表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸編 魔剣と聖剣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/2218

第204掘:準備は万端?

準備は万端?




side:ユキ


結局、キルエとの話は一旦中止になって、現在はお仕事でベータンの街に戻ってきている。

ま、向こうのいい分はわからんでもないが、こちらも譲れないものがあるのだ。

しかし、いい感じで嫁さんたちも自分たちのやりたいことをやり始めている。

キルエが俺に意見するとか、当初ならあり得なかったし。

俺を神の使いと聞いて、言う事には絶体服従だったからな。

思考が俺のこと一辺倒な気もしないこともないが、時間が経てばそれも外へと向かうはずだ。

……多分。


と、いかんいかん。

今は仕事に集中しないと。


「よーし、いいか、予定通りにやっていくぞ」

「「「はい!!」」」

「「「ういーす」」」


俺はそう言って、街の防御態勢を整える指示をだす。

この作業をする前に、柔らかいパンとか、元になる細かい小麦粉をひく道具とか、ポンプ設備とか、まあ色々やった。

そのおかげで……。


「いやー、普通であれば見物人なんぞ集まるわけがないのですがな。これもユキ殿の人徳というやつですかな?」

「ホースト、分かって言ってるだろう? 人徳ってわけじゃない。今まで領民にとって良い事ばかりしてきたから、次もきっと良い事だと思っているんだよ。だから、楽しみにしてるってわけだ」

「わかっておりますよ。しかし、こうやって工事による賃金を与えるとはいっても、戦争の準備ですからな。それで女子供を使おうとはおもいませんぞ。だが、おかげでかなりの人手が集まっておりますな」


現在、街の人は3種類に分かれている。

遠くから見学する派、バイトもとい、工事を手伝う派。

あと、別で畑仕事とか本業をしている人たち。

今までの慈善事業に見える工作により、街の人たちの俺たちジルバ帝国への印象は良い。

おかげでスムーズに作業が行える。


「何事も使いようってことだ。女子供は確かに成人男性よりは働く力が無く見える。だけど、時間は余ってるし、作業を減らす、分担、共同、などにすれば普通に結果が出せる」

「その分賃金は安いですがな」

「それもある意味売りなんだよ。誰でも短時間だからな。そもそも働き手と見られていなかった人たちもそれに含まれる。賃金が平均より下でも家計を助けるには丁度いいだろう? と言うか、本業と同じ額をもらえると思っている人は少数だろうしな」

「確かに。最初から宣言しておりますな。時間で賃金を支払う……、時給制といいましたかな?」

「ここの街じゃ普通は日払いだろ?」

「ですな。時計なんぞ、それなりの金持ちしか持っておりませんから」


そう、俺はこの防衛工事に街の人たちを働き手として使っている。

俺たちが味方だと強く印象付け、この防衛網が活躍すれば自分たちの作った物が役だったと、更に実感できるわけだ。

そして、人手を集める為に時給制を導入して、女子供も参加自由にした。

これで、短時間でも、誰でもといううたい文句なんで人が集まる集まる。

戦争のための工事だとは伝えているが、女子供が多く混じっているので、只騒いでいるように見える。


「しかし、このやり方は妙手ですな。店などを持っていない領民の大半は農民。朝から昼までは確かに忙しいが、それ以降は手が空いている。そして、非力な女子供でも、穴掘りなどと言った簡単な作業はできる。さらに便利な道具もユキ殿が揃えているから効率が非常にいい」


現代地球で使用されている、合金のシャベルにスコップ、ツルハシだしな。

ついでに、ナールジアさんに頼んで、ステータスの少量UPを施し、体力回復もついている。

正直、このベータンの兵隊より強くなっているとか……気にしてはいけない。

あれだ、怪我をしたらバイトだとしても、雇い主の責任問題になるからその対策ということにしておこう。

そう、この新大陸の一般人でもエンチャント武器や防具の効果はいかほどかと、研究である。


「で、ユキ殿。穴に長い木の棒を一定の間隔で埋めているようですが、あれで柵でも作るつもりですか?」

「いや、んー? 柵か? 柵の進化系だったよな、鉄条網?」

「てつじょうもう? それを作られるおつもりですか?」

「ああ、棘のついた鉄のヒモを……」


俺はそう言って、木箱に入っている有刺鉄線をとりだす。


「これを、木に括り付けてつなげる」

「ほぉー。しかし、これで敵が止まりますかな?」

「そこも狙いだ。ホーストが言ったように、敵も不審に思うだろうが、柵よりも突破しやすいと思うだろう? ただの鉄のヒモだからな」

「そこまでこの鉄のヒモは厄介なのですか?」

「ホーストはこの鉄条網を切れるか?」

「いえ、素手では……少しもって見てもよろしいですか?」

「おう」


俺はホーストに鉄条網を渡と、真剣に見つめて考え込む。


「……これは、ひも状というのが要ですな。これでは剣で叩きつけても意味がないし、もともとこちらも鉄、切断は非常に困難。木の棒を一個排除しようが、横にずっと繋がっている。これは普通の柵や壁よりやっかいですな」


