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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョンと新大陸 序章

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第153掘:お約束はもういいわ

お約束はもういいわ





side:ユキ



「覚悟しろぉぉぉお!! 村の女性たちを辱めた愚かな人間よ!!」


もう、嫌だ。

なんでこうなるねん。

いや、予想はついてたけどさ、こっちは予想通りにいかないでくれよ。


「話せばわかります。聞いてください」


落ち着け、なんとか相手を冷静にさせるんだ。

俺も大概イライラしているが、俺がこのウサミミダンディを殺しては台無しになる。暴力を振るのもまずい。


「うおぉぉおおぉおおお!! その首切り落としてくれる!!」


駄目だこりゃ。

俺は心の中で泣きながら、だれか村の女性たちがいち早く来るのを願うばかりだ。

さて、なにがどうなっているかと言いますと。

時は、襲われていた人たちの、治療を終えた後にまで戻る。



「よし。強力な回復魔術を全体にかけた。具合の悪い者はいるか? あ、気分が悪いの今は後回しな。具合ってのは傷が残っている人はいないかってことな」


一応そう釘を刺しておく。

だって、そうしないと気分が悪いって人は、多分この中全員が該当するだろう。

高位の回復魔術は体の不順を元に戻すので、骨折や内臓破裂や損傷。そして、果ては内出血も消してしまうのだ。

これが、ウィードのいた大陸で医学が発展しなかった最大の理由だ。

魔術でどうにかなる。だからわざわざ体を切り開いて、治そうという人がいなかったわけだ。

というか、その発想自体がない。いや、きっと少数意見ではあるのだろうが、俺は聞いたことがない。

あーあ、ファンタジーはこれだから……。

いや、俺もファンタジー側から見たら常識外の人間ではあるんだよな。

過ぎた技術は魔法と変わらんって言ってたっけ?

少し違う気もするが、最近じゃ乗用車ですら、自動ドアになってるのもあるしな。

アレは驚いたわ。いや、理由はわかる。手がふさがっていたり、子供やお年寄りのためってやつだ。

何事もやってみるべし、って話だよな。

あ、意識が別の方向に飛んでたわ。

ちゃんと怪我人いないか確認しないと。


「どうだ? しっかり、自分の体を確認してくれ。お互い見て確認してくれてもいい。気が付かないところを怪我している、なんてことは普通にあるからな」


俺がそう言うと、大半の人はしっかりと自分の体や、隣の人の体に異常がないか確認をしている。

そう、大半である。

ごく少数は、俺を凝視していた。


「ん? どうした? どこか具合でも悪いか?」

「い、いえっ!? そういうことでなく……。あっ、すみません。助けていただいてありがとうございます。お礼が遅れて申し訳ありません」


この人は……さっきの子供がべったりとくっついているし、俺も見覚えがある。

一番最初にデモンストレーションのために助けた人だな。


「いえいえ、まあ成り行きですから」


本当に成り行きだしな。助けたのはリエルたちだし。

俺は見捨てるつもりだったし。


「しかし、人族なのに、魔術の才能に恵まれた私たちエルフより、遥かに強力な魔術を使うなんて……」


ああ、そこに驚いてたわけね。

そりゃ、地元で散々暴れてましたから。チートもあるし、自由にやれたわ。

でも、この新大陸では、ルナの情報通り消費魔力が20倍だな。

さっき、この人を単体で回復させたとき、本当に20倍も魔力が持っていかれた。

理由はザーギスと色々話さないとわからないが、多分、空気中の魔力が少ない分、伝達効率が落ちているんだろう。

だから、体内ではなく、体外に魔力を発現する際、体外に魔力のホースを伸ばすコストが高いのではないだろうか?

でも、20倍ねー。理屈がよくわからん。

さっき、重傷者全員を一気に回復させたが、1人当たりの消費魔力量は、この人にかけた同じエクストラヒールなのに少ない。


「あの……少し出すぎた詮索を致しました。魔術は個人の宝。それを聞きだそうとして申し訳ありませんでした」

「ああ。いや、すまない。少し考え事をしていた。それより聞きたいことがあんだけど。いいかな?」

「はい」


一旦魔力関連の話はやめて、一体なにがどうなっているかを聞くことにした。

そう、俺たちはこの新大陸の情勢は全く知らないとの同じだ。

ここがどういう地名で呼ばれているのかさえ、知らない。

というか、よく言葉が通じたな。文字も読めるといいけど。

で、聞きだした情報は以下の通り。


・ここは、大陸中央に位置する場所で、数少ない、獣人族やエルフ族がひっそりと暮らす村の1つ。

・襲ってきたのは南方にあるジルバ帝国という、人間至上主義の国。やっぱり戦ばかりしているらしい。

・ダンジョンについては、遺跡として認識されていて、獣人族やエルフ族たちにとっては神聖なものらしい。

・魔力、魔術に関しては、ルナに聞いての通り、魔術に使える程の魔力が無く。さらに莫大な消費量なので、魔術が実戦レベルで使えるのなら、どこの国でも重宝される。

・獣人族、エルフ族について。今は数が少なくなってるが、魔力の扱いに、身体能力強化、魔術の発現と長けているので、奴隷狩りの対象である。数の関係で劣勢を強いられているが、個人個人の力は人より上らしい。

