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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1870堀:友人が心配なんです

友人が心配なんです



Side:シェーラ



「それでどうしたらいいと思うかしら?」


そう言って、部屋に入ってきたのはラビリスです。

珍しいかと言われると珍しいことですね。

何せガルツの大使館での会話ですから。

普通なら、ガルツに関係のない話をという所なのですが……。


「ふむ。あの二人が自分でか。それは確かに心配だな」

「あら、意外とお姉さまも心配しているのね。私はそこまでもないけれど、あの二人はガルツにとっても重要だし、あまり危険な所へは行ってほしくはないわね」


と、なぜか、同席しているローエルお姉さまとシャールお姉さまがコメントをこぼします。

いや、ガルツとのやり取りで話しているので、二人がいるのは珍しいことではないのですが……。

うん、なんでしょう、何か違和感があるというか……。

ああ、わかりました。


「お姉さまたち、それ私の時でも言いましたか?」


そう、私がウィードに送られた時より、心配している気がします。

そこをついてみると……。


「いや、当初は猛反対しただろうに」

「ええ、シェーラを送るのはダメっていいましたわ」

「……そういえば」

「とはいえ、危険度に関してはそこまで心配はしていなかったけどな」

「ですわね。なにせシェーラに手を出せば停戦からまた開戦になるような状況でしたから。とはいえ、半年もしないでガルツに戻ってくるとか当時はびっくりしましたが」

「あはは、そんなことありましたね」


確かに、当時は荒れましたね。

それだけ大事にされていたということですね。

今更ながら思い出しました。

当時のウィードは、セラリアさんの妹で聖女エルジュさんのことでリテアとかの小競り合いにガルツが巻き込まれたという状況でてんやわんやでしたからね。

まあ、それがあったからこそ、ユキさんたちと出会えたわけですが。

そして、アスリンとフィーリアとも。


「で、それはいいとして、あの子たちも単独で、いや2人で任務をすることになるとはな」

「ええ、時の流れは速いですわ」


二人ともしみじみと言っていますが、ラビリスはそうではないようで。


「そう、心配なのよ。確かに戦闘要員として、デリーユやタイキ、ホーリーがついていくけど、それでも心配なのよ」

「いや、それは過剰戦力もいいところだろう」

「そうですわね。デリーユ様ひとりで事足りるのでは? ああ、休憩とかを考えるとそれが妥当ですわね。というか、ランクス側がよく許可をしていますわね」

「ああ、それに関しては、新大陸との交渉とか情報がまっさきに入ってくるからってことで許可してもらっているらしいわ」


確かに、タイキさんはそういう関係で王であるにもかかわらず、毎日のように新大陸へ出向していますね。

とはいえ、最近ではやることがなくて手持ち無沙汰という話を聞いていましたから丁度よいと言えばその通りなのでしょう。

ホーリーさんとゲームしているとか聞いていますし、なんというか、ユキさんと同じで誰とでもある意味対等なのですよね。

と、そこはいいとして、ランクスが許可している理由を聞いたお姉さまたちはというと。


「ああ、それは得だな。事前に新大陸の情報を得られるというのはかなりの得だ」

「それにタイキ王であれば、そのほかにもオーエとかいう国と友誼を結んでいるのでしょうし。先に行ける国のメリットですわね」

「いえ、タイキさんは南部の魔物の押さえに行っていますのでオーエとは直接かかわりはありません」

「なんだ、そうなのか。それだとあまり……というわけでもないか。土地を見ているのだしな」

「大国が悩んでいる土地を間近で見れるというのはそれはそれでありがたい話ですわね」


その通りです。

先んじて、大国が町をつくる予定の土地を見られるというのはそれだけで大きなメリットです。

そして、タイキさんのランクスも適した場所を得ることでしょう。

まあ、そこは小国なので誰よりも先に土地をというわけにはいきませんが、それでもあの荒野を自身で知っているというのは大きな利点でしょう。


「って、タイキたちのことはどうでもいいのよ。アスリンとフィーリアのことを言っているの。ローエルだってかわいがっていたでしょう? セラリアだって全力で否定していたんだから」

「ああ、セラリアはな~。エルジュが一度危険な目にあっているからな、そこから過剰なんだよ」

「当然では? ローエルお姉さまもエルジュさまが生贄みたいな状況で憤慨しておりましたし」

「それはな。とはいえ、今回のアスリンたちの調査に関してはな~。ここまでの戦力が揃っていて、心配というか行くのを阻止するような真似はな~」

「確かに、心配しすぎですわね。ラビリスさんもその自覚はあるのでは?」

「むう」


ラビリスも心配しすぎというのはわかっているのか口ごもる。


「はぁ、やっぱりだめか。で、ユキに代案として私が一緒について行けばいいって話を言われてね」

「あはは、それはそうですね。私たちが一緒に行けば安心できますね」


私はラビリスの言葉に笑いながら答える。

そんな冗談をと思っていたから。


「でしょ? だからシェーラも協力しない?」

「え?」


ラビリスが真面目に返答してきたのでびっくり。


「何をいっているんですか。ラビリスさんがいなくなればウィードの物資が止まるでしょう? そうなれば輸出なども止まりますわよ? ガルツの物流を預かるものとして認められませんわ」


