第三話:好きと嫌いの裏返し~ほんの些細なすれ違いでも一大事~5
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴ると、クラスメイト達の気が一斉に抜ける。
各々が自由に過ごすお昼休み。仲の良い友人と学食へと向かう者、数量限定品を手にするため購買部へと走る者。他にも教室でゆっくりとお弁当を食べるなど、一時な賑やかさが増していく。
騒がしくなる中、いつものように莉乃の席に集まる杏莉と未華。
「莉乃。なんでまだ不機嫌なんだ?」
「そんなことはないけど……」
杏莉は持参したお弁当を莉乃の机に置き、空いている席から椅子を引っ張ってくる。
「どの口がぁ~」
莉乃達以外に仲の良いクラスメイト達に手を振り、未華はお弁当もといコンビニの袋を携えて近づいてくる。
クラスを超えて仲の良い生徒が多い未華だが、お昼だけは莉乃達と過ごす。
周囲を見渡し、チラチラと杏莉へと視線を向ける。
「はいはい……」
「ありがとぉ~」
未華からの視線に気づき、嘆息する杏莉。
ただそれもいつものことで、自然と身体が動いている。
近くの席から椅子を引っ張ってきて、そこに座るよう未華へと促す。
「……杏莉って、未華に甘いよね」
いつもの事ではあるものの、その光景に一言物申す莉乃。
「……いや、じゃないとずっと立ってるじゃん」
「そういうとこぉ~未華は好きだよぉ~」
「あ~はいはい」
嬉しさを表現するように抱き着く未華を、杏莉は素っ気ない態度で引き剥がす。
その対応に未華は頬を膨らませ、無言で抗議の視線を向ける。
(私もしー姉さんとそんなやり取りができればいいんだけどな……)
そんな羨ましいやり取りを、莉乃はただ眺めていた。
「で、昨日の一件以外にも何かあったんだろ」
お弁当を広げる杏莉は、チラリと莉乃へと視線を向ける。
「杏莉って、私のこと好きすぎじゃない」
莉乃が何も口にしていないにもかかわらず、察してくれる親友。まるで彼氏かのような素振りに(これまでいたことはない)、つい感嘆とした感想を口にしてしまう。
「違うもん。杏莉は未華のだもん」
「……誰のものでもないが?」
対抗するように莉乃を半目で睨む未華だったが、杏莉の意志は無視だった。




