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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョンと勇者

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落とし穴25掘:またさぼりの日々

またさぼりの日々





side:ユキ



さて、魔王城攻略も終わり、あとはルーメルの侵攻軍が瓦解するのを待つばかりだが、それは連合軍の役目であって、余程じゃない限り、俺が出る幕は無い。

もう、この時点でルーメル侵攻軍はほぼ詰んでるからな。

ルーメルの街や要塞でも落としていればそっちを拠点にできるだろうが、勇者様たちのせいでまだ一つもルーメルの領土を奪えてはいない。

ま、変に抵抗されて被害が出てもあれだから、こっそり撤退中のルーメル侵攻軍にスラきちさんたちでも向かわせて刈り取るつもりだが。

と、それが予定である。


現在は魔王城を落として2日。

ルーメルへ敵の連絡が1週間先に入ってたとしても、あと最低1週間は暇をしなければいけない。

軍が引き返すというのはそれほど面倒なことである。

連合軍はと言うと、魔族たちから厚い歓待を受け宴に興じつつも、ルーメル侵攻軍への対策をしている。

中でも、魔王を喰らったとされる無名の化け物を倒した将軍たちは勇者と呼ばれているが、まあそこら辺は今はどうでもいい。



「……暇だ」

「暇ね」


俺とセラリアはのんびり縁側でお茶を飲んでいる。

自宅から通える仕事場って便利よね。

しかも代役OKだし。ドッペルって素敵。


「いや、俺はのんびりが好きだからいいが、セラリアは暇なら連合軍行ってきて仕事しろよ。俺よりやることは多いだろうに」

「いやよ。連合軍のウィード部隊はクアルに任せてるから大丈夫よ。他の首脳陣会議もドッペルに実況してくれるようにいってるし問題ないわ」


どうだろうな、ウィード軍のトップ……いや一応エルジュの姉で連合軍の実質大将だぞ。

エルジュは名目上大将なだけで、軍の指揮はできないからな。


「じゃゲームしろよ」

「……この件が終わるまでやめておくわ。一応クリアはしたし、極めるのは後日ね」

「……それがいい」


遊び半分でLV1縛りやRTAを見せたら見事に火が点いたらしい。

だが、流石に徹夜して1日熟睡したのが堪えたのか自重している。

このゲームの続編が出てるって言うのはこの件が終わってからにしておこう。

また徹夜確定だろうからな。


「ほかに何があるかね……」

「そうねぇ。そうだ、私お菓子作ってみたいのだけれど、なにか簡単に作れるものはないかしら?」

「お菓子ね。なんでまた?」

「簡単よ。私は自分で紅茶淹れるでしょう? でも一緒に出すお菓子は作ったことないのよ。お茶とお菓子はセットで当たり前だし、片方しかできないのはアレでしょう?」

「なるほどな」


気持ちは分かる気がする。

でも紅茶はまだ淑女の嗜みでいいだろうが、流石にお菓子作りは専門に任せるべきだと言われたんだろうな。

セラリアは王族だったし、紅茶を自分で淹れる練習も苦労したんじゃないのか?


「お母様の趣味だったのよ。クソ親父から聞いたでしょ? あのクソ親父を含めてお母様たちは冒険者をやってたって」

「ああ、そういえば、そんな話聞いたことがるな」

「冒険者だったから、自分でできることは自分でしないとって意識が強い人たちだったのよ。王妃と側室になってもそれは変わらなかったわ。だって、私たちの世話を自分たちでしていたくらいだから」


それはまた、世話をしていた人たちは色々な意味で困っただろうな。


「紅茶もお母様が淹れてくれてたわ。子供だった当時の私でも美味しいと感じたくらい。そして一緒に出されたお菓子も。でも残念ね。お母様は2人とも早々に逝ってしまったわ。私が覚えられたのは紅茶の淹れ方だけ」

「それでお菓子を作りたいわけか」

「ええ、お母様のクッキーは無理でしょうけど、私も自分の子供に手作りの物を食べさせてあげたいのよ」


これは断る理由はないな。


「まあ、セラリアのお母さんのクッキーは無理だけど、セラリアのクッキーは作れるだろう。こっちは食材が多いから、色々試せる」

「ふふ、こういう時も頼もしいわね。そうね、お母様の味はお母様だけのもの。私は夫の力を借りて私だけのクッキーを作ればいいのね」

「おう」


でも、俺はお菓子作りはやったことはない。

いや、材料などは知っているが、料理みたいに材料を適当に豪快に混ぜてOKというわけではない。

適量を混ぜないと味というか、お菓子として成立しない厄介なものだ。

慣れれば料理と同じなのだろうが、慣れるまではしっかり量を計って混ぜてをしないといけないから俺は今まで手を出したことが無かった。



「というわけで、片っ端から印刷してきた」

「……クッキーだけでも色々あるのね」


そう、俺も色々あるのは漠然と知っていたが、まさか大まかな種類だけでも10種類以上。

これはクッキーの中に入れるチョコとかの種類ではなく、クッキーの作り方が10種類以上ということだ。


ドロップクッキー、冷蔵クッキー、成形クッキー、型抜きクッキー、絞り出しクッキー、バークッキー……などなど。


型抜きクッキーはそのまんまの意味でわかるが他は意味不明である。

冷蔵クッキーとかなんだよ?

バークッキーはアレだろ、カロ○ーメイト。


「まあ、作り方は載っているから、やるだけやってみよう」

「そうね。まずは説明通りに作ってからアレンジをしないとね」


うん、セラリアは料理を失敗するタイプではなさそうだな。

はじめての料理でアレンジ加えようとするやつは要注意、何事も基本が大事である。



そうやって、クッキー作りを始めた結果。


「お兄ちゃんいい匂いです!!」

「兄様何ですか!!」

「……素敵ないい匂いね」

「お兄さん、これはクッキーの香りですか?」

「手作りクッキーですか?」


ぞろぞろと、仕事が終わった家族が帰って来て……。


「流石に、多いね」

「うん、僕も食べきれるかな?」


トーリとリエルの言葉に皆が頷く。

それもそのはず、台所にはできたクッキーが山の様に積まれていた。


「いやー、初めてで色々楽しくてな」

「そうね。色々なクッキーがあったから試していたらやりすぎたわね」


結局、できたクッキーは食後のお茶の時間に多少消費して、残りは皆の職場におすそ分けとなった。



何事も程々にと言う事で。

クッキーは、飯テロになりえない。

そして、飯テロほど描写を細かくしてないからOK。



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