第五十七話 昇華
これは少し前の出来事だ。
「エナ君、ボク、エルちゃんに強く言い過ぎたのかな」
オレはノアに呼ばれ悩みを聞いていた。
低め丘で互いに足をぶらぶら揺らしながら話している。
ノアはよくオレに一方的に話をするのだが今日は何があったかとかなど
エルリアが他の人と話してる間よく話す間柄で気がついたら不思議と気が合って互いに仲が良くなった。
まず王子以外の自身話し相手がいないからなぁ。
あ、後は少しだけだが見た目が可愛かったりするのもある。
本当に少しだけだ。
考える内気恥ずかしくなりノアの悩みの本質を付くことにした。
「お前には両親は居ないのか?」
「ん?…、うん。湖の精霊であるってことしか記憶にないの」
「じゃあお前は分かんないだろうな。
親が恋しいって気持ちは。
でも魔王を前にして判断を鈍るんだったら王国の兵士として失格だからオレだったら母親とかが相手でも戦うって宣言した。」
「エナ君って強いね」
「瞳の勇者の中じゃ
第一形態で最弱だけどな」
「お荷物なら負けないよ!」
二人は、はははと互いの非力さに笑った。
オレは決して強くない。
それどころか弱いまま進み、気がつけばここまできてしまった。
味方が強くなり敵が強くなり、感じる劣等感の連鎖。
もはやそれを抜けるには命がけの荒療治の他に選択肢はない。
これ以上自身を変えられなければ瞳の勇者として存在価値を見いだせないオレは強い者に淘汰される。
「なぁ、ノア。
オレは気軽に話せる友が居なかった。
どいつも年上でオレをバカにする奴らで。同い年は身分で頭を下げる。
でもお前はそんなオレに少しだが畳み掛ける話し方とはいえ対等に話してくれた。
オレはノアお前に会えて本当良かったし楽しかった。」
「え?
どういうこと?
……待って!お別れみたいじゃんそれ!!」
オレの唐突な言葉にノアは急に目を見開いた。
覚悟をしていた、自信によって金眼は成長する。
自信を持てないのは確かだがオレ自身は関係していない。
本当の金眼が成長しないのは本当の金眼の持ち主である姉、メルが自信を持てない事が大きい。
魔王を倒す直前まで迫った、もう避けられない。
まぁ実質オレのせいだが…覚悟はしていた。
騎士として死ぬ位の覚悟はできていたがやるしかない…!
姉に自分の弟が誇れる存在であると示さないといけない!
オレが立ち上がるとノアはすごく心配そうに俺の方を見る。
本当こうして見ると女の子にしか見えない。
「エナ君!ボクも行くよ!」
「駄目だ、俺は覚悟を決めた。
もしこの後何があっても誰も責めるな!」
「エナ君!」
オレはノアの髪を撫でると剣を握り立ち上がる。
向かう先は、匂いで判断するしか
「テイクオーバー、ウルフ!」
狼に近い格好に変化しエルリアの匂いを辿る。
「エリック王子じゃ駄目なんだ!
オレを殺す気で戦うやつじゃないと!」
エナ…!もしかして!
姉ちゃん、メルの声がした
「ああ!
勝算の無い奴と戦うのはオレの流儀じゃない…でも!
オレはそれを乗り越えて姉ちゃんの期待に答える!!」
それで十分だったんだよ!
弟の成長…、私はそれが見たかったのさ!
姉ちゃんの言葉の瞬間俺は金色の光に包まれていた。
視力がグンと上がり真夜中でも見える城の窓に写った自分を見て驚いた。
なんと自分が獣人と呼ぶべきか完全な服装だけでなくモサモサしたモンスターに変身できていたのだ。
「…!これは!?そうか!
これが第二形態!
姉ちゃんやったよ!!俺達も同じ土俵に」
とその瞬間だった、赤い閃光が上空へ閃きすぐこちらまで赤い巨大な爆発が響いた。
幸い城辺りまでは無事でオレも強風であおられたくらいだが、目を開けその先を見ると確かあの先には林と小さな湖があった筈の風景がなにもかも消え失せ、あるのは……
なんだあの赤い塊は!
ま、まさか、あいつにやられたのか!
オレは走って駆け寄る。
速い!視力だけじゃない、体力もスピードも何もかもが伸びていた。
その側に駆け寄るのはホント瞬きする程で自分がここまで速く走れるとは思わなかった。
すると怒号に怯んだ。
獣の勘だろうか、ヤバさがわかる。
それは赤い悪魔の姿をしていた。
するとオレの体が光り、体から分離するように人影が現れる。
それはエナの姉、メルの姿だった。
「姉ちゃん!」
「エナ!ずっと一緒だったけど久し振り!
アナタが私に自信を持たせてくれたお陰で!
私の弟の成長を見たら、第二形態に
しかもこうやって人の姿を保てるようになった!
おっと…でも今は再開を楽しんでるそういう状況じゃない。
あれからエルリアの魔力の暴走を感じる」
その悪魔から声が聞こえる。
「いつも。
そう、いつも!
いつもいつもいつも!!
自己嫌悪に潰されるのが怖いから、強がって冷静を装って、それで自分の行為を正当化して!
でも結果は……!
結果は大切な人を守れず、大切だった人を殺し、大切である人を失望させれてしまった。
これこそ因果応報じゃない!?
それに今まさに瞳の勇者、仲間達を捨てるかで悩んでる。
仲間を捨てたら多分エルリアという人は瞳の勇者のという概念自体が間違っていたから滅ぼす言い始める!
自分の悪さを省みずにね!
アハハハ!
アハハハハハ!」
オレはあれがエルリアだと認識するのに時間がかかった。
何故なら声が見た目の悪魔そのものの声でおぞましい声だったからだ。
どうしよう…、これは今まで見た敵?だとしたら一番やばい、スミスの力を取り込んでるからかそれを遥かに上回っている。
やはりオレは弱虫か…
しかし姉弟の絆からかすぐ心が伝わった
「エナが漢気みせたから私が今いる。
安心して!大船に乗った気持ちで!
今度は姉ちゃんが弟にお姉ちゃんってとこ見せてあげなきゃだ!
テイクオーバー…」
顔を上げた先にいる姉ちゃんは天使のような金色の布の服に金色のオーラを纏い金色の翼が生えている姿となっていた。
まさか!
「ジャッジメント!」




