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姉妹のてぇてぇしか勝たん!  作者: 眠れない子羊
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エピローグ:なんだかんだあっても、結局は仲の良い姉妹?


 昨日の出来事が夢だったと言われても、莉乃は受け入れられる気持ちがどこかにあった。


 ただ最後に投下された、紫乃の発言が気がかりでしかない。


(しー姉さん、さすがにそれはまだ早いよ……)


 目が覚めてもスッキリしない気持ちでベッドから這い出て、いつものようにキッチンで朝食の準備をしていた。


 とはいってもほとんどの用意は前日に、夕飯のついでに用意している。


 することは朝食を温め、作り置きのおかずをお弁当に詰めるだけ。さほど手間がかかるどころか、息をするようにルーティン化した動作。


 だから余計、莉乃の脳内は紫乃の事でいっぱいいっぱい。


 それは普段以上どころか、容量が足りないくらい。


「りーちゃん、大丈夫?」


「あ、うん。大丈夫、大丈夫」


 そんな莉乃を心配して、出勤前の五十鈴に声をかけられた。


 既に朝食を済ませ、時間に余裕があるのかソファで寛いでいる。


「風邪とかだったら無理しないのよ」


「もぉ、心配しすぎだってば」


 あまりにも五十鈴の過保護っぷりに嬉しい反面、照れ隠しでわざとらしく怒った態度をとってしまう。


(よし、後はしー姉さんが起きてくるから部屋に――)


「おはよう」


「っ!?」


「あ、しーちゃん。おはよぉ~」


 つい習慣づいた行動から自室に戻ろうとした莉乃だったが、リビングに姿を見せた紫乃に言葉がでてこなかった。


 それを怪訝に思ったのか、紫乃からの向けられる視線。


「お、おはようしー姉さん」


 慌てたように挨拶を返すと、紫乃は微かに口角をあげる。


「ええ、おはよう莉乃」


「朝ご飯、できてるから食べて」


「いただくわ」


 そろそろ起きてくる時間だからと、食卓に並べて用意していた。


 だがまさか、鉢合わせるとは予想外。


 昨日の今日で、多少会話がぎこちない。


「……しーちゃんとりーちゃん、何かあったの?」


 娘二人のやり取りを不思議そうに眺めていた五十鈴の問いに、紫乃は一度だけ莉乃に視線を向ける。


「何もないわよ。家族だし、おかしくないでしょ」


「……うん、そうだけど」


 どこか納得がいかない様子の五十鈴だったが、表情は一転して晴れ渡っていく。


「良かったぁ~二人とも仲直りしたんだね」


「な、仲直り?」


 寝耳に水。


 驚きに瞬きを繰り返す莉乃に、五十鈴は勢いよくソファから立ち上がる。


「だってだって、私が知らないところで何かあったのかなぁ~不安だったんだ。けどけど訊いていいのかわからなかったどころか、仕事で少し放任気味だったから今さらどの顔がって思われないかなとかでさぁ~」


「お母さんが仕事で忙しくしてくれてるのは別に……」


「う、うん。私達のためだしね」


 今さら確認することでもなかったが、莉乃と紫乃からすれば仕方のない事。


 だからといって責めるどころか、各々が『らしく』過ごして来た。


 普段からゆるっとした雰囲気をさらに緩め、近くにいた紫乃、次いで莉乃とハグを交わしていく。


「仲が良いのが一番だから、あんまり心配かけないでね」


「だったら少しは家事手伝って」


「う~それはごめんってばぁ~」


 莉乃が冗談めいて言うと、五十鈴が泣き真似をしながらしがみついてくる。


「お母さん、そんなことしてお仕事間に合うの?」


「はぁ! そろそろ出ないと!!」


 バタバタとリビングを後にする五十鈴の後ろ姿を、莉乃は呆れた面持ちで見送る。それは紫乃も同様だったのか、腰に手を当てて苦笑いを浮かべていた。


「い、行ってきまぁ~す」


 よく通る元気な五十鈴の挨拶に――、


「いってらっしゃーい」


「いってらっしゃい」


 莉乃と紫乃も元気よく返した。


「「……」」


 それからしばらく二人になり、お互いに次の言葉を探り合う。


「わ、私、準備があるから……」


「莉乃」


 その場を後にしようとする莉乃がでていこうとするのを、紫乃は手を取って引き留める。


 それに恐る恐る振り返ると、紫乃が戸惑ったように視線を彷徨わせていた。


「良かったら、一緒に登校しない」


 別にそんなこととも思えるが、紫乃が何かを思っての行動。


「わ、わかった。私、部屋にいるから」


「準備が出来たら呼びに行くわね」


 それから紫乃と別れて、莉乃はどこか落ち着かない気持ちのまま時間を過ごした。


 それもあっという間、扉をノックされて声をかけられる。


「じゃ、行ってきます」


「うん、行ってらっしゃい」


「……」


 玄関で靴を履き、面と向かって交わす挨拶。


 紫乃から莉乃へ。


 そこで終わりかと思えば、何かを待つように扉の前に紫乃が立ち塞がった。


 そんな不可解さに、莉乃の脳内は一瞬でフル回転する。


「い、行ってきます」


「行ってらっしゃい」


 それに満足したのか、紫乃は莉乃の手を取った。


「いや、恥ずくない?」


「別に、おかしくないでしょ」


 どういった気持ちの移り変わりか、莉乃は動揺を隠せない。


(し、しー姉さんがいきなり積極的になってきた!!)


 だが紫乃はお構いなしに、玄関の扉を押し開く。


 紆余曲折と拗れた姉妹の関係だったが、新たな一歩を踏みだす形で変わっていくのか?


 もしくはただ変わらず、普通の姉妹であり続けるのか?


 これから先は不確かで不明瞭だが、それでも少しずつ出来た溝を埋めていくような歩み寄りが始まっていく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 姉妹の心理描写がとても丁寧で、少しずつ近づいていく二人が大変尊かったです。
[良い点] すごく面白かったです! [一言] 完結お疲れ様でした!
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