さあ、行こうか
朝食の片付けを終えると、再度ダンジョンの攻略とカリーネ親子のためにゼファードに向かうのだがその前にカリーネに聞くことがあった。
「カリーネ、ダンジョンを攻略する上で、何かあったほうがいいモノはある?」
要は昨日聞きそびれていたことを聞こうと言うだけだ。
「数時間で十階のボスを倒すぐらいだからマサヨシたちは強いみたいね。しかし安全マージンを増やすなら、ヒールポーションとかの回復系の薬や毒消しなんかの状態異常に対応するものも必要だと思うわ。更にはポーチのような物で各人が持っておけばお互いに使えるでしょ?」
「そういうものはどこで買えばいい?」
「そういうポーションは冒険者ギルドでも扱ってる。あと魔法薬の専門店みたいなのもあるけど、どっちにしろ高いわね。たまにダンジョンの中に落ちている物を期待するより確実なんだけど」
「冒険者ギルドで買うことにするよ。あと何かある?」
「余裕があるからと散開して戦わないこと! 各個撃破される原因になる。罠とかがあって痺れたりした後に再配置なんてあったら目も当てられないわ。パーティーは基本密集して戦うように」
「了解! ありがとう、知らないことも多いから助かるよ」
「そう? 何でも聞いて」
カリーネが何か鼻高々だな。
「じゃあ、行くか」
そう言って例の扉を出すとゼファードのギルドマスターの部屋に繋ぐ。
「マサヨシ? 私たちはどうすればいいの? この扉じゃないとあの家には行けないんでしょう?」
ちょい怒りのカリーネ。
「それ用の扉を作るかな? しばらくは俺たちが来るときに一緒に向こうの家に行くって形になると思う。それに何時もギルドマスターの部屋ってのも変だしなぁ。できたら、カリーネの家あたりに繋げるようにすれば仕事も続けられるでしょう? まあ、それもダンジョンを攻略してからってことで……」
「即行で攻略しなさい!」
無茶を言う。
「頑張ってみます。とりあえず二十階目標でね。ちなみにボスは?」
「ジャイアントポイズンスパイダーのメス」
「メス限定?」
「そうメス限定。子スパイダーとオススパイダーが守ってるから相当な数と戦うことになるわ。毒と麻痺対策は必須」
「了解、毒消し系のポーション多めで行きます」
カリーネに付き添われポーションの購入を行う。回復系は基本、特に毒、麻痺への対応ができるものを買った。石化、蘇生はアイナ任せになるなぁ。俺も何か魔法を考えないと……。
カリーネ親子と離れ、ダンジョンの入口へ向かう。受付嬢に通行手形を渡し手続きを行った。俺たちがダンジョンの入り口横の魔法陣に入ろうとすると周囲から驚く声が聞こえる。昨日の俺たちを見た冒険者が居たのだろう。
「えっ、もう十階を越えたのか?」
「それは無いだろう。昨日初めて入ったばかりだぞ?」
「いや、あのパーティーが尋常じゃない速さで進んでいるのを見た」
「獣人の女が一刀でモンスターを倒していた」
「長身の女なんて素手で殴って一撃だぞ? ジャイアントラットが粉々だ」
いろいろな声が上がる。
確かにダンジョンの受付嬢の反応を見れば俺たちのパーティーは尋常じゃない速度で進んでいるんだろう。目立つなって言うのが無理か。
「マサヨシ、私たち話題になってる」
アイナが俺を見て言った。ニヤけてやがる。
「まあ、普通じゃないんだろうな。それは何となくわかる」
「主よ今更じゃ。このパーティーなら早急に攻略できるじゃろ?」
お前らだったらこの辺でも過剰戦力だろう。
「そうね、早く攻略しないとね」
「そうですねぇ、攻略すれば手を出してもらえるし……」
白黒エルフたち意味深な言い方をしない!
「抱っこしてもらうですぅ」
フィナはストレートだね。俺の腕に抱きついてきた。
まあ、こいつらにも期待されているのだろうな。
「さて何が出てくるのやら」
そして、俺たちは十階へ転移し十一階への階段を降りていった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




