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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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2119/2218

第1815堀:証拠がほぼない難しいこと

証拠がほぼない難しいこと



Side:トーリ



『あ、グランドマスターがやってきた』


そんなニーナの声がモニターから聞こえてくる。

私は今、新大陸南砦の打ち合わせと、パーティー開催ということで、ウィードに、ユキさんの所へ戻ってきていた。


『あの、いま、なんと?』


初めて聞く女性の声。

どうやら、話に聞いたスアナの町にある冒険者ギルド支部に内部調査員として派遣されているアルカさんの声のようだ。

確かに今のグランドマスターは変装の魔術をかけていて、普通の御年輩にしかみえませんよね。

いえ、元々そういう感じのおじいちゃんなんですけど。


『ほっほっほ。ニーナのお嬢ちゃん。ここではグラド爺でたのむよ』

『え?』

『「「……」」』


その名前にびっくりするアルカさんと、相変わらずグランドマスターはそういうのが好きだよね~って感じの私たち。


「つかみはいいか」

「あ、なるほど。緊張を減らそうということですか」


相変わらずのグランドマスターで気が抜けていたけれど、確かに、アルカさんの状況を考えると焦っていてもおかしくない。


『とりあえず、アルカ。仕事ごくろうじゃな。ほれ』

『あ、本当に……』


グランドマスターは変装の魔術を解いて見せたのか、アルカさんの声に驚きと安堵がうかがえる。


『うむ。手紙が届いたぞ。ウィードの支部は大騒ぎじゃった』

『それは申し訳ございません。ですが、最近はそこを拠点にしているようでしたので』

『それは間違いじゃないから大丈夫じゃ。ちゃんと本部にも手紙は届いておったしな』


あ、本部にも手紙は届いていたんだ。

まあ、ウィードに送られた方が即時連絡が行ったし間違いじゃないんだけど。

ミリーやロックさん、そしてキナは慌てていたみたいだけど。


『それで、おっと、お姉さん。エールを一つ、それと鳥の肉焼き』

『はーい』

『グラド様……』


うん、相変わらずだね。

いや、酒場に来て注文しないとか迷惑だけどさ。


『さて、それであんな手紙を送ったんじゃ何があった? ここには監視はないと思うが?』


グランドマスターの気配察知は信用できますが、こっちも念には念をいれているので……。


「どうだ、敵は周りにいるか?」

『ニーナ様たちを窺っている人はいません。問題はないかと』


付近に忍ばせている諜報員からの連絡が来ます。

まあ、逆に個室に集まるとそれはそれで人目を惹きそうですからね。


『はい。ここに目はないかと』


アルカさんもこの酒場は安全だと思っているみたいですね。

では、町全体が危険だというわけではないのかな?


『じゃ、何があったか話してもらえるか?』

『そうですね。状況が分からな過ぎて、こうして聞くしかないのです』

『あの村と関係している?』


そう、今回のアルカさんの件は一体どこと繋がっているのか、さっぱりわかっていない。

行方不明事件はオーエ王国と繋がっていたけれど、アルカさんのいるスアナの町の出来事は何か関係があるのか。

そこはまだ調べられていない。


『村というと、行方不明者が出てきていたという?』

『うむ。闇ギルド関連のことを考えて各国がウーサノ、アーエに対して協力を呼び掛けていたのじゃが、どうしてもいやだという話でな』

『……そうでしたか。いえ、それは当然です。あの魔物の森はどういう立場、いえ、なんといえばいいでしょうか、土地としての意味があるのです』

『それはなに?』


ニーナが答えを求めるように聞く。

私たちもその答えを待っている。


『……あそこは、ウーサノ、アーエを遮る自然の防壁と同時に、奪い合う領土でもあります。そして、攻撃手段でもあるのです』

『……ふむ。二つは意味が分かる。自然の防壁というのは魔物と森ということじゃろう。奪い合う領土というのもわかる。隣接している土地はそういう領土争いとしては良くある話じゃ。じゃが、攻撃手段というのは?』


うん、それは私もわかる。

でも、攻撃手段というのは全然わからない。


『そのことを説明するために、事前の説明をさせていただきます。みなさん、町が賑わっているのは確認していますでしょうか?』

『ああ、なんか何が理由で人が集まっているのかとかさっぱりわからないけどな』

『何かその理由をご存じで?』

『はい。それは領主さまが人を集めているのです。新しい村をつくるとかで』

『「「あたらしい村?」」』


村をつくるというのはわかります。

ですが、それが攻撃手段に繋がるというのは?

そう思っていると。


『なるほど、そういうことか』

「また面倒くさい手を」


グランドマスターとユキさんが同時に声を上げる。

今のでわかったってどういうことだろう。


『すまん。私は分からなかったから詳しく話を聞かせてもらえるか?』

『私もわかりませんでした』

『同じく』


キシュアたちもわからなかったようで、ほっとした。


『はい。大丈夫です。とはいえ、概要はそこまで難しくはありません。ウーサノ、アーエの魔物の森をとなりにしている領主たちとしては、不可侵地帯というか、魔物が出てくるという理由で土地開発を断念しているところなのです。そして、大陸間交流同盟の宣言により、領土はほぼ確定してしまいました。残る功績となると……』

『ああ、そこまで言ってくれればわかる。魔物の森を開拓することだな』

『その通りです。ですが、簡単なことではありません。大陸間交流同盟の宣言で決められたとはいえ、魔物の森に関してはお互い不可侵であったのですが、それを攻略できれば確かに功績となるのは間違いありません。上、国の方針はどうであれです』


ん? 国が開発駄目っていえばどうにかなるんじゃ?

