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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1851堀:いつものように敵の狙いを利用する

いつものように敵の狙いを利用する



Side:ユキ



『お兄さま、映像は音声は届いていますか?』


そうモニターからヴィリアの声が届く。


「ああ、映像、音声ともに良好だ。気を付けてな。俺も常時見ていたいが、そうもいかなくてな」


作戦中のヴィリアに付き添ってやりたいのだが、俺には通常業務とかその他いろいろがあって時折という感じだ。

まあ、ちゃんとサポート人員が指令室にいるから問題ないんだが、それでもな。


『はい。大丈夫です。お兄さまも無理はしないでください』


そうヴィリアから気を遣われてしまう。

俺の忙しさをわかっているからな~。


「ニーナ、キシュア、スィーアも頼むぞ」

『任せて』

『ああ、任せとけ。そっちの仕事を頼むぞ』

『ええ、そっちの不手際でこちらが襲われるなんてのはやめてほしいですから』

「ああ、そっちは任せてくれ」


で、視線を外して、俺はテーブルの上の書類に目を向ける。

これは、先日の夜、ギアダナ王、宰相と話した内容だ。

シアナ男爵たちは今のところ王都で待機してもらい、改めてクリアストリーム教会を含めた今後の対応を考えているところだ。

オーエに送る戦力も選別するにしても、即座にというわけにはいかないようだ。


このことからも考えて、トルル侯爵の敗北は決まっていたってことだよな。

それだけクリアストリーム教会は嫌いだったらしい。

もちろん、思った以上に早く結果が出たというのもあるだろうが。

おかげでクリアストリーム教会も思った以上に動きが鈍いらしい。

まあ、クリアストリーム教会を信奉しているトルル侯爵がいないんだからしょうがない。

向こうとしては制圧しているはずのオーエにクリアストリーム教会の人員を送って、亜人を自由にしたいっていう目的があるだろうが……。


「ん? そこはねらい目か?」


クリアストリーム教会の狙いは北部で邪魔な勢力であるギアダナ王国の勢力を落とすことだったのは、ギアダナ王や宰相の話を聞いてわかった。

何せ、国内で亜人をかくまっているとか、嘘でもいえるような内容じゃない。

俺たちが敵であれば即座にクリアストリーム教会に流されて面倒なことになること請け合いだ。

こちらを罠にはめようとしている可能性もゼロではないが、即効性のない話だし、ほかに効率のいい方法が色々あるので、信憑性が高い。


それだけ、ギアダナ王というか亜人擁護派は追い詰められていると言ってもいい。

ポッとでの俺や敵対しているオーエ王に話していい内容ではない。

つまり、あまり手をこまねているとギアダナ王や宰相の政権が倒れかねないわけだ。

時間がない中で、敵の情報を得て勝利を掴むには、さっさと本人たちから情報を聴ければいい。


「何か思いついたんですか?」


俺がそこまで思考に追いついたときにリーアがお茶を出してくれる。

リーアが付きっ切りだったキャナリアが独り立ちっぽいのをしたので、リーアは俺の護衛に戻っているわけだ。

当初はヴィリアと一緒に北部の探索をと思っていたが、リーアは勇者という厄介な職業があり、北部でその存在がばれるとかなり面倒になりそうなので、控えてもらっている。


「ああ、デリーユを使って魔王勢力を立ち上げるよりはましなのがな」

「あはは。デリーユは嫌がっていましたよね」


そう、一案として、勇者がダメなら魔王であるデリーユに出てもらうかって話もしたわけだ。

別に勢力でなくとも、単独でぶっ壊してもらう災害として。

まあ、リーアの言うように、デリーユはその手の暴れん坊というか、災害扱いは嫌なようで拒否している。

それに、俺たちも冷静に話し合ってデリーユが俺たちの指示で動いていたと後日ほぼばれるだろうし、その場合、クリアストリーム教会はもちろん、ほかの国との関係もかなり悪くなるということで、今のところは。


最悪はデリーユという魔王だけでなく、リーアという勇者、そして勇者王タイキ君とかも投入して、ウィードというかギアダナ王国の正当性を説くことも可能だ。

流石にこちらの手札に勇者や魔王が複数いることはまだ教えていないが。

混乱の元だしな。


「それで、何を思いついたんですか?」

「ああ、リーアにも、プロフたちにも聞いてもらおうか」


とりあえず、意見を聞いてみたくて俺が考えてたことを話すことにする。


「ギアダナ王国が支配していると勘違いしているオーエに軍というか人を送り込むって話があるだろう?」

「ああ、支配しているなら、とりあえず統治する人を送らないとだめって話ですよね」

「それで、クリアストリーム教会には知られたくないから排除しようという話になっていますが、それはトルル侯爵がクリアストリーム教会と深くつながっていることを考えると難しいと」

「その通りだ。クリアストリーム教会がオーエの統治に関して必ず関与してくるのをどう退けようかって話になってる。まあ、一応領土的にはギアダナ王国が占有している状態になっているから、クリアストリーム教会が口は出せない。っていうのが表向きにあるが……」

