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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
第二部 二章 ダークライ自滅編

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第61話 おじさん、正義のヒーロー(女体化)を助ける

「おっ、とと」


 着地も上手く決まった。

 マジカルステッキを狂乱状態のチンピラに向ける。


「さっきはよくもお腹を蹴ってくれましたね! もう許しません!」

『うおおおお! カッコいい登場シーンだ!』

『行けー! 魔法少女ー!』

「え、市民さんが逃げてない!?」

「おそらく戦闘シーンの撮影だと思ってるモル」

「平和ボケしてる!」

「うわあああああ!? 新手の魔法少女だあああ!?」


 二度、三度と立て続けに鳴る銃声。

 しかし残弾が尽きたようで、カチ、カチと撃鉄が空を切った。


「ああ、弾が出ない、なんで」

「そろそろ降参しないー? 君には聞きたいことが山ほどあるんだよね♡」

「うるさい! 俺はブラック&スミスの御曹司だぞ!?」

「なーんで話通じないのかなー、この人。テリトリーオン」

「ぐぅ――」


 紫のゴスロリ衣装に身を包んだ州柿先輩も、相手の狂いっぷりに嫌気がさしたようだ。

 固有魔法の適用範囲を広げて、喋れないように地面に押し付けていた。

 とりあえず――


「あの、リズールさん」

「なんでしょうか夜見ライナ様」

「この人を正気に戻す方法、ありますか?」

「ボンノーンに寄生されて狂乱状態になっていますので、必殺技――エモーショナルタッチでぶった斬って下さい」

「了解です」


 カチッ、カチカチッ。

『プリティコスモスソード! ――エモーショナルタッチ! プリティコスモスラッシュ!』

 まずはマジカルステッキの武器機能を使用、少し間を置いてから追加でダブルタップを行い、必殺技を発動した。

 放出されるピンクのエモーショナルエネルギーは、普段より出力を抑えめで。


「正気に、戻れ――――!」

「ぐあああ――――っ」


 真っ二つに斬られたチンピラの男性から、ビクビクとうごめく灰色の鉄パイプ生命体が分離する。おそらくボンノーンの本体だろう。

 鉄パイプ生命体にはピンク色の炎が引火し、そのまま灰になって消えた。

 最後に残ったのは……どういうわけか、全裸の女性だった。

 ほのかに藤色に染まった長い銀髪と、すらりとした高身長なのに出るところは出た、バランスの取れた容姿をしている。完全に美人モデルさんだ。


「――え、男性じゃなくて女性!?」

「モル!?」

「ちょちょ、どういうこと!? 私のテリトリーは男性反応だったよ!?」


 私と州柿先輩も、ダント氏含む聖獣たちも困惑する。

 そこでリズールさんが率先して近づき、身体調査を始めた。


「これは……」

「リズールさんなにか分かるんですか!?」

「いえ、説明することは簡単なのですが、証明手段がありません」

「じゃあ、ええと、その人は最初から女性だったんですか!?」

「肯定した上で否定します。寄生ボンノーンが消滅すると同時に正史を改変し、先天的に女性化させる細工が施されていた、としか」

「意味が分からない!」


 戸惑いを隠せずにいると、元チンピラだった女性が目を覚ました。


「うう……俺は一体、何を」

「目を覚ましましたね。こんばんは。貴方のお名前は?」

「九条霧夜……です」

「うっそ、公爵家のご子息じゃん」

「ええ!?」


 まさかのとんでもない高貴な人だ。

 彼……いや、彼女は周囲の反応を伺うように挙動不審になると、自分の身体を見て、胸を揉み、わなわなと震えだす。


「待ってくれ……これは……」

「あの、だ、大丈夫でしょうか――」

「まだ生きてるとかこれもう俺の大勝利では!?」

「え、ええと?」

「いやー実はさ、俺、半年前に敵組織に捕まったんだよね! 生きたまま解剖されそうになってマジピンチだったんだけどさ、いや、正義のヒーローことライトブリンガーを殺すのはもったいないってことで新型ボンノーンの実験体になることが決まってさ! それで数ヶ月前に怪人化したんだけど、なんか斬鬼丸って人のおかげでダークライのボンノーン製造工場が半壊してさ! 慌てて逃げ出して、梢千代市にたどり着いて、今こうして生きてるってわけ! 分離してくれてマジサンキュー!」

「いきなりの長ゼリフ!」


 怒涛の情報量に処理が追いつかない。


「ああ、簡単にまとめると、俺も正義のヒーローやってたわけ。表に魔法少女がいるなら、裏方には俺たち男子こと鎧装戦士(アームズ)――ニチアサで言う覆面ヒーロー戦士? がいるってことだよ」

「なるほど分かりやすい!」


 梢千代市から隔離されていた男子も、私たちと同じように正義のヒーローをしていたのだと知った。


「それはともかくとして、ですが」

「なんだ?」

「服をご用意します。野次馬の方々には、かなり刺激が強いようですので」


 気がつけば、スマホを片手に私たちを取り囲む男性の姿が多数。

 銀髪の女性――九条霧夜を名乗った方は、分かりきっていたかのように大笑いする。


「はは、そりゃそうだ! 俺に似合う服を頼む! 見知らぬメイドさん!」

「かしこまりました。十秒ほどお待ちを」

「そして見ろ野次馬ども! これが正義の鎧装戦士(アームズ)、ライトブリンガーの新たなる姿だ! 生まれたて新鮮だぞ! 俺で○コれ!」

『うおおおおおおおっ!』

「何やってんですか!?」

「ちょ、私と一緒はイメージ棄損になるからやめて! 写真撮影禁止! 風紀部権限で取り締まるから!」

「そうだぞ野次馬ども! 俺は撮ってもいいが魔法少女は撮るな! やって欲しいポーズがあるなら早めに言え! ……ん、パンツを履くポーズだな? よーし……」

「もーっ、これだからアームズの男子は! 夜見ちゃん! 写真撮ってる人のスマホから私たちの写真全部消すよ!」

「は、はい!」


 私と州柿先輩は、喜んで全裸写真を撮らせようとする銀髪の女性を止めるため、写真を拡散させないために全力を出すこととなった。

 なんて自己顕示欲の強い人なんだ、まったく。

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