落とし穴外伝:思い出の初恋
思い出の初恋
ある日、少し空いている時間で、新作ゲームの情報を漁っている時の事だった。
不意にあるゲームの情報が目に留まった。
「あれ? これって……」
見たことがある。
そう思い、その情報を調べると、そこには驚愕の事実が載っていた。
「まさか、これがリメイクされるのか……」
思わずそんなことをつぶやく、即座に俺は彼に連絡を入れることになる。
いや、知ってるのかな?
まてまて、彼が知らないわけないよな。
じゃあ、連絡しない?
いやいや、それこそありえない。
ゲーム談義は楽しいし、ユキさんと会うちょうどいい機会だ。
ということで、俺ことタイキは、同じゲーム仲間であるユキさんにこのことを連絡をするのであった。
Side:ユキ
それは突然だった。
いや、情報なんてものは何時だって突然だが、俺にとってはここ最近一番の驚きだった。
召喚で呼ばれたとか、戦争になったとか、まあ、それも驚いたが、個人的にはこれの方が驚いた。
「マジか!」
思わずそう言って椅子から立ち上がる。
「「「!?」」」
俺の様子に驚いて、執務をしていたリーア、ジェシカ、サマンサ、クリーナ、フィオラ、プロフ、オレリア、ホービス、ヤユイ、リュシの視線を集める。
というか、今日に限ってフルメンバーだな。
いや、ニーナがいないか。
まあ、それはそれとして……。
『マジですよ! 見てみてください! 後でこれのことで話しましょう』
「わかった。あとでまた連絡する」
返事をする際には、落ち着いて返す。
視線を集めたのは俺が大きな声を上げたからだしな。
いやぁ、普通はこんなことはしないんだが、久々に良い情報で興奮してしまった。
こういうのは、緊急事態の時だしな。
皆、緊張感をにじませている。
速く誤解を解いた方がいいだろう。
「みんな。さっきのは誤解だ」
「「「誤解?」」」
全員が首を傾げる。
まあ、俺があれだけ叫んだんだから、何が誤解だよって話だろう。
俺だってそう思う。
この手の説明って何をどこからしたらいいのか、毎度迷うよな。
とはいえ、俺が悪かっただけの話だしな。
「タイキ君からの連絡で、面白い新作ゲームの情報が来ただけだ。私事だったんで、すぐに落ち着いたわけだ」
「なるほど、確かにそれは誤解ですね。何か緊急事態かと思いました」
俺の説明に納得するジェシカ。
まあ、俺にとっての緊急事態ではあったけどな。
「でも、ユキさんがそれだけ声を上げるゲームってびっくりですね」
「確かにユキ様は基本的に公私混同はしませんし、そこまで驚くようなゲームなのですか?」
「……ユキのするゲームは面白い。気になる」
「ですね。戦略系とかでしょうか?」
リーアの言葉にサマンサやクリーナ、フィオラが興味を持ってしまう。
別に隠すこともないが、残念ながら今は業務中、就業時間である。
「わかった。それはあとで話そう。今は仕事時間だ。俺が何言っているのかと思うけどな」
ことの発端が本当に何言ってんだとは思うが、こういうのが正しいだろう。
さぼったところで休み時間や帰る時間がずれるだけだしな。
「その通りですね。ユキ様のお話はあとの楽しみに取っておきましょう」
サマンサがそういうとみんな納得してくれて、仕事を再開する。
しかし、みんなゲームの話ってそこまで興味があるものか?
