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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1843堀:いま潜り込むのであればだれが最適か

いま潜り込むのであればだれが最適か



Side:ヴィリア



「ねぇ、ヴィリア。ちょっと話いいかな?」

「はい、何ですかトーリお姉さま」


私は現在、海軍から離れて、新大陸南部の砦を中心にトーリお姉さまをトップとした調査部隊の指揮に当たっています。

残念ながら、私の容姿では大人たちからは舐められますからね。

北部のことはスタシアお姉さまを中心にことに当たっていて、今のところは目立ったトラブルは起こっていないはずですが……。

まあ、トーリお姉さまが呼ばれたのですから、何か動きがあったと思っていいでしょう。


そう覚悟を決めて、執務室へと入ると、そこでは補佐のフィオラお姉さまが机で山のような書類を相手にしています。

砦の運営も簡単ではないと、改めて思う光景です。

これをドレッサを中心として海軍で働いていた私やヒイロもこなしていますからね。


……そういえばヒイロはちゃんと仕事をしているんでしょうか?

家に帰れば顔を合わせますが、あまり仕事のことは口にしませんからね。

迷惑をかけていなければいいのですが。


「そこに座ってて」

「はい」


とりあえず、お話ということでソファーに座り、トーリお姉さまを待ちます。

執務室とはいえ、簡単な話はすることは多々あるので、来客用のソファーと机はあるんですよね。

偉い人とか外部の人は応接室を使うって感じです。


「はい。お待たせ。緑茶でよかったよね?」

「はい。ありがとうございます」

「それとお茶請け。今日はようかんですよ」

「ありがとうございます。フィオラお姉さま」


この話にはフィオラお姉さまも加わるようで、2人は目の前に座ります。

とりあえず、お茶を頂いて、話を聞きます。


「それで、お姉さまたち、何かあったのですか?」

「あった。まあ、過度な動きじゃないんだけど。微妙だね」

「はい。カグラとミコスが無事に戻ってきたのは知っていますね?」

「はい。無事にジェヤエス王国と繋がりを持てたとか。カタログ作戦は上手く行ったと喜んでいました」


実はあのカタログ作りは、お兄さまにもっていく前にミコスお姉さまが私やヒイロ、ラビリスたちに意見をもらっていたので内容を知っているのです。

まあ、地球からの取り寄せとかをしていますから、あの手のカタログを読み込んでいるのが理由ですね。


「うん、そこは良かったんだけど。ジェヤエス王国にもクリアストリーム教会の使者が来てたみたいでね。露骨に喧嘩を売るような感じだったんだって。これだとシアナ男爵たちの残存部隊を戻してギアダナ王国の上層部を説得できても、ほかの国が動きかねないって思っているみたい」

「なるほど。確かに、その一国だけの影響力では亜人を全滅させようとは思いませんよね」


元々クリアストリーム教会は魔物を倒すことを是としていた宗教です。

ギアダナ王国だけに受け入れられていたわけではありません。

その影響力はかなりあるはずです。

ロガリ大陸のリテア教と同じくらい。

まあ、リリーシュ様のように女神様が直接降りてきているとかではないと思うのですが。


「はい、その通りです。なので、ギアダナ王国のことはシアナ男爵とそこにつけているウィードの部下で何とかするとして、無用な争いを避けるためにも、北部の国々を説得するのは無茶が過ぎますが、せめて動向などを把握できるように人を送りたいという話が出てきているのです」


フィオラお姉さまの説明で私がここに呼ばれた理由も察しがついた。


「つまり、その動向調査に私がということでしょうか?」

「うん、ドレッサから相談されてね。自分は動けないけど、ヴィリアが忙しくなければっていうと語弊があるけれど、南部の調査ってやることが膨大ではあるけれど、別にヴィリアでないとっていう理由もないんだ。それは分かるよね?」

「はい。理解しています。元々、私とヒイロは新大陸への召喚候補としてあの村に行っていただけですから。南部に派遣されたのも容姿と軍と種族の関係で、そぐわないということで南部のウィードだけでの行動をするのがトラブルが無いという判断でしたし」


