ダンジョン攻略3
階段を降りると特に変わらないダンジョン。ただ十階までよりは暗くなっていた。
漂う殺気も変わったような気がする。
「さて、何かが変わるのかね」
そう言うと俺は先頭で歩きだす。レーダーにはモンスターの光点が結構あった。
まずは一番近い奴かな?
部屋に入ると中央に一メートルほどの緑の芋虫が居た。
「これ何? 芋虫?」
「あれは、グリーンワーム」
クリスが答える。
「そのまんまだな」
「そのまんまだけど、あそこの白い塊は被害者なんでしょうね。あの魔物は口から出す硬く粘着力のある糸で獲物を巻き付け、呼吸ができなくて窒息死した獲物が腐るのを待ってから食べるの」
白い人型が何個か釣られていた。
「あれが被害者ってわけね」
「じゃあ、やってくるね」
「へっ?」
クリスが駆けだしグリーンワームに切りつける。
ああ、あなたも一刀で終わるのね。
一刀の下胴体を切り離され青い体液を出しながらウネウネと動くグリーンワーム。そしてしばらくすると静かになった。
「食べられる?」
アイナからの質問。
「いや、食べられないだろ?」
「食べられるわよ? ただ、美味しくない。食料が無くなればこんなのでも食べないといけなくなるわけ」
クリスさん物知り。
「いろいろ経験してるんだねぇ。年の功か」
「何それ?」
「言わない」
「お前ら逃げろ! 階層違いだ!」
俺たちとすれ違う時に逃げる冒険者のパーティーが大きな声を上げ忠告していく。そういえば光点も俺たちに近寄ってくる。何かカサカサという音が聞こえてきた。
ゴキだ! 何っ俺の身長近くあるじゃないか!
一匹だと思ったゴキは縦に一列に並んでいただけ。それも三体。黒くて三体。例の攻撃方法しか思い浮かばない。
「結構あいつら頭がいいのよ。それに下手な鎧より硬いわよ?」
クリスがぼそりと言う。
後ろから黒い影が走り出た。
「行きます!」
マールが飛び出し三体のゴキの隙間をすり抜ける。
あいつ、一番攻撃力低かったと思うんだけど。
さすがに踏み台にはしなかった。ゴキが数メートル進むと止まる。ゴキの足が関節で切れており、柿の種状態になっていた。
「関節なら問題ないですね」
ニコリと笑うマール。そしてゴキの急所に短刀を刺し息の根を止めた。
「階層違いって?」
「大体この辺の階層にはこの程度の魔物って決まっているんです。だから、それより下の強い魔物が上層に出てくることを『階層違い』って言うんです」
フィナが言う。
「さっきのパーティーをずっと追いかけてきたのかね?」
「ジャイアントコックロは食べ物への執着がすごいと聞いています。あのパーティーを獲物として追いかけてきたんだと思います」
「多分あの大きさなら魔石があるわよ? ジャイアントコックロの甲殻は鎧の材料としても売れるから回収して冒険者ギルドで売ってしまえば? 鎧の素材ってなかなか大量に出回らないから高価よ? まあ、あの白い体液をいじるのは私も嫌だし」
クリスが嫌な顔をしていた。
「同感だ」
そう言ってジャイアントコックロを収納カバンに入れた。
モンスターを探し狩る。
ジャイアント・ケイブ・クリケット(でっかいカマドウマ)、
ジャイアント・モス(でっかい蛾)
働きジャイアント・アント(でっかいアリ)
兵隊ジャイアント・アント(でっかいアリ)
女王ジャイアント・アント(でっかいでっかいアリ)
それぞれをアイナ以外の奴隷たちが狩る。
ジャイアント・アントの群れを四人で切り刻んでいく、手が、足が、胴が一刀、一撃で断たれ蹂躙されていった。相変わらず俺の出番が無い……。
「俺の出番が無いんだけど」
「主の出番はだいぶ先じゃろう。この程度なら我一人でも問題ない」
リードラは背後から攻撃を受けそうになったが、見ずして避ける。
「あっそう」
しばらく部活のマネージャー状態が続くのね。
結局ボス部屋までの最短コースを行くことになった。
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