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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
フィールドワーク.4『限界卒論生大脱走! 締め切り間近の極限おしゃれコーデバトル!』

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第267話 お泊り会後の朝、ミロ、サンデーとの自己紹介

 お泊まり会の内容についてはサクッと。

 主にスキンケア用品や香水のブランドについて質問攻めを受けたり、

 お気に入りのブランド私服を教え合ったり教わったり。

 サンデーちゃんから下着のブランドまで開示されたときは驚いたが、

 こちらも開示したことで拮抗できた気はする。


 州柿先輩は何も言わずに夜食のおにぎりを作ってくれて、ママみ。

 

 お風呂は……まあ、流石に刺激が強かったから別々というか、

 変身を解いて元通りのナイスバディになった私に、

 中等部一年組が「気圧される」「勝てない」と赤面しながら口々に言うので、

 交代交代で一人づつ入った。


 ……で、誰かは分からなかったが、

 お気に入りのコンディショナーを空にした奴を私は許さない。

 こっちは仕事の都合があり紫髪ロングにイメチェン中で、

 髪質には特に気をつけたい時期なのに、

 全員ツヤツヤの髪になりおって。高いんだぞ。くそう。


 最後は急にタガが外れた金髪優等生が枕投げを仕掛けてきたので、

 全員でクタクタになるまで応戦し、

 二階の寝室でお泊り用のお布団に仲良く入って気持ちよくすやすや。快眠だ。

 控えめに言って人生最高のお泊まり会だった。


 翌朝、起きてすぐにうがいをしに一階の洗面所に行くと、

 先に起きていたのか、顔を洗い終えたすっぴんのミロちゃんと出会う。

 ふんわりポニーテールかわよ。


「……」

「――」


 そして訪れる無言見つめ合いタイム。

 ……うーん、そ、そうだな、

 せっかくお泊まり会をするくらいの仲になれたんだし、

 敬語をやめてみようかな。


「おはようミロちゃん」

「あ、あ、おはよう、ございます」


 急に気恥ずかしそうに前髪をいじり、

 手や指を合わせたり、くっつけたりとそわそわし始める。


「き……今日は、敬語じゃ、ないんですね?」

「あはは、まあ、一夜を共にしたわけだし、

 下着の色も教えあった仲だし。

 そろそろ友達――いや、親友同士らしく、

 フランクに行こうかなって、思って」

「よ」

「よ?」

「夜見さんがデレた……」


 信じられないものを見たかのような顔でワナワナと震えるミロちゃん。

 人を珍獣かなにかだと考えておられるのか君は、と思いつつ、

 まあラブコメで言うなら朴念仁ムーブで自衛しているわけなので、

 そういう表現をされても仕方ないかなと、自分の後頭部を撫でながら笑う。


「えへへ」

「ふふ。じゃ、じゃ~あ私たちもお互いに親友らしく、

 本名を名乗りあうのが魔法少女らしい振る舞いですよね?」

「お。今度は本名開示バトル? 負けられないなぁ」


 意味もなくファイティングポーズを取ると、

 ミロちゃんも負けじと手の甲をこちらに向け、クイクイと引いた。

 先行は私だ。


「私の名前は夜見ライナ。魔法少女プリティコスモス」

「ニックネーム、ミロ。本名は皇結衣すめらぎゆい

 魔法少女マリーゴールドです。よろしく親友!」

「よろしくぅ!」


 ぱたたっと裸足で駆け出してフレンドのハグ。

 ミロちゃん改め皇結衣ちゃんも、憎めない笑顔で抱きとめてくれた。

 そのまま親友っ親友っと抱き合ったままぴょんぴょんとジャンプ。

 ドタドタと音を立てていると、

 寝起きで綺麗な赤髪がボサボサになっているサンデーちゃんが、

 目をこすりながら階段を降りてきた。


「もーうるっさいですわね……まだ朝の七時ですわよ?」

「あ! サンデーちゃんおはよう!」

「サンデーさん聞いて下さい! 夜見さんがデレました!」

「その抱き合ってる姿を見りゃ分かりますわよ」


 まったくもう、と地団駄を踏んで不満を表明するサンデーちゃん。

 きっと朝は低血圧で不機嫌なのだろう。

 いそいそとキッチンへ向かい、電気ケトルに水を入れてお湯を沸かし始めた。

 さらに、設置されている冷蔵庫からインスタントココアのパックを取り出し、

 付属の計量スプーンで二匙ほど掬ってマグカップに入れ、

 冷蔵庫に背中を預け、腕組みをして目をつむる。

 これが彼女のモーニングルーティーンか。


「なんで抱き合ったままついてきてわたくしを観察するんですの」

「せっかくだからかな?」

「サンデーさんもやりませんか? 本名開示バトル。

 やると夜見さんから親友判定が貰えます」

「……ふぅん? もらえるものは貰っておこうかしら?」


 腕組みをしたまま目を開くサンデーちゃん。

 私はまたしても意味のないファイティングポーズを取る。


「先行は貰った!

