第109掘:お祭りと住人達 その1
お祭りと住人
side:ミリー
いやっほー!!
久々の私sideですよ!!
セラリアやラッツやエリスがメインの内政ばかりで、影が薄いかなーと思ってましたが、ユキさんのお願いで冒険者区とダンジョン区の管理を任されていて、広さだけで言えば最大の管理地区をもっているんです。
そう、影が薄いのではなく、ウィードが建国して冒険者が本日より多く入ってきてます。
これからが私の時代と言う事です。
そして、他の奥さんたちには悪いですが、私がメインでお話が進むのです。
「さて、昨日は色々あったけど今日も引き続きお祭りだ。みんなよろしく頼む」
「「「はい」」」
ユキさんの言葉に皆が返事をします。
ちなみに、ユキさんと同郷の勇者様は、クソ姫を連れて帰っています。
予定通りに準備を進めるみたいですが、軍事行動を起こすのに凄い準備がかかりますから、最低でも一か月は後です。
しかし、ここまでウィードを侮辱しておいて帰るときはガルツへのゲートを通って帰るってどういう事でしょうね。
舐めてますよね?
うん、クソ姫はちゃんとひどい目に遭わせよう。
「さーて、冒険者ギルドにいってきますか」
私はそういって、皆と同じように仕事に向かいます。
昨日は王様たちへの対応があって、一時庁舎に集まっていましたが、それ以外は普通に仕事をこなしていました。
一応自由時間はありますが、皆各代表や、持ち場があるので、待機をしているのが大半です。
特に新しく開放した冒険者区やダンジョン区は荒くれ者が多いので非常に問題が多いです。
昨日だけでケンカが8件。
商店への脅しが4件。
ギルドでの騒ぎが15件。
しかし、しょっ引かれたのはなんと無し。
ありがたい事に、先に来ていた選別の冒険者達が治安維持に積極的に参加しており、特にトーリとリエルの知り合いのオーヴィクさん達はウィードを気に入っており、とても協力的だ。
しっかり、評価をしてあげようと思う。
「待ってくれミリー。今日はミリーと一緒にいていいか?」
「ええっ!? それは構いませんよ。でも、でも……仕事場ではあまり相手は出来ませんよ? でも、それでもしたいって言うなら……」
やだ、ユキさんってば、仕事場で一緒に致したいなんて。
嬉しいけど、仕事が、いえ、執務室に籠れば……。
「いやいや、落ち着け。そっちは結局祭りが終わってからしっかりすることになっただろう」
「……えー」
「不満そうだな」
「お仕事でついてきてもらっても嬉しくないです。そうですね、べたべたしてほしいです」
「……わかった」
ユキさんががっくりと頭を落とします。
ふふふ……、昨日の件でユキさんは色々と私達に頭が上がらないんです。
お蔭で、お風呂は毎日一緒になりましたし、全員一緒ですが。
ハグは当然として、毎朝おはようのキスをしてくれるように通しました。
うん、アレはいいモノでした。
全員朝ツヤツヤです。
ユキさんは変に奥手なんでああいうのは新鮮でいいですね。
「と、そういえば王様たちへの対応はいいんですか?」
「いいのよ。それは私達が受け持つわ」
「はい、ガルツの方は任せてください」
「アルシュテール様は私が受け持ちます。それよりしっかり旦那様を見張ってください。無茶するのは昨日で証明されましたし」
私がそう思って聞くと、セラリア、シェーラ、ルルアがそう言ってくる。
なるほど、適材適所だ。
「うん、任せて。こうやって腕を掴んでいれば、大丈夫ですよ」
そうやってユキさんの腕を抱き込む。
逃がしませんよ。
「兄様!! 私達もついていきます!!」
「お兄ちゃんと一緒にいます。守るんです!!」
「そうね。護衛は多いほうがいいわよね」
そういってちびっ子達もついてくるようです。
この子達は基本お仕事は無いからお祭りの日は遊びまわっていいのに。
でも、同じ人を夫としてますしその気持ちはありがたいです。
「ではでは、反対側を拘束してください」
「ミリーお姉ちゃんわかりました!!」
「ミリー姉様了解です!!」
「じゃ、私はいつものね」
3人がユキさんの腕と頭部にぶら下がる。
いつみても恋人というより、子供よね。
こんな風にユキさんと私の子供を連れて歩く日がくるのね。
楽しみでたまらない……。
あ、鼻血でそう。
ということで、この4人で冒険者区にやってきました。
「うわー、沢山人がいますねー」
「兄様、ミリー姉様、あっちの武具店覗いてみたいです!!」
「離れちゃだめよ二人とも」
フィーリアは鍛冶屋の性か、そういう事に興味があるのね。
「ダメだぞ。今日はお仕事だ。まあ、個人的に見に行くならとめないけど、迷子になるなよ?」
「うー、お兄ちゃんと一緒がいいです!!」
