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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1814堀:裏方も大事な仕事

裏方も大事な仕事



Side:ミリー



「まったくびっくりよ。グランドマスターがいきなりバーの方に現れてお酒飲み始めるんだから」


私はホテルのウィード専用部屋でそう言うと、同席しているラッツが苦笑いをしつつ。


「いや、相手を油断させるためでしょう? 目的のウーサノ王国、アーエ王国は来ていませんが、大国はもちろん小国も続々と集まっていますからね」


そう説明をしてくれる。

グランドマスター、つまり冒険者ギルドはウーサノ王国の寒村及びスアナの町に対してはまだ動きを見せていないというアピールだ。

このパーティーの場で色々固める予定なのだと、向こうを油断させる。


「わかっているわよ。とはいえ、飲んで騒ぐっていうのはね~」

「グランドマスターが飲んで回っているのはいつものことでしょう? というか、あの方は基本的に酔わないでしょうに」

「まあね」


エリスの指摘はその通りで、酔わないとはいわないが、それでも思考が乱れることはない。

でも、それでも……。


「ユキさんを巻き込まなくてもいいと思うのよ。お酒はそこまで強くないんだし」


そう、後からやってきたユキさんを巻き込んで相応に飲み始めたのだ。

私も同席していたのにイチャイチャを見せることはかなわなかった。


「あれじゃ、ユキさんが配下の女の子に手を出すだけの馬鹿になっちゃうじゃない。私という妻と仲睦まじくしているところを見せなきゃいけなかったのに」

「あはは、まあ気持ちはわかりますが、妻を大事にしているのはよく見せていますし、ミリーはこれからスアナの冒険者ギルドとの連携もあるでしょう?」

「そうそう。ユキさんが女誑しかどうかは疑問だけど、そういう噂が出るのはこっちとしては想定通りなんだし、ちゃんと後で仲良くしていればいいのよ。問題は、ユキさんとグランドマスターがいない間のフォローね。どう予定してるのかしら?」


二人の言う通り、私は、というかここにいるメンバーは二人が不在の間、それを不思議、疑問に思われないようにする必要がある。

と言っても……。


「別にそこまで気にする必要はないでしょう。夫に関してはドッペルで動くし、側付きのオレリアたちも同じ。グランドマスターはドッペルは拒否したけれど、元々ふらふらしているたちだし、私たちの部下が町中で見たってことでどうにでもなるわよ」


入ってきたセラリアの言う通り、影武者はどうにでも用意ができるので目撃情報に関してはどうにでもなる。

やらなければいけないのは……。


「そっちに意識を向けさせない方法ね。こちらがウーサノとアーエのことを気にしていると思われないようにしないと」

「ですね~。重視していると思われると吹っ掛けられますし、かといって無視もできないですからね~」

「本命は明日ですし、それまではこっちがそこを狙っていないと思わせないといけませんね」

「ええ、あくまでもパーティーが行われてからことが動き出したってことにしないといけないわ。そうしないとスアナの町がどうなるかわからないし」


ここまで慎重に動いているのは、スアナという町がどのような状況下にあるかわからないから。

アルカっていう内部調査員からの連絡が不明瞭だし、そこがはっきりしないと対策の取りようもないのよね。

だから、こっちが町のことに気が付いているというのを悟らせてはいけない。

下手をすると町に被害が及びかねないのよね。

アルカっていう内部調査の人が連絡を堂々と取れないぐらいには、面倒な状況なんだから。


「まあ、今日に限ってはこれから日が暮れてくるし、後は寝るだけ。グランドマスターがお酒を飲んでいて明日のことも考えると、早々に休むだろうし、今日はそこまで気にする必要はないでしょうね」

「そうね。セラリアの言う通り、そこだけは助かるわ。今日はそこまで労力はかからないでしょう。エリスとラッツに悪いけど」


セラリアや私が楽というのは立場上そこまでかかわることがないだろうってこと。

ラッツにエリスはホテルや商業施設の管理なんかで忙しい。

特にこういう貴族が来訪する時は。

私たちも手伝わないってこともないんだけど……。


「大丈夫ですよ~。いつものことですし~」

「ええ、商業施設に関しても基本的にはナールジアさんの管理も多いし、私とラッツはそもそも代表の座はおりているので、基本的にホテルのみの対処よ。セラリアとミリーに関してはグランドマスターとか冒険者ギルドの厄介ごとを任せるわよ」

「任せておいて」

「ええ、ウーサノとアーエの件は放っておけないからね」


私とセラリアはこの場をラッツとエリスに任せて場所を移動する。

ホテルでも状況を確認できないわけでもないけれど、ちゃんとした指令室の方が、しっかり把握できる。

そして、移動をしている間に、セラリアと改めて状況を確認する。


「セラリア、そっちが手を回しているウーサノとアーエの方から情報はでているの?」

「霧華の諜報部からはないわね。元々、あの森は本当に魔物の森として存在していたのは間違いないわ」

「そう」


残念と思っていると、さらにセラリアは続ける。


「でも、ある程度情報を集めてくると妙なことが見えてきたわ」

「妙なこと?」

「知っているとは思うけれど、あの魔物の森はロシュールのウーサノとガルツのアーエの境となっているのよ」

「ええ、それは知っているわ」

「つまり、あそこはどうしても係争地になるわけ。そこはわかるわね?」

「当然ね。土地の境なんて争いの元なのは当然だし」


少しでも領土が欲しいのは国として当然の事。

そしてその土地が隣国と接しているのならば、その土地をどう確保するかというのは国として永遠の命題でしょう。

巻き込まれる側は迷惑でしかないけれど。


「改めて、言うけれど、魔物の森はウーサノとアーエの境なわけ」

「それが……どう……」


そこまで言いかけて頭の中で繋がった。


「これ、両国が共謀していたのではなくて……」

「そう。私もその可能性にさっき気が付いたわ。どちらにとっても魔物の森であってなくてはいけないのよ。そうでなければ、戦争しなくてはいけない。土地を確保できるのだから。あるいは、どっちかに不利になってほしいというのが本音よね?」