 私の名前は夜見ライナ、魔法少女プリティコスモス!」

「……魔法少女ラズベリーサンデー。本名は朱ノ宮麻莉亜(マリア)

 下の名前をキラキラネーム呼びをした子は、

 ひとり残らずぶっ飛ばして来ましたわ。

 ご配慮のほどよろしくあそばせ?」

「わーい!」


 タッと駆け出して、結衣ちゃんとともにサンデーちゃんをハグ。

 サンデーちゃん改めマリアちゃんは、

 クソめんどいとでも言うように眉間をしかめながらも、

 口元だけはほんの少し、楽しそうに緩ませながら、

 二人まとめて抱きしめてくれた。そして始まる親友わっしょいタイム。

 軽いウォーミングアップ効果があったのか、

 相手の表情が和らぎ、エモ力が微増した。

 気分が良くなったのか、私たちの分のココアまで用意してくれる始末だ。

 うがいを終えた私、結衣ちゃん、サンデー改めマリアちゃんで、

 腕組みしながら横に並び、作りたてのほかほかココアを飲む。


「はあ……美味しい」

「でしょう? 朝はココアなんですのよ」

「親友ルーティーンの完成ですね」


 美味しいし、何より仲がより深まった気がして嬉しい。

 中等部一年組の前ではもう、変に気取らなくていいんだ。

 なぜなら親友だから。ああ青春。

 忘れていたものを取り戻している気がする。


「……で。あの二人はどこですの?

 いちごさんとおさげさん。

 わたくしが起きた時にはいませんでしたわよ?」

「あれ? 州柿先輩と一緒に寝てたと思うんだけど」

「一緒に……? 州柿先輩もいませんでしたわよ?」

「あらら?」


 そうなの?

 どこかで入れ違いになったのかな、と首を傾げる私。

 すると結衣ちゃんが「魔法少女の乙女心を分かってませんね」と呆れた。


「夜見さんもまだまだ甘いですね。

 謎世界という未解決の事件があって、頼れる先輩が近くにいて、

 しかも自分より実力が上の戦友たちが気張っていない。

 そして偶然にも先輩と二人っきりで話すチャンスが来た――」


「おお。すると、どうなるの?」


「叩き起こしてでも先輩を独占して、ひっそり調査に向かうに決まっています。

 名声は成果で買えます。州柿先輩も当然ながら理解されている。

 謎世界に関する謎をひとつでも多く調べれば、

 彼女たちだけでなく、自分の立身出世にも役立つ、とね」


「おお、そうなんだ」


「反応が薄いなぁ……もう。いいですか?

 夜見さんの周囲には、

 生まれ持ったカリスマ性で出世する夜見さんという天才と、

 必死に自己証明するべくもちうる知力・財力・死力を尽くして駆ける秀才たち、

 そういう二種類の魔法少女たちが集まっています。

 いい加減、私たちのことをちゃんと認知してください。

 仲間であり、親友であり――競い合って研鑽しあうライバルだって」


「そうですわそうですわ」


 熱弁する結衣ちゃんと、

 今まで不服だったかのように、援護肯定しつつココアを飲むマリアちゃん。

 私はあははと困った顔で愛想笑いをしつつ、

 かと言って、面と向かって言われた以上は受けて立つべきだと思い、

 少しの逡巡の末、こう返した。


「……正直に言えば、自認ではまだまだ未熟だし、

 むしろ私が挑む側だと思ってるよ。

 高松学園都市(ここ)で起こり続けている連続結界テロを独力で解決できてないし。

 でも、みんなが、親友の結衣ちゃんやマリアちゃんが、

 そんな私と競い合いたいと願うのなら……精一杯の笑顔で相手をするね」


 私がにっこり笑うと、二人はええ……と引くような表情をした。


「こ、こんな大規模な事件なのに、独力での解決を目指してたんですの?」


「え゛」


「いやいや解決できないなんて当たり前ですよ、こんな大事件。

 沈静化してるだけで上澄みです。

 夜見さんはちゃんと仕事できてます」


「そ、そうなんだ……これくらいの事件が普通なんだと思ってた」


 ガクンと肩を落としてなんでやねんリアクションをする二人。

 ポニテ金髪優等生ミロちゃん改め、結衣ちゃんがマジタブを取り出し、

 魔法少女ランキングを起動。

 専門用語集をポチッとタップした。なんかいろいろ乗ってる。


「もー、いいですかー? 夜見さん。

 私が魔法事件の難易度を解説しますので、よく聞いて下さいね?」


「う、うん」


「あ、サンデーさんは継続してフォローアップをお願いします」


「しょうがないですわねぇ……」


 横から急接近してきたマリアちゃんに、

 私は緊張してドキドキとしながらココアを飲みつつ、

 結衣ちゃんの解説を聞くことになる。

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― 新着の感想 ―
百合百合しないのかな(笑)
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