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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
ダンジョンと勇者

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落とし穴22掘:寒くなってまいりました

飯テロ。

責任は取りません。俺は悪くねぇ!!

寒くなってまいりました




side:ユキ



「ん、寒っ」


朝、体が冷え切って目が覚める。

咄嗟に、掛布団を探すと隣でリエルが掛布団で丸くなっている。

あー、リエルも素っ裸だし、無理に剥ぎ取るのは良くないよな。

そろそろ、布団は1つじゃなくて2つ用意しないと、凍えそうだな。

とりあえず、服を着よう。

タンスから衣服を取り出して着ていく。

寝る前は基本浴衣だが、流石に寒くなってるし、奥の手を出すか。


「リエル、起きろ。朝だぞ」

「んー。ユキさんキスー」


リエルは結構甘えん坊でこうやって2人の時はべったりだったりする。

基本は活発で元気ってイメージなのは自分でもあるらしく、俺の前でしか、こんな女の子っぽい行動をとらない。

こういうリエルもいいので、そのまま優しくして起こす。


「ありがと」

「おう」


漸く目が覚めたのか、モソモソと包んでいた掛布団を落とす。


「うっ、寒いね」

「そうだな、ほらコレ着ろ」

「ん、なにこれ?」

「寒くなってきた時の家で着るお約束だ」

「お約束ってユキさんの異世界の?」

「ああ」


俺がどういう風に着ているのかを見ているので、問題なくその上着を羽織る。


「これは何て言うの?」

「綿入れ、袢纏はんてんがメジャーな呼び方だな。寒い日はこれを着て家では過ごすんだ。外出用に使えないこともないけど、ジャンパーの方があったかいしな」

「じゃんぱー? がどういうのかはわからないけど、このはんてん? は暖かいよ」


だが、この袢纏の機能はこれだけではない。

子供の頃1度はやったりやられたり、したのではないだろうか?


「リエルこっち来てくれ」

「?」


リエルが首を傾げながら近づく、そして、俺が着ている袢纏でリエルを包みこむ。

二人羽織の前バージョン。

誰もが合体とか言って、家族の袢纏やジャンパーなどに潜り込んだ経験はあるだろう。


「暖かい」

「だろ?」


リエルは嬉しそうに、そのまま袢纏の中、俺の胸に顔をこすりつけている。

そして、リエルを見て不意に、自分が餓鬼だったころを思い出す。

親父もお袋も、こんな感じだったのかな。

もう、会えないし、覚えていないだろうけど、この暖かさを誰かに伝えられたよ。


「じゃそのまま前向いて出発だ」

「うん!!」


リエルはそのまま、俺の袢纏の中から顔だけ出して進んでいく。


「お兄ちゃん、リエルお姉ちゃんおはよー……ってああーっ!! ずるいです!! ずるいです!! うらやましいです!!」

「どうしたのアスリンって兄様!! 私も!! わたしもーーー!!」


2人がひな鳥の様に鳴き始めた。

リエルと視線が自然と合うと少し困った顔をしたあとすぐ離れる。


「うん、僕は堪能したからね。さあさあ、2人ともユキさんにやってもらうといいよ」

「わ、私を先に!!」

「兄様、私!!」


すぐさまこちらに駆け寄ってくる2人。

どちらを先にするべきか悩んでいたが、小さい2人をみてあることを思いつく。


「それっ!!」

「「ひゃっ!?」」


そのまま2人同時に袢纏で包んでしまう。

2人が小さいからできることだな。


「暖かいです」

「兄様の匂い~!!」


2人ともリエルと同じように顔をぐりぐりを体に押し付けてくる。


「……あらあら、酷い裏切りだわ。まさか私を除け者にしてそんなことを楽しむなんて」


そして、ラビリスが暗い顔で現れる。

朝は結構弱かったりする。


「よし、アスリン、フィーリア、ラビリスを引き込むんだ」

「「わかりました」」


そう言ってラビリスも袢纏の中に、ぎりぎり? 巻きこむ。


「うん、ありがとう」


ラビリスも嬉しそうにする。

ま、こんなことをしていると朝御飯が作れないから、台所で終わるはずだったのだが。


「おはようございます。ユキさ……ま」

「アスリンもフィーリアもおは……よう」


キルエとシェーラの瞳から光が消えて、うらやましそうにこちらを見つめいている。

とりあえず、怖いし、減るもんではないので、アスリンたちを解放後、すぐにキルエとシェーラを包む。

すぐに機嫌は直ったのだが、なんか地雷踏んだか?


