第六十五話 100層
因縁の敵であったヘパイストスを倒したエルリア達は最後の階層のワープを目の前に少し立ち止まっていた。
私は先程メルが放った技について引っかかる点がありそれに触れる。
「メル、あのさ。
さっき放ったフォースドなんとかはギフトの効果を崩してから使ってたけど
それによってギフトが使えなくなったとかないわよね?」
「え?姉ちゃんそれじゃ!」
そう、ヘパイストスを虫に変えたあの技、フォースド。
直前にエナの変身を解いて以降、メルはエナに金眼の力の受け渡し、ギフトの能力を使っていないのだ。
それが私には引っかかっていた。
私とエナに声をかけられたメルは考えるように顎に手を当て笑った。
「ご明察!
あー待って怒らないで!
私だって恨みが強いからって考えなしにあーした訳じゃない。
エルだったら金眼の第三形態になれるから
ギフトを渡せる
私のエナは君に任せたっ!」
メルは親指を私に向けて立て自信ありげに試してもない憶測を私にぶつける。
いや理論上は可能なのかもだけど…
心配そうにするエナが可哀想なのですぐに試すとする。私はダーインスレイブが宿った右腕に力を込めた。
「金眼、テイクオーバーエルリア!」
「!?」
「だって毎回考えて変な姿に変身するのも億劫だし元の姿が一番変身楽じゃない?」
周りの驚く反応に私はため息を吐いた。
余計な程金色に光るがやはり姿は変わらない。
だがその金眼の力をトリガーにギフトの力は使えるようだ
「じゃあ金眼第三形態になったからエナに
金眼、テイクオーバー・ギフト・エナ!」
「随分俺らの能力適当に扱うなエルリア!」
手から放たれた光を受けたエナは文句をつけたが彼も同様に金眼の力を得た。
もし瞳の勇者の力がなければ彼がこのメンバーの中では一番実戦経験がある。
大切な戦力は失いたくない。
そしていろんな姿に変身するのを確認しエナは頷く。
「まぁ姉ちゃんの力をぞんざいに扱われたのはオレとしては心外だったけどまぁ許してやる。」
ぷいとエナはそっぽを向いた。
一応準備はできたな、最後の扉、ワープゾーンへ入ろうとしたした時だ。
ノアが突然口を開いた。
「ごめん、割り込んで…多分魔王討伐の最後の話になるんだけどボクは聞きたいことがあるんだ。みんなってさこの戦いで魔王を倒しとしたとしたら何をするの?」
「魔王を倒しとしたらじゃない倒すだ。」
ノアの表現にエナはぴしゃりと訂正する。
そしてエナから話した。
「王がこの場にいないから畏れ多いがオレが変わりに話す。
王は国を改革し全く新たな社会を作るだろう。
そしてオレはそれについていく
誰にも負けない最強の騎士として
だからオレはその邪魔になる魔王を倒す」
聞かなくても分かる回答だった、私はこんな会話に生産性はないと思っていたがメルが次に話し始めた。
「私は私達姉弟みたいに色んな事情で不憫な子供を助けるための養育施設を作ってそこで皆の母ちゃんになるんだ!
それ以外にも慈善事業に手を付けたい!
折角王様が罪人から解いたんだ。
メル様は沢山の良いことするぞ!」
「へ、へえ意外だわ。
あんた割と色々考えてるのね」
「あんたじゃないメル様だ!」
この姉弟は私より若い筈、でも魔王を倒した後も考えてるのね。
ノアの目が私に向くのが見えた。
私は…
「私はこの力が残ってるかによるわ
魔王を倒したら能力が消えるかもしれない。残っていたら私はこの力を使ってメル、あんたの言った事前事業の手伝いとかをするわ、建築物なら3秒で組み立てられるからね。」
「おー!それはメル様嬉しいぞ!」
「ただ、何も残らないならあのレシラと同じく私は淘汰され消えていくでしょうね
まぁスラムじゃなくてもう少しグレードアップして街のお店で娼婦でもやりたいわ」
「お、お前そんなことしなくても!」
メルとエナの驚く反応に少しニコッと笑いかける。
ノアはぷすっと怒った。
「そうだよ!エルちゃん!ボクとずっと町で暮らして何かしら出来る事からしてこ!
ボクは魔王を倒したらそうしたい!」
ノアにぴしゃりと怒られると同時にノアから熱意のこもった言葉を言われ笑った。
「なんかその言い方プロポーズみたいね。
確かに終わったらノアと一緒に暮らしたい
ただよく変わってるって言われるし誰も理解しないかもだけど
前の仕事はやりたいかな、不思議と生きてる瞬間を感じるから。
まぁ私はあの仕事が何だかんだ好きなの、王国で雇ってもらえるならそれでもいいわ、エナも知識不足だし
というかノアも性別入れ替えれるのだからやってみれば?」
「色んな人を愛せる
それも博愛だね!いいね!それ!
ボクも向いてるかも!」
天然過ぎるノアにピュアなエナはすごい顔を赤くして怒っていた。
「おい騙されるなバカノア!
こいつは元からそんな下衆なやつなんだ!
お前まで、その……」
ポンと頭に蒸気が上がりそうなエナにメルは笑いながら手をエナの頭においた
「ははは、確かにその教育は足りないけど
大人の世界を持ち込むのはまだ早いぞ
それにエルはケダモノだからうちの子供達に変な事教えるの禁止だからなぁ」
「わ、私だって相手は考えるわよ!」
私は気が付くと顔を赤くしていて1本取られたと頬を膨らませる。
他にあるとしたらここまでの道のりで少なくとも私のせいで犠牲になった人に何か出来ることを探したいけどこの空気じゃ言えないかな。
それでも何気ないノアの会話がきっかけで張り詰め過ぎた緊張を一度和らげてくれた。
さて目の前には今までの階層の中で最も巨大な壁が立ち上がる。
そして再び私達は踏み出し私は言う。
「鍵はある!さぁ100層へ!」




