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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸編 魔剣と聖剣

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276/2218

第226掘:友人

友人



side:ジェシカ



現在、話は中断して会議しているメンバーの殆どが笑っています。

恥ずかしいのですが、あの時は仕方なかったんです。

正直、新婚なのに引きはがされるイメージが強くてつい言ってしまいました。


「いいわねぇ、面白くなってきたじゃない。というか、ジェシカもすっかり染まってるわね」

「……申し訳ありません」

「いいのよ。乙女の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ねばいいし」


いや、流石に一国の姫が馬に蹴られて亡くなるのは不味いでしょう。


「で、それからどうなったのかしら? というか、よくもこんな面白い話黙ってたわね」

「面白いのは聞いている方な。当事者の俺としては、問題なく話をどう進めるか必死で考えてたんだからな」

「あー、それもそうね。って、あなたは無事だったの? 剣とか向けられなかったかしら?」

「いや、ここにいるから無事だけどな。というか、剣とか向けられてたらどうするんだよ?」

「「「え、普通にお仕置き。殺す気なら死刑」」」

「声揃えて嫁さんたちこえーよ!! なにその当然みたいな反応!! 訓練で剣とか武器普通に嫁さんたちも向けているだろうに、特にセラリア!!」

「私たちはいいのよ。夫婦でお互いを高め合うためだから。でも、それ以外はあなたへの侮辱や脅しが殆どでしょう?」

「そりゃ、剣向ける理由はそれぐらいしかないからな」

「でしょ? あなたを貶めようとか、亡き者にしようと考える人は始末しないと」


私も含めて妻の全員が頷く。

周りのモーブ殿やナールジア殿は苦笑いをしているが、当然ではないでしょうか?

夫を殺そうとする輩は始末するのは当然だと思うのですが。


「とにかくジェシカ、話の続きをしてくれ、下手な説明不足はミフィー王女の首が飛ぶぞ」

「いえ、ミフィー様の話は剣を向けても立場上仕方ないかと。セラリア様もそう思いますよね?」

「ええ、それぐらいで一々首を切っていたら大変だわ。だから、お仕置きね」

「大丈夫です。しっかり指導をしておきましたので」

「あら、そうなの?」

「はい。私が結婚したと宣言したあとなのですが……」



「いいですか、ミフィー様。いくら王族とはいえ、新婚の夫婦に手をだしていいなどと言ったふざけた法はありません」

「え、えーと、あれ?」

「聞いていますか、ミフィー様!!」

「は、はい!!」


私は結婚宣言したあと、いきなり剣を抜いたミフィー様に説教をしていた。

まったく、確かに私の結婚で驚いたのはいいとして、剣を抜くとは言語道断です。

あと、新妻を夫から引きはがすとかありえません。


「確かに私の結婚は驚いた事でしょう。しかし、私も女です。素敵な男性が現れれば惹かれます。私を慕ってくれたミフィー様には多少納得はいかないかもしれませんが、それぐらい我慢していただかなければいけません」

「……はい」

「しかもです。ユキは傭兵団のトップであり王族の末裔。それに私情で剣を抜くなど、あってはなりません。味方に剣を向け、敵を増やすおつもりですか」

「……本当にすみません」

「そして、先ほどの命令ですが、取り消しをお願いいたします。ミフィー様はご存じないかもしれませんが、ユキとその仲間たちは、魔剣使いと同等かそれ以上の力を有しています」

「え?」

「これは事実です。ですね、マーリィ様、オリーヴ様、ミスト様」


私がそう視線を向けると、3人がガクガクと激しく首を縦に振る。


「マーリィ、ジェシカを止めてくださらないかしら?」

「無理だ。ああなると、私でも止められん。正論すぎるからな、逆に口を出せば私も説教される」

「しかし、ジェシカ様が結婚されているとは……」


まったく、3人も魔剣使いがいて、ミフィー様を止められないとは嘆かわしいことです。


「落ち着いてくださいジェシカ。ミフィー様も反省しておられます。これ以上、時間を説教に費やすのはやめましょう」

「ヒヴィーア」

「そう睨まないでください。そっちにも落ち度はあるのです。結婚したのならば、文面で先に送るか、オリーヴ様に伝えていればミフィー様もここまで動揺することはなかったでしょう」

「……わかりました。私にも確かに落ち度はありました。そして、今は早急に話をまとめないといけませんでしたね」

「ええ。会議室の準備は整っています。ユキ殿たちも、この様な場所でお待たせして申し訳ない」

「いえ、特に問題はありませんでしたし。ジェシカとの結婚報告が遅れて申し訳ない」

「いえいえ、この様な戦時、そして最前線です。私たちを気遣って隠そうという気持ちはわかります。流石に新婚夫婦を最前線に送るのは気が引けますからね。ですが、隠そうとしていたと言う事は、何か打ってでるつもりだったのですか?」


