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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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2107/2218

第1803堀: 魔物とはなんぞや?

魔物とはなんぞや?



Side:エージル



「ふーん、会議は上手く行ったってわけだ」

「うん、特につまるところはなかったかな? ああ、反抗的な教会側の捕虜に関しての改心作戦は驚いていたけど」

「それはそうでしょう。こちらに危害を加えそうな連中に時間を使うなど、普通は考えられません」

「だね。上からの命令ならともかく、自らの意思でこちらに敵対しているなら、そういうのは手間だからね~」


自分が正しいと思い込んでいる連中は本当に厄介だよ。

僕が研究者として意見を出しても、女だから、子供だからって否定してきた連中はいたからね~。

そういうのが先にくるから、僕の用意した資料を読もうともしないし。

と、昔の恨みはいいとして……。


「フィオラはどうだい? トーリがいない間砦の指揮を任されたんだろう?」

「ええ、ですが。そこまで長い時間でもありませんでしたし。何より魔物の動きがありませんね」

「「ああ……」」


その言葉に僕とトーリはそう言葉を漏らす。

そう、砦を作ってから魔物の襲撃というのは無いのだ。

いや、ゼロではないけれど、北上してきた魔物の集団というのは全くない。

精々10匹に満たない群れがこの10日で3回あっただけだ。

単独は7回。

うん、少なすぎる。

人がいなくて魔物がはびこる荒野という話が嘘と感じるぐらいには、魔物がいない。


「まあ、まだ砦が出来てから間もないからと思っているのですが、専門家としてはどうでしょうか?」


フィオラの視線が僕に集まる。


「う~ん、僕も何とも言えないね。フィオラの言う通り時間が経っていないからね。一応調査部隊は出しているんだけど、そっちも散発的でね。魔物を探す方に苦労しているくらいだよ」

「やっぱりか~。魔物が北上してきたのは事実なんだけどね~」


うん、そこは間違いない。

トーリが南の町から出撃したときは散々魔物を蹴散らして、その魔物の素材と情報を持って帰ってくれたからね。


「方向は合っているのですよね?」

「合っているよ」

「合っているね。でも、やってこない」


全然やってこないんだから、僕たちとしてもお手上げ。


「出来ることとしたらドローンでの偵察なんだけど……」


トーリの言う通り、ドローンや使い魔を使っての偵察もしている。

何せウィードは人が足りない。

その中でドローンや使い魔は基本的に人を派遣しなくて現場を確認できるのがいいよね。

まあ、出来ることはその分制限されるけど、監視などにおいてはこれ以上のモノはない。

だけど……。


「ああ、そうです。ドローンで偵察しているのであれば、魔物の存在を確認できるのでは?」

「残念だけど、魔物は確認できても、こっちも群れというよりは小グループや単体ばかりなんだよね。まあ、範囲は精々30キロ四方が精一杯なんだけど」


フィオラが口にしていることを僕たちが実践していないわけがないんだよな~。

それでも成果が上がらないわけだ。


「なるほど。30キロ以上の調査に関しては?」

「やりたいところだけど、今は周囲の安全が最優先だしね。あくまでも優先するべきは南の町への魔物の大量到達防止だから。後回しだね。現地調査部隊も足りてないし。大変だよね~」


トーリは苦笑いしながら答える。

それを聞いたフィオラは難しい顔になり……。


「上手くは行かないものですね」

「まあ、世の中そう簡単に問題が解決することはないってことだね。と、そういえば、フィオラは北の方の援護にもいく予定なんだろう?」

「ええ、指揮を出来る人が必要ということで」

「うんうん。あっちは人族相手だしね。まあ、僕も人族なんだけど、未だにこんな成りだしね」


相変わらず、自分の幼い姿。

こういう容姿が必要な仕事だとどうしても足を引っ張られる。

まあ、結婚して仲良くユキたちとやれているので、勝ち組ではあるからいいんだけど。


「それはどうしようもないことですからね。仕方がありません。ですが、有事の際には来てくれるのでしょう?」

「まあね。いざという時はみんないくさ。とはいえ、トラブルが起こりやすいというか起こるのが分かり切っているのに行くのはまずないね」

「面倒だよね~。エージルってすごく頼れるのに」


そう言って、トーリが僕を抱き上げる。

うん、昔の僕なら子供扱いするなと怒るところだが、トーリは僕の友だし、同じ男を旦那としている身。

親友も同じだ。

侮られることはないし、トーリはこれでふかふかなので気持ちがいい。

まあ、ルルアとかサマンサ、エリス、ジェシカとかはぼよんぼよんで格別なんだけどね。

アレは男が駄目になるのは分かる。


「そう言ってくれるのはトーリたち身内だけさ。知らない人からすれば、子供を前面に出しているんだ。侮られていると勘違いされるし、舐めてかかるところもあるだろう。そういうのは避けるべきなんだよ。まあ、油断してくれる分にはいいから、敵相手にはいいんだけどね」


そう、僕を舐めてくれる奴は、与しやすい。

特に戦争とか結果が分かりやすく出るところはね。

言葉の応酬だと切れて実力行使に出るから面倒なんだけど、戦争なら結果しか重視されないからね。

と、そこはいいとして。


「そういうことで、南の土地や魔物の調査は停滞気味なのさ。まあ、また北上してくる可能性もゼロじゃない。ここ10日も経たない話だしね。南の町まで殺到した頭数を考えると、一時枯渇って所じゃないかと思うけど」

「一時枯渇ですか?」

「うん。魔物は魔力溜まりから自然発生するのは確認が出来ている。それがこの土地にも適応されるなら、魔物一掃したことにより魔力溜まりが出来て、そこから魔物が発生して北上してくるはず」

