表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフさんの魔法料理店  作者: 夜塊織夢
第二部
307/370

斎王さまの底力



「ブホッ……。ゲホゲホ、グェーッ!」


和樹は頬張っていた卵ロールパンを喉に詰まらせて、盛大に咳込んだ。


「…………みず。水」


真っ赤な夕焼け雲が渦を巻き、上空へと向かってロート状に陥没し、そこから巨大な二体の骸骨が降って湧いたことに驚いたのだ。


「ゲフッ。おいおい……。骸骨なのに、サイズがおかしいだろ!」


形状は人骨だが、その背丈は集合住宅の屋根に肘を付けるほど高い。

領都ルッカに降り立った怖ろしげな骸骨は、屍呪之王(しじゅのおう)や蟲の怪物より大きかった。


「樹生のアホは、いったい何と戦っているんだよ!?」


次から次へと規格外のサイズを持つ怪物が現れるので、スケール馬鹿になりそうだ。

それでも取り敢えず、骸骨たちがメルの敵ではなさそうなので、胸を撫で下ろす和樹だった。


「それにしても……。巨大スケルトンが味方って、どうなんだ!?」




転生希望者A: やっべー。やっべー。蟲の怪物よりデッカイ骸骨が降ってきた。それも二体。

はろたん: ニキアスとドミトリ?

黄金のスケルトン: 登場したモンスターの名前が画面に表示されるとは、まるで子供向けのTV番組ではないか……。

茶色いアレ: 特撮ヒーロー物な。

オレが魔法少女: うわぁー。えげつない。あの骸骨たち魔法書のようなものを手に持っているのに、攻撃が物理だよ。

ヒマ蔵: ツェーな、骸骨。あの分厚い本で殴られるたびに、蟲から汁が飛び散ってる。

Toby Tiger: はじめまして、皆さん。私はトビーです。どなたか私に教えて下さい。ゲームの題名。メーカーはなに?

ぬるま湯: トビーが、翻訳アプリを使いだしたぞ。w

転生希望者A: トビーさん。ゲームのシナリオ・ムービーじゃないから。異世界だから。

耳長族: と言うか……。首無し騎士(デュラハン)、いい加減マルグリットたんを開放しろ!

ぬるま湯: そうだぞ。嫌がる幼女を抱っこするような怪しからん奴は、騎士じゃない!!

右のボタンを押せ: 確かに……。紳士協定に反する、唾棄すべき逸脱行為ですね。

オレチン: あいつ、頭に愚劣王ヨアヒムって表示されてた。

ぬるま湯: ちっ……!頭は別に名称があったのかよ。オレは首無し騎士(デュラハン)の表示しか見ていなかった。 

ヒマ蔵: 愚劣王ヨアヒム、ピッタリだな。

ラリパッパ: こちらの世界で暮らしているヨアヒムさんが、気を悪くするぞ。『もし存在したら……?』の話だけど。

ヒマ蔵: いや。ピッタリなのは、愚劣王。

ホクホク: 愚劣王と呼ぼう。

Toby Tiger: 私は、これを遊びたいです。どなたか、私にゲームの題名を教えられますか?

転生希望者A: だから、異世界だって……。ゲームじゃないの……。



そんなやり取りをしていると、モニター画面が分割され、トンキーに跨る幼児ーズの姿が映し出された。

巨大ガジガジ蟲の横腹に出現した積層魔法陣が、一枚ずつ剥がれ飛ぶ。

メルとガジガジ蟲が、等間隔に並んだ魔法陣で一直線に結ばれ。

上空からの映像が、猛烈な閃光を捉えた。


赤く染まったルッカの街並みを縫い、青白い閃光が走る。

レーザービーム!!!!

ドーン!!


吸い込まれるようにしてターゲットに命中したレーザービームは、巨大ガジガジ蟲を爆散させた。



右のボタンを押せ: FUB……。ファイナル・アルティメット・ビーム……?