そう、別に私である必要性はない。

元々指揮ができる人物ということで、私が抜擢されたのだけれど、南部の砦建設はもちろん活動も落ち着いてきたし、私が出張っている理由は正直薄い。


フィオラお姉さまがお兄さまの所から来たのも大きいです。

フィオラお姉さまはセラリアお姉さまやデリーユお姉さま、ジェシカお姉さま、スタシアお姉さまと同じく将軍職の経験があるので、指揮能力は私よりはるかに上です。

ああ、エージルお姉さまも指揮経験はあるのですが、新大陸では研究に専念していますからね。


なので、声がかかるのであれば私というのは間違いありません。

それだけ信頼されているということでもありますし。


「素直に納得しすぎるのも考え物ですね。ヴィリア、私たちは貴方を都合よく使おうとしているのですよ? そこに思う所はあるのではないですか?」

「フィオラお姉さま、心配はいりません。おそらくお兄さまが発端では?」


私の言葉にフィオラお姉さま、トーリお姉さまは目を真ん丸にします。


「わかっちゃう?」

「はい。こんな突飛な発想はお兄さま以外にはないかと。直接私に話が来ないのは、他の人とまず面談をしているのでは?」

「その通りです。現在ニーナたちにこの話をしているはずです」

「ニーナさんたちですか。確か、あの村の関連でまだ向こうに残っていたはずでは?」

「そっちが解決したみたいで、戻ってきたんだ。それでユキさんがまず声をかけているんだけど、ヴィリアならピッタリかと思ってね」

「ええ、ユキ様もわかっているとは思います。下手に熟練のモーブさんたちを送り込んでも、どこから出てきたと疑われます」


確かに、モーブさんたちは腕は立ちますけど、ベテランという目立つ立場です。

今まで北部の国で活躍や足跡が残っていないというのはおかしな話ですね。

南部から来たと言えば、まあ、何とかはなるでしょうが、その場合敵と見做される可能性も高いでしょう。

それに比べて、私やニーナさんなら……。


「女、子供ですから、ここ最近注目され始めたということで行けるわけですね?」

「うん、そういう方向で行こうかって話になっているみたい」

「ええ、一応新大陸でもやはり冒険者の主流は男性ということが多いみたいですから」

「そこはどこも変わらないみたいですね」


女性より男性の方が冒険者が多く、女性冒険者は軽んじられがちだ。

まあ、総数が少ないというのもあるし、女性ならではの問題も確かにあるから、男性より不安定というのもわかる。


「だね。とはいえ、今回はそこが付け入る隙になっているからありがたいよ。そうでもないと、敵が増える一方だし」

「ですね。ギアダナ王国を止められても、他の国が参戦してくれば被害は相応に出ます。ウィードが今後あの新大陸で動くためには……」

「北部の国々の被害も最小限にとどめる必要があるわけですね」

「というか、今の所クリアストリーム教会というか北部の状況がさっぱりなんだよね~」

「少しでも情報が欲しいところです」


何をするにも情報が無いと動けないというのは当然の話です。

ですが……。


「今まで、その手の情報が下りてきてないのが不思議と言えば不思議です。オーエへは絞っていたと言われればわかりますが……」

「その疑問は分かる。でも、それも含めて北部の戦略だったと言われると納得でもあるんだよね」

「ですね。あえて情報を絞るというのは戦いでは当然のことですし」

「ああ、なるほど。そういうことを考えると、なおさら北部は戦争を望んでいるということになるんですね」

「うん。だからユキさんやセラリアが北部の情報を得るための部隊というか、パーティーを送り込みたいわけだよ」


少しでも被害を減らすため。

しかもウィードのではなく相手の為に。

いえ、そうすることでウィードの被害も減るのですから、お兄さまらしい作戦ですね。

とはいえ、言うほど簡単ではないのもわかりますし、大変なこともあるでしょう。

その難題をトーリお姉さまやフィオラお姉さま、そしてドレッサができると判断したのであれば……。


「わかりました。私は北部の調査に赴きたいと思います」

「いいの?」

「無理はしなくていいのですよ?」

「大丈夫です。事情も把握しましたし、私が最適なのは理解しました。なら頑張ります。別に生身で北部に赴けというわけではないのでしょう?」

「うん、それは当たり前。ちゃんと毎日ドッペルから戻ってきて報告も大事だからね」

「ええ、その通りです。私たちのかわいい妹を敵地へと送るのです。正直に言えば兵を1000でも護衛につけたいところですが……」

「あはは、それはお忍びじゃないですよ」


フィオラお姉さまの権限を考えるとそれぐらいは出来そうなのが怖い。

ん? 軍を送り込む?

何か引っかかりを覚える。


「どうしたの?」

「あ、いえ。お兄さまに参加するという話を伝えるべきかと。トーリお姉さまからの方が良いでしょうか?」

「ああ、それは私から伝えるよ。その返事があったらユキさんに会いにいってくれるかな?」

「はい。お任せください」

「何か必要なものがあれば言うんですよ」

「はい。では、仕事の残りをしてきます」


大事にしてくれるのはわかるのですが、一応これでもしっかり仕事はしているですよ?

いえ、お姉さまたちからすれば、私はヒイロと同じようにいつまでもかわいい妹なのでしょう。

とりあえず、この南部砦での仕事もあるので、私の後に入る人が問題がないように引継ぎの準備をしなければいけません。

とはいえ、砦の管理や調査隊の運用などは基本的なマニュアルが出来ているのでそこまでやることもないのですが、ゼロではないのでそこら辺をまとめておきましょう。


と、しばらくその作業をしていると、トーリお姉さまからの呼び出しがあり、再び指定の執務室に入ると。


「あ、来たね。ユキさんと連絡が取れて、今から会えないかって。行ける?」

「はい。いけます。引継ぎに関しては戻ってきてからやりますので」

「ええ、それで大丈夫ですよ」


ということで、私はお兄さまの所に向かいます。

お兄さまは基本的にウィードの魔物部隊の軍事基地で執務をしています。

まあ、色々現場に出向くことも多々あるのですが、今日は普通にいます。


「お、きたな」


出迎えてくれたお兄さまの執務室にはニーナさんたちも一緒にいるのが見えます。

ああ、やはり彼女たちも。



ヴィリアは新人で通りそうな容姿ですし、実力を発揮しても多少は言い訳が付きます。

それとニーナたちも見た目はヴィリアよりもちょっと上ぐらいですし、一緒にチームを組んでいても違和感はありません。

流石にヒイロとかは小さすぎるので、トラブルの元なので除外。

ヒイロも聞いてはいるけど、自分には向いていないと思っています。


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