「我慢します」
「元から私は行くつもりはないわ」
そう言い聞かせているユキさん。
そして隣で腕を組む私。
ああ、理想の子だくさん夫婦ですよねー。
そんな風に和んで冒険者ギルドにつきます。
スーパーとかと同じで裏口はあるものの、別に職員は裏口からという規則はない。
だから普通に表から入ったんですが……。
「はいはい、受付はこちらです!!」
「ダンジョンへの直通ゲートを使いたい方は、一旦ダンジョン区へ行って探してください。そこにわかりやすい証拠の品があります。それで使用が可能となります!!」
職員が忙しそうにしています。
中は昨日から一般冒険者が来るようになったので、混雑しているようです。
昨日も忙しかったしね。
私が受付する羽目になったんだから。
「おっ、ミリーちゃんじゃねーか。受付してくれよ」
「本当だ!! こっちこっち!!」
ちょうど、ユキさんがギルドマスターのロックさんと話しているときに馬鹿が声をかけて来た。
「ほれ、昨日言っただろう? ここの女はレベルが高いって」
「ほんとだな。なあなあ、これから食事でもどう?」
死ね。
おとといきやがれ。
「おい、そこのお前」
「ん?」
「何子供連れてきてんだ? ここは孤児院じゃねーぞ。舐めてるのか」
馬鹿の一人がロックさんと話を終えて、少しギルドの中を見ているユキさんにそんな声をかけた。
「いや、舐めるもなにも。ここは子供でも利用できるようにしてるって説明はあっただろ?」
「しるかよ、そんなもんすぐにやめさせる。冒険者は命がけなんだ、餓鬼なんかに来られても邪魔なだけだ。なあ?」
「おう、さっさとその餓鬼連れて帰って大人しくしてろ。ひょろい兄ちゃん」
「「「そうだそうだ!!」」」
馬鹿どもが合唱する。
ロックさんは顔に手を当てている。
キナも他の同僚もあーあーって顔をしている。
大丈夫よ、私はこの程度の事で怒ったりしないわ。
「おい!! いったい何の騒ぎだ!!」
「おお、オーヴィクさんじゃねーか。見てくれよこの兄ちゃん。子供連れてここに来るからあっち行けって言ってるところなんだよ」
「子供? って、おいお前等やめろ!! この人たちは……」
「ったく同じ男として情けないぜ、ここまで言われてかかってこない根性無しだぜ。この兄ちゃん」
ごめんオーヴィクさん。
無理だわ。
ドゴンッ
「は?」
そんな声が響く。
「人の夫を侮辱したんだから、相応の覚悟はあるわね?」
「ミリー…ちゃん?」
私の足元には先ほどユキさんを侮辱した馬鹿が一人床にキスをしている。
いや、させたんだけど。
「いい? ここは安全すぎるから、魔物の恐ろしさを教える為にわざと子供でも利用できる場所にしてるの。あんたたちがギャーギャー言ったからって変更するわけにはいかないし、やるつもりもない。というか、その説明を聞いてるはずだから、その行動はこのダンジョンの使用を停止できるけどいいかしら? それぐらい簡単にしてあげるけど?」
「な、なんでミリーちゃんがそんな事いってるんだ!? ただの受付だろ?」
私の威圧を受けて騒いでいた一団が一歩下がる。
「まて、ミリー代表。祭りの期間だ、少し浮ついてるんだろう。それぐらいにしてやってくれ。これで出入り禁止になってもつまらん」
「おい、ギルドマスターが代表っていったぞ?」
「確か代表ってこのダンジョンの最高権力者じゃなかったけ?」
そんな話がひそひそされ始める。
ロックさんもそれを聞いて……。
「その通り。ミリーはこのダンジョンの代表だ。しかも冒険者区とダンジョン区の代表だから、ここの地区の権限を全て持っている」
ゴクリ
誰かが喉をならす。
「さらに、其方の男性だが、こちらがここの領主……いや女王陛下になられたセラリア様の旦那様。そして周りの子たちはそれぞれが代表の庇護下にある子たちだ。そしてそこのユキ様の頭にしがみ付いてるのが、総合ダンジョン代表のラビリス様だ。全体の全権を持っている」
「へっ、こんな子供に持たせてるなんてどうにかしてるぜ」
誰かがそうつぶやいた。
「あら、失礼ね。相応の実力があっての事よ」
気が付いたらラビリスは、呟いたと思われる男の目の前にいた。
「ミリーと同じだけれど、私もユキを馬鹿にされて黙ってる女じゃないの」
そうやってニッコリ笑ったあと、男は天井に刺さっていた。
「「「……」」」
冒険者ギルド全体が沈黙に覆われる。
その誰もが、私とラビリスを見ている。
「「さあ、ちゃんとルールを守ってお仕事してくださいね?」」
揃ってそう言うと、全員が首を縦に振る。
この日より、ウィードである噂が流れる。
『命が惜しければ、代表の旦那を馬鹿にするな』




