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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
第三部 フロイライン・ダブルクロス編『Dランク帯・エダマ演習場』

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第73話 おじさん、ロボット軍団相手に無双する③

 スタート地点である八つの赤い樹木が立ち並ぶ場所では、数名の赤チームの子が、赤い鳥型二脚ロボットと取り巻きのAタイプ集団を相手に防衛戦をしていた。

 赤いロボットはボス格らしく、周囲の取り巻きと比べても一回りほど大きい。


『あっちいってよー!』

『チキキキ……!』


 取り巻きたちは少女たちが放つマジックミサイルを避けつつ、銃口から黒色ビーム――エモ光線だ――を放ち、あえて当てないことで弄んでいるようだった。

 ボス格のロボットは取り巻きを盾にしつつ、傍観を決め込んでいる。


「新型!?」

「あれは司令塔のCタイプモル! ここには出ないはずなのに!」

「……ッ、楽しいですか!? そんなに! 弱い者いじめが! ――変身っ!」

「お姉さま!?」


『魔法少女プリティコスモス! 正式礼装(フォーマルコーデ)!』

『チキキ……?』

『――プリティコスモスソード! エモートタッチ! プリティフォトン!』


 何事か、と赤い鳥型ロボットがこちらを向く。

 私は剣にエモーショナルエネルギーをまとわせ、問答無用でぶった斬った。


「天誅――――!」

『チキキ――っ!?』


 物理的に切断されたロボットは、バチバチと火花をちらしながら爆発四散。

 取り巻きたちも司令官喪失による何かか、機能を停止する。

 彼らからは植物の種子のようなものがこぼれ落ちた。


「ハァ――……子供相手に何してるんですか、ここのイベント運営は」


 私は深呼吸し、心を静めたあと、木陰で震える少女たちの元に現れた。

 白髪でロール髪な子、赤いショートカットの子、マジカルステッキの代わりに本を大事そうに抱えている黒髪の三つ編み眼鏡っ子だ。


「みんな大丈夫ですか? もう怖くないですよ」

「「「うわぁぁあんプリティコスモス――――!」」」


 みんな怖かったのだろう、私にギュッと抱きついてくる。

 彼女たちをしばらく撫でていると、先程まで何をされていたのか、涙ながらに教えてくれた。


「――なんかね、黒い服を着た女の子が現れてね、赤ロボットをけしかけてきたの」

「名前は聞きましたか?」

「ツリーって子……」

「背中から木が生えてたし、なんだか怖かった……」


 私の知らないうちに悪役が暗躍していたのか。

 今回の争奪戦は「魔法少女陣営vs秘密結社」がテーマだ、という斬鬼丸さんの話は、そういう設定ではなく、本気で敵対するという意味合いだったらしい。


「そのツリーという子の見た目は? どこに行ったか分かりますか?」

「緑髪でね、ツインテールの子だった……」

「どこに行ったのかは分かんない……」

「分かりました、情報提供ありがとうございます。――ああ、そうだ。部員を募集中なので、よければこれを。友達にも広めて下さい」

「どうぞモル」


 首を傾げる赤チームの女の子たちに、ダント氏経由でエモーショナル茶道部のパンフレットを譲り渡す。彼女たちは聖獣と話し合ったあと、入部申請をしてくれた。


「ねぇプリティコスモス! 私たちも一緒に行動してもいい!?」

「もちろんです。ダントさん」

「了解モル。赤チームの魔法少女さん。君たちの聖獣さんと相談させて欲しいモル」

「「「いいよ!」」」

「ありがとモル。夜見さん、周辺のロボットを破壊しておいて欲しいモル」

「了解です」


 私は指示に従って取り巻きロボットを破壊する。

 すでに機能停止していたらしく、爆発はせず、床下に回収されていった。

 ダント氏はその間に聖獣同士での話し合いを終えたようで、私たちの勝利条件が明確になった。


「――ということは、ロボットは破壊してもいいんですね」

「先輩方とダブルクロスのルールを再確認したモルけど、ゲーム終了までギブアップしないことが本来の勝利条件モル。ロボットの全破壊は隠し条件になるみたいモル」

「おお、そうなんですか!?」


 偶然だけども、赤城先輩の指令通りに動けているのが嬉しい。


「とてもやる気が出てきました! ダントさん、ルート取りは?」

「少しだけ待つモル、今、聖獣さんと連絡を取り合って、散り散りになった子の回収を優先で作ってるモル――よし、決まったモル!」


 ダント氏はマジタブで「エダマ演習場」のフィールドマップに矢印を描いた。

 どうやら残り時間三分を切った瞬間に、スタート地点から反時計回りに動くと、全ロボットと遭遇できるらしい。


「それはみんなで仲良くポイントを稼げますか?」

「先頭を走る夜見さんとヒトミちゃんの腕次第モル。マジックミサイル一撃で破壊出来る程度に、上手くロボットたちを弱らせるモル」

「「了解です!」」

「……ッ! もうすぐ時間モル! ランニング準備!」

「「――っ!」」


 私とヒトミちゃんは、ダント氏が指さした方角に向かってクラウチングスタートの姿勢を取る。ダント氏は私の左肩だ。

 背後では、自身の聖獣から話を聞いた赤チームの子たちも変身し、遅れまいとかけっこの姿勢になった。


「固有魔法は使用禁止! カウント行くモル! 三、二、一――」

『残り時間、三分』

「――レディーゴー!」


 ダッ――――

 私はツーハンデッドソードを両手に、ヒトミちゃんはショートソードを逆手に構えて先陣を切る。

 遮蔽物で周囲が見渡せない通路の先に、ズラッと一列に現れる鳥型ロボット。

 本当にベストなタイミングだ。


「狙う部位は銃座と脚部の二つ! 弱点のモノアイは残すモル!」

「「はい!」」


 ロボットの視線を釘付けにした私たちは、放たれる黒いビームを紙一重で避けながら、すれ違いざまに指定部位を破壊して行動不能にしていく。

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