第221堀:意外な交渉
すまん、裸族の話はできなかった。
思ったより、書いてる最中に面白いことを思いついて書いてたらこうなった。
ま、どういう内容かは見てくれ。
面白いといっても俺の頭の中だけだからな。保障はしない。
では、どうぞ。
意外な交渉
side:ジョシュア・ビーイング エナーリア増援崩落救出軍
「これは……」
私はあまりの事態に足を止めていた。
本来であれば、即座に崩落現場を占拠、監視しているジルバ軍を排除し、プリズム将軍の援護に向かわなければいけないのだが……。
私とて、ブーリス・ウーリー将軍という稀代の名将とともに戦場を駆け抜けてきたのだ。
多少のことでは動じないと、自信もあったし、経験もつんできたつもりだったが……。
「「「うぉぉぉぉおおおおぉぉお……!!」」」
雄たけびを上げるのは私が率いている軍ではない。
いや、あれを軍と呼んでいいのだろうか?
そう、目の前に崩落地点を背に私たちの軍と対峙しているのは……。
魔物の群れだった。
「ジョシュア、どう思うか?」
「ハイン殿……」
私と一緒にこの場にきた、ウーリー将軍を昔から支えてきた老将ハイン殿がそう聞いてくる。
私も、ハイン殿の補佐にはいつも頭の下がる思いだ。兵站という裏側で面倒なことを完璧にやってのけ、遅延などさせないというすばらしい人だ。
だから、立場上私が上であっても、常に礼を欠くことなく接する。
というか、自然にそうなる。それだけ、すごいということだ。
だから、この質問に対してもこれだけの異常事態に、すぐに考えを聞くというのはなかなかできることではない。
「……すみません。正直わかりません。このような事態は初めてで」
「うむ。正直でよい。わからぬのに、わかるといって、それを元に作戦を立てれば大きな被害となるだろう。ジュシュア、お前もすでに立派な将だ。この戦い、戦うにしても退くにしても、わしは止めはせん。お前の補佐、最後までこなしてみせよう」
「……わかりました。とりあえず、相手の目的や強さを把握をしないことには始まりません。斥候……いや、一度話しあう方向で望みたいと思います」
「ふむ、なるほどな。相手は魔物であれど、しっかり隊列を整え、無闇にこちらに攻撃してくるそぶりはない。ならば、一定以上の知恵があって統率している者がいると思うのだな?」
「はい、私はそう判断しました。言葉が通じるかはわかりませんが、あの統率をみせる相手に、無策に戦うのは危険と思います」
「理にかなっている。私が、直接見極めてこよう」
迷いなく、ハイン殿はそう告げる。
一瞬呆けてしまったが、それはとめないといけない。
「ハイン殿がわざわざ赴くのは危険すぎます!!」
「危険だからこそだ。相手を知ろうにも魔物。普通の兵士などが近づけば、切りかかってそのままなし崩しに戦いになる可能性が高い。若い騎士も同じくだ。いくら命令とは言え、相手が変な素振りを見せただけで話を聞かず戻ってくるかもしれん。ジョシュアの案を実行できるのはこの場で話しを聞いた私と、周りにいる騎士たちだけだ。下手に選出をするのは時間の無駄で意味がない」
「……そう、言われては、承諾するしかないですね。しかし、どうか無事に戻ってきてください」
「ははっ、そこだ、それこそ立派な将だよ。なに心配するな。片腕、片足落としても戻ってくるわ」
ハイン殿はそういって笑いながら、準備を整える。
相変わらずなお人だ。
あの人だけで一軍を預かっても不思議ではないというのに。
「ハイン殿に万が一があっても即座に行動できるように準備しておけ。騎馬100を救出、弓300が牽制、それで一気に助け出して距離をとる、いいな」
