたい人々は、助けられます。今もいるのでしょう? この城下で必死に生きている仲間が」

「そうだが…信じられない。だが、嘘を言っている様にも思えん…」


そうやって、剣を下げるかどうか悩んでいると、いきなりクラックの剣が折れた。


「よし、もう面倒だから、この剣みたいになるか、俺のいう事信じてみるか、どっちか選べ。あと10秒な」

「なっ!?」


クラックは驚いているが、全く剣を動かせない。

ああ、剣は折れました。勿論ユキが折った。

でも方法が、握りつぶし。

もう、絶句だ、全員。


「8…7……」


それでも刻々とカウントダウンを始める。

容赦なさすぎだろ。

コヴィルはもうプルプル震えて、ルルアに抱き付いてる。


「5…4……」


5過ぎた時点から、建物が揺れて、クラックの鎧はヒビが入り始める。


「おい、クラックさっさと頷け!! 真面目にカウントダウン後木端微塵だぞ!!」


もう、クラックは敵ではない、救い出さなければいけない被害者になっている。


「わ、わかった!! 君のいう事を信じよう!!」


もう、主導権はクラック、聖女達どちらにもない。

それを握っているのは……。


「さて、じゃゲート作るから、ここダンジョン化するわ」


暴虐非道のダンジョンマスターだった。

やべ、胃が痛くなってきやがった。

向こう戻ったら、キャベジ○飲まなきゃ。


はい、空気は読みません。

吸って吐くものなので、ユキは自由にやりました。


不意におもった、今、オーバーラップ文庫で応募があってるが、これは異世界バトルになるのか?

まあ、ちゃんと異世界の王様や権力者と交渉バトルしてるよね!?

タグ登録だけしてみようか悩み中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