第114掘:はいじゃ本題ね
はいじゃ本題ね
side:ユキ
ふむふむ、まあ魔族の成り立ちは予想通りといいますか、元を見れば些細な事というべきか。
とにかく、些細すぎて、普通すぎて、今更どうにか簡単にできる内容でもないというわけだ。
とまあ、そんな事はどうでもいい。
今更、あっさり魔族率いる魔王と、和平が通るなら他の誰かが成功させてるだろうし。
「じゃ、ザーギス。本題入っていいか?」
「ええ、構いませんよ」
そうやって、俺が本題に入ろうとザーギスを促すと、周りの皆がずっこけた。
ずっこけたは語弊があるな、詳しくは机の上の書類をばらまいたり、手で支えてた頭を机にぶつけたりである。
ボケた時の反応としてはやはり、ずっこけこけたがただしいのではなかろうか?
「どうした?」
「どうしたじゃないわよ!? 今、ザーギスの話からトンデモない事実が分かったのに、あっさり次に行かないでくれるかしら!?」
セラリアが久々に昔のであった時のようにキャンキャン吠える。
なんか数か月前なのに懐かしいな。
ツンツン時代は黄金時代というべきか。
「そんな事言ってもなあ、今更どうにかなる話じゃないし、俺達の会議は魔王がどう動くかだ。さっきのは只補足説明をザーギスがしてくれただけだろう?」
「そ、それは、そうですが……」
ルルアもさっきの話の内容から抜け出せていないみたいだ。
まあ、衝撃の事実!!
だけど、現代じゃよくある話だしな。
冤罪だの、原因は些細な事だったとか。
そもそも、この話だってどこまで本当かわからないしな。
「さて、魔族の起源についてはわかったから、あとは、現在の魔王の体制だな」
「体制ですか?」
シェーラが首を傾げて、疑問を口にする。
ウサミミも重力にならい、ぷらんと垂れるのが、可愛いと思う。
ラッツもそうだが、ウサミミは結構筋力があって、感情表現にも使われる。
今のシェーラはなんでなんで? って感じでウサミミが揺れている。
「そう、体制。政治の仕組み。そこら辺から、動く形が見えてくる」
「なるほどね。魔王というくらいだから、王政と捕らえていいのかしらザーギス?」
「はい、そうですね。王政です。ですが、人族達の国と違って、実力主義と言いましょうか。単純に実力もいりますが、魔族の皆がしたがってもよい、という人物が魔王になります。何と言いますか、ウィードの選挙とにていますかね?」
「選挙と?」
「ええ、まあウィードみたいに国民全員に選挙権があるわけではないですが、魔王城というここでいう総合庁舎みたいな政治を行う場所で勤めている、人員で魔王の選出を行います。立候補を募って、票を集める感じですね」
「なるほどな。そこら辺は違いはあれど、こちらと基本的に体制は変わらないわけだ」
「ですね。王の選出が特殊なだけで、他は特に、元は人族達からの出ですから、政治体制や文化は似通っていますよ」
「じゃ、王の方針で色々変わるわけか」
「はい、まあ議会の承認が要りますが、大体は通りますね」
ふむふむ、じゃ、あとは現魔王の方針や性格などを聞くべきだな。
それから、起こす行動がある程度予測できるだろう。
「今代の魔王の話を聞いてもいいか?」
「もちろん。ここを聞かないとどうしようもないでしょう。で、今代の魔王ですが、リリアーナ・レストンという女性ですね。結構なスタイルの持ち主で……ふべっ!?」
ザーギスの話がずれ始めた瞬間また吹っ飛ぶ。
「この馬鹿が!! 恩あるリリアーナ様にそのような不埒な目を向けるなと言ってるだろうが!!」
「くさっ!? 臭いぞこのブラシ!?」
「牛の体を洗うための物だしな」
「そんな物投げつけるな!? 私の天才ともいうべき頭脳に支障をきたす!!」
「そのまま腐り堕ちろ」
そのままザーギスとレーイアが言い合いを始める。
「はいはい、とりあえずレーイアは牛の出産は終わったのか?」
「ああ、無事終わった。元気な子牛だ」
「よかったな。と、すまないが、今丁度今代魔王の話になっているんだ。ザーギスは見ての通り、なにか話がずれるから説明頼めるか?」
「なるほど、通りでザーギスが馬鹿になってるわけだ。任せてくれ、リリアーナ様の事は私が良く知っている」
レーイアがでかい胸を張る。
まあ、ウィード一番の大きさって言われてるしな。
ぐりっ
「いてっ!?」
「私の胸じゃもの足りないかしら?」
「いつでも揉んで大きくしてくれていいんですよ?」
両サイドのセラリアとルルアが普通に言いながら、なぜか怒っているように見える。
「どうした? 話すぞ?」
「ああ、話してくれ」
必死につねられた痛みに堪える俺。
どう見ても理不尽な気がするけど、ハーレムやってるから、仕方無い事か……。
「リリアーナ様は和平派で有名だ。今ある土地を守り、魔族の保護に努めているな。魔王としての実力もしっかり備えている。私もリリアーナ様には勝てない。まあ、それでも人族達とは話もままならないがな」
「ふむ、和平派ね。ここにお前等が捕まってるとしたらどうなると思う?」
「勿論助けに来るだろうな」
「あー、レーイアはいなかったから知らないだろうが、搦め手でウィードを攻めたりすると思うか? ウィードと手を組んでるとか宣言して孤立させたりとか」
「それは無いな。いくら和平派とはいえ、そこまではしない。ウィードに私達がいるからといって、魔族の戦力を割くわけもないし、ウィードに打撃を与える意味もないと思う」
さっきの話をかいつまんでレーイアに説明したが、特に間もなく答える。
「なるほどな。ザーギスはどう思う?」
「私への気遣いはなしですか。でも、レーイアと同じ意見ですね。私達は勝手に飛び出したわけですから、危険を冒してまで、奪還するとは思えませんね」
「和平派でもか?」
「和平派だからこそですよ。私達は勝手に飛び出たんですから、それを助ける為に、人族達と事を荒立てるわけにも行かないですよ」
「ああ、そういう方向性になるわけか」
「戦争派であっても、無いでしょうけどね。このウィードはダンジョン内にある。どこまで魔族が信じるかわかりませんが、ダンジョンの中に街を作って、そこで生活している。通常の思考ができるのなら、ここを攻めるぐらいなら、他の土地を取るほうが楽ですよ」
まあ、そうだろうな。
他のダンジョンがどうか知らんが、俺の庭で好きにはさせねーよ。
「じゃ、方針としては一応魔族の密偵か間者が来ないか出入り口の監視の強化って所か」
「ですね」
「それぐらいだと思う。万が一密偵を捕らえたら私に話をさせて欲しい、ウィードに迷惑はかけるようなことはしない。約束する」
「こっちも情報は欲しいからな、協力してくれるならありがたい」
ふむ、思ったより、魔王も動きは鈍そうだな。
国を持つとここら辺は仕方のない事かね。
さて、次は何を話したものか。
魔王も国があるので、動けなさそうという見解になりました。
さて、次は何処を話詰めるべきか。