「「「はっ」」」
ならば私は、何があってもいいように、いつでも部下を動かせる準備をしておこう。
「本隊は、敵が追ってきた場合、ハイン殿が戻るまで持ちこたえよ。私が指揮をとる。臆することなく構え、敵を防げ」
「「「はっ」」」
しかし、オークとゴブリンは分かる……、いや、それしか分からない。
目の前に広がる魔物と思しき軍勢のほとんどは、見たこともないのがほとんどだ。
だが、その中で一際別格の雰囲気が漂う場所がある。
それは、魔物の軍勢の中央。
おそらくは本陣なのだろうが、そこに立つ4メートルに届こうかという、牛の顔をした人が立っている。
「……あれが、きっと大将なのだろう」
私もその魔物は初めてみるが、あの姿形は物語によく出てくる。
その体躯から繰り出される豪腕で敵をなぎ倒し、女を攫い、陵辱する。
その強さから、国が一つ滅んだとされる伝説の魔物。
ミノタウロス。
「……私の判断は、間違っていない。ハイン殿もそう信じてくれた」
不安があるが、昔の御伽噺を信じるような馬鹿な真似はできない。
友好的かもしれない。私たちが早まって間違いを犯す訳にはいかないのだ。
あの軍勢の後ろにいるかもしれない、友軍のためにも。
「ハイン様、出立します!!」
その声で、軍勢を見るのやめ、振り返る。
そこには、ちゃんと話し合いを前提とした武装をもたないハイン殿と、その後ろに護衛の騎士が10名立っている。
「頼みます」
「ああ、任せておけ」
ハイン殿はそのまま馬にまたがって、魔物の軍勢へと向かっていく。
「さあ、私たちはのんびり待つのが仕事ではないぞ、準備はできたか!!」
「「「おうっ!!」」」
……どうかご無事で。
side:ミノちゃん 崩落方面牽制軍処理
「ミノちゃん大将、敵数騎が突出、どうしますか?」
「むぅー。ジョンどう思うだ?」
「いや、ミノちゃんが大将だろうに」
「そら、わかってるだ。副将としてどう思うべって話だ」
流石に、ユキのあんちゃんから大将に任じられたからって、そこまで不安定じゃないだよ。
今まで、散々あんちゃんとやってきたんだ、この程度で判断をミスしたりはしないと思うけど、回りの意見って大事だってあんちゃんいってたし。
「あー、そういうことか。なら、普通に話を聞くべきだとおもうぞ。別に不意打ちされてどうにかなるミノちゃんや俺じゃないし」
「そうだべな。よし、特に手をだすな。相手の動きを待つ。こちらと話がしたいという要求であれば、こちらに通すように」
「はっ」
部下にそう命令を出した後、ジョンに向きなおる。
「まだなにかあんのか?」
「……話し合いになる可能性もあるべ」
「だな」
「だから、きゅうり食うのやめるべ」
「え?」
「不思議がるんじゃねーべ。相手に勧めるのもだめだべ」
「な、なにをいってる。こ、このきゅうりはな……」
「なに、動揺してるべ、そんなもの茶請けにもならんべよ」
「ばっか!! 茶請けってのはお菓子じゃなくて、漬物もあるんだよ!!」
「生のきゅうりだろそれ!! 馬鹿言ってんじゃんねえべ!!」
「お? お? やんのかミノちゃん?」
「そこがジョンが大将に選ばれなかった理由だべ!! きゅうりに関して沸点が低すぎるべよ!!」
「きゅうりだけじゃない。そのほかの野菜に対するラヴも持ち合わせている!!」
「こんの、野菜馬鹿!!」
「うっせ、この田舎言葉が!!」
そのまま一発触発の状態になる。
相変わらずこのベジタリアンは……。
どういう手でくる?
飛び掛ってくるか?
足払いか?