この後、朝御飯は普通に終わって、こっそりセラリアと2人きりの時に袢纏ハグをしたのだが。


「……他の皆にもやってあげなさい。これを隠してたなんて知れたら、私でも許せないわ。このあなたの香り、暖かさ、それが同時に感じられるなんて、袢纏って素晴らしいわ」


セラリアも他の皆と同じように、袢纏の中でスーハーして他の嫁にもやってやれと言われた。

うん、セラリアが言うなら間違いないだろう。やらなければのちに禍根を残すとこの時自覚した。


袢纏事件はその後、俺が1人につき1時間ハグすることで解決を見た。

流石に、疲れた。あれは、意図しないで、サッとやってちょっとした時間内でするのがいいのであって、長時間するもんじゃないと思うぞ。



それからは、普通にいつもの業務をこなしていく。

進軍中でマローダーでこっちも秘密裏に動いているが、それでも到着はまだ3日後。

俺が今考えるのは今日の晩御飯だ。

ある程度、構想はまとまっている。

が、この料理は多岐にわたる。種類が多すぎるのだ。

冬の定番。そして、その食べ物を仕切る将軍という大仰な役職まで存在する。

日本の冬の代表料理。



鍋。



これを食べたことのない、日本に住んでいる日本人などいないだろう。

寄せ鍋、湯豆腐、鴨鍋、水炊き、軍鶏鍋、ちゃんこ鍋、すき焼き、すき鍋、ぼたん鍋、もつ鍋。

俺が軽く言うだけでこの数。そして、家の数だけオリジナルの鍋がある!!


「そうか、オリジナル!!」


俺は閃いた。

確かにメジャーな鍋もいいだろう。

だが、家族特有の鍋こそ、わいわいやれるものだ。

何処まで再現できるかわからないが、昔家族で食べた鍋の味を思い出しながら、必要な材料をメモしていった。

スープが一番大事だな。鍋はその場で煮て食べるから、調整している暇がない。


「リーア、帰るぞ」

「え? あ、はい」

「スティーブ、あと任せた」


そう言って、俺は報告に来ていたスティーブを俺の代わりに椅子に座らせ出ていく。


「なんすかいったいぃぃぃいい!!」


許せ、嫁さんたちの晩飯のためだ。

いつか埋め合わせはする。



今日はDPを使って食材を集めることにする。

鍋だから、ラッツの店では手に入らない物もある。店で買ってない物はDPでということをしている、時間が惜しい。

とりあえず、スープを作る為に、味噌、みりん、昆布と用意する。


「えっと、これは味噌ですよね? で、これは何でしょうか? 飲み物? こっちの黒いのも?」

「これはみりんと言って調理酒だ。お酒を料理用に調整している。黒いのは昆布といって海の草でいい出汁がでる」

「海、ですか。私見たことないです」


そう、この大陸はかなりデカく、中央に陣取る5大国は海に面していない。

だから、必然的に海を見る機会が無い。

日本の味を再現するにはちと厳しい場所ではある。

が、俺にはDPがある!! この時だけはルナに感謝しよう!!


「まずは、この昆布を鍋に入れて煮る」

「はあ」


その間に、鶏肉や材料を刻んでもらう。

暫くすると、昆布から出汁が出てきていい匂いが漂う。


「へー、良い匂いですね」

「ああ、だがこれからだ。味噌を入れる。気が付いてないかもしれないが、これは味噌でも赤味噌といって、俺がいつも作っている味噌汁より、塩分が濃ゆい。そして味も深い」

「お味噌にも色々あるんですね」


そして、赤味噌を多めに溶いて、小皿に少し移し飲んでみる。


「んー、濃ゆくないですか?」

「いや、これぐらいでいい。鍋ってのはこのまま材料を入れていくんだ。材料が持っている水分も鍋に当然行くから、濃ゆ目にしないとかえって味が薄くなる。本来、鍋の多くは小皿に味のついた汁を入れ、それにつけて食べるんだが、今回は皆の食べ慣れた味噌で行こうと思う」

