表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョンと勇者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

167/2218

第137掘:残り1日

残り1日




side:ユキ



さて、今日は1日休み。

魔王城攻略1日前だ。

今日は最終ミーティング、嫁さんたちにしっかり話をしておく必要がある。


とはいえ、朝飯が無くなるわけでもないので、現在は普通に朝御飯を食べ終わり、後片付けをしている。

洗う食器の数も増えたよな。

最初は1人、エルジュたちが来て6人、減って4人、一気に増えて15人、と色々あったが、今この旅館に住んでいるのは嫁さんたちだ。

モーブたちは住人が来てから、ここを出て行って、冒険者区の一角に家を構えてそこで日々を過ごしている。

たまに遊びにはくるけどな。大物が増えすぎて、居心地が悪いそうだ。

まあ、俺も当事者じゃないなら敬遠するな。

でも、悲しいことに嫁さんなんだよ。

魔王相手であろうが、1人とて命をくれてやるわけにはいかん。



「さて、皆お茶を飲みながらでいいけど、明日の話をしよう」


俺が、宴会場に戻ると、皆お茶を飲んで待ってくれている。


「明日の魔王城攻略メンバーの発表をする」


そう言うと、数人がぴくっと反応する。


「どういうことなの? お兄ちゃん、みんなで行くんじゃないの?」


アスリンが小首を傾げる。

無論全員が行くなんて博打はできない。

保険は常にかけておく必要がある。


「ごめんなアスリン。今回、魔王城攻略に関してはかなりの危険が伴うと思う。なので、攻略組が全滅する可能性がある。だから、ウィードで待機する必要がある」

「ええっ!?」

「アスリン、落ち着きなさい。リテアの時とは違うのよ」

「でも、ミリーお姉ちゃん……」

「聞き分けのない子は嫌われるわよ?」

「え、でも、でも……えぐ、ひっく、私とフィーリアちゃんが絶対はずされるぅぅぅ……うえーん」

「そ、んな。兄様、嫌です。いやでずうぅぅううぅう!!」


2人が泣きだしてしまった。

こっちにしがみ付いてくるので、抱きしめてよしよしするしか、俺には方法がない。


「皆もリリアーナからの話を聞いているだろう。現在魔王を名乗っている魔族デキラ。こいつは魔王につく前は魔王の強硬派で軍閥の筆頭だ。そして、なぜ軍閥の筆頭だったかは覚えているな?」

「はい、個人の武勇は当然として、魔物大量使役ですね?」

「そうだ。個人の武勇は嫁さんたちの方が上だろう。だが、一番の問題は魔物の大量使役だ」


エリスの言う通り、リリアーナから聞いたデキラの情報で主に注意すべきなのは2点、そして一番に注意すべきは……。

そう、この大量使役。どの程度の規模かわからないことだ。

一定のレベルの魔物を使役するのは分かるが、どこが上限かわからないのだ。

そして、何をどうして使役するのか、リリアーナですら知らない。

なので、ある危険性が浮上する。


「私たちの部下が奪われる可能性があるということですよね、お兄さん?」


ラッツが答えを言う。


「そうだ、そこが一番の問題だ。今回一番危険が伴うというのはそこだ。俺たちが魔王城攻略の際、魔物が通用しない場合、生身、つまりドッペルではなく本体で行かなければいけない」

「ユキさんどうしてですか? 確かに魔物の制御が奪われるのは危険ですけど、ドッペルも魔物ですが、私たちの影武者で高レベルですし、相手の制御規模を計るのに丁度いいのでは? 敵に回っても倒せないことはないと思うのですが……」


