第242掘:情報を集めに地獄へ
明日は質問コーナーで忙しいし、気分が乗ったので今日投降。
滅多にないから、毎日投稿は期待しないでくれ。
情報を集めに地獄へ
side:ユキ
あれから色々情報を集めたが、結局エナーリア王族の方にも聖剣使いの真実は伝わっているみたいだ。
流石に詳しく調べるには国にケンカを売りかねない話だし、確定情報でもない、一国のみの情報では心もとない。
多角的な視点からの話が必要で、もっと確定させるべき情報の量が必要なわけだ。
自国だけの正義を詠えばいいわけではないしな、俺たちの場合は。
どういう問題の元、こんな行動をとって、どんな結果がでた。という経緯を知らないといけない。
俺たちの前任者がどう失敗したのかを把握していないと、自分たちが同じ轍を踏むことになりかねない。
まあ、嫁さんたちに背中からバッサリってのは、指定保護があるからまずありえないと思うけど。
そういうことで、結論としては、他所の国へ出向いてまた色々調べようという話になったわけ。
だが、現在は建前上、ミフィー王女の護衛なのだ。停戦関連が終わらない限り動きようがない。
エナーリアに来て一週間は経つが、まだ停戦云々の話はない。
というか、聖都で大騒動があったばかりだしな。
ジェシカから聞いた話では、今回の件を利用して、停戦否定派をしらみつぶしにしてるらしい。
自国の恥というか、足を引っ張られるのは勘弁だしな。
この場合、横やりを入れられる前に素早く停戦を締結やってしまうか、万難を排してから臨むかってところだよな。
いや、ミフィー王女と俺たちジルバの目の前で大失態をしてるんだから、停戦否定派を排除してまーすってアピールしないと色々問題なわけか。
完全に停戦否定派を排除するなんてのは不可能だろうし、あと数日もすれば講和条約を締結をするだろう。
「しかし、ミフィー王女はこのまま予定通りに嫁入りするとは思えないんだよな」
「なんでだい?」
俺の言葉に反応するのは、エージル。
最近の大騒動で色々後始末に追われている1人である。
悲しいかな、相方のプリズム将軍は俺たちの支援なく王様たちを守っていたらしく、その時に重傷に近い傷を負ってしまった。
俺たちが治し安静を言い渡し、王様や重鎮たちもしばらく休養するように言ったのだ。
最高戦力の1人が倒れたのだから、さっさと回復することを優先するわな。
で、このエージルがプリズムの代わりに色々働いているのだが、俺たちの接待役も受け持っている。
というか、エージル以外が不用意に近寄るのを王様が禁じたんだと。
停戦否定派がいる以上、俺たちにケンカを吹っかけてご破算にしようとする奴がいるかもしれないという可能性を考慮してだ。
しかし、俺たちにケンカを吹っかけるには国が潰れる覚悟がいる。
と言うのはあの場にいた王様や重鎮たちは理解している。
目の前で、プリズムが苦戦した魔物たちを一瞬で倒したし、プリズムの怪我も治した。
まともな思考の持ち主なら、俺たちを敵に回そうとは思わないが、あの場に居なかった人はそうではない。
そんな感じでエージルとその配下しか俺たちへの接触を許されていないのが現状だ。
と、エージルの質問に答えないとな。
「簡単だ。ほれ、今の今まで大騒動だったろ? これでミフィー王女が嫁入りして、あっさり暗殺でもされてみろ」
「ああ、停戦ぶち壊しか」
「そういうこと、一応建前上の停戦否定派を排除してるみたいだけど、完全には無理だろ?」
「そりゃねー。どこまでを停戦否定派って定義するのも難しいし」
「それでだ。停戦を結んだ上で一旦ミフィー王女にはジルバにお帰りいただいて、停戦という事実を浸透させてから、ミフィー王女を迎えに行くってのがいいだろ?」
「でもさ、それなら迎えに行った時にミフィー王女様を暗殺しちゃえば結局同じなんじゃないかい?」
「暗殺されればな。だが今回と違って急ぎじゃなくて十分に嫁入りに準備もできるし、護衛も俺たち以外にジルバのミフィー王女直属がくるわけだ。ついでに、停戦否定派を排除する時間が更に増えるわけだ」
「あー、なるほど。既に停戦は結ばれてるし、そっちは急がなくていいわけか。お互い万全に近い体制で停戦を継続できる布陣を整えるわけだ。まあ、君達以上の護衛がいるとは思えないけど。知ってるかい? この度の君達の接待にこれだけ気を使ったのは、ジルバ王からエナーリア聖王猊下に対して、君達にケンカを売ると滅びるぞ。なんて手紙が停戦締結の関連書類とは別に来てたなんて話があるぐらいだよ。実際あの時の戦闘を見れば嘘に見えないけどね」
「まさか、そこまで大きなことはできないぞ」
あんのジルバのおっさんめ、いらん事しやがって。
……ある意味助かったが、別の意味で動きが取りにくくなったわ。
霧華にエージルが言った手紙のことを調べさせる必要がでてきたな。
「と、そう言えば今回の停戦は各国に宣伝するのか?」
「そりゃするよ。そうすれば、ジルバ、エナーリアともに戦争している相手への牽制になるしね。まあ、どこも国境での小規模戦闘だろうけどさ」
「そりゃそうか。で、各国に停戦しましたーって使者でもおくるのか?」
「んーそれもあるけど、まあ策略って思われる可能性もあるしね。だから、学府への停戦書類預けと報告はするね。やましい事のある停戦でもないし、正式なものだしね」
「……学府?」
なんでそこで学校?の話が出てくるんだ?
