二十階ボス討伐報告
俺たちは冒険者ギルドへと向かった。二十階のボス攻略の報告のためだ。
冒険者ギルド特有の両開きのドアをバンと開けると、そこにはイスに座って待っているエリスが居た。
俺を見て飛びついてくる。
「おっかえりぃ」
俺は受け止めた。
「待っとったの?」
「うん、でも、今日は少し遅かった」
「まあ、ボスがちょっと強かったから時間がかかった」
「大丈夫?」
「ほら、なんともないぞ?」
服や体を見せて安心させる。実際、俺の体は無傷なので問題ない。
「エリスこそここで待ってた?」
「うん、今日中には帰ってくるって思ってたから。あっ、お母さま呼んでくる」
エリスはパタパタとギルドマスターの部屋へ走っていった。
「どうしたの? エリス。えっ、もうマサヨシたち帰ってきた?」
パタパタ×2で二人がやってくる。
「おっかえりぃ」
俺に向かってダイブするカリーネ。エリスと一緒のリアクションで抱きつくらしい。しかし、サッとリードラが割り込みカリーネを抱きかかえた。
「どうしたのじゃ、カリーネ? 躓きでもしたのか?」
「邪魔しちゃダメじゃない、スキンシップよ!」
「昨日、スキンシップしたんじゃなかったのか?」
「スキンシップはできなかったのよ。マサヨシがしなかったの」
リードラは笑っている。まあ、あえて聞いたんだろう。
「じゃろうな。理由は聞いたんじゃろ?」
「前の奥さん?」
「らしいのう。割り切れんと言っておった」
「その奥さんくらい私たちも愛してくれるのかしら?」
「わからん。けど、我々のために今マサヨシはダンジョンを攻略している。信用してみてはどうじゃ?」
「そうね、エリスがあれだけ懐く人。私が気になる人。信用してるわよ」
「だったら、待つんじゃな。ダンジョンの攻略も普通の速度じゃないんじゃろ?」
「まあね、あっという間に攻略しそう。それぐらいは待ってみるか……」
カリーネは俺の方をチラリと見た。
会話の一部始終を聞いている俺。
まあ、何にしろ早く攻略しないとな。
「カリーネ、魔物の解体をお願いしたいんだが。ちょっと大物なんだよね」
「まさか、ジャイアント・ポイズン・スパイダーのメス?」
「一応、討伐は終わった。でも、結構デカいんだよ。置く場所ある? そういえばドロアーテには戦闘訓練所ってあったんだけど、ここには無いの?」
「あるけど、いけるかしら?」
「足は取っ払ってあるから、何とかなるかも」
「ちょっと付いてきて」
俺達はカリーネの後をついて行った。裏の扉を開けしばらく歩くと運動場のような広い場所に出る。
「じゃあ、ここでお願い」
俺は、ジャイアント・ポイズン・スパイダー(メス)の胴体を出した。
「きゃっ」
びっくりしてエリスが抱き着いてきた。
「大丈夫だぞ? もう死んでるから」
そう言うと、残りの足を並べる。
「キャッ」
驚いて? 俺に飛びついてくるカリーネ。
「あれ、演技よね」
「演技です」
「演技」
「演技じゃな」
「まちがいなく、演技ですね」
奴隷たちが口々に言う。
「いいじゃない、機会は上手く使わないと」
カリーネがそう言うと
「人生経験?」
アイナが返した。
「バカ言わないでよ、私はまだ二十五よ!」
「俺よりは年上だな」
俺は、魔石の入ったオスグモを出しながらカリーネに言った。
「マサヨシはいくつ?」
「んー、一応二十二歳」
「一応って言うのはなぜ?」
「俺前の世界で四十五だったから、精神年齢はオッサンだ」
アンバランス感は否めないよな。
「ああ、だから年上っぽくて落ち着くんだ」
「さあ? そこは俺にはわからんがね」
「もっとガツガツ来てほしいわよね」
「そうです、ガツガツです」
「私は今のままでいい」
「我も今のままでいいかのう」
「私はガツガツもいいし、今のままみたいに包まれるみたいなのもいいと思います」
「マール、ずるいわ」
「クリス様、マサヨシ様が今みたいだからついてきた部分もあるでしょう?」
「まあ、そうだけど」
「お父様みたいな包容力に部分に年齢相応のガツガツ感が着けば……」
「マールさん、それいいです!」
フィナも同感らしい。
俺に豹変しろって?
「お父さんからの豹変……」
アイナが何かを想像している
「いいのう……」
同感し想像するリードラ。
俺って何者?
「マサヨシ、これどうするの?」
カリーネがクモたちを指差し言う。
「ああ、まだコックロの解体も依頼したいんだ。で、これらは魔石と絹糸腺、甲殻の一部を貰えたらいいかな? あとはギルドで買い取って」
俺はコックロを出しながら言う。
「ギルドのお金足りるのかしら?」
「それは、ギルドマスター様にまかせるよ。買った分売るんだから利益は大きいんでしょ? カリーネとしてはそのほうがいいんだろうし」
「まあ、そうだけど」
「お偉いさんになったら楽させてよ。でも、面倒で辞めたいと思ったら俺んとこ来ればいいから」
「えっ?」
「まぁ、そういうことで解体依頼よろしく」
そう言って去ろうとすると、
「待って」
カリーネが俺の肩を持って止める。
「迎えに来るの?」
「へっ?」
「今日もあなたのところに行っていいの?」
「それは別にいいけど?」
「だったら、迎えに来てね」
ニッコリと笑うカリーネ、そしてそれを聞いていたエリスもニッコリとしていた。
仕方ないねぇ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




