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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1862堀:分からない届かない場所であるなら

分からない届かない場所であるなら



Side:アスリン



「こちら、冒険者ギルドからの新しい資料です」

「ありがと~。ここに置いておいてください」

「はっ、失礼します」


そういって、部下?の人が出ていく。

一応私は魔物軍の一部の指揮権を持ってはいるけど、お世話とかは部下っぽい人たちの仕事だし、基本的に私たちの言うことを理解できる知能はあるから、そこまで面倒は無いんだよね。

訓練のスケジュールを組むぐらいかな?


それで、私が一番働いているというか、力を入れているのは、そういう部下の管理とかじゃなくて。


「う~ん。やっぱり、あんまり違いは無いかな~?」


そう、魔物の調査だ。

冒険者ギルドから届いた新大陸の魔物についての情報資料をペラペラと見てみるんだけど、やっぱりこちらの魔物とそこまで違いはないみたい。

いや、新大陸の荒野特有の魔物は違うけど、やっぱり似たり寄ったりで、これと言った目新しい情報はないんだよね~。


私以外の視点として、多少なりとも期待はしていたけど、やっぱり無理か。

いや、私も自分が超天才とか思っているわけじゃないんだけど。

ある程度の意思疎通ができるのはメリットだよね。

お兄ちゃんはそこから何かヒントは無いかなって期待しているし、もうちょっと頑張ってみよう。

なので、改めて情報を整理するためにホワイトボードの方へと移動してわかっていることを書き出してみる。


「錯乱していた魔物さんたちはもとに戻って落ち着いている。思い出したことは、南部にいた記憶はあれど、いきなり記憶が途切れている。指揮官と思しき魔物の存在は分からず。でも、同士討ちというか魔物同士の戦いはなかった」


これは今分かっていること。

ほぼ何もわからないと同じではあるけど、この中からわかることは……。


「同士討ちをしていないってことが大事だよね。普通意識喪失してからケガもなく移動はできないし、あるいは空腹などによる暴走だと相手を選ぶとかできない。所かまわず戦いになるはず、でもそれが無いってことは、やっぱり何かしらの意思が働いていたのは明確」


うん、これは間違いないと思う。

ただの魔力喪失、あるいは食糧不足による魔物の暴走なら、辺りを食い散らかしてくるはずだから、まず北部……オーエがある大森林までやってこれるはずがない。

やってきたとしても少数になる。

だから、意図的に誰かが誘導したのは間違いない。


「でも、理由が不明で、犯人もわかってはいない。まあ、南部の方に進めれば何かしらヒントはあるとは思うけど……。ああ、つまりはそういうことだね」


私は詰めていくところがわかって、さらに書き出す。


「えーっと、詳しく調べるためには南部の調査が必要っと」


そう、幾ら予想を立てても現場を見ないと何とも言えない。

つまり、現地の調査をするしかない。


「まあ、すぐに調査できるかっていうと違うけど」


流石に新大陸で優先するべきことは北部の国々の動きだっていうのはわかるからね。

とはいえ、事実は事実。

これをお兄ちゃんに上げておこう。


「でも、これじゃ前回の報告と変わらないんだよね~。何かほかにないかな~?」


そう言いながら書き出した文章を読んでみる。

何か新しい発見はないのかな?


「魔物さん。うん、魔物さん」


魔物の事。

これが一番ネックになっているんだよね。

南部の砦から私たちがでて調査を堂々とできない理由。

いつ次の大氾濫が起こるからわからないから、大規模な調査を行えないんだよね。

戦力を分散することになるから、砦の部隊はともかく調査隊が大氾濫に巻き込まれて全滅する可能性もあるからね。


「……つまり、被害が出ても良いってことだよね? そうなると使い魔かドローンでの偵察だけど……」


それもやっていないわけがない。

足りていないんだよね。

そう、これも南部の調査部隊が動いていない理由なんだけど、この新大陸って物凄く広いんだ。

使い魔やドローンを大量に出したとして、それを管理する側がいないんだよね~。

一人でだいたい10画面は見られるけど、それだとおざなりになるし、見落としもでてくる。

こっちとしては重要な情報が欲しいからこその偵察なんだし、それだと意味がないんだよね。


「う~ん。やっぱり難しいね~。やっぱり防衛ラインでのドローン監視が一番かな?」


今のところ、人手が足りていないから、ドローンは基本定期に定位置に配置して、固定カメラのように扱っているんだよね。

主に、防衛ライン、つまりは砦やオーエの南の町の為に。

あとは北部の調査が優先されている。

本当にどうしたものかと思っていると、不意に部屋のドアが開かれて……。


「アスリン。お邪魔するのです」


フィーリアちゃんがいつものように入ってくる。

普段は鍛冶区で働いているんだけど、今回は新大陸の鉱物の調査もあるから、隣の研究室兼鍛冶場を借りているんだよね~。

ちなみに、ナールジアお姉ちゃんがよく使っている。

と、そこはいいとして……。


「どうしたの?」


別に焦った様子ではないから、何か事件が起こったわけじゃないというのはわかる。

でも、まだ勤務時間だし、お仕事の話だと思うけど。


「ちょっとした相談なのです。南部のことなのですが」

「南部のこと? 何か向こうであったのかな?」

「そこは大丈夫なのです。トーリ姉様たちが普通に砦を治めているのです。ここに来たのは南部奥の調査の件なのです」

「あ、いま私も奥をどうやって調査をしようかって思っていたところだよ。今のままだとどうしても情報不足だしね」

「そうなのです。フィーリアも鉱脈を調べたいのですが、このままだとしばらくは足留めされそうなので、どうにかしたいのです」

「鉱脈を調べたい? どういうことかな?」


鉱脈を調べるってそこまで難しいってわけじゃないと思うけど?

