第222掘:裁判
裸族がやらかしました。
裁判
side:セラリア
ミノちゃんたちが上手く交渉に持っていって、無事にエナーリア軍を撤退させた。
ちゃんと、捕虜も得たし、ミノちゃんたちが交渉したおかげで、私たちとは関係のない第三勢力として認められた。
それに伴い、ジルバ、エナーリアともに、これ以上戦争継続が不可能になったのだ。
どちらかが、私たち……じゃなくて、ミノちゃんたちを無視して戦いをすれば、無論ミノちゃんたちに迷惑はかからないが、常識的に考えれば迷惑がかかるように見えるので、それを口実にミノちゃんたちが鎮圧に向かうという事になる。
だから、もう継戦することが不可能になるのだ。
2国としては、もう休戦協定か同盟を結んだ方が割りがいいという状況になった。
これに伴い、傭兵団の私たちは身軽に動けるようになる。
うん、完璧だったのよ。
だけど、どこかの特殊部隊の裸族が変態なことを引き起こして、とても問題になっている。
「で、言い訳を聞きましょうか?」
私は、ウィードにある、軍部の査問室で今回の問題を引き起こしたゴブリンに問いただす。
というか、スティーブという、ゴブリン部隊、魔物部隊のトップだったりする。
「無罪っす!! 戦闘中の事故っす!! 弁護士を!!」
「弁護士って、地球じゃないんだから、そんな職業ないわよ。変なところで夫の文化に染まってるわね」
「だって、このままじゃ、おいら、変態って烙印が……」
「馬鹿、嫌疑は強姦未遂だから、物理的に刑務所よ。というか、誘拐罪も適用」
そう、スティーブが引き起こした問題は強姦未遂。
そして誘拐罪。
「しかたなかったんす。あいつらが、わるいんす!!」
「だから、それを言いなさい。吟味するから」
私がこうして、スティーブを直接問いただしているのは、私しかこのスティーブを裁けないからだ。
いや、夫も立場上裁けるが、夫は現在、ジルバ、エナーリアの調停に忙しい、無論ミノちゃんという魔物軍との取り成しも建前上あるが、ミノちゃんたちは最初から私たちの部下である。
一応私は、ウィードの女王であるのと同時に、軍部のトップだ。
部下の失態は私の責任ということ。
ウィードの政治関連は完全にエリスやラッツたち代表に任せているので、私が予想していたよりは忙しくはない。
ま、小さいとはいえ国を持ったことで、毎日のように会食や会議をしなければいけないのだが。
無論、不必要なことは完全に断っているので、娘と一緒に毎日楽しく過ごしているし、ゲームもしている。
と、話はずれたが、今回の件はそれなりに問題なのである。
スティーブという、夫の昔からの相棒が強姦未遂、誘拐、そんな馬鹿なことを傍目からしてしまったのだ。
どうせ、誤解やくだらない事が原因なのだろうが、何もしないで無罪放免というわけにはいかない。
「ったく、サクラとの晩御飯今日は無しになったのよ」
「……本当に申し訳ないっす」
今日のサクラのご飯はキルエのおっぱい。
まあ、半数が妊娠しているので、お乳には困らないのがいいところよね。
ユキは、粉ミルクとか言ってきたけど、流石に冗談じゃないわ。
自分の子供に代用品なんて与えられるわけないじゃない。
粉ミルク自体は否定する気はないけどね、自分のおっぱいがでるなら、時間があるなら自分のおっぱいを上げるべきだわ。
なんの為におっぱいがあるかわからないし、愛情が無いんじゃないかって思ってしまうわ。
おっぱいをあげているキルエたちもそろそろ出産なので心配ではあるが、私たちが一か月ほど早産みたいだったらしく、本来は今頃が予定日だったらしい。
ま、私たちの出産のおかげで、心構えや準備もしっかりできているので、私たちの時よりスムーズにできるだろう。
って、いけないわ。
さっさとスティーブの聴取を終えないと、サクラと一緒に寝ることもできないわ。
「そう思うなら、とりあえず事情を説明しなさい」
「……わかったっす」
side:性犯罪者スティーブ
