第188掘:調べもの
なんか、ずっと体調が良くない。
熱はないが、どうも怠い。
それで更新おくれてすいません。
では本編をどうぞ。
調べもの
side:ユキ
現在俺が代表で参加している攻略会議は紛糾している。
紛糾しているとはいえ、ジルバ帝国の戦線が崩壊したとか、敵軍が近寄ってきているとかではない。
「ええい、まずはこのユキ殿たちに頼んで、西方軍の支援を……」
「馬鹿を言うな!! それを言うなら膠着状態が続いている北方軍だろうに!!」
こんな風に、俺たちという戦力をどこに配置するかで絶賛揉めているのだ。
一応、この前の落とし前としてジルバ帝国領内の自由な行き来、ジルバ王直々の許可の手形と支援を約束できた。
ああ、無論、この城にある書庫は自由に使いたい放題だ。
機密関連は手を出してないがな。大体厄介なものがあって巻きこまれるから、こういうのは手を出さないのが一番。
その機密に魔剣やダンジョンマスターの秘密があるかも……などと考えてもみるが、そんなのが載っているのなら既に魔剣は量産され、ダンジョンを利用した戦術や魔力枯渇問題も解決しているはずなので、今はノータッチ。
それとは別に賠償金もそれなりに頂いた。
価値的には個人では10年は遊べる額で傭兵を養うなら切り詰めて1年ぐらい。
で、この会議はこれとは別に俺たちに依頼と言う話である。
これで大義名分の元、ジルバ帝国の本部から嫌な顔をされずに色々支援してもらって地方に行けるというわけだ。
無論、戦争の荷担だから嫌なイメージはあるが、自由行動の許可と、自分たちで上げた戦果の結果のある程度の裁量権をもらっている。
つまり、捕虜などが出た場合は俺たちで自由にできるというわけだ。
虐殺なども起こった場合は止めに入れるので真面目に自由行動と言うわけだ。
ここまで無茶苦茶な要求をよく通せたとみんな不思議がっていたが、為政者としてはせっかく切り取った領地の住人や家財、畑を荒らされては意味がないのだ。
この大陸でももっぱら負けた方は蹂躙されるのだが、それは戦争をした当事者たちの慰め、鬱憤晴らしを認める形でやっているので、それをしっかり止められるのならば為政者、立場が上の人間としてはありがたい話なのだ。
一度きりの搾取より、長い目で税金と言う形で搾り取れる方がいいと言うわけだ。
ま、普通なら止められるわけがないのだが、俺たちは違うからな。
「……まったく馬鹿らしい。この男が連れてきた8人と1匹で戦況をひっくり返せると思っているのか? 現場を知らん頭でっかち共めが」
「左様。王の緊急の呼び出しと言う事で舞い戻ったが、それがこの傭兵を誰が連れていくか決めるためだけの話だとは……」
先に喋ったのが西方軍を任せれているヨキエル・グジッパー将軍。
見た目は大柄でがっしりした大男だ。
髭も生えているが無精ひげと言うわけではなく切りそろえてあり、ナイスミドルと言った感じだ。
後に喋ったのは北方軍を任されているローウ・マーベク将軍。
こちらはヨキエル将軍よりは若いものの眼光は鋭く中肉中背で俺より身長も高く、決して大柄とはいえないのだが迫力がある。
どっちも俺が日本で見かけたら、見て見ぬふりをするどころか逃げるね。
「ならば王よ。その傭兵、いやユキたちは私が連れて行っても構いませんか?」
そして、この発言をしたのがマーリィだ。
隣接するエナーリア聖国を攻めている所を呼び戻され、この会議に参加している。
当然、俺との勝負の結果も伝わった状態で。
「はっ、マーリィ殿には丁度いいかもしれんな。なにせ魔剣を持ってしてやられたと言うのだから。さぞ心強いだろう」
「その話の真意は知らないが、マーリィ殿が連れていくことに否はない。下手に外部の部隊を入れると問題が起こる可能性が高い。既に知り合いだと言うのであれば、そちらの方がなにかとやりやすいだろう」
前者のヨキエル将軍は完全に挑発だが、後者のローウ将軍の意見は至極もっともだ。
「ふむ。ローウの言うことも最もだな。見たところヨキエルの方はあまり歓迎しておらぬようだ。ならば、マーリィの希望通りにするとしよう」
ま、大体予想通りか。
これで俺たち傭兵団はマーリィの軍について行くことになる。
知っている相手だし色々やりやすいからこっちとしてもありがたい。
味方に足を引っ張られるというか、ヨキエル将軍やローウ将軍の様な反応が普通だろうし、一々溶け込む手間がいるのは面倒だ。
そんなことに手を取られては、当初の予定が遠のくばかり。
「さて、結局マーリィの所か。で、出発はいつになる?」