そこを掘るだけだよね?


「ああ、そうだったのです。これを見るのです」


そういってフィーリアちゃんは一枚の写真を取り出す。

そこには崖が映っている。


「これは?」

「この崖の下に鉱脈が走っているのです。その全長はまだわかっていないのです」

「え? わかっていないの?」

「そうなのです。一応、ドローンでの偵察でおよそ100キロは超えているのは確認できているのですが、それ以上は防衛ラインも考えると動かせないとのことなのです」

「あ~、偵察しようにもそこに人員がいるからか~」

「そうなのです。ドローン偵察だけでもとは思っているのですが、それよりも近隣の安全確保と調査が優先されているのです。まあ、当然なのですが」


うん、それは当然なんだよね。

だから私も悩んでいるんだけど。


「だから、アスリンと一緒に調査をすると言えばいいのです」

「そっか、私たちが調査の人員になればいいのか」

「そうなのです。誰が管理するか、人員を集めるのかって問題だったのですが、それをフィーリアとアスリンでやれば問題ないはずなのです。なにせ、今は調査が滞っていて手が止まっているのです。アスリンはどうなのです?」

「私も同じだよ。さっきもいったけど調査をどうしようかって思っていたんだ。だから喜んで協力するよ」

「よかったのです」


こうして、私とフィーリアちゃんは詳しく話を詰めていくことにして、席について改めて話し合うことにする。


「さて、やると決めたからと言って、そのまま持って行っても兄様たちは許可をしてくれないのです」

「ちゃんと計画書作らないとね。ちゃんとした大人だからね」

「そうなのです。甘えん坊のお子様ではないのです」


今では、私たちもちゃんとした大人として扱われているから、こういう仕事はちゃんと計画書とかプレゼンをしないといけないんだよね。

というか、小さい頃はお兄ちゃんたちがこんなフォローをしてくれていたんだと思うと、すごく大事にされていたんだなーって思う。


「で、具体的な案はあるの?」

「もちろんなのです。そうでなければアスリンに会いに来ないのです」


そういって、フィーリアちゃんは書類を出す。

それを私は手にとって読み進める。


「……そっか、どこを調べるかってところは、フィーリアちゃんが見つけた崖に沿って南に行くって作戦か」

「そうなのです。無暗に進むよりも、鉱物の調査も兼ねられるのです。ついでに言えば崖下の魔物の調査という名目も加えられるのです」

「確かにね~。台地の方にも魔物がいたけど、意外と特殊だったし」

「確か、スライムとか小型の魔物が多かったのですよね?」

「うん。大型の魔物とかは台地は狭いとはいわないけど、活動範囲が狭くなるし。ああ、鳥タイプの魔物は大きいね」


そう、台地にも魔物はいた。

でも、鳥タイプ以外の魔物は小型やスライムぐらいのモノだったんだよね。

おそらく、大型の魔物が育ちにくい環境なんだと思う。

台地も相応に広いけど、それよりも荒野の方が広いし、ほかの獲物も多い。

魔物は勝手に顕現するタイプもいるけれど、ちゃんと生きているのも多い。

この生きるというのは、食べ物を食べて、寝て、子供を作ってっていうそういう生きる。

つまり、食べ物となる元がいるわけだけど、台地では小型の魔物しかおらず、大型の魔物が生きるだけの生態系、数を養う量はないんだよね。

まあ、詳しく調べればどこかにボスみたいな何百年も生きているような個体がいてもおかしくないけど、それは生活しているわけじゃないし、ただ居座っているだけだから、例外。

と、話はそれたけど、つまり、崖の下も別の環境下として、新種の魔物がいてもおかしくないって話。


「だから、私も口添えが可能ってわけだね?」

「そういうことなのです。あとは、予算とか部隊とかそこら辺なのですが……」

「流石に単独小隊だと問題だし、3小隊ぐらいかな?」

「それぐらいが妥当なのです。調査をする部隊、それをカバーする予備、ドローン監視をしつつ情報整理をするって所なのです」

「それだと、お休みできなくない?」

「あ~、確かになら4小隊なのです?」

「それがいいと思う。あとは、装備に関してだけど……」

「それは魔物と戦える程度は必要なのです。あとはドローンとは別の記録機器があった方がいいのです」

「だよね。鉱物採取とかもするんでしょ?」

「そうなのです。一応魔術だけで出来ないことはないですけど、つるはしとかも持たせるのです」


こんな感じで、私とフィーリアちゃんは調査部隊を送るための計画書を作っていくのでした。

お兄ちゃんたちは許可くれるかな~?

まあ、だめだったら改善点を教えてくれるだろうし、まずは叩き台を形にして出すことが大事だよね。



アスリン、フィーリアはこの手の仕事はもう普通にこなしています。

まあ、基本的には指示されたことをこなすことが多いですけど、それでも自分がやった方がいいと思うことは計画書を作って提案しております。



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