第58掘:レベルの認識
レベルの認識
side:セラリア
「ハァ…ハァ……」
私は今、肩で息をしている。
珍しい事だ、レベル63ということ自体、人の中では高く。
しかも私は、女性の最上位戦闘職と言われているヴァルキュリア。
それなのに、目の前の彼女に、手も足も出ない。
「よい、よいぞ。セラリアと言ったな剣技は妾より上じゃろう」
目の前に立つのは、私より幼く、身長も低い、白い綺麗なドレスを着たデリーユと言った女性。
私と同じ訓練用の剣を持って、私の知らない剣術を用いている。
どこが、剣技が私の方が上よ。
ことごとく、斬撃を撃ち返された。
綺麗な青い瞳と、クリーム色の髪は、私のように汗で顔に張り付くような事もない。
完全に実力が違う。
「わからないという顔じゃな。これは妾のステータスが上なだけじゃ、純粋な剣術ではお主に劣るわ」
「魔王というのは、冗談じゃないって…こと?」
「無論、隠す必要もないからのう」
デリーユと顔を合わせたのは、このダンジョンに来てからだ。
なんと、妖精族の後にこのダンジョンに侵入したところを、ユキに捕縛されて…。
なぜか、一緒の布団で寝ていやがったので、ここまで連れてきて話を聞いて、魔王だというので手合わせをしたわけだ。
「レベルは聞いてもいいかしら? 私はレベル63のヴァルキュリアよ」
「よかろう。といっても、ユキに負けたおかげで久々に自分のステータスを見たのだがな。レベルは412じゃ」
「それは……また、とんでもないわね」
デリーユが嘘を言ってるようには見えないし、その実私の攻撃をしっかり余裕で回避している。
350も差があるのだ、細かいステータスはそれ以上の差だろう。
「よく、夫は勝てたわね……」
私はそう言いながら、こちらを観戦している、夫を見る。
「やめておけ、セラリアもユキとは話したことがあるのじゃろう?」
「ええ」
「質が違う。妾やセラリアは、良くも悪くも戦うことを念頭にしているがのう。ユキはそうならんように布石を打っておる。ユキを夫というくらいじゃ、それぐらいは理解しておろう?」
「わかっているわ。でも、デリーユ程のけた違いを相手にできるの?」
「実際、やられたしのう。そこのスライムに」
「スライム?」
デリーユが視線を横に向けると、そちらには変な形をしたスライムらしきものが、アスリンの手に収まっている。
「ぴきー」
「やわらかいねー」
「アスリン、私も抱きしめたいです!!」
うん、天使が二人いるわ。
「……ふぅ。デリーユ、最後の一撃いいかしら?」
「よかろう。全力で相手になろう」
全力で踏み込んで、全力で訓練用の剣を振るう。
デリーユはその剣を、素手で受け止め、拳を顔の前で止める。
「……完敗よ」
「よい、攻撃じゃったぞ」
「もしかして、格闘が主なの?」
「そうじゃよ。妾は拳が一番やりやすい」
そう言ってお互い腕を下げる。
「セラリアお姉ちゃんも、デリーユお姉ちゃんもすごかったよー!!」
「すごいのですー!!」
「ありがとう。アスリン」
「う、うむ」
私はアスリンを抱き上げて、撫でまわす。
ああ、癒されるわー。
デリーユも、フィーリアの頭を撫でている。
うん、魔王であっても、悪い人ではない。
だって、この天使を可愛がる人に悪い人なんていないから!!
あ、こんな小さな子に欲情するような下種は殺すわ。
「アスリン、何か欲しい物とかないかしら?」
「んー、欲しい物はみんながいるからないです。でも、なりたいものがあります」
「何になりたいの?」
「セラリアお姉ちゃんと一緒です!! お兄ちゃんのお嫁さんになるんです!! 赤ちゃん産むんです!!」
「あらあら。それはとてもいいことだわ」
「おい!!」
「なによあなた? こんな可愛らしいアスリンを、どこの馬の骨にやるわけないでしょう。まあ、アスリンがどうしてもって言うなら、私を倒すぐらいだったら考えるわ」
「そりゃ無理だ」
「ええ、でもアスリンはあなたの妻になりたいといったわ。それは素晴らしい回答ね。これで私とアスリンはずっと一緒よ!!」
「私も兄様のお嫁さんになります!!」
「まあ、フィーリアも!! これは素晴らしいわ、みんな一緒よ!!」
私は両手で二人を抱き上げて頬ずりする。
ああ、幸せ。
「なあ、そうやってるところ悪いが、ちょっと疑問に思ったことがあってな、聞いていいか?」
「なにかしら?」
「なんじゃ?」
「レベルって高いとそれに応じて強くなるよな?」
「ええ、人によって差はあれど、弱くなるなんて聞いたことはないわね」
「妾もセラリアと同じじゃな」
「でもさ、セラリアはともかく、キユもそうだが、デリーユの肌は触ってもやわらかいよな。布団で抱きつかれたときはしっかり柔らかかったし」
「なんじゃ? 妾に欲情したか? 今からベッドにでも行くか?」
「また今度な。俺が聞きたいのは、さっきセラリアの全力の攻撃を訓練用とはいえ、素手で止めたよな?」
「ああ、そうじゃが?」
「なんで、あの柔肌が受け止めて、何もないんだ?」
「それは、防御力があるからじゃろ?」
「ん~? 柔らかいって事はしっかり衝撃が入るはずなんだがな? いや固くても衝撃がはいるから、ダメージという点については強弱はあれど体力は減るんだが、減ってるか?」
「いや、へっとらんぞ?」
「「??」」
夫とデリーユが首を傾げている。
「なるほど、あなたは神の領域を知りたいのね?」
「神の領域?」
「ええ、レベルにでる数値はその人の強さを完全に数値化したもの。でも、人の防御力があがろうが柔らかさなどは変わらないわ。昔、あなたと同じように疑問を持った学者が調べたのだけど、結局は解らず仕舞い。これは人の理解の及ぶところではないということで、神の領域」
「ふーん」
「でも、回答は得られなくても、過程で分かったこともあるわ」
「なんだ?」
「途方もない差。つまりデリーユと私みたいに絶対的に数字が足りない場合は、今みたいに影響されないの。過去の伝説の英雄たちが、大人数相手に無傷で勝ったというのはそれが原因。私の国にもレベル100超えの近衛隊長がいるけど。そうね…、彼ならレベル20以下の攻撃力であれば無傷で勝利を収めることができるわ」
「20とは、また便利というべきか、それだけというべきか」
「そうね。基本、ロシュール国の兵士は20後半だから、ダメージは僅かであれど与えられるわ。それでも十分暴れられるけどね。防御だけを頼りに戦うわけでもないし」
「なるほどな。総合的に考えればもっと強いわけだ」
夫は考える様に頷いている。
ふふっ、こういう顔もいいじゃない。
これは、無理にクソ親父の意見を無視して、私がユキのお嫁になった意味があるわ。
自国の利益?
馬鹿にしないで、私は夫の妻に成る為だけに、この状況を作り出したのだから。
うーん、ちょいと、書いては執筆中に放り込んでいます。
下手すると二日に一回ペースになるかもしれないけどごめんね。
他の妄想もあるから、そっちを書くかもしれない。
そっちは、この主人公みたいに合理的に考えたりしねーよ?
いうなれば、チートよりチート。
そんな妄想を執筆中。
尚、セラリアの心の内はまた今度にw