オレが魔法少女: クイーンビームだと……?ハイエルフの奥義か!?

ホクホク: さすメル。美味しいところは持って行く。妖精女王陛下、バンザイ。

リンリン: すっごぉー。腰抜けた。

耳長族: メルたんの目から煙が……。大丈夫なのかぁー!?

Toby Tiger: WTF!!WTF!!!Oh my God!

はろたん: WTFって?

茶色いアレ: What The F○ck!スラングだ。『なんじゃそりゃ!?』だと思えば、ほぼ正解。

はろたん: トンクス、う○こさん。

茶色いアレ: YW

はろたん: なんと……?

茶色いアレ: You are Welcome.『どういたしまして』と……。

はろたん: ……ッ。日本語プリーズ。

茶色いアレ: k(了解)

黄金のスケルトン: たく。海外勢とやり合うネトゲプレイヤーは、妙に英語慣れしやがって……。英語が得意なら、トビーに説明してやれよ。

茶色いアレ: それは嫌です。と言うか、無理。オレ、FPSで使う用語しか分からんモン。

ヒマ蔵: 役立たず。

オレチン: 役立たずだ。

ラリパッパ: あえて言おう、カスであると……。

茶色いアレ: ひどい。

オレチン: いやー、楽しめた。映画館に行くより良かった。チケット代です。3000円。

猫耳太郎: お布施です。ミケ王子に、チュ○ルを差し上げたい。1000円。


『皆さんありがとぉー。皆さんの支援金は、ユグドラシル王国復興のために活用させて頂きます。なお領都ルッカ攻防戦は、後半へと続きます』


ヒマ蔵: えっ。まだ続くのか?

明日の爺さん: 長時間の動画観賞は、老体に酷だ。目がしょぼついていかん。

ぬるま湯: 後半戦って……。


『えーと。後半は海上戦です。ミッティア魔法王国の海軍が増援部隊を出しているので、これをユグドラシル王国の海軍が迎え撃つようです。開戦予定時刻は、これより五時間後となります』


耳長族: まじか……。

転生希望者A: 飯食って、シャワー浴びて、タイマーセットして寝る。

ヒマ蔵: オレも。


『では、23:00に……』



音声入力を切り、ヘッドセットを外した和樹は、椅子の背もたれに身を預けた。


「フゥーッ」


メルが強ければ安心だが、クイーンビームはどうなのかと……?


「目から怪光線だよ」


カワイイ妹が、何か別のものになっていく。



五時間後、和樹とネット民たちは、ユグドラシル王国の海兵を目にして、あんぐりと口を開けた。


「おいおい。幼女エルフのパンチラはモザイク処理なのに、人魚が真っ裸じゃないか!?」


人ではなく、モンスターのカテゴリーだから、裸の上半身にモザイク修正なし。

おっぱいポロンどころの騒ぎではない。

おっぱいの乱れ咲きだ。


これではヌーディストビーチである。

ビーチではないけれど。


「成人指定を入れておいて良かった」


戦争なので、もしやと思い設定しておいたのだが、危うくチャンネルBANを喰らうところだ。


途中、斎王ドルレアックの台詞が字幕として表示された。


『容赦なく殺せ。九割の兵を無残に切り刻み、残る一割の兵に忘れ得ぬ恐怖を刻印せよ。われらの存在をミッティア魔法王国に知らしめるのだ!!』


鬼火を従え、夜の海原に立つ巫女将軍。

その凛とした姿は、ネット民たちを大いに興奮させた。

それほど斎王ドルレアックの存在は、鮮烈だった。



ホクホク: かっけー。

黄金のスケルトン: 惚れた。男の娘でも構わん。それがし惚れましたぞ。

ぬるま湯: 男の巫女さま、怪しい魅力。

リンリン: 白瑪瑙たんもカワユス。

転生希望者A: 男の娘と表示されてたけれど、本当に本当か……?俺には美少女にしか見えないんだが……。

明日の爺さん: 冷酷凄惨たる戦場にありて、薫風漂わせる爽やかな立ち姿。なんと凛々しい。

Toby Tiger: Holy shit! He!? You must be kidding? That's a girl, right?

