第五話:たまの休日を二人っきりで~家族だし当たり前のことだから~2
寝ても覚めても、どこか気分が重い日があるだろう。
「もう、朝なのね……」
休日であろうとかけているスマホのアラームが鳴る、ちょうど数分前に目が覚めた紫乃。普段から寝起きが悪いというわけではないのだが、どこか浮かない表情をしていた。
上体を起こして枕元のスマホに手を伸ばし、短く息を吐く。
「……莉乃、起きてるかしら」
結局昨日の帰り道、公園での一件から顔を合わせていない。
それどころか部屋から一切出てくる気配もなく、何度も声をかけようと扉の前に立った。
だけど、どんな声をかけていいのかと思い悩んだ。
そのことで仕事から帰宅した母親――五十鈴に相談してみたのだが、少し困ったように微笑むだけで夕飯を買い出しに。
『まぁ、莉乃も難しいお年ごろだからね』
たったその一言を紫乃に残していった。
それが紫乃の心に刺さり、五十鈴が買ってきてくれたコンビニのお弁当を夕飯に食べ、ゆっくりと湯船に浸かる。それから就寝前の予習復習を取り組んだが、まったく身につかず就寝した。
目が覚めたとて何かいい案【莉乃との関係を改善する方法】を思いつかない。
それが安易に思いつければ、誰だって人間関係に悩まないのかもしれないだろう。
ここ最近になって良好になりつつあった姉妹の関係だったが、呆気なく崩壊する様を目の当たりにした。
「……とりあえず起きようかしらね」
それでもとベッドから這い出て、カーテンを開けて朝日を浴びる。
これといった予定もなく、頭の中は莉乃の事を考えてしまう。
いつもだったら休日であろうと部屋を出て、リビングに行くと朝食が用意されている。普段から顔を合わせるどころか、会話もろくに交わさない関係だというのに不思議な光景。
「……なんだか味気ないわね」
今日に限ってはそういった事はなく、五十鈴が買ってきてくれたコンビニのサンドウィッチとサラダのみ。書置きのようなモノも特に見当たらず、休日にもかかわらず仕事に向かって行ったのであろう。
紫乃はキッチンの戸棚からインスタントのコーヒーを取りだし、一対一の割合で温めた牛乳を入れて砂糖をひとさじ、マグカップにカフェオレを作って朝食を摂った。
これまでは無音という環境を気にしてこなかったが、何となくテレビを付けて適当な番組を流す。
そこからは様々な情報、日本の政治や若者に人気な流行り、直近へと控えているGWのお出かけスポットなど。人によっては興味を引く話題で盛りだくさんだった。
ただ、今の紫乃にとっては一つの情報でしかない。
(……姉妹の仲を良くする方法なんて、都合よくあるわけないわよね)
内心、紫乃は自身の事を失笑してしまう。
いくら勉強や運動ができて、上級生に下級生、それに教師からと、男女問わず慕われるような生徒会長を務めようが、一女子生徒でしかない。
周囲からの好評を得ながらも、身内との関係に思い悩んでいる。
昨日の放課後、生徒会の顧問である教師――綯護和歌から助言のようなモノもされた。
それもあっての行動だったが、上手くいかないでいる。その時の対象法も訊いておくべきだったと後悔してしまう。今日が休日ともあって逢籃学院には運動部の顧問、もしくは一部の文化部が活動するために教師がいるかもしれない。
だが和歌は生徒会の顧問。
こうして紫乃が家でゆっくりしているのを同様に、和歌もそうかもしれない。連絡先は知っているのだが、わざわざかと考えてしまう。
だから一人、紫乃は思考を巡らせ続ける。
「せっかくだし、どこか出かけるのもありよね」
テレビから流れるGW特集を、紫乃はぼんやりと眺め続けた。