そうやってトーリが不思議そうに言ってくる。

そうなんだよな、確かにトーリの言う通りなんだ、ある1点を除けばだが。


「トーリの言ってることはわかるけど、ドッペルが敵に回った時の危険性は何があるかわかるか?」

「ドッペルが敵に回る危険ですか? レベルが高いぐらいだと思いますが……」

「……あ、そういうことね」

「え、ミリー分かったの? 僕はトーリと一緒でよくわからないや」

「……情報、ですね?」

「当たりだ。万が一ドッペルが敵の手に、制御に落ちたら、俺たちのスキルや動き、そしてウィードの機密がばれる可能性が非常に高い」


「「「――っ!!」」」


事実に気が付いてなかったメンバーの顔がこわばる。


「それは不味すぎるわね。ドッペルを便利に使っているから忘れがちだけど、その危険性は確かにあるわね」

「そう、ですね。迂闊でした。万が一ドッペルの制御が奪われれば、こちらの情報が完全に漏れてしまいます。そうなればウィードは窮地に立たされるでしょう」


セラリアが自分の考えの迂闊さに気が付き、シェーラがそれから引き起こされる問題を考えて顔が青ざめる。


「そう、だから魔王城攻略はレベル150までの魔物で攻めて、これの制御が奪われるのであれば、俺たちが出る。状況をよく見て、どうやって制御が奪われるのか、各々でしっかり観察してくれ。ドッペルは万が一にも制御を奪われるわけにはいかないので、俺たち最高戦力が切り札だ」


俺の言葉に皆が頷く。


「今まで述べた理由により、魔王城攻略は厳選して、ウィードに残る組がいる。皆納得してくれ」

「……理由は分かりました。が、お兄さんが死ぬようなことは決してさせません」

「……同じく」


ラッツとカヤが言うと、他の皆も頷く。

こっちは皆を死なせたくないんだがな。


「じゃ、ウィード居残り……いや防衛組はラビリス、シェーラ、アスリン、フィーリア、エリス、ラッツ、リエルだ」

「……わかったわ。でも必ず戻ってきて」

「……外交の代表として私、ですか……」

「引き受けました」

「嫌というのは簡単なのでしょうが、わかりましたよ、お兄さん」

「何で僕がっていうのは我儘だよね。皆、ユキさんを頼むよ」

「「うえーん」」


ラビリスは俺との接触で内容を把握してある程度納得しているが、アスリンたちと同じく一緒に来たそうだ。でも、俺に代わるのはラビリスしかいないからな。任せた。

シェーラ、お前の言う通り、セラリア、ルルアが死亡した場合、お前に頼るしかない。だから頼む。

エリス、あっさり返答してるが、拳に血が滲んでるぞ、あとで治療しないとな。

ラッツ、お前はその笑顔を崩さないよな。嫌なこともそうやって引き受けてくれて感謝してる。

リエル、一番成長が凄いよな、疑問は聞いていって解決して、訓練を研鑽を積んでいる。ウィードの治安は任せた。

アスリン、フィーリア、ごめんな。お前たち2人を危険な場所に今連れていくわけにはいかない。2人は俺たちにとっての未来でもあるから。


「次に、魔王城の地下、ダンジョンの警護……つまり退路確保及び、情報漏洩阻止を、セラリアとデリーユ、カヤで頼む」

「……ウィードの顔である私は、死亡する危険をなるべく減らさなくてはいけない……か」

「ぬぐぐぐ……、この中で万が一退路確保となったら、妾が一番適任か……」

「……今度は、きっと守ってみせる」


セラリア、それもあるけど、進軍中の連合軍を引かせる必要がある。俺たちが全滅するようなら、今の連合軍に勝ち目はないからな。冷静でいてくれよ。

デリーユ、俺たちの中で一番戦闘経験が多い、だからこその防衛だ。頼む。

カヤ、村のことを言っているのか? ああ、ちゃんと戻ってくるから、守ってくれ。


「最後に、魔王城内の敵の掃討及び、魔王の首をとるのは、ルルア、リーア、ミリー、トーリ、リリアーナ、俺だ」

「回復の要ですね。任せてください」

「私ができるのかな。いえ、絶対やって見せます!!」

「私はトラップの探知関連やサポートね」

「刀によるアタッカーですね」


ルルア、その通り、最高の回復要員だ、任せた。

リーア、君を最前線に立たせてごめんな。でも、頼りにしている。

ミリー、冒険者ギルドに勤めた腕を見せてくれ。

トーリ、刀の扱いはもう俺より上だ。ここ一番では突破力がある。後ろは任せて、前の敵を倒せ。


「最後にキルエ」

「はい」

「この家を頼む」

「この身が滅びても、守って見せましょう。ですから、ユキ様、奥様方どうかご無事にお戻りください」


キルエ、君におかえりって言われるのは嬉しいんだ。家で待ってくれる人がいるって実感できるからな。


「次に、今回は時間がないから、かなり適当な作戦だが、本来は目標の場所を一か月以上、いや二か月は最低監視をして相手の動きを把握するのが基本だ。それを忘れないでくれ」