「仕掛けている可能性があるってわけね」

「ええ、秘密が魔物の森にあるって考えていたけれど、いえ、間違いでもないけれど、本質は……」

「領土の奪い合い。ウーサノの最果ての村に権力争いに負けた人たちを置いているのは……」

「いざという時領土の主張ができるからでしょうね。元から住んでいたと。ただの平民ではなく尊い血の者がって」


あの場所の見方がガラリと変わった。

闇ギルドの暗躍もあるかもしれないが、別の意味でさらに面倒になった。


「……これ、介入していいの?」

「闇ギルドの関係が認められないのであれば、ウィードとしては引くしかないわね。一番の問題であった行方不明事件については新大陸のオーエ王国に召喚を止めてもらって解決しているし。とはいえ、ロシュール、ガルツには情報を渡す必要はあるわね。下手すると大国同士のぶつかり合いに発展しかねないもの」

「ああ、確かにそうね。二国の領土問題となると、傘下に置いている大国が出てくるのは当然か」


そういう法律、いやこの場合は国際法を整えたのだ。

ウィードを主導で。

そういうのが起こると、各大国には流通を停止するなど、重いペナルティが課される。

もちろん、他国が煽るような可能性もあるけれど、そこらへんはしっかり調べるし、下手をすると各大陸での流通停止などになるから、そういう馬鹿なことはまず起こさないはず。

まあ、大陸間交流が大きくなれば、各大陸でのそういう策略、かく乱があるかもしれないけど、今のところは各大陸でまとまっているとは言い難い。

だから、あくまでも大国の策略か、小国の暴走っていうのが妥当ね。

特に隣国同士となると。


「とはいえ、今回は町にある冒険者ギルド支部を巻き込んでいるし、冒険者ギルドは動く権利があるわね」

「つまり、介入に関しては問題はないか」

「ええ、とはいえ、アプローチががらりと変わってくるわね。闇ギルドの捜索のために森の調査をさせろではなく、国家間に衝突の疑いありとすれば、文句は言えなくなるわね」

「お互いに森という領土が欲しくて動いているなら、大陸間交流同盟の干渉なんてまっぴらごめんだもんね。元々怪しかったし」

「そうね。闇ギルドの調査で頷かないのがびっくりよ。さんざん条件とか協力してくれるために譲歩をしてきたのに断ってきたもの」


と、そんな話をしている間に指令室へと到着する。

中は特に慌ただしい様子もなく、前面に存在する大型モニターを中心にオペレーターが数人詰めている程度だ。

まあ、ここに大人数入る意味もないんだけど。


「スアナ、および村の状況報告」

「はっ」


セラリアがそう言いつつ、席に着く。

私も用意されている幹部席についてモニターに視線を移す。


「スアナ、および村、魔物の森に関しては特に動きはありません」

「現在グランドマスターがこちらの車両で近辺まで移動し、すでにスアナの町に入っています。もうすぐニーナ様たちと合流予定」


特に問題はないと。

まあ、大ごとが起こっているならすでに私たちが呼び出されているけどね。


「ウーサノ、アーエに送っている諜報員に連絡。闇ギルドとの取引ではなく、あの土地の利権について調べろと伝えなさい。今回闇ギルドの関係性は限りなく低い。視点を変える必要があるわ。国家としてあそこで問題を起こす理由は低いわ。だから隣接している領土の領主辺りを調べるようにと」

「「「はっ」」」


なるほど、国家主導ではなく、領主たちの独断であればこちらの諜報部が情報が取れなかったのも納得ね。

上が関わっていないのであれば、王家に侵入してもなにもわからないもの。

とはいえ、上も関わって何かしていたからこそ、っていうのもあるかもしれないけれど。


「あと、夫は?」

「ユキ様は現在新大陸の5号指令室へ赴いています」

「ああ、ならいいわ。今の情報、流すだけしておいて。グランドマスターと連絡は取れるかしら?」

「そちらは問題ありません。小型通信器を渡しています。つなぎますか?」


小型通信器というのは、アクセサリー、イヤリングタイプのモノね。

本当に小型で付けているのも気が付かないぐらい。


「繋いで頂戴。あとニーナたちにも。話は、ミリーお願いできるかしら? 場合によっては私も入るけど、グランドマスターの相手は私よりもミリーがいいでしょう」

「わかったわ。立場って面倒よね。それに今夜色々わかりそうな気もするし、記録もしっかりとらないとね」


ということで、私たちはエリスやラッツたちとは違う仕事を始めるのであった。



今までよくわからなかったウーサノ、アーエのはざまにある魔物の森の立ち位置が少しわかってきました。

よくある領土問題が絡んでいるかもしれません。

どのみち、いえ、闇ギルドが関わるよりも面倒な可能性が高いですね。



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― 新着の感想 ―
ようやくモヤモヤが晴れてきた。領土拡張の策略かい。
私感で感想 「連絡機」と聞くと、個人用ジェット機とか連想しちゃう? 離島を繋ぐ連絡船や小型機は、見慣れない聞かない方が多数派と思うけど……
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