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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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2205/2218

第1888堀:軍の増員状況について

軍の増員状況について



Side:ジェシカ



「……という感じね」

「うん、何とかみんな様になってきたよ」

「そうですか。海軍の方は順調というわけですね」


今、私はウィードの海軍を率いるドレッサとその補佐であるヒイロと顔を突き合わせて、現在のウィード軍の状況を確認しています。


「戦力的には正規兵の半分以下だけれどね」

「アスお姉が新大陸南部の調査にいって、魔物たちのやる気が落ちているのも原因だと思う」

「そこに関しては何とも言えませんね。一応私たちにも指揮権はあるので、言うことは聞いているのですが、アスリンはカリスマがありますからね」


海軍の兵士の主力は魔物兵です。

一応、人の兵士もいるにはいるが、基本的には船を動かす人員であり、海上、海中での戦闘は専門ではない。

出来ることに越したことはないのですが、ウィードでは水上、水中戦専門の魔物がいますからね、適材適所というわけです。

その中核となっていたのがアスリン。

魔物たちに好かれる性格で、野生の魔物はもちろん、ユキの召喚した魔物たちもアスリンの言うことを聞くという不思議な状態です。

もちろん、ユキが容認しているからこそですが。

と、そこはいいとして、別の仕事でいないので魔物たちの錬成の効率が落ちているいう話ですね。


「まあ、今までがおかしかったというのは変ですが、アスリンの技量に頼り切りだったのが問題です。アスリンを基準ではなく、誰でも同じような平均を見て対応するべきでしょう」

「あ~、まあ、それは当然ね。私たちはユキの身内の中では若いというか、幼い方だから、あまり跡継ぎというか後継は考えていなかったけど、そういうのは考えていかないとダメよね」

「そうなの?」


ヒイロはよくわかっていない様子で首をかしげています。

まあ、ヒイロに分かれというのはちょっと難しいですよね。


「ヒイロに色々私が教えているでしょ? 艦隊運用から、人事とか、ヒイロが成長することも狙っているけど、それは別の意味では、ヒイロというより、私がいない場合もちゃんと運用できるようにってことよ。だから……」

「あ~、ヒイロがいない時に部隊が動かないとか困るからそこら辺の教育をってこと?」

「そういうこと。今までは古参の魔物たちもいるから、問題なかったけれど、古参の魔物たちは私たちにとっても有用な戦力だしね。ずっと後方にいるっていうのは、甘い考えでしょう」


その通りです。

人の部隊も同じですが、結局優秀な人材は過酷というとあれですが、厳しい場所に向かわされ戦果を期待されます。

その場合、損耗率は上がるのです。

損耗というのは戦死とか除隊の怪我とかそういうのですね。


それが続けば優秀な人がいなくなり新人だけになります。

そうなれば部隊運用のノウハウがない人たちで、軍の運営ができるわけもなく、ぐちゃぐちゃになるわけですが、そんなのを黙ってみていることはありません。

ちゃんと部下を育てるというわけです。

未来の指揮官というやつですね。


「むう。ヒイロもそういう人を育てないといけないのか……」

「ヒイロはまだよ。私から教育を受けている最中だし。まあ、部隊教育なら、ヒイロから教わった部隊の皆がやっているはずだし」

「え? そうなの?」

「そうよ。まあ、適性もあるけれどね。教えるのが得意な魔物とかもいるの、もちろん人もね」

「どちらにしろ、簡単に優秀な指揮官クラスはできないという話ですね」

「そうね。指揮官や部隊長についても、最初は部隊長の新人って形になるモノね」

「あ~。そっか、兵士になったからってリーダーは初心者ってわけか~」


そう、兵士としては優秀でも部隊長や指揮官に向いているとは限らないんですよね。


「ま、私たちの方はアスリンのカリスマっていうブーストがあったからいいけど、人の軍人の方はどうなのよ?」

「あ、そうだった。魔物と同時に人も増やすんだったよね?」

「ああ、はい」


私はその質問に苦笑いしながら答えます。

それを見たドレッサも顔をしかめつつ……。


「その顔。やっぱり上手く行ってない?」

「上手くというと、その通りですが、やはり問題は人ということですね。ユキが呼び出した魔物と違って好き勝手に底上げをするわけにもいきませんので」

「まあ、そうよね」

「そっか、スキルをポンポンつけるわけにもいかないよね~」


そう、ヒイロの言うように、底上げ方法がほぼないのです。

あくまでも私たちは、ユキの身内であり、その目的を知っているからこそ、力の底上げをされている等の問題があります。


「何も知らない兵士にそんな事情を説明するにもね……」

「幹部になるのであればともかく、末端にそういう扱いをするとなると、各国が警戒しますからね」

「当然よね。スキルを好き勝手付与、レベル上げも簡単にとなると……」

「レベル上げもだめ?」

「通常の常識をぶっ飛ばした方法ですからね」


戦うのではなく、動かない標的に攻撃をあてて、倒すという全然身にならない、見せかけだけのレベルを上げるだけの方法です。

まあ、それも初期の兵士たちだけで、今は地道に魔物と実戦を重ね熟練度を上げています。

ということで、人を育てるというのは、魔物以上に大変なわけです。


「なので、どうしても錬成速度は速くならないですね。それに合わせて、指揮官、部隊長クラスもです」

「まあ、当然よね。とはいえ、新人という扱いではあるのでしょう?」

「新人以前の半人前ですね。何せ、増員を決めたのは大氾濫があってからですから。スウルスの一件からです。あれから、まだそこまで経っていませんからね」

「そういえば、ウィードの戦力不足が目立ってきたのはそこからよね」

「そうだった。ただの大氾濫かと思いきや、闇ギルドと隣国、キナウフ王国とイリナウ王国の暗躍があったって話だったよね。そこで、足取りを追ってキャナリアお姉を見つけたんだよね~」