「ええ、言ってることは理解できるけど、最早、そこまで監視されたら逆転も何もないと思うわ」


セラリアが顔を引きつらせつつ答える。


「実の所、魔王城には2日目に到着している。ラッツとカヤとミリーは無理をさせてすまなかった」

「いえいえ、お兄さんのためです」

「……安全はなるべく確保するべき」

「ユキさんの言ってることは至極当然かと」

「で、今まで俺たちで集めた情報だが、まず、予定通り1キロ手前で停止後、俺が直接ダンジョンを魔王城地下まで伸ばした。その結果、魔王城に異変は無し。相手はダンジョン化の異変に気が付けないみたいだ。まあ、モーブたちなどの冒険者からダンジョンには特有の魔力が流れるから、感知されると聞いていたので、かなり真下の奥深くに設置した」


モーブたちが迷いなく、出来立てのダンジョンにたどり着いたのは、その魔力に気が付いたからだ。

だから、魔族の魔力に長ける力だと危険だと判断して出口を作らず真下でためしたわけ。


「でも、それでは、魔王城のダンジョン化は出来ないのでは? 中の様子もうかがえないと思うのですが……」


シェーラが尤もなことをいう。


「ああ、シェーラの言う通りだ。しかし、昔、どこかの大聖堂をダンジョン化した時があったんだが、その時は気がつかれなかった」

「そういえば、そうね」

「そこで疑問に思ってたんだが、ダンジョン特有の魔力は勿論、特有の魔力ではあるんだが、一番の原因は、出入口が1個だというのが問題だと、ザーギスの研究と冒険者の協力で分かった」

「どういうことかしら?」

「つまりだ、本来ダンジョンは換気口が1個しかないんだ。だが、外をダンジョンの影響下に置けば、その分換気口ができるわけだ」

「なるほどね。大きければ大きいほど換気口が沢山あるから感知されにくくなるというわけね?」


セラリアが俺の説明で言いたいことが伝わったようだ。


「そういうことだ、それで魔王城をダンジョン化したけど気がつかれなかったわけだ」

「でも、あえて無視しているとは考えられないかしら?」

「それも考えられなくもない。が、昨日の夜、デキラ魔王が寝ている寝室の中に召喚陣敷いて、魔物を普通に置いたが寝たままだった」

「「「……」」」

「いや、一応起きたが、その前に魔物は戻したし、起き上がって言ったセリフが」


『ん、制御甘かったか? 部屋を立ち入り禁止にしないとな』


「だと」

「「「……」」」

「あと、ダンジョン化した初日の夜だが、なんか知らんが、魔王の部屋に女性物の服があって匂い嗅いでたんだけど、誰のなのだろうな」

『デキラ殺す!!』

『落ち着いてレーイア、気持ち悪いけど、追い出された私が悪いの』

『まあ……、何というか、中身が無いとつまらないと思うのですが』


ミーティングに参加してたレーイアが切れて、それを一番被害者のリリアーナが抑えるという変な構図になっていた。


「ああ、そうか、リリアーナさんの部屋だったんだよな。それなら、誰の服か分かって当然か。でも、なんで邪魔な物残してんだと、言うのは不躾か」

「「「変態ですね」」」


魔王で変態とは救いようがねえな。

まあ、どこかの場所では多くの男性から勇者と称えられるだろうが。


「まあ、魔王が変態なのは置いておいて、リリアーナやレーイアに聞く限り、特に今の時期は特有の文化で夜起きてたりすることは無いらしい。だから明日の夜、強襲を仕掛ける」

