落とし穴２０掘：妄想　ドキドキ学園編　その２

妄想　ドキドキ学園編　その２

side：生徒会長　ルルア

今日は朝から澄み渡るような青空が広がり、一日の始まりを気持ちよくしてくれる。

朝の少し冷たい空気の中を歩き、今日も一日頑張ろうと思い、いつもの道を歩く。

「おはようございます」

「あ、おはようございます。生徒会長って朝早いんですね」

朝、グラウンドへ、体操着に着替えて向かっている生徒達とすれ違う。

「怪我に気を付けて部活動頑張ってください」

「はい、生徒会長も無理をしないでください」

ウィード学園は部活動にそれなりに力を入れていて、他校の中で比較的、運動部系は抜きんでている。

学生達もその自覚があるようで、この様に自主的に朝早くから部活動をして常に鍛えている学生がそれなりにいる。

「おう、ルルア早いな」

「おはようございます、ロック先生。いつもの事です。もうすぐ生徒総会ですし、色々まとめておかないといけないんで」

「相変わらず真面目だな。悪い事だとは言わんが、ちゃんと息抜きもするんだぞ」

廊下で、運動部の顧問を務めるロック先生とすれ違い挨拶をかわす。

真面目な先生で、指導もしっかりしてる。

それでいて、固くなく、冗談も言える人で、生徒たちには人気の先生だ。

「大丈夫です。私もちゃんと学生してるんですよ」

「そうか。その気持ちを大事にな」

そういって、ロック先生はグラウンドへと向かって行った。

「ん？　気持ちって、もしかしてばれてるのかしら？」

でも、誰にも言った事はないのに、恐るべし先生と言ったところか。

ともかく、今日は生徒会のお仕事で早目に登校したんだから、そっちを頑張らないと。

私はそう思って、生徒会室へ入っていきました。

「生徒会長おはようございます」

「お、会長おはよー」

「……おはよう」

中には既に生徒会の３人がすでに書類を広げて仕事をしていました。

どうやら私が一番最後だったようです。

「ごめんなさい。私が最後のようですね」

「いえ、生徒会長は皆に声かけられていましたし」

「私達も今来たばかりですよ」

「……もうちょっと人目を避けてこないと、前にすすめないわよ」

書記のエリスがフォローしてくれて。

会計のラッツは……本当に来たばかりでしょう。けっこうのんびりですし。

副会長のラビリスはまあ、痛い所をつきますね。

「さて、始めたばかりでいいでしょうか？」

気を取り直して、席に座り、作業をしている皆に話を聞く。

「はい、もうすぐ生徒総会ですから、各部の予算会議や陳情の纏めですね」

「まだ、希望予算を提出していないところがあるんですよねー」

「そう言うところはもうほっとけばいいんじゃないかしら？」

「ラビリスのいう事は尤もだけど、声をかけずに撥ねたら文句言いそうね。一応私から言っておきますね」

そうやって、いつものように、生徒会室で仕事を皆でこなしていく。

朝の時間はかなり短い。

それでもこうやって仕事をしていくと時間の感覚は長くなったり、短くなったりで不思議だ。

気が付けば、外は登校している生徒の話し声でにぎやかになっていく。

「あら、もうこんな時間ですね」

エリスが時計を見てつぶやく。

「本当ね。これぐらいで朝は終わって続きは放課後ね」

「ういー。お茶でも淹れますかね」

「……私は熱めでお願い」

書類を片付けてお茶を飲んで一息いれる。

「そういえば、もうすぐテストよね。皆は大丈夫かしら？」

「私は授業をちゃんと聞いてますので」

「私も特に問題はないですね～」

「……問題はないわ」

うん、流石にこの学園の天才たちだけあって頼もしいわ。

私も勉強は普通にやってるけど、心配がないかと言えば嘘になるわね。

「あ、来たみたいね」

「みたいですね」

「ん、来たんですか？」

三人がそう言って窓際による。

何が聞こえたんだろう？

そう思って耳を澄ませると……。

『お兄ちゃん、がんばってー』

『兄様はすごいです！！』

『しっかり捕まってろよ』

元気のいい声が聞こえてきます。

私もつられて、窓へ視線を向け、声の出所を見つけます。

そこには多分妹なんだろうけど、小さい女の子の生徒を抱えた男子生徒が走っています。

「知り合いですか？」

一番近くにいたラッツに話しかける。

「ええ、前話したことがありましたよね。ほら私が遅刻しかけた時、ぶつかってそのまま……」

「ああ、ラッツさんを抱えてきてくれた人ですか」

「ですよ～。いい男です。いままで気が付かなかったのが不思議なくらいです」

そうやって話していると、他の二人も話に加わってきます。

「それは当然です。ユキは私の幼馴染なんですから。いい男に決まっています」

「……私の幼馴染でもあるわ。彼は私の物なの」

そのセリフで私とラッツの表情が固まります。

「ちょっと、まってください。幼馴染位置は禁止って言ったじゃないですか！！」

「そうですよ！！　最初から距離が近すぎるって話したじゃないですか！！」

セリフそっちのけでズルした二人を糾弾します。

「ああ、すいません。幼馴染ではありますが従姉って設定です私」

「私も従妹って設定よ幼馴染の前に。だからセーフ」

何ですかその方便は。

そっちがその気なら……。

「言いますね。なら私はすでに恋人同士でお願いします！！　お兄さんと毎日ラブラブしながら学校にいくんでよろしく！！」

「私は妻で宜しくお願いします！！　もうすでに夫婦ですから演技も抜群ですよ！！　決定ですね！！」

そう宣言すると、火花が散っていきます。

お互い尊重しあう妻達ではありますが、演技とはいえ、旦那様の横を簡単に譲るわけにはいきません。

「はい、カットー。というか何やってるんだよ」

その声で、カメラが止まります。

でも私達は止まれません。手ひどい裏切りを受けたんですから。

「なんじゃあの４人は？　何をそんなに腹を立てておる？」

「さあ、演技でも夫の隣は譲りたくないんでしょう」

デリーユとセラリアがのんびりとお茶を飲んで話している。

セラリアのその余裕、腹が立ちますね。正妻だからですか？

「そんなもんかのう？　家に帰れば仲良く愛でてもらえるだろうに」

「ええ、むしろここで変にいがみ合えば夫からの信頼を失うでしょうに」

その一言でピタッと私達は止まる。

そして旦那様に視線を集めます。

「き、嫌いにな、なりますか？」

「「「……」」」

エリスが恐る恐る聞きます。

私達は何も言えずに旦那様の返事を待ちます。

「いや、このぐらいで嫌いにはならないけどな。お互いの認識違いがあったみたいだし、もう一度台本を読み直して、ちゃんと打ち合わせしとけよ」

何か冷たい気がします。

ううっ、寒いです。心が寒いです。

「ねえ、それよりも貴方？　この制服だっけ、どうかしら？」

「そうじゃ、妾も似合っておるかの？」

旦那様の目の前で二人がくるっと回ります。

「おう、似合ってるぞ」

素直に旦那様は二人を褒めます。

「「「私達も褒めて！！」」」

そうやって、焦りを感じた私達は旦那様に詰め寄ります。

「収拾つかねーなおい」

結局その日は制服のお披露目会になってしまいました。

因みに、私のブラウスは二度ほど胸のボタンが飛んで大変でした。