・今回、男たちは他所の村が襲われていると聞いて出払っていたところを襲われてしまった。


細かい情報はまだまだあるが、とりあえずはこんな所だろう。

とりあえず、コールで全員を集めて、協議しないとな。

ここでもう少し情報を集めるのか、それとも移動をするのかと。


「おーい、皆聞こえるか?」

『あ、ちょっと待て!? 話を聞けって!!』

『俺たちが村を襲ったわけではない!!』

『っぐ。ユキ、この村の男たちが帰ってきたようです!! 襲ってきますよ!!』


げっ!?

勘違い系か? お約束すぎるわ!!


「リエルたちは大丈夫か!!」

『えーっと、こっちは私たちが獣人だから、そこまで警戒されていないけど。保護してるつもりみたいで動けないよ』

『はい。今、襲っている人族を倒すとか言ってます……』

『……こいつらぶちのめしていい?』

「カヤ、待て。まずは話合いを優先にな!!」


って、アスリンたちはどうした?


「シェーラ、アスリン、フィーリア、ラビリス聞こえるか!!」

『はい、大丈夫です。私たちも獣人で子供に見えますし、特に危害は……』

『お兄ちゃん気をつけて、お兄ちゃんと、リーアお姉ちゃんは人だから』

『です、兄様気をつけてください』

『そうよ。ユキが万が一でも怪我をしたら、この人たち皆殺しにしそうだわ』


ひぃぃぃいいい!!

一番の問題は、俺が傷を負うことになりましたよ!?



と言うわけで、なんとか俺は傷を負うことなく、相手を殺さずに宥める必要がでてきて、今に至る。

リーアも俺の傍付きの人間なので、他の男に攻撃されている。

こっちは鎧のチートがあるので、そこまで苦労して無いようだが。

俺は、装備的に言えば布の服程度なんだよな……。鎧着ること考えるかな。


「ちょこまかと!! 人族の癖に身体能力で獣人の俺とやりあうつもりか!!」

「だから話聞けって!! 俺はこの人たちを助けただけでなあ!!」

「はい、セット、落ち着いて!! 本当にこの人たちは……」

「脅されて、言わされることになんの根拠がある!!」


駄目だこりゃ。

作戦変更だ。一旦ボコって距離を置こう。

そうしないと埒が明かない。


「全員ダンジョン前に集合。邪魔する奴は、死なない程度にやっちまえ。後で治すから。もう会話じゃ埒があかない」

『『『了解』』』


俺は、セットとかいう、おっさんウサミミダンディの攻撃を紙一重で躱して、カウンターで殴って一発で沈めた。

距離を空けるとか、そんな面倒なことをする理由もない。

そもそも、地力が違いすぎるのだ。


「……あ、あぐっ」


ウサミミダンディセットは、あまりの痛打に言葉もでないようだ。


「えーと、お名前なんでしたっけ?」

「あ、その、ナーヤと言います」


子持ちエルフの人妻の名前はナーヤさんと言うらしい。


「じゃ、ナーヤさん。この人たちの説得頼みます。話も出来ないんで、とりあえず私たちはダンジョンの前にいますんで、落ち着いたら来てください。そこで痛そうにしてる人も一応治療はしてあげます。ま、条件に襲わないってのがつきますが」

「……申し訳ありません」


とりあえず、この人と助けた人たちに説得を任せよう。

リーアを見ると、そっちもあっさり終わったのか、こっちを見て、俺を待ってる状態だ。


「じゃ、ダンジョン前にいくか」

「はい、そうですね。落ち着いてもらわないと、どうしようもありませんし」


俺たち2人がスタスタと歩いて行くと、後ろからザーギスが追いかけてくる。


「ちょっと待ってください。僕を置いていくつもりですか?」

「いや、お前、つっ立ってただけだろうに」

「ですね」

「いや、これでも魔力の調査とか、動きの確認とかしてましたよ!?」


あ、そういや研究者だったっけ?

戦わないから、さぼりかと思ってたわ。



ダンジョンの前へ行く途中、村で捜索をしていた男たちが3回程襲ってきたが、そのまま返り討ちにしておいた。


誤解で襲ってくるんだから、それぐらいは我慢しろよ。

普通なら死んでるんだから、運がよかっただろ?

誤解されるお約束。

だが、そんなお約束っぽい対応はしない。

とりあえずぶっ飛ばす。

これが一番。話を聞かせるのにもね。

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