「話は聞いたことがありますが、いつも不思議なのです。なぜ、魔物を倒したその場で魔力溜まりができないのでしょうか? 自然の中でのみ発生するのは? なぜ町中に魔物が出てこないのでしょうか?」

「フィオラはいいことを聞くね。それは私たち研究者の中でも疑問ではあるんだ。まあ、簡潔に言うとわかってはないっていうのが答えだ」

「そうなのですか……」


うん、そこは本当にわかってはいない。

逆に町の中に魔物が突如発生したってことも事例がないことではないのは、僕も文献を調べて知っている。

とはいえ……。


「でも、ある程度考察はできるけど、聞くかい? 一応、僕やコメット、ナールジアさん、タイゾウさん、ザーギスも同じ見解のやつ」

「是非聞かせてください」

「私も聞きたいな」

「トーリは知っていると思うけどね。まあ、おさらいと思って聞いてみるといい」


僕はそういうと、ホワイトボードの前まで歩いて行く。

ちなみにこの場所は私たち砦の主要人物たちが集まって会議をする場所。

ああ、くつろいでもいい場所でもある。

なのでこの手の道具はあるわけだ。

もちろん、私が書きやすいように足場も置いてある。


「さて、私たちの仮説とは言っているが、研究者たちの中でも多分これじゃないかってぐらいにはメジャーな説だ。町中になぜ魔物が出ないかというと、魔力溜まりができないからだ」

「それはどうしてでしょう? 魔力溜まりは自然の中で出来ると言います。町中にできても不思議ではないのでは?」

「うん。その推論は間違っていないと思う。人の生活する町だって自然の中ともいえるしね。でも違いがあるんだ。人が行き来することだ。いや、人が生活する地域だってことかな」

「人が生活する……ですか?」

「そう。魔力溜まりは魔物を発生させるまでに時間がかかるとみられている。一応ダンジョンマスターのドローンや使い魔での偵察で発生しているのを確認している。でも、現場に行くことは叶わない。今まで何度かその場所を生で計測しようと動いたんだけど、そのどれもが失敗している。つまり……」

「人に魔力溜まりを散らす何かがあると?」

「おそらくね。まあ、魔物が人を積極的に襲うのは魔力を持っているからというのが通説だ。もちろん食べるためなどの別の理由もあるけれど、食欲とかは特にほかの魔物を相手にした方がいいだろう? 大きい魔物は沢山いるし」

「確かに」


なのになぜか魔物は人を襲う。

いや、一定期間生き延びると他の魔物や生物を襲い始めて生きる種族もいるけれど、魔力種族と呼ばれる生命活動に食事が必要ないタイプの筈なのに、魔力を持っている人を狙う傾向が高い。

ほかの魔力を持つ魔物でもいいはずなのに。


「その魔力をどうにかする能力については、予測だけど、レベルだと思っている」

「レベルですか?」

「うん。ちょっと話はずれるけど、ユキやタイキ、そしてタイゾウさんの世界はレベルが存在しない」

「はあ、それは聞いていますが?」

「それでこっちにレベルがある。その違いは何が理由だと思う?」

「ああ、それって魔力だよね。魔力を体内に適切に吸収してレベルが上がるって話を聞いたことがあるよ」

「その話は私も聞いたことがあります。町で生まれて外に出たことがない人もレベルが上がるのはなぜなのかということで、魔力を吸収……ああ、そういうことですか」


ここまで話すとフィオラも想像ができたようだね。


「そう。町の中の魔力は常に人に吸収され続けている。そして外で魔物を倒すと倒した本人のレベルが上がるのが早いというのは、その独占率の違いなんじゃないかって話」

「なるほど。魔物の魔力がそのまま倒して本人にというわけですね。そして町中は多くの人がいて、魔力溜まりが出来たとしても、魔物が発生する前に吸収されてしまうと?」

「うん。そう考えているね。いつか現場を見てみたいもんだけど。魔力溜まりってどこでできるかわからないんだよね~」

「それが分かれば対策もできるんだけどね~」

「なるほど、自然に発生する魔力溜まりには誰も近寄らないという話なのですね」

「おそらくね。複数の魔物が一気に湧いて出るという話もあるし、無くなる時は一瞬なんだろう。徐々に出てくるってわけじゃなくてね」

「確かに、今の推論であれば、一匹だけ生まれた魔物が魔力溜まりを吸収してしまいかねませんね」

「魔物って不思議だよ。普通に親の魔物から生まれてくるものもいれば、魔力溜まりから発生するのもいる」


マジで魔物ってよくわからないんだよね。

イフ大陸では珍しい存在だったけど、ほかの大陸では大抵脅威になっているし、その脅威は理解できる。

でも、あれほどの力を持った存在がどうやって生まれているかというのはわかっていない。

まあ、人が踏み込めるような地域ではないというのがあるんだけどさ。

だからこそ、この新大陸、南で起きていることはきっと魔物の謎を解明する一助になりそうなんだよね。

あ、もちろん北上してくる原因も調べるけどさ。


とういうことで、僕たちはこれからの砦運用について話していくのであった。





本当に魔物って謎ですよね。

ハヴィアやワズフィのような魔物専門の研究者がいても特に不思議はないです。

とはいえ、それを言えば生命の起源はという話にもなるので、まあ、世の中は不思議で一杯ということで。

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私感で感想 何となくですが、魔物の生態って、星と似ている? ガス=星間物質の星屑が集まって恒星や惑星等が生じる。 その生涯の終わりに一部の恒星はノヴァ化し爆発する。 その際吹き散らされた物質が、周囲…
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