「それは朗報ね」

「まあ、起きてたりするやつもいるにはいるし、何か変な理由で全員が起きてる可能性もある。落ち着いて対応してくれよ。あとは、俺が調べた限りの敵の強さと、配置をまとめて、リリアーナの地図との差異がないかも確認してみた」


・地図に差異は無し

・敵の強さは平均レベル100前後

・魔王はレベル233 まあ、変身しそうなんでこの情報はあてにならんと思う。

・配置はまあ見てくれ


「魔王が233か、これはあなた、自分でとどめ刺す気ね?」

「そりゃな、150の魔物じゃキツイのはわかってるが、200以上の魔物は俺たちでも制御奪われると面倒なのが多いからな。150が限界なわけだ」

「当然ね。私は退路確保だし、任せたわ」

「後は、今日皆1日装備品の確認と、作戦の確認。そのあとはのんびりしてくれ」


その後、皆思い思いに、明日へ備えている。

セラリアたちは今までのナールジアさんからの装備品パワーアップに慣れているが、リーアは初めてなので、俺はリーアに付き添っていた。


「あ、ユキさん。どうですか?」

「うん、似合っているけど。……ナールジアさん?」

「ふっふっふ、どうでしょうか!! 私の最新作は!!」


目の前に立つリーアは希望通りの黒を基調としたドレスアーマーを着込んでいるが……。

篭手やブーツ、そのどれもが、けた違い品だというのが分かる。

しかも黒ベースなのに、何というか悪者という感じはしなくて、気品が見えて、リーアの白い髪が映える。

黒いティアラってなに!? その装備意味あるの!?


「リーアさん、魔力を流し込んでみてください」

「え、はい」


そうすると、リーアの体を魔力の膜が覆う。

ん、これって俺の防壁に似てない?


「その通りです!! ユキさんの超強固な魔力防壁を参考にしました。防壁層の数はユキさんのより劣りますが、各箇所の防具の中に障壁展開の術式を組みこんで、使用者の魔力に呼応して魔力防壁を展開するようにしています」

「つまりなんだ、篭手2つ、ブーツ2つ、鎧1つ、ティアラ1つで1枚ずつ防壁を作っているわけか?」

「その通りです。組み込める場所が少ないので、面積が小さい程、魔力防壁の強度は下がります。ですが、それを複数装備し、下を鎧で覆う事で、ユキさんの魔力防壁に近づけたわけです!!」


なるほどな、俺の魔力防壁に付け加え、更に強固な鎧をつけているわけだ。

俺は基本鎧つけねーからな。


「そして!! リーアさん、この剣と盾をどうぞ!!」

「あ、これも黒ベースにしてくれたんですね。ありがとうございます!!」


まて、待てよ、その剣リボルバーついてない!? ガンソード!?

でもな、砲身が無いから意味ないぞ。 


「これはユキさんが使っている銃を参考にさせていただきました。リーアさん銃ってわかりますか?」

「あ、はい。スティーブさんに見せてもらいましたけど」

「ではそのイメージで剣を構えてみてください」

「わかりました」


そうすると、剣とは別に砲身が伸びる。

魔力の砲身だ。剣の魔力に呼応しているのか、黒い魔力の砲身ができる。


「それで、弾を込めるイメージをして撃つイメージで放ちます」

「こうですか?」


リーアが何気なく、庭の大石を狙ったのだが……。


ドカーン


と、大石が木端微塵になった。


「どうですか、狙った対象だけを破壊する魔力弾!! 味方撃ちは無し!! 凄いでしょう!! 勿論、魔力による剣の強化もされていますので、剣としても十分戦えます!!」

「凄すぎるどころじゃねーよ……」

「これなら私も戦えますよ!!」


魔王の生存という可能性がぐんと減った気がした。



あ、盾はさらに魔力障壁を指向性で展開できるので、受け流しが可能となるみたい。

もう、リーア怖いぞ。

敵情報は長い時間をかけて集めるべし。

変態魔王の命はあと1日。


そして、凶悪な勇者装備が出来上がる。

次回さらば魔王よ!!


ネタバレにならんよな?

もう結果が出てるようなもんだし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