流石ヒヴィーア、伊達に長く付き合ってはいませんね。


「どういうことですか?」

「ミフィー様、ジェシカが無意味に乙女を爆発させて結婚のことを隠していたと思えません。というか、乙女を爆発させているのであれば、むしろちゃんと伝えて最前線から外してもらおうとするはずです」

「……確かに」

「その話をちゃんと聞くために、会議室に参りましょう。いいですか、そこのお三方?」


ヒヴィーアはそう言って、マーリィ様、姉妹を睨む。


「そ、そうですわね。さあ、早く会議を始めましょう」

「そうだな、さあ行こうか」

「……はぁ、すみません皆さん。さ、ミフィー様こちらに」

「わ、わかりました」


ミスト様に促され、ミフィー様は逃げるように砦の中へと消えていく。


「ミフィー様になつかれていた貴女が、しかるべき対策を取っておくべきでしたね」

「むっ」

「いえ、違いましたね。自分で我慢できずに暴露したんでしたよね?」

「……そ、それは」

「……ジェシカ、本当に良いのですか?」

「え?」

「貴女がそこまで女を見せる相手ができたのは、同じ同僚として、同じ女として嬉しく思います。ですが、これから話す作戦は、その幸せを賭けるほどの価値があるものなのですか?」

「ヒヴィーア?」

「ユキ殿」


私はヒヴィーアの言葉に反応できず、彼女は私の答えを待たず、ユキに向き直りました。


「なにをどうやってジェシカをここまで女にさせたかはしりません。詮索する気も毛頭もありませんが、今のジェシカはとても幸せそうです。そして、その顔は、その幸せは、貴方が従える後ろの女性たちにも見えます。貴方はそれだけ、好かれる何かを持っているのでしょう」


ヒヴィーアはそう言って、ナイフを両手に握ります。

彼女は体格に恵まれず、その体の小ささを利用する暗殺者の様な戦い方をします。

握っているナイフは、彼女のもっとも得意な武器。

ですが、なぜ彼女はその武器を握っているのでしょうか?


「……ジェシカ、そして貴方の後ろにいる女性たち、貴方はその彼女たちの幸せを賭けるのですか? こんなくだらない戦いに、彼女たちに命を賭けさせるのですか」


ヒヴィーアはユキを射抜かんばかりに睨みつけます。


「……私は認められません。貴方の作戦は採用できません。貴方は彼女たちを抱えて逃げるべきです。その幸せを賭けることは認められません。……今逃げるのなら、私が全て誤魔化します」

「ヒヴィーア、なにを……」

「私の友が幸せを掴んだと言うのに!! それを無為にするようなことは認められません!!」


叫んだ。

いつも冷静で物静かなヒヴィーアが叫んだ。


「この戦いに勝てば、更なる戦場が待ち構えます。……そこでも貴方は友の幸せを賭けるつもりですか? ……私は貴方が倒れ、友が倒れ、どちらが泣いている姿を見たくはありません。……人はいずれ死にます。軍人である私はそれを肌で実感しました。だからこそ、幸せを掴んだのなら、その幸せを大事にしてください!! 逃げていいんです!! こんなくだらない事で幸せを散らす必要などないのです!!」


なにが、ヒヴィーアにここまで言わせているのでしょうか……。

私は彼女になにを言えばいいのか分かりませんでした。


「……逃げるつもりはない」

「なぜです」

「それに答える前に、そこまで君を動かすモノ、理由を聞いてもいいかい?」


彼女は少し、肩を震わせ、口を動かします。


「……実感しただけですよ。目の前で家族を失くし、恋人も失くした。だから、ただのお節介です。私の自己満足です。ジェシカや貴方の後ろにいる女性たちが、過去になにを抱えているかもしりません」

「そうか。自分でいうなら本当に自己満足なんだろうな」

「ええ。私は身勝手に、貴方とジェシカ、後ろの彼女たちが笑って幸せに子供を授かり、育て、巣立ち、一緒に年老い、寿命を全うしてほしいと思っただけです。それで、貴方が逃げない理由を聞かせてもらっていいでしょうか」


