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食事の後

 シュラスコ料理の店を出ると監視されているような人の気配は消えていた。俺たちは家具屋に向かう。

 何だったのかね? 思い当たる節は結構あるのだが、何があっても特に問題ないだろう。

 店の前におっちゃんが居たので、

「扉できた?」

「おう、注文通りだ! これでいいか?」

 そう言うと、扉を立てて見せてくれた。俺はそれを開閉する。

「上等。コレなら家に使える」

「このぐらいのことならすぐだ。あんちゃんは金払いがいいから、いつでも言ってくれ」

 そう言いながら、おっちゃんはニコニコしていた。

「こういう事が有ったらお願いするかも、それじゃ貰ってくよ」

 俺は扉を担いで店を出た。まあ、陰に入ったらすぐ扉を収納カバンに入れたんだけどね。


 家具屋で扉を手に入れている間にまた監視がついたようだ。さっきまでいなかったのに、報告にでも行ったかな?俺を監視してどうするんだろう?

「マサヨシ、どうする?」

()りましょうか?」

 マールよなぜ殺す?

「マール、その方向は無しで……。なんでこうなっているんだろうね? 監視の様子見で冒険者ギルドにでも行ってみる? 何か情報もあるかもしれないし、盗賊討伐の途中経過とかも知りたいし」

「そうね」

「わかりました」

「ということで、フォランカの冒険者ギルドに行こうと思います。いいですか?」

「わかったのじゃ」

「ん」

「了解ですぅ」

 残り三人の同意を得て冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルド特有の両開きの扉をバタンと開けてギルドの中に入ると、丁度目の前にギルドマスターのピートさんが居た。

「お久しぶりです。と言っても三日ぶりですが……」

「マサヨシじゃないか! お前何やらかした? お前らしき男のことを王都騎士団が探しているぞ?」

「王都騎士団?」

「今日この町にたどり着いた貴族か姫様か知らんが、それの護衛だ。黒い服を着てドラゴンに乗った男を探しているらしい。ドラゴンライダーなんて物語の話だと思うんだがな。ただ、黒い服を着て強い奴と言えば……」

 横目でじーっと俺を見るピートさんが居た。

「んー、特には無いはずなんですが……」

 身に覚えが有りすぎる。

 ん? 黒い服着てそれっぽい俺が見つかったから騎士団側の監視がついたのかな?

「お前、今日はどこから来た?」

「ああ、ゼファードですけど?」

「何日で?」

 かなり疑われているようだ。

「俺、これでも魔法使いなんです。魔法を使えばここまで一日ぐらいで着きますよ? それに、こんなに奴隷連れてドラゴン何か乗れないでしょ? ドラゴン一頭にライダーが一人ってのが通例でしょうから」

「そりゃそうか、まあマサヨシは目立つから騎士団に絡まれないようにな」

 何とか誤魔化せたかな?

「ご心配ありがとうございます。あと、生かして連れてきた盗賊たちはどうなりました?」

「傷一つ無い元気な犯罪奴隷だ。引く手あまただろう。今奴隷市で売られているはずだ。結果が出るのはもう少し先だろう。手紙で連絡すればいいんだよな?」

「はい、ドロアーテの冒険者ギルドへ送ってもらえれば問題ありません。それでは用事も終わったので……」

 そう言って冒険者ギルドを出ようとすると、扉の外にそこには鎧を着た騎士たちが待っていた。


 面倒臭そうな臭いがする。

「何か用ですか?」

 俺がそう言うと、

「マサヨシというのはお前か?」

 ひと際綺麗な鎧を着た女性が前に出て話す。あっ、居たなぁ隊長っぽい女騎士。

「はい、そうですが何か?」

「お前白いドラゴンに乗っていただろう? 私には見えた」

 うわっ、高圧的。つか、あの距離で俺が視認できたんだ。

「身に覚えはないのですが……」

「間違いない、遠くから魔法を使っていただろう?」

「んー、やはり身に覚えはないですね」

「これでもか? 所詮魔法使いだろう?」

 俺の喉元に輝く剣。レイピアって奴かな? アイナが威圧し始めた。

「アイナ、やめろ」

 威圧が解かれる。

「マールもダメだぞ、気配消して後ろに回り込んでも」

 マールの気配に気付いていなかったのか女騎士は驚く。

「なぜです?」

「俺が何とかするから……ね。俺の言うことが聞けない?」

「すみませんでした」

 渋々と引き下がるマール。

「みんなも臨戦態勢にならない!」

 クリスもフィナもリードラも剣に手を置いていた。珍しく大きな声を出したせいか、皆が俺を見て固まった。

「すんません、皆俺の奴隷なんで俺を守ろうとしたんだと思います。でも、俺、所詮魔法使いですがこういうこともできるんです」

 STRとAGI、VITをフル活用して掌で剣を挟み一瞬で剣を折る。折れた剣先がくるくると回って飛びギルドの壁に突き刺さった。

「別に脅されてもあなた方など怖くないんですよ」

 俺が本気の殺気を流すと、女騎士の周りに居た部下たちは腰を抜かし尻もちをつく。女騎士は……ギリギリかな? 足をガクガクさせながら立っている。

「あなたが脅してきたから脅し返しただけ。普通に質問したら普通に返します。名も名乗らず人の名前を呼び捨てにする。いつもはどうなのか知らないが、そんなんじゃ話にもならない!」

 俺は騎士たちを見回してニヤリと笑うと、

「もう動けなそうだから失礼しますね。ほら、みんな帰るぞ」

 そう言って俺たちは騎士たちの前を去った。


 騎士の視界から消えると、俺は駆け足に建物の陰に入る。

「マサヨシ、良かったわよ」

「カッコいいです」

「うん、良かった」

 クリス、フィナ、アイナが誉める。

「でも大きな声を出すなんて、(ぬし)にしては珍しいな」

 リードラが聞いてきた。

「お前らが面倒になってもいかんだろ? 面倒ごとは俺に回しておけばいい」

 そう言うと、

「私を守るために……すみません」

 マールが謝ってきた。

「マール、俺のためだったんだろ? ありがとな」

 俺がマールの頭を撫でると、マールが涙目で俺を見る。

「何も無かったんだ泣かんでもいいだろ? さあ、一度ゼファードに行くか」

 俺は例の扉を出し皆でゼファードに戻った。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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