落とし穴38堀:そこに女湯があるから 祭り始まる
そこに女湯があるから 祭り始まる
side:ユキ
『さあ、女湯を覗きたい男ども準備はいいか!!』
ラッツが妊娠しているお腹を気にしもせず大声を上げる。
「「「おおっーー!!」」」
そして、答える欲望に忠実な漢たち。
『さあ、ルールを説明しますよ。これを守らなければ、ドラゴンの餌にしますからね。そこのところ肝に命じてください。女湯を合法的に覗ける状況で、それでもルール破るならそれぐらい当然ですからね』
ラッツがそう言うと、なぜか俺たちがいる場所まで……。
ギャース!!
と、大きな咆哮が聞こえる。
『とまあ、私が運営するダンジョンの裏ボスのダークドラゴン君を呼んでありますので、これを突破できると思うならどうぞ』
『ついでに、私こと、エリスのダンジョンからはリッチを防衛に回しておりますので、それも倒してくださいね』
エリスがそう言うと、女湯の方向から火柱が複数一気に立つ。
リッチのファイアートルネード。
エリスお気に入りのネームドリッチ出してないだろうな?
複数のリッチによるファイアートルネードだと信じたい。
『こんな感じで、お兄さん以外は物理的に突破できないので、覗きルートを通ることをお勧めします』
『更に、各国の選り抜き女性騎士が防衛についていますので、物理的、社会的に死にたい方はどうぞ』
いや、エリス、物理的に死ぬで普通終わりだって……、ああ、死後、墓標にも覗きで死亡って墓に刻まれるのね、エリス酷い子。
あと、ラッツこんな公な場所で俺すげーアピールはやめてくれ。
情報公開的にも、俺自身の身の安全のためにもな。
「随分と、妻たちはユキを評価しているようだな。それとも、普通に表から通してくれるという意味かな?」
「それは、多分どっちも可能だとおもいます、ティーク王子。ユキ殿はそれほどなのです」
「ほぉ、私のガルツでは素晴らしい知略を見せてくれたのだが、それだけではなかったのか」
ほらぁ、横のティーク王子が興味津々でみてきますよ。
あとでガルツ派遣とかいやですよ。
もうすぐ、セラリアを筆頭に嫁さんたちの出産予定なのに、新大陸の方でも街の運営で忙しいし。
更にガルツへいくとか馬鹿じゃないですか。
というか、覗きイベントとか美人の嫁さんが沢山いる俺にとっては、意味がないんだけどな。
まさか、自分自身がこんなイベントに駆り出されるとは思わなかった。
『さてさて、脅しはこれぐらいにして、ルールの説明をしましょう』
『はい、そうですね。では、分かってはいると思いますがルールをこの場で確かに説明します。後で聞いていなかったとか、ルールの抜け道を探すのはダメです。ルールと常識の範囲内で行動してくださいね』
『では、この祭りの最終目的を言いましょう。女湯を覗くことです。女性側はこれ幸いと覗きに来るサイテー野郎どもを屠ることです』
いや、屠るなよ。
お祭りで死人とか最悪ですよ。
『と言うことで、男たちは女湯を裏から覗くという設定にしております』
『通常では突破不可能なトラップが設置してありますが、今回は国によってトラップの配置が違い、突破できるように数も制限してあります』
『そういう事で、女湯裏手3kmから男たち、覗き組はスタートと言う事になります。その道のりを30分で突破できれば見事女湯覗きができると言うわけです』
『覗いた瞬間に退去ということはありませんで、そこら辺は心配しないでください。ま、30分ほどですね。勿論、手出したら牢屋にぶち込んで、ウィードと各国の法に照らし合わせて、処刑しますけど』
うん、法に照らし合わせる必要なくね? 処刑っていっちゃってるし!!