「ん? ああ、一般の人は知らないだろうね。この大陸の中央近くに、各国の魔術の才能のある人を集めて学習させる学府、学校があるのは知ってるよね?」
「……なんかそんな話は聞いたことはある」
「ありゃ、君達もそこの出かと思ったんだけど違うのか」
「その言い方だと結構な魔術使いがいるみたいだな」
「そりゃね。1人で僕たち魔剣使いと同じことを行えて、しかも違う属性を個人で操れるっていう話だよ」
「その話が事実なら何で各国の魔術使いが来てないんだ? 各国から集まってるなら当然各国へ戻ってるんだろ?」
「戻ってるよ。魔術師隊って部隊がいるだろ?」
「火の玉を多少降らせる部隊か?」
「君達からすればそんな反応だろうね。でも、火の玉って言っても魔力だけでそれが行えるのは凄い便利なんだよ。休憩さえすればまた撃てるし、物資の補給は食料ぐらいだよ」
「ああ、そう言う意味ではすごく便利だな」
「僕がさっき言った魔剣使いと同等かそれ以上っていうのは、一握りだよ。そして、その天才って部類は総じて扱い辛い」
「どういうことだ?」
「魔剣という付属があって強くなったわけじゃない。自身の才能でその力をつけたんだ。だから、ちょっと性格に難があるんだよ」
「……そういうことか」
「全部が全部じゃないんだけど、まともな才能ある魔術使いも学府に残って、学長と共にその迷惑な天才の監視をしてるってわけだ。無論研究とかもしてるけどね」
うん、どこの世界も天才と馬鹿は紙一重らしい。
「で、なんで書類預けや報告をするのかってのは、ここが中立だからだよ。そして、ここが一番何かを保管するのに適しているんだ。ここに手を出せば、魔剣使い以上の魔術師がでてくるし、各国からも目の仇だ。まあ、そんなことで、近場の国では条約とかを結ぶときにはこの学府で行うほどさ」
「横やりが入らないからか」
「そういうこと。まあ僕たちの国はパッといける距離じゃないしね。そもそも、さっさと停戦をしないといけないし」
その裏で、ミノちゃんたちと個人的につながりを得たいんだよな、エナーリアとしては。
なるほど。だから学府っていう調停役を挟まなかったわけか。
だから、あとで報告だけを済ませるって方法を取ったんだな。
実際、エージルの言った通り距離の問題や、停戦を早急にしないといけないって言うのはあっただろうけど。
「はぁ、でもその学府への書類届けるのと報告は僕が行かないといけなんだよね~。面倒だよ」
「そりゃ大変だな。でも、戦力的にはエージルが一番だろ。間違った判断じゃないとおもうがな」
「分かってるよ。でもさ、あんな遥か昔からある、魔術使いじゃなくて師っていわれてる人たちの巣窟に僕が行くって言うのはつらいよ」
「でも、エージルにとっては興味深いんじゃないか?」
「……まあね。魔剣っていう魔力を魔術に変換する武器を使ってるからね。その魔術の師が集まるところの研究とかは見てみたいよ。ま、実際王様から勅命で半年は滞在して技術とかを盗めるなら盗んで来いって言われてるし」
「そりゃ、当然だろ」
「当然かもしれないけど、王様からの願い入れで編入って形だよ、学生で。それであの実力主義の学府で目をつけられないわけないじゃないか」
「あー、やっぱり実力主義か」
「当然だよ。魔術って才能だからね。貴族の権威を傘に着ても才能が上がるわけじゃないし、それを僕は王様の願いでいきなり入るんだよ? 多少僕自身も魔術は使えるとはいえ、きっと睨まれるよ」
「……頑張れ」
そうとしか言えない。
そんな学校への編入はイベントのフラグがびんびんだ。
どっかの物語では不遇の主人公がいたりしてな……。
とがった才能ゆえに底辺にいるとか、エージルが編入した時に合わせて隠された才能が覚醒するとかな!!