まあ、本人たちが聞きたいっていうなら聞かせていいか。
よくある物語だし、あまりその手のゲームは話したことなかったしな。
ギャルゲー。
その布教に一役買うか。
ということで、皆を連れてタイキ君との話に向かったわけだが。
「うぇっ!? 奥さんや女性の部下を連れてギャルゲーの話ってマジですか!?」
なんかすごいびっくりされた。
いや、気持ちは分からないでもない。
何せ……。
「「「ギャルゲー?」」」
「……なるほど」
一人を除いて俺とタイキ君の言葉の意味がわからず首を傾げているが、クリーナだけは地球の文化吸収に余念がなく、ゲームも相応に好きなので理解しているようだ。
何せ、本を読むのが好きだしな。
ギャルゲーは守備範囲なのだろう。
「クリーナさんはお分かりになるのですか?」
サマンサがクリーナの反応に対して質問をする。
さて、クリーナはどうこたえるのか。
「えーっと、クリーナさん。穏便に説明お願いできますか?」
「ん。別にそのジャンルはやっている。物語が絵と声がついて良い物だと思っている。まあ、タイキの不安もわかるから大丈夫?」
「なんで疑問形……」
「結局のところ、選ぶというのがあるから、どうしても避けられないと思う」
「……確かに」
クリーナの言葉にがっくりするタイキ君。
なので俺がフォローをする。
「そうそう、別に悪いことじゃない。物語を見るために必要なことだしな」
「えーと、ユキさんは奥さんたちに詰められる可能性は考慮しているんですか?」
「いや~、流石に現実とゲームは区別しているからな」
「それでもですよ。まあ、いいか。ユキさんが苦労するだけだし。じゃ、クリーナさん説明よろしくお願いします」
ということで、ギャルゲー談義の前にギャルゲーとは何たるかを説明してくれる。
「ん。ゲームを知り尽くしている私が説明してあげよう」
「なんで偉そうなんですの?」
「私が先生だから、サマンサは大人しく聞く」
「はいはい。それでぎゃるげーとはなんなのでしょうか?」
「ん。分類的にはシナリオノベルと呼ばれるジャンル。シナリオノベルというのはゲームで文字を読ませ、絵と音を駆使して臨場感を高めるもの。昔は音声はなかったが、今では音声付が当たり前」
「なるほど。ドラマのようなものでしょうか?」
ジェシカは自分の理解できる範囲で回答を出す。
「ん。ジェシカの言う通りにている。だが、違う点があり、シナリオノベルは主に主人公の視点で進んでいき、選択肢を自分で選ぶことで、結末が変わる」
「ああ~、RPGみたいなモノかな?」
「リーアの言う通り、それも似ている。とはいえ、戦闘とかはないモノが多い。そういうのはRPGでやればいいから、物語を読むという感じが近い。自分のペースで読み進められるから動く絵本みたいなもの」
確かにクリーナの言うように、動く絵本と言えばその通りだな。
「これがシナリオノベルの基本だと思ってくれればいい。そしてユキとタイキが言っているギャルゲーとは、それにある要素を盛り込んだもの」
「ある要素ですか?」
オレリアが首を傾げる。
想像もできないようだ。
いや、まあできるような名前じゃないな。
「恋愛要素」
「「「恋愛!?」」」
その答えに全員が驚きの声を上げ、こちらに驚きの視線を向ける。
あれ? なんかイメージしていたのと違う気がする。
何だろうと思っていると。
「ユキ様が恋愛? 私たちのアプローチをめんどくさがっていたユキ様が?」
「不思議ですね。意味が分かりません」
サマンサの言葉に頷きながらジェシカが同意すると他のメンバーも頷く。
そっちかよ。
「そっちかい」
俺の思いをタイキ君が口にする。
「私も最初は驚いた。でも、他人の思いや感情を理解するにはよいゲームだと思う。ユキが他人の思考を勉強するためにやっていたと思えば納得できる」
「「「なるほど」」」
それで納得するのかよ。
俺って、そんなに非人間的か?