ジョンもいろいろ思案しているのか、タイミングを見計らっている。
「……あの、取り込み中すませんが、話をしたいとのことで、つれてきましたが……あとのほうがよかったですか?」
2人して、その声の方向をみると、案内してきた部下と、エナーリアのお客さんたちが微妙な顔でこちらを見ている。
「失礼しました。こちらの席にどうぞ」
「ど、どうも、ご丁寧に」
代表のらしき壮年の立派なおじさんを席に案内する。
だが、やはりかなり場数を踏んでいると見えるこのおじさんもおいらに対して身構えている。
やっぱり、ミノタウロスは怖がられてるんだべな。
「そちらの騎士様たちもどうぞ」
「い、いえっ、護衛なのでこのままでかまいません」
うーん、この職務に対する姿勢は部下にも見習わせたいべ。
特にきゅうりばっか食べてるオークとか。
「……はっ、こんなときにだけ普通の言葉に戻しやがって」
「……お前の持ってるきゅうり畑、潰すべ」
「……やってみろ」
見かねた部下のリッチが口を開く。
「はぁ、2人とも、いい加減にしないと上に報告しますよ」
「「すみませんでした」」
あんちゃんに言われると大問題だ。
脊髄反射でおいらたちは謝る。
「なら、さっさと、仕事をしてください。お客さんも待たせてるんですから。と、紅茶でよろしかったですか?」
「あ、はい。どうも」
「いろいろ種類があるので、こちらで選別させてもらいました。お口に合わないかも知れませんが、ご容赦ください」
「か、重ね重ね、丁寧な対応感謝いたします」
ちょっと待て、このおじさんとか騎士さんたちがびびってるのって……。
「なあ、リッチのせいでびびってるんじゃないか? だって髑髏だし」
「おまえもそう思うべ?」
ウィードでもスケルトン系はそんなにいないし、俺たちのせいでこわばってるわけではない?
「ほぉ、これは美味しい。すみません、部下にも飲ませてやりたいのですが、もらえますか?」
「ええ、大丈夫ですよ。そこの失礼な上司ども、このことはきっちり報告させてもらいます」
「「げぇ!?」」
「なははは!! 話が通じぬ魔物かとびくびくしておりましたが、なかなかどうして、そちらもいろいろと苦労されているようですな」
おいらたちがそんな会話をしていると、おじさんが思いっきり笑い出した。
「いえ、そちらとしては当然ですな。我々がおびえていたように、そちらもこちらを警戒していたようだ。わざわざすいませんな。そんな喜劇まで演じて私たちの警戒を解いてくれた。感謝しますぞ。リッチ殿?でかまわないかな? こちらも髑髏といって身構えて申し訳ない」
「いえ、基本的にこんな面構えなので、身内にも驚かれています。特に夜」
「ははっ、それは仕方がないですね。私なら腰を抜かしそうです」
そうやって笑ったあと、そのおじさんは鋭い目つきになったべ。
こっちが、軍人としての顔だべか。
「さて、私も仕事をしますかな。単刀直入にいいます。崩落現場から立ち退いていただきたい」
「本当に単刀直入ですね。理由をお伺いしても?」
いや、理由はどう考えても友軍の救出のためだべよな。
「かまいません。崩落現場に、私たち、エナーリアの軍人、10万人がいると報告を受けて救出するために来ました。ですから、よろしければ協力してほしいのです。あなた方が何者なのかは問いません。私たちは仲間の命を救いたいのです。お互い、大規模な兵を連れているので身構えてしまいましたが、私たちとしましては、救出の邪魔さえされなければ争う理由はないのです」
ま、予想どうりだべ、でも意外だべ、真っ向勝負でくると踏んでたんだが、これだと、こちらから襲わないと相手の物資を回収できないべ。
こちらから仕掛けるのは、普段から治安を守るほうとしては悩ましいだ。
「と、申し訳ない。こちらからの希望ばかりですね。そちらの事情や希望を聞かずにこちらの望み言うだけでは不公平だ。よければ教えてくれませんか? あなた方はなぜここにいるのですかな?」
えー、適度にぶっ潰して物資を巻き上げる盗賊行為が予定です。って言うわけにはいかないだべよな。
ま、作戦をかえるだけだべ。
というか、思ったより、穏便に済みそうでよかったべよ。
だから、おいらは……。
「その、崩落現場にある遺跡で暮らしているものです。いいかげん、迷い込んでいた人たちが会話も通じず、暴れるので、同じような人たちがきて警戒したわけです」
「ああ、なるほど。彼女たちは若いですからな。と、待ってください彼女たちは無事なのですか!?」
「ええ、さっさと外に追い出したいのですが、またこられても困りますし、中の食料をあさっている。ただで帰すわけにもいかないんですよ」
「……道理ですな。で、なにをすれば彼女たちを……」
「そうですね。勝手に食べてしまった食料分ぐらいは返してほしいのですが」
「……えーと、彼女たちの人数は10万人ほどですかね?」
「はい」
「それの一ヶ月分とちょっとですか……。さ、流石に私個人でどうこうできる量ではないので、相談させてもらいたいのですが……」
「それはそうでしょうね。とりあえず、この崩落現場から救出は時間がかかるので、他の出口から連れて行ってください。案内しようにも襲い掛かられて、誘導もできない」
「……それは、その、申し訳ない」
「とりあえず、これ以上身内に被害がでるのは迷惑なんで、連れて行ってくれるだけでもお願いできますか? 案内はするんで、食料の関係は後々解決してくれればいいので」
「……感謝、します」
ハインさんと名乗ったおじさんは、凄い重圧を背負って、帰っていった。
うーん、流石に10万人分の食糧請求はきつかったべか?
