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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョンと勇者

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第139掘:茶番劇の準備

茶番劇の準備




side:リリアーナ



私のお気に入りが燃えていく。なんて悲しく、虚しいのでしょう。色んな意味で、とても悔しいです。

あんな変態に私は魔王の座を追われたのかと思うと……。

と、しっかりしなくては、予定通りに魔王、いや変態の排除は終わりましたし、次は地下牢へ行って和平派の皆を助けなくては。


「ユキさんそれぐらいでいいです。次は地下牢に向かいたいのですがいいでしょうか?」

「あ、はい。いや、ちょっと待ってくれ。城内の状況を確認する。ミリー、トーリ出入口を警戒。リーアは窓に盾を構えて警戒。ルルアは予定通り偽物を」

「「「了解」」」


すぐにユキさんは指示を飛ばして、行動に移ります。

ユキさんにウィードで保護してもらってから、彼の行動を見てきていますが、正直、ダンジョンマスターの権限を譲り受けて、存分にその力を発揮しているのではないでしょうか?

ダンジョンの大本権限はエルジュさんが握っているのですが、今まで見ていた限り、エルジュさんはそこまで統治者として、失礼になりますが向いているとは思えません。

ですが、実質この作戦の指揮をとっているユキさんはけた違いです。

この作戦立案といい、行動力といい、ダンジョンの特性の利用といい、この人は並の人物ではありません。

きっと、あの凄まじい発展を遂げ、発想が全く異なる政策が敷かれているウィードにも何かしら関係しているでしょう。

だからと言って、頭でっかちかと言えば違います。

正直彼の魔力は私を遥かに上回っています。

今回は国としての面子があるため、個人での活躍は控えていますが、きっとユキさんを止めることは不可能ではないでしょうか?

その人物がなぜ参謀などという地位にいるのか、いまだに疑問です。


「こちら作戦実行部隊。作戦の推移を報告、作戦は槍を選択。結果目標アローはクリア、次の目標ベータへ移る。現在2324、作戦の推移は極めて良好どうぞ」

『こちら本部了解。作戦の成功を祈っています』

『お兄ちゃん、お姉ちゃん頑張れー!!』

『兄様、姉様頑張ってー!!』

『ふふふ、こちら退路確保部隊了解。現在こちらは敵勢力に気が付かれた様子は無し、このまま確保を継続』


そして、今も隣にいるように話をして状況を伝えあっている。

この伝達速度、対応力、どの点から見てもウィードという小さな国は、この大陸の中でも群を抜いているでしょう。


「さて、報告は済んだ。あとは、城内はどうなっているか……と」


ユキさんはそうやって、ダンジョンマスターのスキルを駆使して、城内の敵勢力の状況を把握していきます。

行動に無駄が無い、迅速な判断です。

一体どうやればここまでになれるのでしょうか?

将軍や親衛隊の隊長でもここまでできるかはわかりません。


「よし、皆警戒しつつ聞いてくれ。個人でMAPを開く必要はない」

「「「はい」」」

「現在、城内の凡そ7割が沈黙。流石に全員は隠れてやれなかったみたいだ。抵抗が激しいのは3か所。1つは城内にある兵士の詰所。ここは、増援を10チームやったからすぐに収まるだろう。2つ目は城内警備にあたっていた親衛隊、即座に隊長に報告して迎撃をしているが、夜なのであまりうまくいっていないみたいだな。3つ目は城内に残っていた四天王の1人だ。リリアーナの情報通り、力押しのジェスタだっけ? 攻撃力は元より防御力も相まって、なかなか致命傷にはなってないみたいだな。2つ目、3つ目についても30チームずつ支援にやる。残りの3割については40チームで何とかなるだろう」


ユキさんの報告に私は愕然としました。

魔王城に勤める魔族の数は全体の数から見れば多くはありません。

しかし、最低3000人はいるのです。無論、全員が兵士ではないのですが、それでも1500人はいます。

それが20分ほどで7割が沈黙? 呼んだ魔物が強力なのはわかりますが、魔族である私たちが戦ってすぐに負けるような相手ではないはずです。


「目標の地下牢までの残敵は無し。うん、作戦通りって所か。ワイト・ノワールの支援魔法は怖いわー。ぐっすり眠らせて、デュラハン・アサシンで捕縛か殺害、シャドウスネークで見回り兵は仕留めると」


なるほど、敵を起こすような真似をしなかったわけですか。

確かに、城に勤めているのが3000人以上いようが、夜はそのほとんどが寝てしまっています。

この魔物たちを使った作戦はまさに的を射ていたというわけです。

しかし、寝ていた者たちは簀巻きにされているので、必要以上に血が流れたのは少なかったと見るべきでしょう。


「2330に地下牢へ移動を開始する。リリアーナさん先導を頼みます」

「わかりました」

「リーア、窓から見た外の様子は?」

「静かです。戦闘をしている人が本当にいるんですか?」

「兵士の詰所は城にあるが、離れだしな。親衛隊の詰所も逆サイドだ。四天王の1人もわざわざ、東西南北で一部屋ずつある四天王専用部屋でやりあっている。リリアーナさんや、復権後は警備体制と配置の見直しをおすすめするよ」


……あなた以上の指揮官、そして部隊と作戦。そうそうあるとは思えませんが。


「ミリー、トーリ、外の様子は?」

「「気配なし」」

「ルルア、ドッペルの準備はどうだ?」

「はい、準備OKです。変態のドッペルはこの通り」


そして目の前には、ドッペルゲンガーで模倣した魔王、いや変態の姿がありました。

いえ、ドッペルゲンガーが中身なので、こちらの方がまともです。


「よし、ならその偽物はこのまま連れていくぞ、地下牢の人たちが納得しやすいだろうからな」


確かに、私が1人で説得するより、この変態の偽物を目の前で跪かせた方が効果的ですね。

首は、辛うじて残っていますが、これは関に残っている人たち用で、ここの地下牢にいる人たちは私の、和平派の味方なので、関みたいに選別する必要が無いのです。大事なのは、偽物の変態の元、解放されたという事実と魔物を排除したこと。

今ここで強硬派と小競り合いを起こせば必ず伝令が進軍中の魔王軍に向かいます。

なので、関を落として、この城を落とすまでは、建前上、変態には生きててもらう必要があるのです。

そして、あの作戦が実行されれば強硬派も和平派につかざる得なくなるのです。


「2330。作戦を開始」


ユキさんがそう言うと、全員が素早く外に出て、周囲警戒をして私を待ちます。

と、あの作戦が上手くいくかは、私の説得にかかっているのです。

今は、今後の希望的な予測を立てることより眼前の目標を成功させなくては。


私は廊下へ出て、再び暗闇の中を走り始めます。


これが、未来への道なのです。

すいません。

今回は短くなってしましました。

茶番劇の内容を言ってしまうと流石にしらけるので、リリアーナさんが軽く触れるだけにしておきました。


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