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20【完】

「王族との婚姻は王位継承権に並々ならぬ影響を与える。だからこそ結婚相手はより慎重に選ばなければならないのだ。たとえ貴族といえど、男爵家では王家のものと婚姻するのにふさわしい家格ではない。どうしても結婚したいならば、ジュリアスを王室から追放し、男爵家に婿入りさせるか、君ともども平民になるかだ。いずれの場合でもジュリアスも君も王位継承権に関わることはできず、王家の力を頼ることもできない。それでもいいかな?」


後日呼び出された私は国王様からそんなことを言われた。そばにはジュリアスはいなかった。


「はい。ジュリアス王子がキズモノの私を選んでくれました。打算のない清い彼の心があったからこそ私を選んでくれたと信じています。だから私は王位継承にも身分にもこだわりはありません。生活が辛くなるのは怖いですが……」


きれいごとではなく本音を吐いた。こんな顔でも選んでもらえたの……、まあ、嬉しいっちゃ嬉しい。


ただ、没落はなぁ……。中世の平民の暮らしとかよく分からないよ?


そんな私の心情を察してか国王様はクックッと笑った。


「脅かして済まない。ずいぶん昔、他国では簒奪(さんだつ)を目的とした下級貴族による上級貴族への色仕掛けがあったようでな。そのときのお家騒動が原因で領土を半分以上減らしたそうなのだ。君がそういう人間だとは思わないが、王家のためにもこの国に住まう臣民の為にも君には厳しく当たらなければならない」


国王様のその言葉に私は「お立場、理解してます」って返す。


「それでも私は君を気に入っている。だから君には別の選択肢を提案したい。ステラ、公爵家か侯爵家の養子に入らないか?そうすれば、まず家格の問題は越えられる。そしてその養子の立場でジュリアスを婿入りさせる分には多少反発はあっても問題を小さくすることはできる。ジュリアスや君たちの子供を含め王位継承権さえ諦めてくれれば誰も強くは反発しないだろう。ジュリアスから王族の身分を剥奪(はくだつ)したとしても、血は王族だ。廃嫡して状態で君たちが結婚した場合、後々(のちのち)(いさか)いの原因になるかもしれない。それよりも君がどこかの公爵家の養子になったほうが君もジュリアスも王家や公爵家の力で守ることができる」


言われた提案は自分にとってかなりいいとは感じた。別に王位継承争いとか巻き込まれたくないし、それさえ諦めてそれなりの生活維持できるなら、まあ、怖くないかな?


「これから君を引き受けてくれる公爵家を探す。それまで待っていてくれ」


断る理由もないから「分かりました」と素直に返した。


養子の受け入れ先を探すのは大変だ。単に私を受け入れるだけじゃなくて、おまけでついてくる王族のジュリアスの受け入れもセットで考えないといけないから。そこにはどうしても政治的な意図が見え隠れしてしまうから、それぞれの家が互いを牽制(けんせい)し合いながら落とし所を探ろうとしていた。


下手なところの養子になってしまうと、私もジュリアスもすりつぶされてしまうかもしれない。私の、私たちの人生に光を照らすか、影を差し込まれるか……。


怖くないと言えばうそになる。


だから願った。


どうか悪い方に転びませんようにと。


そして春休みを迎える前に私が養子に入る家が決まった。


私の受け入れにはやっぱり一悶着(ひともんちゃく)あったみたいで、特にリッシュデーン公爵家とエルデワース公爵家との間で大きな騒動となったらしい。


なんでもエレナと金髪縦ロールさんが私の引き取りをかけて勝負したとか。


何で勝負したのか聞いてみたら…………。


「ジャンケンでまで負けるなんてええええええ!!!!!」


金髪縦ロールさんがそんなことを叫びながら膝をついてるのが見えた。


「え!?私の人生ジャンケンで決まっちゃったの!?」


そっか。


私の人生ジャンケンで決まったんだ……。


私、なんであんなにびくびくしながら成り行き見守ってたんだろ……?


「ふふ、ステラ」


「なんですか?エレナ様?」


「これからはお姉さんって呼んでくれて構わないからね?」


そっか。


エレナはご主人様じゃなくなって、お姉さんに変わるんだ。


私とエレナは原作と違って家族になるんだ……。


色々と納得がいかなかったり感慨(かんがい)深かったりすることがたくさんあったけども、上級貴族の仲間入りを果たした以上、これまで男爵家で求められていたものとは異なった責任の在り方や礼儀作法を学ばなくてはならなくなった。


学園を卒業するまでに最低限のものをクリアしないと話はなかったことになるらしい。


上級貴族としての生き方を13、14になってから勉強することになったので、かなりヒイヒイ言ってる。ちゃんと期限までに(きた)え上げてもらえるかなぁ?


そして2年の月日が過ぎて、私たちは卒業した。


エレナたちが18歳、私が16歳。


卒業後すぐにエレナとハイヴェルドの婚約が発表された。


最初はあんなに興味なさそうだったのに、今じゃ満更でもない感じ。むしろこっちが恥ずかしくなるくらいお熱いの。


でも……。もうすぐエレナが王妃様になって、家から出ていっちゃう……。


そう考えれば考えるほど、ちょっぴり寂しかったし、ハイヴェルドには嫉妬した。もう少し自分にもエレナとの時間を分けてくれたらなって。


そして二人とは時間を置いてから私とジュリアスとの婚約も発表された。


正式にその話が出た時、リッシュデーン公爵も私のお父さんも「いい縁談を持って来れた」と泣いて喜んでた。


持ちかけてきたのは国王様なんだけどなぁ。


気づけば私も元の世界でいた頃と同じ年齢の17歳なり、さらに月日が経ってから私とジュリアスは結婚した。


エレナにはお兄さんがいるから、公爵家当主にはなれないので、分家としてリッシュデーン家を名乗ってる。


片方が暗殺に加担しかけた王子様。もう片方がその王子をいじって楽しんでいた無礼者。


チグハグな私たちの結婚。


元々は『額の傷痕』の世界で額に傷痕のないエレナの人生を間近で見たかっただけだったのに……。


傷のないエレナの生活を見て、この世界に強い愛着を持って、この世界で生き抜いていこうと考えた。そして気づけば私はこの世界の全てを受け入れたいと強く願うようになってた。私の面倒をいつも見てくれたエレナのことも、そんなエレナの夫であるハイヴェルドのことも、そして(ひたい)傷痕(きずあと)が残った私と添い遂げたいと言ってくれたジュリアスのことも…………。


今までも、そしてこれから先も、原作じゃ考えられなかった知らない物語。それを私と今目の前にいるジュリアスと一緒に形作っていくんだ。


そんな私たちの結婚生活はというと……。


あの、えっと、その……。


ここでいうのもどうかと思うんだけど……。


ラブラブ……です♪


最後まで読んでくださりありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結お疲れ様でした! とても楽しかったです。 読ませていただきありがとうございました。
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