『迂回するも、直進するも自由です。ですが、至る所にトラップがありますので注意してくてください。転移トラップはスタート地点に戻るようになっていますので、何度も転移トラップに引っかかってるとちょっと時間がきつくなりますね』
『まあ、覗きに参加するぐらいですから、体力は有り余ってるのでしょう。それぐらいは心配無用ですね。そして、覗き同士の足の引っ張り合いはやめてください。見てる方がつまらないですから、そんなことをすれば即退場です。監視のゴブリンたち、リーア監視とジェシカ監視がいますので、できないと思いますが、そこら辺をしっかり守ってください』
2人がなぜか離れてると思ったら、監視できてるわけね。
ま、久々にフリーだしのんびりさせてもらうか。
「いや、大将一応おいらが護衛っすよ」
「よし、護衛するふりして、俺を見逃せ」
「ダメっすよ。おいらが奥さんたちに殺されるっすよ!!」
「大丈夫、お前は強い。未だセラリアとかデリーユといい勝負だろう。勝ちも拾えるだろう。だから死にはしない」
「ルール無用で、ついでにおいらの給与を無視すればですけどね!! それは最後つんでるっすよ!! というか、あの2人、監視ってことですけど、大将にちゃんと気を配ってるっすよ。逃げるのむりじゃね?」
「そこをスティーブがなんとかするんだよ。お前の名前をよく考えろ」
「へ? なんでおいらの名前がでてくるっすか?」
「ルール上というかウィードでは武器の携帯は禁止だ。このイベントで俺もスティーブも武器を持っていない」
「当然っすね」
「いいか、お前のそのスティーブという名前は、素手で、木を切り倒し、地面を掘り返し、道具を作り出す伝説の職人の名前なんだ」
「いや、無理っす」
つまらんやつめ。
『ルールの説明は終わりました。皆さんは一旦冒険者ギルドへお戻りください。これから女性たちによるトラップ配備時間となります』
エリスがそう言うと、参加者はこれから歩むであろう覗き道を眺めて冒険者ギルドへと戻っていく。
今回、一般参加者の主は冒険者なので、冒険者ギルドが休憩場所の提供をすることになった。
冒険者ギルドとしても、今回のトラップの公開、販売に参加したいのが本音だろうけど。
「あ、ユキさん」
俺が冒険者ギルドに顔をだすと、オーヴィクが俺に気が付いて近寄ってくる。
この、さわやかイケメンで腕の立つ冒険者だが、ウィードの専属としてウィードに居つくことになった。
ダンジョンが山ほどある特異地帯だし、冒険者ギルドとしてもモーブたち以外の専属が欲しかったそうな。
それで、オーヴィクたちもそろそろ定住場所を探していたとの事で、丁度良かったというわけだ。
「で、この場にいるってことは、覗きに参加するのか?」
「違いますよ。俺は冒険者ギルド側です。というか、ラーリィと結婚したばかりなんですよ。そんなことしませんよ」
ちっ、既婚者で覗く奴が増えるかと思ったのに。
言っての通り、オーヴィクは相棒のラーリィと結婚している。
俺たちの結婚式をみて、ラーリィに素敵なウェディングドレスを着せて式をあげたオーヴィクは男前だと思う。
「そうですよ。オーヴィクはそんな変態なことはしません」
横からオーヴィクの腕を取って、現れるラーリィ。
そこで、疑問が浮かぶ。
この世界は経済的に問題ないなら複数と結婚していいのだ。
だから、オーヴィクも経済的には問題ないはず。でも、オーヴィクは複数と結婚している様には見えない。
「なあ、オーヴィクは他に嫁とかいないのか?」
だから、なんとなく聞いてみた。
オーヴィクとラーリィの感じから2人でラブラブしてるんだろうな。
俺みたいに複数と結婚してるほうがおかしいんだよな。
「え、2人いますよ? ラーリィは冒険者なんでいつも一緒ですけど、他の2人は家のこととか任せてますから」
「あ、そう言えばユキさんには紹介してなかったわね。2人ともしっかりしてて、家のことを任せられるんだから。料理もおいしいのよ」
「……」
あれ?