私の疑問を感じ取ったのかユキさんが説明をしてくれます。


「できないから、放置しているんだろうさ。国としてもどうにかしたいだろうが、魔物の森を開拓するのに兵士を集めれば、傍から見れば国境を脅かす軍だろう? あくまでも魔物の森を開拓と言っても相手の国が信じると思うか?」

「あ~、それは無理がありますね。だから、人を集めているってことですか?」

「だな。一般人を集めて森を開拓しつつ……」


そうユキさんの説明を補完するようにアルカさんがタイミングよく口を開く。


『つまり、魔物の森で開拓民が被害を受け、護衛を頼んでいた冒険者ギルドも被害甚大。だからこそ、軍を派遣して魔物の森を平定するという筋書きなわけです。一応、これが出来れば間違いなく文句は言われないでしょう。領主の成果となるのは間違いありません。民や冒険者ギルドの犠牲を無視すればとつきますが』


なるほど~、確かに開拓民が大きな被害を受けて、冒険者ギルド支部も被害を受けたとなると、軍が動くのは当然だし、その結果に不満は持たないよね。

犠牲とかいう前提が無ければ。


『ふむ。その信ぴょう性は?』

『残念ながら私が仕入れただけです。何せ、ここのギルドの支部長が取引をしている状態です。有用な情報を手に入れるのは人手も時間もありません。ですが、状況証拠というとあるにはあります』


そう言ってアルカさんは今まで仕入れた情報を説明し始める。

まず、最近近辺の町も含めて魔物を集めているとのこと。

名目は魔物の調査のため。

しかもその開拓を安全にするためということになっているのが最悪だ。

だが、その魔物の死骸は表、つまり市場にでてくることはなく、どこかに消えているらしい。


『つまり、開拓民や冒険者たちが危険にさらされる脅威はそろっているというわけか』

『はい。以前もキシュアさんたちから大型のサラマンダーの報告もありましたし、魔物の森にどこか魔物を集めていたりするのではと』

『「「……」」』


うーん、確かに推論としてはいいところいっているんだけど、それに関してはユキさんたちの目論見だったしね~。

本部の魔物の有識者であるドソウ王国のケイトさんを連れて、わざわざ強力な魔物がいるよ~って脅したんだよね。


『うむ。その報告は聞いたのう。なるほど、そういう流れがあったのか。とはいえ、そんな魔物を捕らえたなど報告は上がっておらんが?』

『どうやら、魔物を持って行くと報酬という話のみで、冒険者ギルドを経由しなくても良いことになっているのです。所謂、恒常依頼と同じになっているのです。受け取り先がギルドによって違うようですが、どんな魔物を送っているのかは把握できていません』

『なるほどのう。そこをついてきたか』

『はい。ちゃんと依頼を掲示している分の料金は払っていますし、ギルドにとってもマイナスではないのです。なので、調べようにも……』

『正式な依頼では調べようもないか』


そっかーって、普通に話を進めたよね、グランドマスター。

いや、それが正しいけど、うん、これはやっぱり年季が違うってやつかな~?


『しかし、それだけでは難しいところがあるのう。アルカ一人で連絡を入れることはできないことではなかろう?』

『これをまともに送っても頭がおかしくなったとしか思われません』

『……確かにそれはある』


うん、こんな話を持ってこられても、状況的には微妙だよね。

魔物を集める貴族なんて別に珍しくもないし、開拓事業なんてそれこそウィードが出来てから当たり前にあること。

もちろん、国境問題も含めるとなると微妙だけど。

それでも、まともに対応するにはね。


『このままでは、正式に動き出す前にこの町の人やギルドの人たちが被害にあうと思いグランドマスターに連絡を取りました。私の権限では出来ることが少なすぎます』

『……話は分かったが、流石にこれは情報が少なすぎるのう』


うーん、グランドマスターの意見に同意だね。

このままだとアルカさんの妄想ってことになるレベルだ。

確かに、危険な気はするけれど……。


「確かに、こっちから行動を起こすのは難しいものがあるな。なら、敵から動いてもらえばいいだけだな。今すぐ町の人がどうにかなるってわけでもないし」

『ふむ。もう少し詳しく聞かせてもらえるかのう?』

『え? 何を詳しくと?』

『ああ、今回の話はウィードの協力があるのは知っておるじゃろう?』

『はい。あ、もしや』

『うむ、ユキ殿と連絡が取れておる』

『お、王配様と』

「グランドマスター。このままじゃ状況が把握できないだろうし、道具を渡してやってくれ。元々そのつもりだったろ?」

『そうじゃな。ほれ、アルカ。これを耳に付けると良い』


ユキさんは特に動揺していないし、どんな解決方法があるんだろう?



証拠はないけど、状況的には黒。

でも、傍から見れば犯人ではない。

さて、ユキはこの状況に置いてどうするのでしょうか?

敵に動いてもらうとは?

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