「え? ユキさんってそんな感じだったんですか?」
「いやいや、違うのは分かるだろう」
「あ~、まあ、あの反応からわかりますけど、流石に奥さんたちからこの反応は予想外ですよ。どれだけ塩対応だったんですか?」
「タイキ君も奥さん増やせばわかると思うぞ。ついでに俺を超えてみないか?」
「あ、すいません。わかりました」
俺の言いたいことが分かったのかすぐに謝ってくるタイキ君。
ゲームの主人公がハーレム作るのはいいんだよ。
面白いところだけ切り抜きされているからな。
こっちは酸いも甘いもなんだよ。
むしろ国とかの政治も関わっているハーレムだから、胃が痛いんだよ。
と、こそこそ話している間にクリーナの説明が進む。
「そこで、タイキが懸念していたのは、その恋愛ゲームのキャラクターが可愛いこと。恋愛というからには、そのかわいいキャラクターと結ばれることを意味する。ユキやタイキみたいに器や環境がハーレムに向いていないので、選べるのは基本的に一人だけ。つまり、ユキやタイキの好きな女性のタイプがバレる可能性があるから」
「「「!?」」」
うん、一番懸念の所をちゃんと驚いてもらえて、なんか安心するっておかしいな。
「とはいえ、この手の恋愛ゲーム、つまり可愛い女の子、ガールが出てくるゲームを縮めてギャルゲーは全ルート攻略すると別のルートが出てくることがままあるから、一つだけで終わるのはもったいない。そして、物語を多角的な視点で見る意味もあるから、異なる物語を見るという意味でもゲームの目的でもある」
「そういうことですか。確かに何のためにルートを用意しているか意味が分かりませんからね。全部をプレイすることで、見方が変わり、別の物語が出てくるなら全部プレイするのは道理ですね」
フィオラはクリーナの説明に納得している。
いや、間違ってはいないけどさ。
なんで、そこまで信頼高いの俺?
いや、逆に貶されているのか?
「……とはいえ、そのゲームを始めて最初に読みたいと思ったキャラクターは個人の趣味ということ。つまりプレイヤーの好みということになる。つまりユキの女性の趣味が分かる」
「「「!?」」」
そこでようやく意味が分かったようで、改めて俺に視線を向ける。
「いや、今まで散々ギャルゲーはやって来たしな」
「好みじゃないのを先にクリアするタイプですか? お楽しみは最後にって」
「どうだろうな。その時の気分だな。色々やってみると分かるが、結局の所、どのキャラクターも魅力的に見えるんだよ。タイキ君もわかるだろう?」
「わかります。やってみるとこの子も意外といいなーってのも。あ、クリーナさんもわかります?」
「わかる。ドレッサみたいなツンデレは良い物だとわかった」
あ、クリーナはツンデレ好きなのね。
俺としては実際のツンデレは面倒なんだけどな。
ドレッサは別に子供の強がりみたいに見えたんで特に気にしてはいないが。
と、俺の好みについてまとめないとな。
他のみんなが見ている。
「つまり、俺の好みっていうのは無いな」
「無いのですか?」
「ああ、こういうのは時間をかけてっていうと違うが、一緒に過ごして作っていくものだろう。最初は嫌いでも好きになるなんてことはよくある。いや、それを言うなら近づく女性は嫌いだったっていうのは間違いないか」
「「「ああ」」」
これは凄く納得される。
「だから、嫁さんたちやプロフ、オレリア、ホービス、ヤユイたちが好みってことだ」
「おお、そう締めますか」
「誰かを一番ではなく、全員一番だからな。好きに優劣はないさ。優先度はあるけどな」
「む。優先度は誰が一番?」
クリーナがすかさず食いついてくる。
争いの火種になりそうなのにな~。
ま、これも聞いてくると思ったから回答は単純だ。
「そりゃ、子供たちだ。自分のことをまだ上手く守れないからな。嫁さんたちやプロフたちはできるだろう?」
「「「納得」」」
こうして、ギャルゲーの話をメインにワイワイしていくのであった。
6月26日に発売しました、Toheartリーフの伝説のゲームですね。
自分は大好きで何度もやり込みました。
あ、買いましたよ。
もちろん。