茶色いアレ: No no no. She is a man.

Toby Tiger: Oh,Boy! Really?

茶色いアレ: Yes. That's right!

Toby Tiger: OMG! He is so cute. He's hot.


皆して、斎王ドルレアックをべた褒めだ。

今ここで人気投票をすれば、ぶっち切りだろう。




◇◇◇◇




夜に眺めるエルフさんの温泉宿は、提灯の灯りに照らされて和の風情がある。

立ちのぼる白い湯けむりも、温泉宿の情緒を存分に伝えてきた。


「あーっ、温泉だねぇー」

「ミケさんは、お風呂が嫌いデショ?」

「温泉は別だよ。ボクは温泉が大好きさ。心が癒されるもん」

「そう……」


メルは釈然としない顔になった。

よく分からないネコだ。


「メルちゃん。お帰りなさい」

「ラビーさん。たらいも」


温泉宿の前でラヴィニア姫とメルが、コブシをぶつけ合わせる。

タリサとティナも、ダヴィ坊やと同じことをしていた。


年齢が上がり、幼児ーズの挨拶はハグとチューから、コブシでのやり取りに変わった。

タリサとティナは、チューが恥ずかしい年頃になったのだ。


「ラビーさん。ハンテンも無事です」

「マルちゃんが、ハンテンのお世話をしてくれたんだ。ずっと抱っこで疲れたでしょ。ありがとぉー」

「当然のことです。わたくしもハンテンに助けられました。抱っこくらい、何でもありませんわ」


疲れ切って寝ていたハンテンは、マルグリットの手からラヴィニア姫へと返却された。

ハンテンはもう、互いに助け合い死線を越えた戦友だ。

マルグリットが心を許す仲間だった。


「さあ、温泉に入ろう」

「メル姉。その前に、宿賃を払わないと駄目だぞ!」

「デブは宿屋の息子じゃけ、こういうことは忘れんよな」

「宿屋の息子とか、関係ないよ。常識です」


ミケ王子がダヴィ坊やの肩を持った。


「女将さん。子ろも二人、動物(アニマル)三匹……」

「ボクも動物カテゴリーなの……?」

「見た目、ネコじゃん」

「ブタや犬と一緒?」

「ブゥー、ブゥー!!」


オープン記念が終了し、一般客は有料となった。

露天風呂の無料券は、メジエール村の役場で配っている。


宿泊料は、全員で三万メルカだった。

勿論、食事つきだ。


「宿賃、たこぉなった?」

「ブッカ高か?」

「物価ではございません」

「だったら何よ?」

「サービスが増えました。新しい施設の使用料を含んでおります。ご利用になりますよね?」

「新しい?」

「こども風呂を増設しました。ジャングル風呂です」

「えっ!?」

「流れる温泉プールに、ウォータースライダーが設備されております」


女将の真珠が、得意げに言い放った。


「エエーッ!!」


メルとダヴィ坊やが、タリサたちを振り向いた。


「すごかったよ」

「とっても楽しかったですわ」

「うん。こども風呂なのに、とっても広いの」

「マジかぁー」


もう我慢できない。

こども風呂へGOである。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【エルフさんの魔法料理店】

3巻発売されます。


よろしくお願いします。


こちらは3巻のカバーイラストです。

カバーイラスト


こちらは2巻のカバーイラストです。

カバーイラスト


こちらは1巻のカバーイラストです。

カバーイラスト
カバーイラストをクリックすると
特設ページへ移動します。

ミケ王子

ミケ王子をクリックすると
なろうの書報へ跳びます!
― 新着の感想 ―
[一言] ウォータースライダー…絶対子供が好きな奴
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