そう、あのスウルスの大氾濫から、闇ギルドの影を追い、奴隷オークションにたどり着いて、エワイ王国のウェアンの町でキャナリアという旧ヴィノシア王国の姫の奴隷を保護し、そこからヒンスア王国へと交渉をして旧ヴィノシア王都へと向かい闇ギルドの連中を捕まえようとしたのだが、結局残党の一部は海側へと逃亡して、グラス港町の建設となったわけです。

しかし、簡単に流れを思い出しましたが……。


「……今、ここまでの流れを思い出していたけれど、グラス港町での海軍って今回の一件でできたのよね?」

「はい。新機軸の軍隊、海軍の創設には闇ギルドを追い詰めるためというのがありますし、いざという時は、グラスから即座に出撃し、海側から回るというのも考えています。もちろん、海の可能性を広げるためでもありますが」


流石に、敵を追い詰めるだけで町を作ったりはしません。

ちゃんと漁業はもちろん、農業、採取などの通常の仕事、そして海水浴などを含めた特殊な観光での収益なども含めて、新しい港町構想ということで大陸間交流同盟も注目の町となったわけですが……。


「正直、大氾濫からの期間は2年ほど、グラス港町なんて3か月という急ピッチ。まあ、大氾濫からの動きで一番長いのは調査や交渉などでの待機なのですが」

「まあ、情報がないと動けないものね。とはいえ、それだけのことが2年内とか……」

「ええ、びっくりです。どれか一つでも下手をすると10年単位なのですが、町をつくるなど、3か月とかユキを知らなければ正気を疑われます。ついでにウェアンの町ではちょっと離れたところに、ホテルも作っていますからね」


そう、グラス港町のほかにも、以前に奴隷オークションに人、というか要人を集めるため、急遽ホテルを建てました。

相応に高い立派なホテルです。


「ホテルだけとはいえ、アレもおかしいのよね……。って、あのホテルまだあったっけ?」

「ありますよ? エワイ王国がホテルの存続を希望していましたし、ダナッデミ商会、あの闇ギルドを追い詰めるために戦っているバマイ殿の所が人員を出してくれていますし」


あのホテルは現在、霧華の部下をトップとして、ウィードの人はもちろん、バマイ殿が率いるダナッデミ商会の人員を中心に回しています。


「なによりあそこは非加盟国で唯一のウィード拠点と言ってもいいのです。手放すことはありえません」

「あ、そっか。ロガリ大陸では、大陸間交流同盟と非同盟の対立があるんだっけ?」

「そこまで露骨ではないようですけどね。まあ、恩恵が少ない国が同盟に入っていないだけで、ロガリの四大国の庇護下ではあるというのは上げられます」

「まあ、そうでもないと、近隣国に攻め込まれるものね」

「はい。四大国、つまりセラリアの生まれであるロシュール、シェーラの生まれであるガルツ、そしてルルアが聖女を務めていたリテア、あとは勇者殿たちがいるルーメル。この4つに基本的に小国は庇護下に入り、領土争いのための盾としています。もちろん、輸出輸入などの物流や支援もありますが、大陸間交流同盟に参加する意味合いは低いということですね」

「別に敵対的ではないと」

「そうなります」


非同盟国と言われると、敵対的かと思いますが、そうでもないのです。

同盟を組むメリットが無いという話ですね。


「でも、逆に同盟に入らない理由は何?」

「聞いているかもしれませんが、国が遠すぎて、ウィードからはもちろん大陸間交流同盟の支援順はかなり後半でしょう。それに、今更というのもあります」

「ああ、今更参加したとしても、白い目で見られると?」

「そうでもないのですが、同じ非加盟国からは、変な勘繰りを受けるでしょうね。それに支援金がゼロというわけにもいかないですし」

「そういえば、大陸間交流同盟が大きくなってから、加盟金がいるんだっけ?」

「はい。これはウィードが決めたわけではなく、本当に大陸間交流同盟の会議で決まったことです。無制限にすれば、負担だけが増えるからと」

「確かにそうよね」


そう、大陸間交流同盟は無料で行っているわけではありません。

ちゃんと各国の利益があるからこそ行っているのです。

もちろん、発足するまえはウィードが頑張って各国の繋ぎをしていて、利益があるかというと微妙でしたが、今では相応の利益が出ています。

だからこそ、その利益だけを得るような真似はさせられないということで、加盟金と年間支援金が必要というわけです。

何せ、どちらにしても大国の傘下の国。

下手な財力がない国が迷惑をかけ続ければ、その庇護をしている大国の面子は潰れますから。


「と、話はそれましたが、トラブルがあり相応に育ててきましたが、育てれば育てる分、外に出している状態で……」

「確かにそれじゃ、兵士は増えないわよね。ああ、いざという時に動かせるってやつだけど」

「はい」


とまあ、こんな感じで、現在のウィード軍の人員は今もカツカツ状態なのでした。




増やすってことは足りていないってことですからね。

いつか戦線が無くなれば、その分負担は減るんですが、その後は軍人の大量解雇という話にもなりかねないって感じですが。

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― 新着の感想 ―
ここ最近の会社は大半が、ちゃんと会社の仕事に関して勉強していて、かつ教えたらすぐ出来るような教育期間が短い人を求めてる傾向があるように思います。まぁ前者は当たり前の大前提でしょうが………短い教育期間と…
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