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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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2212/2218

第1895堀:そういえばお店はどうなってる?

そういえばお店はどうなってる?



Side:エージル



「やっほ~」


僕は珍しく、研究所や新大陸南部の現場から離れて、ユキの執務室を訪れていた。


「ああ、来たな」


ユキは僕の顔を見て手を止めて書類を端に寄せる。

周りには確認待ちの書類と確認済みの書類の山。

いや~、減るとは思っていないけれど、やっぱり多いよね~。


「どうした? 何か珍しい物でもあったか?」


ユキが僕の遠い目をしていることに気が付いたのか、あたりを見回す。


「いやいや、ただ単にその書類の山は技術力が上がっても変わらないんだな~って思っただけだよ」

「……ああ、なるほど」


僕の言いたいことが分かったのか書類を一枚つまんでピラピラしながら口を開く。


「処理速度は段違いに上がっているぞ?」

「代わりに山ほど書類が舞い込むんだろう?」

「そりゃな。伝達速度も段違いだしな。次から次に仕事が舞い込む。そして出来る範囲が広がる。そして、こっちの処理限界までたどり着くってわけだ」

「いやなサイクルだね~」


理解は出来る。

ユキの説明は至極尤もな話だ。

結局のところ、仕事はなくならないってこと。


「とはいえ、仕事が無くなれば、それは発展の余地がないってことでもあるからな。そっちはそっちで怖い」

「確かに。と、雑談はここまででいいとして。はい、アスリンとフィーリアに頼まれている報告書を持ってきたよ」


僕は頼まれていた書類をユキに渡す。


「データでも受け取ってはいるんだけどな」

「まあ、そこは気分というか、紙面で見るからわかることもあるからね」

「視覚的にってことか」

「そうそう。本で読むからこそ気が付くこともあるってね。とはいえ、デジタルも否定はしないけどね」


デジタルはなんというか便利すぎるんだよ。

本棚、ファイル棚に手を伸ばす事すら必要ないからね。

その過程で不意に目に入った本や書類が次の発想に繋がるってことも多々あるんだ。

デジタルはその場で動くことなく全て揃うからね。

そういう遊びがぐっと少なくなるんだよね。


「物事は全部万事とはいかないもんだな。さて、内容を確認させてもらう」


そういって、ユキは受け取った書類とデジタルデータの確認を始める。

僕はホービスがお茶を持ってきてくれたので、それを受け取ってソファーに座り待つことにする。


「そういえばホービスたちってグラス港町でお店出すって言ってたけど、そこはどうなっているんだい?」

「ああ、そういえば俺も経過はあまり聞いてなかったな」


ユキもどうやら進行状況を知らないようで、書類を確認しつつ、状況を聞いてくる。


「はい。現在ユキ様が同席して検討してくれた業者を使い、小物をメインとしたお店を準備中です」

「そうか、小物で落ち着いたか」

「はい~。あとはクッキーとか飴玉を綺麗な小瓶に入れて専用の売り出しにしようかと~」

「うん、いいんじゃないかい。クッキーや飴玉ってアレンジしやすいしね。僕も研究が詰まったときによく作るよ」

「「「は?」」」


僕が何気なしに言った言葉に全員が固まる。


「なんだい? 僕が料理するのがそんなに変かい? これでも一応女性なんだけどね?」

「いや、料理に男女は無い。ただエージルの場合、料理よりも研究ってイメージがあるしな」

「そうそう。私もそう思ってた。だから、料理は全然できないって思ってたよ」

「ああ、そういうイメージか。いや、別に外れていないかな? ウィードに来る前は基本メイドたちからもってこさせるか、研究室の材料をつかってビーカーで何か作ってたし」

「よく劇薬を間違ってのまなかったな!?」


ユキが珍しく声を上げて突っ込む。

リーアたちもうんうんを首を上下に振る。


「なはは! 一度泡を吹いていたところをプリズムに発見されたからね。おかげで研究室内料理はだめになったよ」

「「「当然」」」

「流石に素直に従ったよ。いやぁ、あの時の僕、良く生きてたよね」

「何飲んだんだよ」

「乙女の秘密さ」


まあ、所謂成長薬ってやつ。

植物が成長するなら人はって思ったんだけど、クソ不味かったんだよね。

成分的には食べても口に入れても問題なかったんだけどさ。

後で聞けば、気付け薬としてもつかわれる、超苦い植物の種子をつかっていたようだ。

いや、ただの毒あり無しだけで考えていたからね。

味って大事なんだっておもったよ。

というか、気付け薬の元を摂取しすぎて気絶とか、やっぱり何事もほどほどなんだと思ったね。


「はぁ、話はそれたが、クッキーと飴玉か。見本はあるのか?」

「はい。ご用意してあります。ヤユイ」

「はい」


そうオレリアに言われて、ヤユイが私たちの前に試作品であるクッキーと飴玉を出してきた。


「おお、普通にクッキーと飴玉だ」

「だね。特に問題は無し。とはいえ、珍しい色をしているね」


そう、普通と言えば普通だけど、なぜかクッキーも飴玉も青み掛かっているものがある。


「この青が入っているクッキーや飴玉はいわゆる食紅、食べられる色を付ける材料を使って作っています。味は正直かわりません」

「ふむふむ。ある種のあたりってやつか?」

「はい、通常色とは別に3つほど入れることでアクセントを目指しています。クッキーは貝殻を、飴玉は海の色というコンセプトです」

「そうだな。海らしいコンセプトだ。いいと思う」