そう、唖然としている私の代わりにシェールお姉さまがそう言います。

その通り、ラビリスはウィードの物流を握っているのです。

ラッツさんも同じと言えば同じですが、ラビリスの場合はウィードというよりダンジョンマスターとしての能力で地球産の物資を生み出しているので、それはラッツさんではできないことです。

いや、やろうと思えばできないことではありませんけど、役割としてそうなっているのです。


「大丈夫よ。トラブルに備えてストックは相応にあるから、私がいなくても予備物資で今のままの輸出量なら向こう5年は持つわ。ね、シェーラ?」

「そうですの?」


そこで私に話を振りますか。

いえ、まあ、確認できるのは私しかいないですが……。

さて、ここは……事実を言うしかありません。


「はい。何があるかわからないので、物資はできるだけためておくようにしています。何せユキさんの地球の物資がいつまで獲得できるかわかりませんから」

「まあ、今の状況もルナ様のおかげだしな」

「確かにそうですわね。ユキ様もそれを憂いて各国で色々生産できるように、農業はもちろん、技術支援をしていますわね」

「そうよ。ルナが今すぐにってわけじゃないだろうけど、いつまでもこんな状況が続くとは思っていないみたいね。あるいは、何かのトラブルで物資が途切れることもあるだろうってことで、ストック、物資の余剰は作っているのよ」


ユキさんはそういう所は慎重ですからね。

物資関連はとくに人の生死に繋がりますから、できうる限りストックをためています。


「ふむ。それならラビリスが向かっても良いとは思うが……」

「今回はそれでいいとして、次はどうするのですか? また同じことをとなると評判にかかわりますわよラビリス様」

「むむ……」


シャールお姉さまの言う通りです。

これだけで済めばいいのですが、アスリンたちの出張、現地調査はきっとこれからどんどん増えていくでしょう。

そのための実績でもあるんですから。

そのたびにラビリスがついていくというのは無理があります。

そう考えていると、ローエルお姉さまが口を開きます。


「そう言ってやるな。ラビリスがアスリンたちが心配というのは、この場の全員よくわかる。いくら成長しているとはいえ、魔物が山ほど来る可能性がある場所へ送り込むのは誰だって気が引けるもんだ。どれだけ戦力を整えていてもな。デリーユ殿だけってならなにも心配はしないのだがな」


それはそうです。

デリーユさんなら、魔物の大軍であろうと拳一つでどうにでもなるでしょう。

殲滅、撤退もその判断に異を唱えることはまずありません。

ですが、アスリンたちだと非常に心配ですね。

私でも心配です。


「だから、今回は付いて行って、信頼してやるというのはどうだ? セラリアにもそう言えば納得するんじゃないか?」

「ああ、そういうことですか。そういえば、私が交渉事で初めて国を出るって時はローエルお姉さまが付いてきましたが……」

「ああ、駄々をこねて押し込んだ。それでシャールの姿を見て、大丈夫だなと安心したわけだ」


ああ、なるほど。

実体験があってのことだったんですね。


「どうですか、ラビリス?」


私はローエルお姉さまの話は悪くないと思いそう聞いてみる。


「……そうね。これ以上は望めないか。はぁ、じゃあ、それでセラリアやユキに話してみましょう。ハヴィアたちは一応アスリンたちの部下って扱いになるでしょうし、私たちが加わるってことで」

「それが無難ですね。って私たち?」


セラリアさんのことでしょうかと思っていると、ラビリスは目を丸くして。


「あら、シェーラは来ないの? まあ、それならそれでいいんだけど……」

「うーん、行きたいという気持ちはあるのですが、私もシャールお姉さまと色々ありますので」


本心としては付いていきたいのですが、私はガルツとの外交も兼ねています。

もちろん、大使館の人が大抵のことはやってくれていますが、今みたいに、上役での情報交換や物資のやり取りなどの話は、こうして姉妹や家族と話す方が圧倒的に早いのです。

これは、ユキさんの元に集っている皆さんが共通している認識です。

地球で言う、ホットラインに近いものです。

なので、わずかでもその席を空けるのは……。


「ああ、シェーラはそういうことは気にしなくていい。なにかあっても、私がクアルの所に行って連絡すればいい」

「……まあ、連絡手段が多々あるのは良いことですが、お姉さまも大概ですわね」


そうですね。

私も本当にそう思います。

あと、ウィードの防諜とかそういうのが気になるところです。

いえ、半ばローエルお姉さまはウィードの所属みたいになってはいますけど。


「なら大丈夫ね。シェーラも来るわよね?」

「はい。それはなら行きます」


ということで、二人でお願いに行くのでした。



いつもの4人そろっての出発になりそうです。

まあ、最後というとおかしいですが、妹扱いはこれが最後にはなりそうですが。

これでみんなの心配が一つなくなるとの同時に、遊撃戦力の増加にもなるわけです。


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