……なんか、失礼な紹介が出ているような気がするっすけど、今は身の潔白を証明するしかないっす。
当時、おいらは精鋭の10名を連れて、敵援軍本隊の物資を減らすミッションを受けていたっす。
……腰ミノとショートソードで。
理由も納得できるっす。
おいらたちは、あの大陸ではただのゴブリン。
多少ジルバ帝国では名が売れたっすけど、他ではただの裸族。
だから、所属もクソもないただの魔物として、敵を攻撃できるということで、野生味あふれる裸族の姿で、敵の物資浪費、奪取の命令をうけったす。
「さてー、敵の姿を確認と」
「……マジでこの恰好で襲うんですか?」
「……寒くない筈なのに、心が寒いぜ」
「……服が、着たいです」
「……俺は変態なんかじゃない……」
なんか、部下の士気が酷く低いっす。
おいらたちは特殊工作部隊でもないっすからね。
気持ちはわからんでもないっすけど、これもお仕事っす。
「……さっさと仕事して、服をきるっすよ」
「「「……へーい」」」
目的は既に、服を着る為に、仕事を終わらせるに変わってたっす。
しかたがないっす。
おいらたちは文明ゴブリンだから。
「物資の凡その位置も把握したし、さっさと終わらせるっすよ」
「「「ういー」」」
そして、おいらたちは、茂みから飛び出して、襲いかかろうとしたっす。
……だけど、奴らの一言がいけなかったっす。
「おっ、ゴブリンだぜ。この辺にもでるんだな」
「みたいだな。でも、見ろよ。あの服すら着ない低能」
「臭そうだよな。ああいう風体にはなりたくないもんだぜ」
そう言ったんす!!
誰が好き好んで裸族なんかしてるか!!
だから、キレたっす。
「お前ら!! 誰のせいでこんな苦労しているか、体に教えてやるっす!!」
「え?」
「どうやって?」
「殺すのはだめじゃなかったっけ?」
不思議がる部下、だからおいらはこう言ったす。
「気絶させて裸にひん剥いてやるっす!! 俺たちの気持ちを思い知らせるっす!!」
「「「うおおーーーー!!」」」
そう、物資を奪う、だから敵の身に着けている物もひん剥いてやろうと思ったっす。
おいらたちをがこんな姿で出る羽目になった、敵に馬鹿にされるのは心外だったっす。
「お、なんだこのゴブリン共、俺たち相手にやる気か?」
「丁度いいじゃねえか、戦の前に軽く運動しないとな」
「なら、一匹でも多く仕留めた奴が酒独り占めな」
「「「その話乗った」」」
なんて、会話してるから……。
「ひん剥てやりゃーー!!」
おいらたちは勇猛果敢に敵に挑んでいったっす。
「なんだこのゴブリン!?」
「つ、強い!?」
「ぎゃぁっぁぁぁぁ!!」
そしておいらたちは大軍に攻めかかったす。
「なんだ、こいつら、お、男を裸にしてるぞ!?」
「あ、あ、こいつら、男を襲うんだ!!」
「ま、マジかよ!! へ、変態だ!!」
おいらたちは死にもの狂いで物資を奪い、裸にしていったっす。
そして、事件が起こったっす。
「隊長、あの物資奪ってきます」
「わかったす。こっちはまかせて、仕事をしてくるっす!! おめーら、敵を通すんじゃねーっすよ!!」
「「「了解!!」」」
1人を物資回収に向かわせて、おいらたちがひたすら敵を裸にひん剥くという行為を繰り返していたら……。
「この、ゴブリンが!!」
1人の兵士が斬りかかって来たので、簡単に捌いて、気絶させて、同じようにひん剥いたっす。
そしたら、男の象徴がついてなくて、胸が大きかったっす。
「へ?」
なぜか、男装して胸にさらしを巻いて参戦していた女性がいたみたいで……。
思いっきり揉んでたっす。
「貴様らか!! ゴブリンに進軍を止められるわけにはいかん!!」
「ウーリー将軍!? やった貴様らこれで終わりだ!!」
「「「わぁぁぁぁあぁああ!!」」」
敵が歓声を上げて、焦ったっす。
強そうなおっさんがこっちに向かってくる。
ゴブリンが、女を押し倒したって状況を見られるっす。
これじゃ、本当に変態っす!!