「ありがとうございます。そして、クッキーや飴玉は瓶がなくても単品で買えるようにしています。単価も子供で買えるぐらいに押さえています」

「そうか。子供もちゃんと客にしているわけか」

「まあ、あの通りで、子供が小銭を握りしめて買うかなって疑問はあるけどね」


どう見てもグラス港町のメインストリートは裕福層相手のモノだ。

いや、まあ、一般人でも買い物ができるレベルのお店がほとんどだけど、値段は高めだ。

子供が単独でっていうのは少ないよね。

そう思っていると、リーアが腕を組んで胸を張る。

おかげで相応に大きいおっぱいがどんっと前にでてきて、僕に喧嘩を売っているのかと思ってしまう。


「どうしたんだいリーア? その胸、僕にくれるって?」

「いや、なんでそうなるのよ。あげないからね。ユキさんのモノだからね。って、エージルの子供が買い物に来ないかもっていう話だけど、普通にあるよ?」

「あるのかい?」

「うん。あのメインストリートは確かに大人の買い物向けっていうのは間違っていないけど、それだと子供が退屈するでしょ? だから、子供がいけるお店っていうのはちゃんと作られているんだよ。下手に小道にある店とかに行かれると迷子必須だし」

「ああ、なるほど」


確かにその通りだ。

子供専用のお店が小道の先というのは、迷子になってもおかしくない。


「迷子が増えると、グラス港町の警察官が忙しくなるからね」

「確かに。メインストリートに子供がくるお店を集めておくのは理にかなっているね」


子供って思わぬ行動力があるからね。

サクラたちも意外と足を延ばすし。

追いかける、いや捜索する警官たちは大変だ。

その負担を減らすのは当然の措置だ。


「グラス港町には普通に暮らしている人たちもいるからな。そこらへんは気を遣っているわけだ」

「ユキもそこは噛んでいるんだね」

「ああ。観光客と住人は分けるかって話もあったが、港の生活が気になっている人が多くてな。観光客向けのリゾートとかは用意しているし、買い物の場所は同じでいいんじゃないかって、シスアとソーナの提案を受けてな」

「ふむふむ。確かにね。トラブルはありそうだけど、それはどこでも同じだしね~」

「ああ、場所を絞れる分ありがたいってはな」


とまあ、そんな雑談をしていると、ホービスがお茶のお代わりを入れながら。


「えーと、ユキ様、エージル様、お店のことはどういたしますか~? 小物の話とか聞きますか~?」

「ああ、すまない。脱線したな」

「そうだった。ごめん。リーアのおっぱい強調がいけない」

「なんでよ」

「小物もそうだが、クッキーや飴玉もどこかに依頼しているんだろう?」

「はい。クッキーと飴玉に関しては、お花に頼んでいます」

「キャナリアの所でか?」

「あ、はい。私の所……じゃなくてお店に依頼が来ました。これでお花の収入もある程度安定するかな~って思いましたし」

「まあ、リーアの言う通りだな。そういう外部依頼を受けていればお弁当やお惣菜だけで採算を取る必要はなくなるだろうが。任せる」


うん、今はキャナリアが店長を離れたとはいえ、あそこは諜報部隊のグラス拠点だからね。

ちゃんと安定しているのはありがたい。

裏で支援ばかりしていると、なぜ潰れないか怪しまれるしね。


「小物は以前お話したというか、私たちで案を出し合って作ってみたモノをこちらに置いています。あと鍛冶区で作っていた試作品を見繕って卸してもらっています」

「そっちは予定通りか。まあ、それで鍛冶区でくすぶっている新人たちも日の目を見ればいいけどな」

「はい~。こっちの要望を伝えて、小物を作るように言っていますよ~。面白ければ採用って」


そういうのはやる気が出るだろうね。

鍛冶区の方は僕は研究用の道具を生産する時に頼むけど、主にフィーリアやナールジアさん相手だからね。

いつか、僕の注文をこなす人たちが増えればいいんだけどね。

と、そこはいいとして……。


「つまり、オレリアたちのお店は総じて順調ってところかな?」

「はい。後は従業員の教育が終わればそのまま開店できます。軍の方からも人はやってきていますし」

「ジェシカの方から送って来たか」


そういえば、そんなこと言っていたね。

軍部の方でも諜報部隊を育てたいから、グラス港町のユキの、いやオレリアたちのお店を訓練に使いたいって話だったね。


「もう教育は終わりますから、あと数日中には開店する予定です。ですから、ユキ様やエージル様もよければ、お店に来てくれればと」

「そうだな。ヤユイの言う通り、一度お店は見る必要はある」

「だね。僕も興味あるし。新しいお店か~。って、ユキ。南部の調査報告書は目を通したかい?」

「いや、まだ目を通している最中。もうちょっと待ってくれ」


雑談しすぎて忘れていたけど、僕は現在の新大陸南部の先行調査の結果を持ってきたんだ。

ユキの反応、感想、評価をアスリンとフィーリアたちに伝えなくてはいけないんだ。


とはいえ、目に付くほどの成果っていうのはないんだけどね。

そんなのがあれば、ここじゃなくて呼び出して会議室だし。

何かユキが気が付くかな~っていう淡い希望があるぐらいかな?



オレリアたちが運営するお店は内装は整い、商品も出来てあとは開店目前という感じです。

うん、この仕事量はやっぱり馬鹿だわと思う。

新大陸での動きもあるし、大忙しのウィードは人手不足でございます。


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― 新着の感想 ―
まぁ多くの部署で分担出来るだけマシです。世の中には多くの部署からの仕事を1つの部署だけにまわす会社があるものですから………
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