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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョンと新大陸 序章

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第152掘:予定通りにはいかない

予定通りにはいかない





side:ユキ



「いやぁぁあぁあぁぁ!!」

「助けてぇぇぇえぇ!!」

「ママー!! ママァァァァァァアア!!!」


無抵抗な人々が戦いという凶器に押しつぶされようとしている。


「間違っても殺すな!! 捕まえて売り飛ばせ!! 力のあるやつは奴隷にしろ!! 国のためになる!!」

「女だけのところを狙って正解ですな!!」

「ああ、これで私は昇進間違いなしだ!!」



……新大陸のダンジョンの外は、現在、このようになっている。

どうやら、ダンジョンの外は、獣人族やエルフ族が一緒に暮らしている集落の様だ。

しかし、そこにどこかの軍が攻めてきた感じだな。

ここは見なかったことにして、俺たちの安全確保と実験を……。


「許さない!! 今すぐ僕が行くからね!!」

「あっ、待って!! リエル、だめだって!!」

「……ごめん、ユキ。あんなの見過ごせない」


そう言ってリエル、トーリ、カヤがダンジョンの外へ向かって駆け出す。


「ユキさん、あのままでは3人が危ないかもしれません。ドッペルではありますが、なにがあるかわかりません。私たちも行きましょう!!」

「お兄ちゃん、皆を助けるんです!!」

「兄様、行きます!!」

「……ふふふ。こういう場面はなかなかないわよね」


シェーラ、アスリン、フィーリア、ラビリスも後を追うように駆け出していく。


「ありゃ、若いって素晴らしいな」

「俺たちも行こうか」

「はい、今度は守って見せましょう」


更に、おっさん3人も行ってしまう。


「……」

「……」

「あの、私たちはどうしましょうか? ドッペルなので参戦しても問題はないと思いますけど?」


リーアは、例えドッペルであっても俺の傍を離れようとはしない。

うんいい子だ。


「なにお前も一緒に沈黙してるんだよ」


そして、俺と同じ反応をしているザーギスを叩く。


「えー!? どう考えても、外の問題に、今の状況で、手を出すわけにはいかないでしょうに!?」

「もう、事態は動きだした。お前もこいや!! 研究一辺倒ってわけじゃないだろうが! 曲がりなりにも四天王だったんだろう!!」

「ぎゃー!? こんな、不確定要素の多い戦場に、喜んで行く奴がいますかー!!」


俺だって行きたくないわ!!

けど、ほったらかしにするわけにはいかん。

嫁さんの安全が第一。例えドッペルであっても。

まあ、助けた人たちから情報がもらえれば、それはそれでやりやすいしな。



「うん、問題はないみたいだぞ」

「ええ、そのようですね」

「えーと、ユキさん。どうしましょうか?」


俺とザーギスが、今日、この日のために、色々準備していた道具が無駄となった。

無論、リーアにも説明して持って来てもらった物もある。


なにを持って来たのかと問われれば……。


一つ、新大陸で俺たちの力が通用するのか?

という問題に対して、身体能力を計るため、ストップウォッチや訓練用の案山子を用意した。


この問題に対する回答は以下の通りである。


「女性に手をあげるなんて最低だよ!!」


リエルが武器を振るうと、敵? が空中を舞っている。

いや、リエルだけではない。トーリやカヤ、果ては、ラビリスたち幼女にふっ飛ばされてる敵もいる。


「とりあえず。図らずも身体能力の計測ができるんだ。ザーギス、リーア、皆の動きをよく見ててくれ。ウィードと動きが変わらないかってのが大事だ。逆に性能が上がっている可能性もあるからな」

