ダンジョン攻略4
俺たちはボス部屋を目指す。アイナ以外の四人が蹂躙していた。
弓のような武器も必要なのかもしれないなぁ。などと思う。
我々のパーティーには遠距離攻撃用の武器が少ない空を飛ぶ魔物は天井が低いせいで飛ぶ高さが制限されている。そのお陰で剣で戦うことができるが、今後広いホールのような部屋に出た時は難しいかもしれない。
エルフであるクリスやマールが弓を使えば攻撃の種類が増えていいのかもしれない。まあ、そこら辺は宝箱から出たら考えるか。
それにしてもマールの進歩が著しい。クリスに斥候術を教わっているのか、俺が罠を指摘する前に罠の表示が消える。
一応俺は先頭を歩いているんだが、俺のすることが無い。敵が近づいても気配を感じた誰かが先行し殲滅して戻ってくる。白や緑の体液を胸や顔に被って戻ってくることもあるのでエロいっちゃエロイんだが、変なにおいもするので、皆の体を洗浄魔法で洗う。疲れてる様子が有れば果実水を出し休憩させたり部活のマネージャー状態が続く。俺の出番がないってことは良いことなんだろうけどね……。
下層を目指していると、クモ系の魔物が出始めた。そういえばカリーネが「二十階のボスはジャイアント・ポイズン・スパイダー(メス)」だと言っていたから、近づいてきたのかもしれない。五十センチほどある蜘蛛が無数に現れる。黄色と黒のトラ縞、八本の足を高速で動かしながら近づいてくる。マップには魔物を表す光点で通路がぎっしりだった。
「数が多いな」
「ちょっと魔法を使うから離れてて」
クリスが魔法を使うのを初めて見る。何か呪文を詠唱するのかと思ったのだが、クリスは何もいない空間に話をしていた。
「炎の精霊よ! 焼き尽くして!」
ダンジョンの通路を焼き尽くす炎の大波がクモの上を走る。その後には黒焦げになったクモが残り、通路上の光点は消えていた。
「凄いなその魔法」
「クリスさんそれ凄いですぅ」
「大魔法使いじゃな」
「凄い」
「クリス様は精霊に愛されているみたいですね。精霊の格が高い」
皆で口々にクリスを誉めるが……。
あれ? クリスが一番驚いている?
「おいクリス?」
「えっ、ああ、私も使ってみてびっくりしてるの。こんな大層な魔法が使えたわけじゃないのに……。いいとこ炎の帯が飛び出る程度。あなたに貰った精霊装備を付けて以来、私に憑いた精霊の格が下位精霊のサラマンダーから上位精霊のイフリートへ上がったから、そのせいかもしれない」
「精霊の格って重要なのか?」
「重要よ? 上位精霊になるほど精霊に依頼できる内容が高度になる。まあ、その分魔力も使うけどね」
精霊装備は防具としてでなく精霊との交信レベルを上げる意味もあったのかもな。
何となく精霊が見てみたい。俺にも精霊が見えるかなっと……。
目の周りに魔力がまとわりついたように感じた。
ああ、クリスに憑いている女性、あれが精霊? 精霊って女性なんだ……俺の周り女性率高い。あれ? クリスに憑いてる精霊じゃないのが居る。もっと美人? 俺と目が合う。ん? にっこりと笑ってこっち来る? えっ何で俺に抱き付く? 何かすっげー魔力吸われてる?
「「!」」
クリスとマールが目を見開いて俺を見た。
「あなた、何で精霊が憑いてるの?」
「いや、見たいなあと思ったら見えるようになって、周囲に居た別の精霊と目が合ったんだ」
「マサヨシ様、この世界の精霊が見えるのは、我々のようなエルフか修行を積んだシャーマンです。エルフ以外が簡単に見えることは無いのです」
「んー何か魔力を吸われているんだけど」
吸われているのはわかるが、俺の回復量のほうが多いので魔力が減ってはいないようだ。
「精霊に好かれたみたいね」
「好かれる?」
「マサヨシ、精霊は魔力の相性が良いと自分から近付いてくるの。見える人じゃないと近づいてこないけどね」
「マサヨシ様、エルフで精霊が憑いているというのは名誉なのですよ? それもマサヨシ様についている炎の精霊の格は最上位、王並みだと思います」
「俺はエルフじゃないんだが……」
「エルフ以外で精霊が憑くことはまずありません。それだけでエルフに信用されます。エルフにとって精霊、そして精霊の格というのはそれだけ重要なのです」
俺に憑いた精霊を見ると
にっこりとイタズラが成功したような顔で笑った。
「お前、俺の言うこと聞くのか?」
コクリ
精霊が頷く。
「俺の指からファイヤーボール出せる?」
俺の人差し指の上ににファイヤーボールが浮かぶ……ってデカいよコレ。直径一メートル近くある。
「お前、このファイヤーボールの魔力量はそのままで小さくできる?」
俺の指のファイヤーボールが一センチ程度の直径に圧縮され、温度が上がったのか炎の色が青くなった。
「やるねぇ」
褒めると精霊は嬉しそうに笑った。
「これをいつも使える?」
コクリ
「だったら、ファイヤーボールって言ったら、これ撃ってくれる?」
コクリ
指先にあるファイヤーボールを通路の奥に向け撃ち込むと暗闇に溶け見えなくなる。どこかに当たったのか遠くで小さな光が見えると次第に炎がこっちへ走ってきた。
「ヤバい、アイナ! プロテクション!」
アイナが呪文を唱え通路全体にプロテクションのバリアを張る。張り終わるとすぐに炎が襲ってきた。
「ふう、ありがとう、アイナ」
「マサヨシ、やりすぎ」
腕を組んで怒っている。
「面目ない」
「気を付ける」
「はい」
「フフフフじゃないよ!」
精霊が笑っていた。
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