「うむ。ユキたち傭兵団に頼みたいことは、エナーリア聖国へ攻めあがる為の支援だ」
そうでしょうよ。
防衛に置かず方面軍について行けと言うのは、俺たちの力で何とかして来いって話だろう。
「出発についてだが、マーリィについて行く形をとってもらいたい」
「了解。で、いつ戻るんだ?」
「そうだな。即座に取って返したいのだが、そうもいかんだろう?」
「そりゃ、遺跡の方に残してる部隊にも連絡と、どれだけ連れていくかって話にもなるしな」
俺たちがそうやって確認を取っていると、王様が思い出したような声を上げて割って割って入ってくる。
「おお、そういえば忘れておった。流石に全部隊を連れていくつもりはなかろうな?」
「ん? そりゃ連れていかんわ。遺跡の防衛部隊もいるしな」
「ならば、数部隊をこの王都に派遣してくれぬか? ちゃんと費用や賃金は支払う」
「構わないが、なんのために? 底上げか?」
「流石に察しがよいな。うむ。ユキたちの傭兵団と戦闘を行い実力を上げようと思ってな。頼めるか?」
「別に断る理由もないな。ちゃんと依頼料もでるし。まあ詳細はあとで詳しく話さないといけないだろうしな」
「そうだな。すまぬなマーリィ出発は3日程待ってくれ」
「ええ、構いません」
そうやって、俺たちの今後は決まった。
で、現在の俺たちはと言うと……。
「なるほど。そう言う方針になったんですね」
トーリが返事をすると、すぐにその声は静寂に飲まれていく。
ジルバ王城にある資料庫。
書庫などと言う洒落た呼び方は存在せず、無造作に色々な本やジルバ帝国が綴ってきた歴史書があるくらいだ。
だが、それなりに蔵書はあるため人海戦術で調べているというわけだ。
「しかし、3日後には出発組とここで調べる組で別れる必要があるな」
そう、さっきの会議で戦力分散が決定した。
だれがここで残って調べものをするのか、それとも、ウィードから調査部隊でも引っ張って調べさせるかってやつだな。
俺としては調査部隊を引っ張ってきたい。
最大戦力の我が嫁さんたちをわざわざ調べもので分散させたくない。
「僕は絶対出発組がいい!!」
本の山の中で突っ伏していたリエルはそう吠えて飛び起きる。
まあ、書類整理みたいなもんだからな……。
「ところで、ここの資料から今まで目ぼしい情報は……」
「すみません。未だに特にこれと言った情報はありません」
シェーラが大きな本を抱えて、本棚の間から出てくる。
「そんな簡単に情報が手に入るとは思ってないさ。ある程度、歴史書や童話なんか読んで妙な所を見つけるってのがいいかもな」
「……どういうことかしら?」
ラビリスも数冊の本を抱えて出てくる。
「物語、特に童話なんてのは何かの教訓や何か起こった出来事をかいつまんでいるんだ。特にジルバ帝国の歴史書と合わせると面白い発見があるかもな」
「……えーと、よくわからないわ」
「意図的に省いている情報があったりするんだよ。物語ではよくよく書かれている事なのに、歴史書には一切載っていないとかな」
「なるほど、逆の意味で怪しいという話ですね。書いてあることだけが情報ではないと言う事ですね」
「シェーラの言う通り。ま、色々な視点で見ろってことだ」
俺がそう言っていると、本棚の奥からばたばたと複数の走る音が聞こえる。
「兄様ー!!」
「お兄ちゃーん!!」
「どうした?」
「「13本の聖剣ってお話みつけた!!」」
聖剣?
まさか、魔剣のことか?
つか13本ってせめて7つとかにしとけよ。
つっかもうぜ!! って感じで。
そして、アスリンとフィーリアが持ってきた本を見る。
表紙はボロボロ、辛うじてタイトルが読めるぐらいだ。
あ、因みに、ジルバ帝国がある大陸で使われている文字はルナに頼んで読めるようにしてもらっている。
「これは……随分使い込んでるな」
本が分解や千切れたりしないようにそっと表紙をめくる。
内容はいたってシンプルだ。
13本の聖剣が神様から手渡され、受け取った人物たちはそれを使い一つの国を作り上げた。
だが、その繁栄も長くは続かず13本の聖剣は世界に散り、再び集まる日を待っているのだと言う。
その時こそ再び大陸に平和が訪れると書かれている。
……一般に流布しているのか確認をしてみないといけないな。
なにはともあれ、また魔剣が妙に絡んでる。
下手に分解しなくて正解だったわけだ。
と言う事で13本の聖剣。
多いな! というツッコミは無しでw
さてさて、どういうことにつながっているのでしょうか?
魔剣とはやっぱり関係はないのでしょうか?