ホーストは本当に優秀だ。

領主としても、一兵士としても。

ホーストの言った通り、この鉄条網は敵歩兵の侵入を防ぎ、砲撃の爆風を受け流すひも状だから、ワイヤーカッターや、支柱をふっ飛ばす、などとしない限り、現代においても非常に面倒な障害物である。


「そして、これをあの木の棒に10本近くつける予定だ」


コイル状にもしたいが、流石に無理である。

あくまでも、現地の人たちによる作業にしなければいけないからな。

敵さんが監視してるだろうし、一瞬で現代で通用する鉄条網を構築してしまえば警戒されるしな。


「これを10本。そして、この鉄条網を今の工事の様子から5段も作るですか。これは……敵は街にたどり着けるのか?」

「そりゃつくだろうよ。見ての通りひも状だから布をかけたり、人数に物を言わせて突破できないことはない」

「その1つ1つの鉄条網の間に、深い穴を掘ってある。無理に進軍し、軍としての機能が果たせるのでしょうか?」


そこまでこの情報だけで見破るとは本当に凄い。

ま、深い穴とは言っても、精々人1人がすっぽり入る穴だけど、それを鉄条網の前後に掘ってある。

これにより、重量兵器、戦車は向こうにはないけど、それに該当する質量兵器、破城槌とかを使って鉄条網を突破することはできない。

完全に人がせっせと抜けるしかないという非常に面倒なことになるのだ。


「そこが狙いだよ。個人個人で来た兵士を待機している弓兵や槍兵でやっていく。そして、突破されたら速やかに次の鉄条網まで下がる」

「……軍と言う、巨大な力を分散させるためですか。いえ、それだけではない、この戦い方はきっと歴史を変えますぞ」


それを看破するホーストは逸材だよ。

よくもこれを地方領主にしておいたもんだ。

俺なら将軍職に大抜擢だがな。


「ま、相手が動き出している。凡そ10万だ。どうなるかわからんよ」

「何を御冗談を。我が方の兵力は5千足らず。普通ならこの数相手に戦おうなどとは思いません。さっさと、略奪でもして相手がこの街を占領しても旨味が無いようにするぐらいが精々です。その状況でユキ殿は防戦を取ろうとしていらっしゃる。しかも平然と、領民への施しをし、強制ではない協力を申し出るなどという、時間がかかるやり方をです。焦りもない。勝ちを確信しているように私は見えますな」


鋭いね。

ホーストの言う通り、負けるとは微塵も思っていない。

最悪、現代兵器のオンパレードでまずは本陣にいると思われる魔剣使いたちを即座に潰す。

そのあとは残党狩りだよな。

そうでなくても、鉄条網に手間取っている敵は、遥か後方のゴブリン銃撃隊が、ジルバ、ベータン兵が前線で攻撃しているところを援護をするので、相当の被害が出ると思っている。

10万を5千で防ぐという無謀には見えるが、実際こちらに攻め寄せて当たるのは精々2・3万だろう。

それを俺たちのゴブリン部隊が、銃撃で他の兵士に隠れて確実にしとめる。

更に、いや、当然前線で戦うジルバ、ベータン軍に俺たちのゴブリンズも混ざり前線を支える手筈だ。

さあ、敵さんはどうやってこの状況を覆すのか楽しみだ。


「覆すのではなく、撤退するのが普通だと思います」

「私もジェシカと同じですね」

「あれ? 喋ってた?」

「いえ、作戦の内容は昨日コピーしてもらっていますからね。ここのどう覆すのか観察するっていうのは……」

「無理だと思います」

「あ、そっちね」


でも、2人とも撤退に一票とか、つまらないよ。

敵さんは、女子供が混じって妙なことをしているようにしか見えないという状態。

さあ、ユキはこの少ない手勢でベータンの街を守り切れるのか!!

領民の運命は!!

敵は容赦なく街を攻めたてる!!

戦いの火ぶたがきっておとされる!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