「そのような表向きの話は、こっそりついてきたりでどうにでもなりますね」


俺の言葉を続けるように、オレリアが冷静に事実を告げる。


「だな。というか、拒否されるとなおの事、躍起になってついてくるだろう。偶然でも装ってな。そしてオーエに入り込んで情報が漏れる。まあ、そこはいいんだが」

「いいんですか~?」

「ああ、情報は洩れるものだし、元々時間稼ぎだしな。完全に間者を排除したとしても、ギアダナ王国が頑なにクリアストリーム教会の受け入れを拒否していればいずれバレる。早いか遅いかだけの違いだ」

「あ、わかりました。遅いか早いかだけなら、拒むんじゃなくて受け入れようって話ですね」


珍しくリーアが正解を口にする。


「えっと、どういうことでしょうか? 受け入れるって?」


ヤユイは理解が追い付いていないようで首を傾げている。


「簡単に言えば、こっそりついてくるのであれば、正面から受け入れてもらえばいいって話だ」

「ええっ? それって敵が入ってきて情報を抜かれるんじゃ?」

「そうだな。とはいえ、本部からの偉い人を迎え入れるってことは、こっちも情報を取れるってことだし、出入りする情報もこちらで制限できる。伝令とか特にな」

「「「あ」」」


ヤユイ、ホービス、オレリアは俺の言いたいことが分かったようで声を上げる。


「ユキ様はこの手の戦法を好んでいますね」


プロフが書類を処理しながらそう言う。


「だよね~。敵が見に来るなら防御を固めるんじゃなくて、受け入れてあえて制限させるってやつ」

「まあ、内部に入り込んでいる上級幹部と、外からちまちま情報を集めている下っ端からの情報。どちらを優先するかと言えば……」

「それは~、当然上の人ですよね~」

「ま、与える情報も当然制限させるし、こちらの都合の良いようにするけどな。ついでに情報を置いて行ってもらう。ヴィリアたちにも情報収集を頼むが、こっちでも集めるのは当然のことだ。というか、あっちはあくまでも裏での活動だしな。俺たちがメインでやるべきだろう」


そう、冒険者として出たヴィリアたちはあくまでも北部の国々の情報を集めることと、繋ぎ、そしてクリアストリーム教会の動きを外から調べるためだ。

もちろん、深く踏み込めるのであればして貰いたいが、今は疑われる可能性が高いから一般的な活動をして貰う予定で、その手の重要な情報が手に入るには時間がかかるだろう。


「ユキ様のお考えは分かりましたが、実行するにはオーエ王国はもちろんギアダナ王国の許可がいります。何よりオーエは支配されたという汚名を着せられることになりますが、そこはどうするのでしょうか? 普通はそのようなことを認める国はございません」


プロフの言う通り、普通なら支配されたふりをするなんて、するわけがない。

何より被害が拡大する可能性もあるからな。

負けたわけでもないのに、敵を受け入れるとか馬鹿が過ぎるが……。


「それはもちろん説得だな。オーエとしても南部がまとまるまでの時間は欲しいはずだし、被害を押さえられることと、北部の敵を減らせるって所で押そうとは思う。ま、感情面があるからわからないが、ことを引き起こしたクリアストリーム教会の上層部が来るのならいけると思う」

「ああ、生贄にでも?」

「そこまでひどいことはしないさ。とはいえ、目的を聞きだすには素直になってもらう必要はあるだろう?」


素直になるために、どのような手段を取るかは、向こうのクリアストリーム教会の人次第だろうけど。


「あはは……。こちらから行動を起こす前に素直に喋ってくれるといいですね」

「そうだな。手間は少ない方がいいのは間違いない。とはいえ、プロフの言う通り、説得が第一だ。まずはオーエ王と話す。カグラに連絡を取ってくれ」

「かしこまりました。面会のお約束ですね」

「さて、その間にプランを書類に起こすかね」


ただ言葉で提案するのと、書類を持って詳しく説明して提案するのでは信頼度が違うからな。

全く、何度も思うが、世界をまたいでも大事なのはこうした下準備か。

自分のスキルというか、結局のところ、根幹はどこも変わらないというやつなのか。

まあ、自分の常識が通用すると思えば悪くはないか。


「あ、ユキ様~。ヴィリア様たちがギアダナ王国の王都の城壁内に入ってクリア教会に到着したようですよ~」


おっと、もう城壁内部のクリア教会に到着したか。

あのメンバーならなんかトラブルに巻き込まれるかと思っていたが、そこら辺のトラブルも回避はできるか。

ニーナたち聖剣使いたちは慣れているだろうしな。


「音量を上げててくれ。記録はしているだろう?」

「はい。問題ありません」

「なら、聞きながら各自作業をしてくれ」

「「「かしこまりました」」」


まったく、付きっ切りで話を聞いていたいんだが、そうもいかないのが、組織の上に立つモノの大変さだよな。

おそらく、俺たちと同じようにセラリアはもちろん、北部のスタシアたち、南部のトーリたちも状況を見守っていることだろう。

救援要請は聞き逃さないようにしつつ、俺は説得のための資料を作るための仕事を始める。

さてさて、必要な要素はと……。



ある種のくるものは拒まずというやつですね。

代わりに情報を置いて行ってもらおうか。

そういうやつです。

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