それで高飛車な才能あふれるお嬢様とか、イケメンとかのバトルを重ねて運命に立ち向かうとかな。
うん、俺は絶対傍観者を貫こう。
霧華とかでもやって、こっそり情報集めよう。
俺や嫁さんたちが行けば、どう考えても、イベントに巻き込まれる。
というか、精神年齢28ぐらいだし、今更学校なんか行きたくねーよ!!
何のために大人になってフリーライフを満喫してたと思ってるんだ!!
転生したわけでもあるまいし、あんな監獄に行く必要はないわ。
……俺がどれだけ学生時代苦労したと思っていやがる。
「って、なに言ってるんだよ? ユキたちもジルバ側の報告者で一緒にくるだろ。しかも僕と同じ編入で」
「は?」
横からエージルの唐突な言葉に頭の処理が追いつかない。
え、俺たちはイベント盛りだくさんの学府に行く?
ばっかいうなよ。
俺は既に嫁さんもいるし、美女揃いと自分でも言える。
そんな俺が学府いけば絶対面倒事に巻き込まれる。
というか、俺1人の編入としても行きたくないし、嫁さん1人でも行かせたくない。
「えーと、ジルバ側の報告者はユキたちにって手紙であったらしいよ? でも当然だろ、君達の戦力を考えれば」
「まて、ミフィー王女関連の護衛はどうするんだよ」
「いや、それはユキたち全員が学府へ行くわけじゃないし、無論別れて行動だろ?」
「……そうなるよな」
あの、ジルバのおっさん、ここで俺たちの戦力分散を狙ってやがったな。
いや、落ち着け、戦力分散というより適材適所を俺に期待したんだろう。
俺たち1人ですら抑えられないと言うのは知ってるし、情報を集めたいってのは知ってるから、これはおっさんからの恩売りか。
これで、大手を振って、学府で調べ物ができるぜって感じで。
……俺の学府という学び舎に対しての嫌悪を知らなければな。
ウィードでも学校は作ってるが、俺が生徒でもなければ一般教師でもない。
かといって、勇者を育てろとか、落ちこぼれ担当とかいうのでもない、普通の学び舎で校長だったからよかったのだ。
……くそっ、どうすればいい!?
どう考えても、フラグ満載の所へ行かなくてはいけない!!
何をどうすれば被害を減らせる。
ミフィー王女の護衛はジェシカは1番だし、戦力分散を狙ってても、ダンジョンでの移動でそんなの分散にならないからいい。
だれが、俺と一緒に学府に行くかだ。
「ねえ、大丈夫かい?」
「ん、ああ、ちょっと誰が学府に行くか考えてた」
「ああ、彼女達は全員ついてきたいだろうしね。色々大変だねユキも」
……そうだ、その問題もあった。
前に、学生服きてきゃっきゃしてたことがあったし、全員参加したがる可能性がある。
でも、魔術の学府か、カースとかルルアの講習とは違った趣があるかもしれないし、行ってみる価値はありそうだな……。
聖剣使いの動向はいつでも対応できるようにしてるし、情報は今の所手詰まり。
やべ、行かない理由が作れない。
山盛りと予想できるイベントは俺だけしか理解してないし、言ったところで理解してくれるわけがない。
どうすればいい?
イベントの地雷原である学校という場所を安全に生きるには!?
くそっ、タイキ君にでも相談してみるか。
唯一俺の知り合いで日本人だし、指定保護かけてるし、フラグの意味も分かるし!!
ああ、神様、どうか何も起こりませんように……!!
『あははは、無理に決まってるじゃない。ヒーお腹痛い!!』
畜生、俺には駄女神しかいないのか。
ということで、分かりやすい情報が集まる場所へ!!
そして、イベントの巣窟。物語の定番!!
いざ、編入!!
ユキはどうやってイベントを回避するのか!!
そして、どんなイベントが待っているのか!!
嫁さんたちは誰が、ユキの学友として編入するのか!!
登校の時間に、曲がり角でぶつかって運命の出会いとかないからな!!
学校のヒロインとかも期待するなよ!!
というわけで今更学校なんか行きたくないユキはどうなるのか!!
君達も分かるはずだ、今の学生の流行りを知らないのに、歳が10は離れている学校に入る度胸がどれだけいるか!!
普通に大変だぞ。