だから……。
「覚ゴっ!?」
見られる前に、そのおっさんを倒してひん剥いたっす。
そしたら、思いのほか敵が動揺して……。
「隊長、こっちは終わりました!!」
「……よし、ここらで退くっす!!」
「「「了解!!」」」
それで大人しく、退ければよかったすけど……。
「おい、こいつ女だぜ」
「マジだ。ゴブリンに襲われたってことで、俺たちが手だして……ごっ!?」
そんな本物の下種がいたんで、仕方なく、その女性を担いで逃げてきたっす。
side:セラリア
「なるほどね。動機はともかく、そのまま捨ててきても、私ならスティーブぶっ飛ばしてるわ」
「ひどっ!?」
「とりあえず、なんで、援軍のエナーリアが、あっさりミノちゃんたちの要求に応じたか、わかったわ」
「ん? どういうことっすか? ミノちゃんが必死に説得して捕虜とか経費を勝ち取ったんじゃ?」
「それがね、交渉のハイン殿が、ミノちゃんたちをウーリー将軍っていう援軍の大将に会わせたのよ」
「……ウーリー将軍って、おいらがひん剥いた?」
「ええ、そうよ。それで、完全にミノちゃんたちと戦うことをやめたらしいわ。ま、そうよね。一瞬で叩き潰されて、命も奪われず、裸にひん剥かれて、物資をあっさり奪う相手の交渉に文句を言えるわけないわ」
「あー、おいらたち、ミノちゃん配下って思われてるっすか?」
「多分ね。交渉がすんなり行き過ぎてておかしいって言ってたところよ」
でも、これで相手が大人しかった理由がわかったわ。
スティーブの強姦未遂が、いい具合でことを運ぶ原因になったわけか。
「全体の結果としてはいいけど……、スティーブが連れて来た子はどうしましょうか?」
「このまま帰すってわけにはいかないっすよね?」
「馬鹿いってるんじゃないわよ。帰すってどうかえすのよ? あのただの一般兵に馬と食料でも与えろっていってるの? そんな事すれば、逆にあの子が撤退している本隊に敵に寝返ったと思われるわよ。というか、強姦しそうになった奴がいる所によく送り帰そうと思うわね」
「……すみません」
「下手すれば、本隊にたどり着く前に盗賊とか、魔物に襲われてさよならよ。一旦わたしたちの所で捕虜……」
ん?
丁度いいのがいなかったかしら?
「どうしたっすか?」
「そういえば、ミノちゃんが経費の担保で捕虜とってるのよ。その子と一緒ならいいんじゃないかしら」
「あー、そうえいば捕虜とったって言ってたっすね。どんな人っすか?」
「確か、魔剣使いらしいわよ。だから女性、丁度いいでしょう、女同士だし。たしか、名前は……エージル・トムソンだったかしら?」
ミノちゃん曰く、なにか物凄く変な子って言ってたけど、まあ大丈夫でしょう。
仮にも将軍という肩書をもっているんだから、兵士への対応ぐらいこなせるわよ。
「で、おいらの件は?」
あ、忘れてた。
スティーブの処遇を決めないといけなかったわ。
「有罪」
「なんでっすか!? 不可抗力っすよ!?」
「そうね、不可抗力なこともあったのは認めましょう。だから、魔剣使いとその女性兵士の相手はスティーブが務めなさい」
「うげっ」
「仮にもひん剥いて、助けたんだから最後まで面倒みなさいよ」
「……わかったっす」
がっくりとするスティーブ。
今回の件は身内だけしかしらないし、事情も事情だし、これぐらいでいいでしょ。
「さて、サクラ、お母さんが今行くからねー!!」
仕事が終わった私は、扉を開けて駆け出した。
結果、裸族のおかげで、エナーリア軍はミノちゃん相手に強くでれず、後退する羽目に。
これでジルバ対エナーリアは回避されたわけであります。
捕虜もとってホクホクのウィード勢。
ピンチを切り抜けたぜ!!