普通に他に嫁さんがいること話している。
「でも、ユキさんのトーリとリエルみたいに戦闘もできるならいいんだけどね。流石に高望みよね」
「うーん。でもさ、あいつら妊娠してから少しパーティー集まりわるいしな……」
「あー、そうよね。家のことはウィードは治安が驚くほどいいから心配しなくていいけど、戦力のことを考えると、戦闘奴隷が欲しいわね。他の冒険者の勧誘は私たちのランク的に無理だし」
「だよな、専属ってそれなりに腕がいるから、奴隷を買って自分の私物って扱いにしないと戦力増強できないのがつらいよな」
「このお祭りが終わったら選びに行きましょう。オーヴィクが夜も楽しめる相手にしないと。勿論性格もよくないとだめだから」
あれー、普通に女性の奴隷って選択になってるよ。
というか、女を増やすことに否定的じゃない。
「あのー、つかぬ事をお聞きしますが、ラーリィさんはオーヴィクが多くの女性を囲うのはいいのでしょうか?」
「え? 別にいいと思うわよ。だってそれがいい男の証拠でしょ。別に囲った女性を害するわけじゃないし、養ってあげるんだから、妻の私や他の2人が受け入れないなんて狭量だと思うわ」
「だ、男性の奴隷とかはどうなのでしょうか?」
「んー、オーヴィクが男がいいっていうなら問題ないけど。オーヴィク以外女だからね。家庭で男女関係こじれそうなのよね。ほら、オーヴィクの奥さんだけで、1人の男は指咥えよ? 可哀相じゃないかしら?」
あー、そう言う意味で男1人に女性複数ってことが多いのか。
なるほど、いちいち問題が起こる環境を作る理由はないわな。
「で、ゆくゆくは男の方は独立を促さないといけないし、女性与えないで、飼い殺しとか酷いからできないわ。女性ならそのままオーヴィクの女になって貰えればいいからね」
そう言われると当然だな。
「で、オーヴィク。ラッツさんみたいな兎人族の子がいいと思うの。私あの耳触ってみたいんだ」
「あー、前から言ってたね。と、今は仕事中だし、休憩時間にその話はしよう」
「あ、ごめんなさい。ユキさんも見逃してね」
2人は仲良く去っていく。
うーん、まだ俺はこの世界の常識を軽く考えていたらしい。
複数嫁さんというのは、救済措置でもあると分かっていたが、オーヴィクとラーリィの話で実感が持てた。
自分と他所の王様しか複数嫁さんいなかったからな。
あと、奴隷を買い入れることによって経済も循環するわけか。
ウィードという国単位で奴隷を仕入れて解放してはいるが、やっぱり、それから零れ落ちる冒険者向けの戦闘奴隷などがいる。
「ラーリィさん良い事いいましたね」
「ええ、とても素晴らしい話だと思います」
後ろから、監視の嫁2人がくる。
「と言うわけです。女性を沢山囲うのはなにも悪いことではないんですよ」
「今も私たちが傍を離れ、スティーブに任せるという事態になっています。ラーリィの意見に従い、戦闘奴隷でも傍に置いてはどうですか」
「いや、もう沢山嫁さんいるから」
「……私たちが妊娠は当分先という拷問なんですが」
「……あと、もう少しふやせれば円滑な妊娠、夜の生活、そして仕事の分担が手に入るのです」
いや、夜の生活は人数増えたらダメって、ああ妊娠してる人がいるからそれも計算してか。
半数近くが妊娠している今は、妊娠していない嫁さんたちとやることが多い。
最後の仕事の忙しさは、まあ人手不足は実感している。
仕方ないじゃん。ウィードの運営は今後軽減するかもしれないが、魔力枯渇問題は未だ最重要機密。
下手に信用できない外部の人を入れるわけにもいかない。
指定保護の関係で安全は確保できるが、それでも迂闊にホイホイ加えるわけにもいかないから、無理。
「……ラーリィの話である程度は納得した。……奴隷の件は少しは考えてみる」
「やった!!」
「やりましたよ!!」
2人が横でハイタッチしている。
奴隷じゃなくても、信頼できて仕事を任せられる人材だよな。
……うーん、難しいよな。
というか、色々仕事ができるって条件は結構キツイんじゃね?
「ま、そんなことより、今は覗きをどうするかだよな」
「適当にやって30分過ごせばいいんじゃないっすか?」
「それが妥当かね」
「無駄に覗いて嫉妬買うのも馬鹿らしいっすよ」
「で、スティーブ。オーヴィクへの感想は?」
「世の中不公平っすね!! ちくしょー!!」
冒険者ギルドの一角のテーブルでゴブリンが涙を流した。
すいません。
思ったよりも長くなりそうなんで、一旦ここで話を切って本編戻ります。
ごめんよ。
ちゃんと続きは書くから。
あ、話でわかったと思いますが、セラリア、ルルア出産前のお話です。