「なるほど」

「と、切った鶏肉をくれ」

「え、まだ煮込むには早くないですか?」

「違うんだよ、鶏肉もいい出汁がでるんだ。味噌と相まってさらに美味しくなるはずだ」


そう、鴨蕎麦又は鴨南蛮と言われるものが有る。

あれは鴨の肉が上に載っているから鴨蕎麦というわけではない。

出し汁から、鴨を使用しているのだ。こってりとしたいい味がでる。

それの応用である。鳥系は意外と煮込むとこってり系になりがちだが、味噌の中に入れると味噌本来の味と相まって絶妙のバランスとなる。


「まあ、実験でもあるんだ。これが上手くいけばこのままスープにするし、上手くいかないなら、味噌と昆布のみにするよ」

「ああ、そういうことですか」

「で、肉系をスープ物に入れる時の基本だ。今日はみりんを使うが、ワインでもいい。鶏肉に直接みりんをかけて揉む。そして鍋に入れて、更にみりんを適度にかける」

「するとどうなるんです?」

「肉の特有の臭味が消えると同時に、酒に含まれる成分で肉が柔らかくなる」

「はぁー、色々なこと知ってますね」


いや、日本にいれば基礎知識みたいなもんだがな。

そうやって鶏肉を投入してしばらく煮込んでから、また小皿で味見をしてみる。


「ふわぁ!? すごい、こんな味初めてです!! でもすごく美味しい!!」

「うん、いい感じだな。よし、これを18人分だから……、この土鍋で6つ作るぞ」

「1つのお鍋で3人分ですね。分かりました。材料は任せてください」

「頼む、俺はスープを量産する」


そうやって準備は滞りなく終わり。

晩御飯の時間がやってきた。



「あら? なにこれ、確かコンロよね?」

「こっちは生のお肉に野菜ですか?」

「え、これが晩御飯?」


皆は予想通り、初めて見る鍋に驚いている。

いや、この大陸にも煮込み料理は存在するが、目の前で煮込んで食べる文化は存在しないのだ。

囲炉裏という、暖を囲んで、飯を食べる日本だからできた文化である。


「「ふっふっふっふ……」」


俺とリーアで、皆の前で肉とか、野菜とか、キノコを入れてコンロに火を入れる。

流石に鍋将軍みたいに具の入れ方、食べ方に一々言うつもりは無いが。

最初は俺たちの行動を不思議に思っていたが、蓋された土鍋から、良い匂いが漂ってきて落ち着きがなくなってきた。

幸い、リーア以外は皆お箸が使えるので殆ど問題がない。

各、土鍋の近くにお玉とお皿を置いていく。


「さあ、そろそろいいだろう。リーアそっちから開けてくれ」

「はい」


俺とリーアは反対側から順に鍋の蓋を開け、更にいい匂いが部屋に充満する。


「よし、皆このお玉で鍋の中の具を小皿にとって食べるんだ。ま、お箸でとってもいいけどな」


そう言って実演して見せる。

はふっ、おお熱い、けど味も味噌が濃ゆい分染みている。

うん、美味い。


そして、それを合図に第一次鍋戦争が勃発した。

簡単に言えば、美味かったので、具の取り合い。


「あら、ラッツその鶏肉は私が先よ?」

「いえいえ、私が先でしたよ?」

「野菜が美味しいわ」


と、こんな感じでどこもかしこも、お互いに牽制しあっては、鍋をがっついている。

そして、具を度々投入するが、それも無くなる。


「はぁー、美味しかったけど、何か足りないね~」


リエルがお腹を膨らませて満足げだが、何か足りないという。


「ふふふ、リエルよく言った。鍋には締めが存在する」

「「「締め?」」」


皆の視線が集まる。

そう、締め。

鍋の終わりに食べるお約束。


「これから6つの鍋へ交互に3つずつ、この御飯と、この麺を入れる。今までの肉や野菜の出汁が良くでた味噌の中にこれを入れるとどうなると思う?」

「「「っ!?」」」


そう、鍋は一番最後が美味いのだ!!



そうやって、夜は1時間ほど全員がお腹を膨らませすぎて動けなくなった。



うん、やりすぎた。でも後悔はしていない。

俺は今夜鍋でーす!!

とまあ、そこは置いておいて、みんなにとっての鍋と言えばどの種類になるんでしょうね。

自分は福岡が出身なんで水炊きやもつ鍋ですね。


寒くなってきましたので、体にお気をつけて。


明日は休むかもしれません。ではでは。

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