「……なあ、ミノちゃん」
「なんだべ」
「戦いで追い散らすより、酷い事してる気がするんだが」
「だべな。あんちゃんの予想きくべ?」
「怖いけど聞くわ」
「怖いべよ。あんちゃんの話は……」
side:ユキ
「いいかミノちゃん。ミノちゃんたち崩落現場部隊は、最悪、エナーリア軍の救出軍と戦うことになる」
「それはわかってるべ、でもおいら、あんまりそういう事向いていないだ」
ま、ミノちゃんは基本学校で子供の面倒みてるし、戦いはいやだよな。
でも、交渉にはミノタウロスであるってのが大事なんだよな。
あの大陸で、伝説として名が通っているミノちゃんが相手になれば、敵は無視をできない。
「だが、万が一、敵が交渉してきた場合、穏やかなお前が一番適任なんだ。だからミノちゃんが大将だ」
「敵が、交渉? おいらたちは、向こうではただの魔物だべ。おいらたちと仲良くしてくれるのはウィードの皆だけだ」
ミノちゃんはそう寂しく首を振る。
まあ、ウィードの中でもミノちゃんを避ける奴もいるし、色々あったんだろうな。
だけど、俺の友人はもっと大きくなって貰わないとな。
まあ、アレになれとは言わないけどな。
「ミノちゃん、世界は広い、だからもっと多くのモノを見てこい。中にはお前を友達といってくれる奴も必ずいる」
「そうだべかな?」
「そら、そうさ。俺だって異世界出身だからな。ミノちゃんと仲良くやれてるだろ? と、そこはいいとして、交渉してきたときの対応な」
「わかっただ。教えてくれあんちゃん」
「今までの経費を要求しろ。そうすれば、相手から交渉を持ちかけてきたんだから無下にもできんし、これで敵は兵糧が無くなって戦うに戦えなくなる。奪うこともしなくて万々歳だ」
「経費ってなんの経費だべ?」
「敵さんは、ダンジョンにいる連中を助けにきたんだ。そいつらがダンジョンの食糧を食い漁ったとでもいえばいい。さらに、引き渡しをすると言えば、嫌とは言えんだろう。ほら、経費だろ?」
「……相変わらず、酷い作戦だべ」
「くくっ、戦わなくて済む方法と言ってくれ。というか、嫁さんたちがそれなりに考えて暴れるみたいだからな。俺も何もしないわけにいかない。丁度いい、俺たちが面倒なくエナーリアを調べる足ががりになるんだからな。あ、途中で襲ってくるなら処理していいからな」
さて、相手さんはどういう手段をとってくるかね。
突撃して負けるか、交渉して撤退することになるか。
どのみち、担保としての捕虜をもらうから、結果は変わらんけどな。
ジルバ帝国に物資無しの状態で捕まるか、俺たちミノちゃんズに経費の担保として捕まるか、それだけだ。
扱いの差はでるだろうけどな。俺としては、完全に俺たちで処理したいから、ミノちゃんと話してくれる方がいいんだけどな。
で、相談なんだけど、なんか色々妄想があるんで、別の話も書きたいんだよ。
だから、候補あげとくね。
1・戦国物、著名人女にしてやるぜ、何番煎じだよってツッコむ系。
2・現代の恋愛系 多分普通
3・ユキの学生時代 和也は主役にあらず脇役
4・他の続き書け
5・本編さっさとやれや
6・ゲームしようぜ!!
7・魔法少女系、魔法少女が主役をはれるわけがない
8・ガンオンやろうぜ
9・ねむい
10・うんネタ切れた
じゃ、次こそは裸族のターンだぜ!!