ユキはそのヒヴィーアの真剣なまなざしから視線を外し、少し首を傾げ考える。


「そうだな……逃げない理由か、多分……」

「多分?」

「俺にとっては、今この場は、逃げないことが幸せになることだと思うんだよ」

「英雄的思考ですね。そんな甘い考えでは全てを失います。そう言うと思いました……だから、無理やりにでもっ!!」


そして、ヒヴィーアはナイフをかざし、ユキに襲い掛かります。

殺気のない行動、気絶させるという意思が伝わる。

ただ、私たちが幸せにと願う身勝手な答え。


「はっ、やめてくれ。英雄なんざこちらから願い下げだ。というかな、逃げる時は逃げるぞ!!」

「えっ?」


ヒヴィーアの気迫が薄れます。

それもそのはず、真面目な話をしていたのに、ユキの答えは真面目……なのでしょうね本人からすれば、しかし、万人にとってはその場にそぐわない答え。

あっさり、気迫の薄れた一撃は躱され……。


「勝目のない戦いはしないし、嫁さんを危険にさらすようなことするか!!」

「無茶苦茶ですよ!?」


更に、意味不明の言葉を言われて、更に躱される一撃。

ヒヴィーアが分けが分からないと言わんばかりに声を上げます。


「だって、敵の物資を奪うか燃やして、撤退するしかないようにするんだからな!!」

「はい!?」


その言葉で、ヒヴィーアは攻撃をやめます。


「さて、マーリィ殿の優秀な副官殿、魔剣使い級の腕の持ち主が目の前に多数。個人行動をして、物資をどうにかして、敵が撤退するしかなくなる可能性は、まともにぶつかり合って敵を押し返すより、どちらが全体的にいい手段だ?」

「……前者です。いえ、どちらか一方を取るのではなく、全部を試すのが最善だと思います。ミフィー様の捨身の交渉も含めて」

「だろ? 逃げる、戦う、そんな二択だけじゃないってことだ。まあ、ヒヴィーアの言った通り、嫁さんが死ぬ可能性も無いわけじゃない。だが、ここで逃げたら、ジルバが勝とうが負けようがお尋ね者だ。それは拒否したい」

「……」

「暴走したのはミフィー王女だけじゃなかったな。ヒヴィーアがジェシカ大好きなのはわかったが、もうジェシカは俺の嫁さんだからやらん」


ユキがそう言い終わると、ヒヴィーアがギギギ……とこちらに振り返ります。


「えーと、ヒヴィーア、気持ちはありがたく受け取ります。友として私も嬉しく思います」


私がそう言うと、ヒヴィーアは顔を真っ赤にして……。


「ひゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあ……!!」


荒野へ駆けだして行きました。


「うむ。見事にとどめを刺したなジェシカ」

「いや、真面目な話をぶっ壊した貴方に言われたくないのですが」

「何を言ってるんだ。俺の話は至極真面目だぞ。作戦は臨機応変に、逃げるのは得策ではないし、俺たちができうる手段を説明しただけだ」

「……もうちょっと、カッコイイ方法で言えないのですか?」

「聞く耳を持たせるには、ああいう方法がいいんだよ。というか、あの真剣さを見るに、玉砕覚悟の防衛戦をするもりだったろうしな」


ヒヴィーア、相手が悪すぎたようです。


「そういえばリーアは、みんなは何で手を出さなかったのですか?」


私は漸く、ユキの護衛でいるみんなが動かなかったことに気が付きました。


「え? だって、あれジェシカ大好きーって話でしょう?」

「だよねー。殺気もないのにどうしろっていうんだよ。ね、トーリ?」

「うん。いい友達だね、ジェシカ」

「私たちみたいだね」

「そうね」

「親友なのです!!」

「素敵な友人だと思いますよ」


みんなはそう言って私に笑いかけてくれます。


「さて、ヒヴィーアが戻ってくるまでに、会議室で作戦の説明でもしておくか」


ユキさんはそう言って、さっさと砦へ入っていき、みんなもそれに続きます。


後で戻って来たヒヴィーアは、全面的にこちらの作戦に賛成で、あっさり物資の襲撃作戦は通ったのです。



さあ、どうでしたでしょうか。

軍人がなにを、冷静になれよ。

と言いたくなるでしょうが、現実でも、誰が好き好んで幸せな友人を戦争に巻き込みたいものですかってはなしです。

ヒヴィーアは決して、駄目な人ではないってことで、逆に一番人間味があると思っています。

そして、ユキは相変わらず。

目標のために今日ものんびり頑張っております。

ユキを相手に真面目になるのはやめましょう。


さて、これがあの時の会議の内容です。

正直主導権は全部……。


では次回をお楽しみに。


と「必勝ダンジョン運営方法 1」発売は5月29日あと5日。

見本が昨日とどきました。

そこで、一言、初期の奴隷メンバーの露天風呂入浴シーンを使ってファルまろさんが、裸体の奴隷メンバーを紹介しております。

無論、アスリン、フィーリア、ラビリスもいるからな。

ロリアウト!!

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