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瞳の勇者  作者: 烈火
最終章 666周目の奇跡
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第七十一話 絶錨

「ここは?」


目を開けると周囲は赤い光で染まっていた。

そのまま視線を上げるとハコブネは赤い翼を生やし飛んでいるのが目に入る。


炎眼えんがん 火砕流!」


声と同時に外が一気に赤いマグマが船に流れ込んできた。

私はそれらに熱さを感じず触れていたが一切燃えることすらなかった。

先程投げかけてきた言葉の名前が長く聞き取れなかったが彼の姿を探すと相変わらず上空で炎の翼を纏い飛んでいるようだ。


髪燃え瞳は赤かった。


溶岩の水位が上がるにつれ浮き上がる私はハコブネに声をかける。


「へえ、すごいじゃない!

周りの風景と変えてそれに自分を適応させての攻撃。

しかも髪や瞳への変化私たち瞳の勇者の力の亜種みたい!

いやそちらが本家なのかしら?」


溶岩の水位は船から零れだしたところで止まった。

どうやら船自体にはダメージは無いようだ。

すぐにハコブネは大きく息を吸うと


「炎眼 八岐大蛇ヤマタノオロチ!」


口から八つの炎の龍を出した。

紫眼の勇者が放った炎の龍を吐き出す技と比べ桁違いの威力だ。

今それが降りかかろうとしている。

だが多くの人と出会いそして別れ、全ての瞳の勇者の力を得た結果、今目の前にあるその技に対し何を出すべきか考える以前に動いた。


「黒眼!草薙剣クサナギノツルギ!」


それはただ一振りの剣を横なぎに振るうことだった。

炎の龍はことごとく真っ二つとなり消えていく。

するとハコブネの声が聞こえた。


「絶錨!!」


その声にすぐに景色が変わった。

気づくと今度は青空の下、草原を船は飛空船が如く飛んでいる。

先ほど船に入った溶岩は消えた。

ハコブネの姿は見えない、だが再び声が聞こえてきた。


風眼ふうがん鎌鼬かまいたち!!」


何か肌にピリッと感じる感覚がし服が少し裂けるのに気付くと周囲を見ると風がまるで刃のようにこちらを切り裂いているのが分かった。

ただ大したダメージが入ってない事が分かったのかハコブネが背後から突っ込んできたのが見える。

一瞬目が合う、彼の瞳は草原の緑色に染まり同じく黄緑に染まった髪は風がなびくように輝いているのが見えた。


その目は恐怖を感じつつも確固たる強い意志を感じた。


彼を抑えるため無意識につかもうとしたが


「……っ!?」


彼はさらに加速した、その手の位置から加速し進行方向を屈折させると私の周囲を恐ろしい勢いで回転した。


「風眼!旋風つむじかぜ!」


私は痛みさえなけれど空中に一気に吹き飛ばされた。


先ほどのように対応できていないのは彼がさらに行動速度を上げてきたせいであろう、AIとかいうシステムがこちらに対応しているせいだと思われる。


「絶錨!」


またあの声だ、周囲を見渡すとどうやら今度は岩山であった。

私の丁度真上にある崖の上に、髪が岩のように固まったハコブネの姿が見えた。


石眼せきがん崖崩れ」


まさか、と思ったときには目の前の崖が崩れてきた。


上手く受身を取り落ちてくる岩に足をかけ飛び上がり上空に見えるハコブネに飛び掛かる。

しかし彼は妙なことに高度を下げた、そして


「絶錨!!」


私はその声に反応して周囲を見回すとそれは暗雲籠める海の上だった。


ゴロゴロと空の音がする。


やばい、と思ったときには遅かった。


雷眼らいがん雷絶らいぜつ!!」


私に向かって落ちた極太の雷。

そこから発せられたのは形容しがたい壮絶な爆発音そのものだった。

確かに怪しかった。

雷を纏ったハコブネを私は消えゆく視力で上空から落ちながら思う。

先ほどから自然現象を起こして攻撃してきたがそれは瞳の勇者単体でも放つことのできるレベルの物ばかりだ。

彼ほどの強さを持つものがどうしてそのような攻撃しかしなかったのか。

それは攻撃を畳みかけてこちらに余裕を持たせないうちに力を溜め、切り札を取っておくためであったのだろう。

今までに受けたことの無い凄絶な威力であった。

痛さを越えて五感が死に、こうして言葉を浮かべる事しかできない。

私はどうなったのか。

唯一相手の心を読む力が語り掛ける言葉


「さすがに終わったかと思うけどバグがもう機能しないように本気で止めないといけない。

だからごめんね。

氷眼ひょうがん、永久凍土」





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