「もう、カメラを回してますから大丈夫です」

「私もカメラで録画してますよ」


俺が言う前に、2人とも、目の前のギャグ風景をカメラに収めている。

人が、ポーンと飛ぶのはそうそう見れるものではない。


「俺の方は……治療にいく」

「はい。でも、私の目の届く範囲までですよ?」

「子供か俺は」


そんなことを言いつつ、ふっ飛んだ兵士は、持ってきたロープで簀巻きにして、怪我をしている獣人やエルフの女性たちは回復魔術で治療しようとしていたが……。


そう、今回新大陸に行くにあたって、治療の問題が出た。

リリーシュの加護により、嫁さん全員は中級…えーと分かりやすくいうなら、べホイ○、ケアル○、という回復魔術は使える様になった。

しかし、エルジュやルルアの様なエクストラヒール。つまり、ベ○マとかは使えない。

ルルアが妊娠で新大陸メンバーから外れたので、回復役がいなくなってしまった。

いや、いないから、俺が回復役に徹することになった。


「いやっ!! 人間っ!!」

「来るな!! 近寄るな!!」


だが、精神的に辛いわ。

いや、確かに人が君たちを害してたけど、一括りにされたくないわ。

打算はあるけどさ。

心は痛いけど、とりあえず治してやらないとまずいので、そのまま近づく……。

すると、物陰から小さな子供、アスリンたちと同じぐらいか? が出てきて睨んでくる。


「やめてぇぇえぇ!! ママを虐めないでぇぇ!! あっちいけー!!」


子供が俺の行動に対して、できうる限りの抵抗をする。

足元の石を拾って俺に投げつけたのだ。

だが、子供に構っていては手遅れになりそうなので、無視して、そのまま進む。


ゴンッ


……いてぇ。

歩みこそ止めなかったが、痛くて泣きそう。

なんだよ。新大陸ではレベルは、そのままらしいんだよな?

……そう言えば、重症にならないだけで痛覚としては普通にあるって言ってたな。

前、デリーユの鳩尾に、ラビリスの刀が当たったときも、痛がってたな。

まったくこれだからファンタジーは……。


「ひっ!?」


あ、いかんいかん。

つい、睨んでしまったようだ。

まあ、子供には怪我はないようだな。

さっさと、治療してしまうか。

おっと、魔術を使う前と、使った後の確認もしとかないとな。

とりあえず、素早く俺のステータスを確認して……、よしMPは満タンだな。


「よし、行くぞ。それ、エクストラヒール」


とりあえず、目の前にいる、子供の母親と思しき人を治療する。


「え? あ、か、体が!? な、治ってる!?」

「ママーーー!!」


血だらけで、ぐったりしていた母親が体を起こすと、子供が飛びつく。

うん、感動の場面だけど、見てるわけにはいかない。


「すまない。と言うわけで治療ができる。信じてくれるなら、怪我人を集めてくれないか? 無論、危ない奴は優先で治す。見ての通り、この様子じゃ俺が治療して回るのは手間だからな。説得してくれ」

「は、はいっ!! ありがとうございます!! 怪我人を集めてきます!!」

「とりあえず、あんたが敵じゃないことはわかった。だから今はあんたを信じるよ」


治療を見ていた他の人も怪我人を捜しにいったり、誘導したり、説明したりと協力してくれた。

いや、正直、怪我人全員を今すぐ回復できないこともないが、MP消費量がわからないので、この行動をとった。

無論、襲われた人たちが、俺たちを信用するための手段でもある。


そういえば、襲われた人たちが、あっさり集まってくるのを見て、あることを思い出した。

敵どうなったんだよ?

俺はそう思って、先ほどまで人が飛んでいた方向を見ると、リエルたちが、敵と思しき人たちを、縄で簀巻きにして運んで来ていた。

1人につき最低20人はいるな。

シェーラや、ラビリスたちも、もちろん引きずっているからな。

知り合いじゃなかったら怖すぎる。


「貴様たち、なにをしたかわかっているのか!! ジルバ帝国に逆らったのだぞ!! もう、お前らには滅びしかない!!」


なんか、リエルが捕まえた鎧が豪華な髭を蓄えたおっさんが吠えている。


「僕たち数人に、あっと言う間に全滅する兵士しかいない、そのなんとか帝国なんて怖くないね」


うん、リエルの言いたいことはわかるが、せめて国の名前覚えてやれ……。


「あー、とりあえず。襲われてた人たちが怯えるんで、黙っててもらえますか?」

「はっ!! 家畜が、道理も知らんお前らの言うことなど……」

「黙れって」


俺はそいつをサッカーボールをけるみたいに、蹴って、岩にぶち当てた。

うむ。

身体能力は落ちてないのは確実か。

ぐったりと動かない(くなった)男を見て満足した。

岩に血がついてるけど、息があるし大丈夫だろう?

ほかの敵さん? も大人しくなったしこれでよし。


うるさいのを静かにして振り返ると、怪我人が集まってこちらを見ていた。

少し、俺に対する恐れがある気がするが気にしない。

一気に治してしまって、さっさと情報集めでもやりますかね。



まったく、予定通りにはいかないもんだね。

色々準備してたのに、パーとなりましたw

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